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VRMMOでぼっち脱却!初めての友人はNPCでした。  作者: 夢・風魔
ぼっち正月(息抜き用)
109/160

106:正月福袋

「あん? どうしたんだ、その浴衣?」

『お似合いです』

「浴衣じゃないですよぉ。振袖ですぅ〜」


 恐怖のVIT祭り翌日の1月2日。

 朝飯を終わらせ狩りに出ようとしたところへ、ココットが派手な浴衣――訂正、振袖を着て登場した。隣のエリュテイアはいつもの『普段着』だ。『普段着』ってのは、鎧を脱いだ服装ってだけで、ソリオのおっさん産装備である事に違いはない。防御力もしっかりある。


「今日の分のBポイントを貰いに行ったんですけど、ポイントでお正月の福袋販売が行われてたんですぅ」

「ほほぉ。福袋から振袖か?」


 っと、興味津々な様子で教授が現れた。こいつは完全装備で、今から狩りに行くぜといった様子だな。


「1Bポイントで一袋なんですよぉ。今日受け取ったポイントで、もう合計40ポイントになってたし、10ポイント分だけ福袋買っちゃったぁ」

「1Bで一袋か。なかなかお手軽だな。で、中身は振袖以外、何が出たんだ?」

「えーっとですねぇ」


 俺や教授が興味深そうにしている中、隣のエリュテイアはやや不機嫌なご様子。

 どうやら振袖欲しさにこいつも福袋を買ったが、出なかった――こんなところだろう。


 ココットの話だと、振袖以外にも紋付袴や髪、衣装の染料、装備にステータスを付与させるアイテム、それにポーションが入っていたという。


「ハズレはポーションっぽいな」

「こんなところでポーションを量産されたら、俺の商売に響くんだが……」


 NPCによるポーション販売は、需要に対して供給が間に合わないという設定から、1日10本しか購入できない。だからこそ、プレイヤーが販売するポーションが馬鹿売れするのだ。まぁそのせいでボッタクリ価格の露店も多いけどな。

 なのに福袋から量産されるとなると、ちょっと問題だなぁ。


「その点なら大丈夫である」


 と、玄関から現れた髭のおっさんが高らかに言う。

 ……髭?

 こいつ、誰だ?

 鼻から顎にかけて、茶色のもさもさした髭を蓄えた樽のような体型のおっさん。口調は鋼のおっさんに似ているが、髭はなかったぞ?


「っは! まさか!?」

「ふはーっはっはっは! そのまさかであーる! 儂が待ち望んだ髭が実装されたのであーる!」

「って、キャラメイクで髭未実装だったのかよ」

「んむ……。しかしこたび、福袋から髭がでるという噂を聞きつけてな。朝から40袋交換して、見事にゲットしたであるよ!」


 といっておっさんがアイテムボックスから髭を取り出す。

 え?

