105:VIT祭り
「VIT祭りをしようぞ!」
新築祝い兼新年のお祝いが終わった後、唐突に鋼のおっさんがそう叫んだ。
VIT極なんて、おっさんしか居ねーだろ?
『いえ、カイト様。正月の三日間だけ、ステータスが自由に何度でも振りなおしできるのですよ。告知にあったはずですが?』
「告知? んー……あぁっ」
そういや、ステータスの上限が199になるってんで、今までのポイントを再振りできるんだったな。
まぁ俺はAGI=STRにするっていう予定は変わらないし、振りなおすつもりもないんだけどな。
それとVIT祭りと、何が関係あるんだろう。
「全員でVITに極振りするのであるっ」
「堅い魔法使いが出来上がるのか。それでダンジョンを攻略するのだな?」
「んむっ」
「ゴミ魔法の魔法使いデスじゃー」
「クィントのゴミヒールはそのままじゃないですかー」
え?
まってまって。
え?
VIT極にするの?
「VIT201……」
生産メインの連中まで巻き込んで、全員がVIT極振りになった。
初期ステータスでVIT17。レベルアップで今まで貰ったポイントが140。技能ボーナスで44。合計して201のVITに。
もちろん、メンバー最高のVITを誇ってしまった。
尚、鋼のおっさんは70ポイントを振り分けるタイプでキャラ作成したらしいが、VIT以外を最低の5にし、残り40を全部VITにつぎ込んだらしい。
レベル1でどんだけ堅ぇ剣士だったんだよ。
「くっふっふっふ。儂は一度こういうVIT軍団でダンジョン攻略をしたかったのである」
「ステータスの再振りイベントとかって、昔と違って今はまったく無いらしいしねぇ」
「そもそもステータスを自由に振れるゲームのほうが少ないしね」
などと話しながら、全員何故か教授の近くに集まっていく。
「では順番に『テレポート』するから並ぶのだ」
「って、何処行くんだよっ!」
「決まっているであろう――」
「「ダンジョン」」
マジかよっ!
いや待て。AGI無いんだぜ? 俺、回避できねーよ。STRだって無ぇし、ゴミ火力じゃん!
あ、皆どんどん教授の『テレポート』で消えていってるし。
行った連中からパーティー抜けて、別の奴がまた教授をパーティー組んで……あ、俺の番ですか?
「『テレポート』」
「はぁ……」
溜息と共に、俺は教授の『テレポート』を承認した。
月光の森ダンジョン。
適正レベルは28前後。俺的な適正レベルは25前後だが。
現在のレベルは、29。
システム的な適正といえば適正だ。
だがしかし、AGI18+48でどうやって回避しろと!
技能の分だけ他の連中より全体の数値は良いほうだが、それでもバンバン攻撃食らいまくりっ。
「食らいまくってるのになぁ、なんかこそばゆいだけだな」
「んむ。楽しかろう?」
っと鋼から同意を求められ、返答に困る。
野犬タイプのモンスターに脛をガジガジと齧られながら、別のモンスターを短剣で切り刻む。
その与ダメージときたら、悲しいぐらいゴミだ。それ以前にミスのほうが多い。
「あははははは。楽しいですね〜」
ココットは素手でスライム状のモンスターを殴っている。どうやら素手のほうが命中率補正が良いみたいだな。
時々『ヒール』を唱えては、ゴミだゴミだと楽しそうだ。
「な、なぁ。そろそろ陽が昇る頃だし、ダンジョン出ないとダメなんじゃね?」
入ったのはまだ暗い時間だったから入り口は開いていたが――
「大丈夫だぉ。中にはいってたら明るくなっても追い出されないぉ」
「だそうですよぉ」
「みなでボスのところまでいくぞいっ」
「え?」
「わぁ〜い」
「俺のゴミファイアーをお見舞いするぜぇ」
「DEX低すぎて当たらないに1G」
鋼のおっさんがタンク。ココットがヒーラー(ゴミ)。
俺、魔法使いのニュータイプ、弓職のもっすん、同じく弓職のマックの四人で火力(ゴミ)を担当。
その後1時間掛けて、ウンディーネの代わりに新たに配置されたボスを撃破するのであった。
尚、しびれを切らしたアオイがボスに噛み付いたことで倒せたのは言うまでも無い。
ステ再振り期間中、こういうイベント企画があったなーとか思い出しながら。