 2個目かよ。


「こちらはドワーフ然とした髭で、こっちはダンディーな口髭である」


 手に持っているのはダンディーなほう。

 その日の気分次第で変えるのだという。

 肝心のポーションはといえば……


「CTが違うのである。お主が作るポーションやNPCが販売するポーションは同じCT扱いで、1本飲めば10秒は次のポーションを飲めんじゃろう。

 福袋から出る『ライフポーションB』もCTは10秒じゃが、前途の物とはCTが別になっておった」

「ほほぉ。ではカイト産ポーションを飲んだ直後に、そのポーションBを飲めるという事か」

「んむである。まぁCTは10秒同士なので、ガブ飲みは結局出来ないのであるがな」


 ポーションBにも『ライフ』と『エナジー』の両方があり、ついでにレベルは開封者のレベルに依存という話だ。

 一袋10本セット。高確率でこのポーションが出る仕様。


「どうせ……7袋からポーションが出たわよ……」

「私は4袋分しか出なかったのに、おかしいよねぇ?」

「おかしいのはココット殿の運である……儂は40袋開封して30袋はポーションであったぞ」

「そ、そうよね! ココットがおかしいのよっ」


 髭ドワーフの言葉を聞いて少しは元気を取り戻したエリュテイア。

 なんて運の持ち主なんだ、ココットは。

 福袋のアイテムは他にも『リターンストーン』という、一度使うと消えてなくなる帰還専用石があった。それは便利そうだな。


「よし、では……本日は福袋大会をするぞっ!」

「はい?」


 教授の一言で、何故か支援協会に行くはめになった。

 俺は早くレベルを上げたいんだがなぁ。






 全員が福袋10袋と交換。

 あれ?

 今の時点だと40ポイントちょっと持ってるのが最高じゃね?

 髭のドワーフおっさんは、もう既に40袋開封しただろう。


「ん? 儂であるか? お主、コボルトキング戦のあと、カウンター嬢と会話はしたかの?」

「カウンター嬢? もしかして職員スタッフのNPCか?」

「んむ」


 受付嬢にカウンター嬢。サポートAIも随分いろんな呼ばれ方をされてるな。


「どうやらあのイベントも突発的なクエスト扱いのようでの、あれに関わったプレイヤーには、Bポイントが10ポイント付与されるのである」

「マジか! 貰ってこようぜ」

『はい』

「ほほぉ。ラッキーだな」


 カウンターに並んで順番が回ってくると、鋼ドワーフの言う通り、10ポイントが付与された。

 なんでも、コボルトキングを村から撃退した事による貢献報酬だとか。撃退じゃなく倒せていたらどうなるんだと尋ねると――


『あの時点ではどのプレイヤーも倒せませんから』


 と、胸に『イシュタル』という名札をつけたスタッフが、ケロっとした態度で言う。

 今、物凄い事をぶっちゃけられた気がする。

 深く考えるのは止めよう。


 そのまま福袋10袋を交換。

 全員が福袋を手にすると、まずは迷惑にならないよう建物を出る。

 支援ギルドの外は同じように福袋を持ったプレイヤーがわんさかといた。

 プレイヤータウンが出来ても、支援ギルドはNPCの町の中にしかないので、結局NPCの町にもプレイヤーは溢れるんだな。

 福袋を開封しながら絶叫する連中があちこちに見られる。


 少し離れた所で、俺、受付嬢、教授、ココット、エリュテイア、鋼の6人がパーティーを組んだ状態で福袋を開封していく。

 俺の足元ではアオイが楽しそうに尻尾を振っていた。


 一袋目……『ライフポーションB:LV2』10本獲得。


「っち。一発目はポーションか。まぁ想定内だ」

「やったぁ〜。振袖用の真っ白なショールが出ましたぁ」

「あ……振袖じゃないけど、女物の袴が出た……わぁ、嬉しい」

「私はポーションか。っち」

「んむ。ポーションである」

『……はぁ……』


 女子二人のリアルラック恐るべし。そして溜息をついてる受付嬢はどうしたというのだ?


「ウケ、どうしたぉ?」


 心配そうに覗き込むアオイに、受付嬢はそっと福袋の中身をアオイに見せた。

 覗いたアオイも「あぁ……」という一言の後に、なんとも微妙な顔をする。

 何が入っているんだ?


「受付嬢さん、どうしたの?」

「何が入ってたの?」


 遠慮しない女子が覗きに行くと、やっぱり「あぁ……」といって微妙な顔。

 気になるじゃねーか。


「そ、そうだ。受付嬢さん、これあげる。これで染色すれば、色違いになっていいかも?」

『いえ、それならいっそ、これをココット様がお受け取りください』

「えぇ! い、いいよぉ。勿体ないよぉ」


 気になる……。


「押しつけあうぐらいなら、俺が貰ってやってもいいんだ――」


 ここまで喋った時、受付嬢がアイテムボックスからそれ(・・)を取り出すところだった。

 言わなきゃ良かった……。

 受付嬢が手に持ったのは、彼女自身が着ているメイド服だった罠。カラーまで同じバージョンだ。


 アオイが、エリュテイアが、ココットが微妙そうな顔する訳だ。


『受け取って頂けるのですか?』

「いや、その……」

「着るの?」

「いや、あの……」

「サイズ合いますかねぇ?」

「いや、ちょ……」

「お店屋さんするときに、着るんだおねぇ?」

「……ごめんなさい。貰おうなんて思った俺が悪かったです」


 何故か物凄く惨めな気持ちになりました。






「……で、10個開封して『ライフポーションB』セットが…・・・10個……だと?」

「おめ」

「おめである」


 くそう!

 教授も鋼のおっさんも、ステータス付与アイテムやら石やらが出てるってのに!

 なんで俺だけ……俺だけ……


「くそうっ! こうなったら追加で10袋だ!」

「嵌ったな」

「嵌ったであるな」


 教授とおっさんの声を背中で聞きながら、支援ギルドの建物内へと入る俺であった。






「……おい、どうなってるんだ?」

「どうとは?」

「リアルラックの差である」

「差とかいう問題か、これは?」


 10袋開封して『ライフポーションB』セット4個、『エナジーポーションB』セット6個をゲット。

 あまりにも悔しいので更に追加で10袋を交換すると『ライフポーションB』セット5個、『エナジーポーションB』セット3個、そしてBポイント4ポイントをゲットした。

 おいおい、福袋からBポイントってなんだよ。1袋につき2ポイント入っていたので地味に増えてはいるけどよぉ。


 ここで終われない。終わる訳にはいかない!


「これでラストだ!」


 そして俺は再び支援ギルドへと以下略。


 数分後……


「おめ」

「おめである」

「あら、アバターでたじゃない」

「よかったですね、カイトさん」

『……あの、これは、その……おめでとうでよろしいのでしょうか?』

「よろしいのだよ」

「よいのである」

『はぁ……それでは、おめでとうございます』

「カイトの袋からカイトの耳が出てきたお?」


 福袋の中身は――狐耳のヘアバンド。だった。










 コボルトキングの事件で貰ったBポイントや年末年始特別ポイントやらを含め、計52ポイントが一瞬のうちに残り12ポイントとなった。

 ヤベェ。つい調子に乗って使っちまったが、Bポイントを溜める目的すっかり忘れちまってたぞ。

 支援ギルドに居るうちに、名前変更券のポイント確認しとかねーとな。


 福袋大会解散後、こそこそと一人、支援ギルドに引き返して交換アイテム一覧を確認。

 一覧を見るだけなら、施設内の壁際に設置された端末からも見れるようになっていた。それを自分のタブレット側にダウンロードも出来る。

 えーっと、名前変更券は――


「……ガチャとかもうぜってぇやらねえぞっと」


 一人そう呟いて、俺は家に戻るのであった。


 普通にクエストをクリアしても、1、2ポイントしか貰えないうえに、ポイントが発生しないクエストだってある。

 ソレ考えたら何ヶ月かかるんだよ、このポイント集めるのに……。

 これ、名前変えさせる気ねぇだろっ。


---------------------------------------------------


『名前変更チケット』

 キャラクター登録名を一度だけ変更できるチケットです。

 

 交換ポイント:500ポイント


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何かの記念日だからと、通常価格より少し安くなったりする福袋ガチャをやって、

数個買ってもゴミアイテムしか出ず、安いんだし追加で――と数個買ってゴミアイテムしか出ず。

気が付くと2~3000円分買っていたりする。

毎月2000円の課金まではいいやーと決めていたのにオーバーしていることも。

でも他のプレイヤーの中には万単位でつぎ込む人もいるし、それを考えれば可愛いものだ。

うん。


もちろん、レアなんて出した事ありませんが?

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