↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/137

暗闇に蠢く

奴らが出て行ってからどれくらいの時間がたっただろう?


馬の背に乗っていた時間も相当だったし、墓所から通算すればかなりのものだ。

夕方?夜?昼じゃなさそうなことはなんとなく体感でわかる。



ビ、ビリビリビリ…


針金も重ねればそこそこの強度だ。狭い袋の中での作業は困難を極めたが、それでも麻袋はついに白旗をあげた。


「ぷはっ!麻袋越しじゃやっぱ息苦しいな…」


袋から出た僕が最初にしたのは新鮮な空気を思いっきり吸い込むことだ。

打撲もたんこぶも再生されている僕に身体の損傷はない。


明かり一つ入らないここは本物の暗闇。それは逆に内部の明かりも漏れないことを意味している。


幸い麻とは着火材に最適な素材。僕は破いたほつれ目から少し解すと火打石を打ち始めた。


「深呼吸が出来るってことは空気はあるってことだ。つけ!つけ!」


カッ!カッ!ポッ…


「!」フー…フー…「ついた…」


ろうそくに火を灯すと、先ずは地下室の様子を確認する。


積み上がった木箱…

うん?これは…


「…ランスのブレード…ハルバードのブレードもある…」


なるほど。王城から持ち出した武器をここで溜め込んでるのか…


「革まで…」


革は防具などにも使われるものだが、採取に限りある以上小国ではやっぱり重宝される。目ざといな…


「ん?なんだこれ」ペロ「こ、胡椒…!」


保存料にも薬の資材にもなる稀少な香辛料、それが胡椒だ。

神殿では調薬のため常に一定の備蓄を維持しているが…それでも木箱一箱なんてあり得ない。せいぜい小さな引き出し一つ分くらい。それほど貴重な素材だ。


遥か彼方西方の大国から特別な経路で運ばれてくる胡椒…。その価値はなんと!金や銀にも匹敵すると言われている。


「確かに軍にも遠征用の備蓄割り当てがあるって聞いたことあるけど…」


こんな大量の割り当てあるか?遠征用にしちゃ多すぎるだろ。

つまりこれには何らかの不正な操作があったとしか考えられない!


「なるほど…。これなら大きな恩が売れる。小国程度ならどうとだって出来る恩を…」



だけどこれらは鍛冶場で管理する武器類とわけが違う。王城の備蓄保管庫なんて兵や武官の立ち入るような場所じゃない。

これには備蓄帳簿に携わる文官、もしくは上に顔の利く誰かが関わっているはずだ。


「王妃の私兵に可能とは思えない…」


ここは多分フォルスト侯の弟が管理している投資商会の倉庫だ。

だけどこの国において、大きな交易をおこなう商会には監査が入る。


「だからヤバイ品目だけはいつバレないよう地下に隠してるのか…」


「けどなんか腑に落ちない…」


フォルスト候は北の辺境伯に及ばないまでもなかなかの軍師だ。

だけどそれは戦術という意味においてであって、彼は商売人でじゃない。そのフォルスト候がこんな手の込んだこと考えつくだろうか?まだ強奪とかのほうがしっくりくる。


裏に辣腕な参謀の存在を感じる。

誰かフォルスト侯の周辺に、彼を唆した知恵者が居る…


待てよ…

背後で暗躍する知恵者…

王宮の上に顔の効く…


「ま、まさ、か…」


投資の商会を立ち上げたのは二年前…

二年前、それはアルトゥールと婚約した神子を排除すべく、エマニエルが王城に入り浸り始めた頃じゃないか!


僕はこの誘拐にエマニエルの声を聞き、てっきり庇護を求めたエマニエルが王妃の父にすりよったのだと思ったけど…


「もしかして二年前からとっくに繋がってたのか…」


なんか読めてきた。



武器の横流しは以前から行われていたことだ。

これはフォルスト侯の立場を利用したほんの小遣い稼ぎに過ぎないだろう。そもそも鍛冶師の労力から考えて多量の横流しは不可能だろうし。


けどこの胡椒は見逃せる量を越えている…。これは西方の大国から取り寄せる時点で水増ししていると考えた方がいい。



王子の恋人として王妃に紹介されたエマニエル。

エマニエルの家は領地を持たない官吏貴族。仕えている上位貴族もこれといって目立たない、序列の低い伯爵家だ。

何故知ってるかって?神殿に勤める際、紹介状を持参しているからね。僕は元雇用主だ。


エマニエルはいつだって後ろ楯を欲しがっていた。


顔繋ぎの言い出しっぺがエマニエルなのか王妃なのかはたまたアルトゥールなのか、それはわからない。


けどフォルスト侯に取り入るため、武器の横流しを知ったエマニエルは「もっといい策がある」とでも言ってこの計画を匂わせたんだ。武器より儲かり他国に恩を売れる《《商材》》を。

ここの要点は匂わせる、ってとこね。あくまで首謀者にはならない。それがエマニエルの処世術だ。


お、恐るべき頭脳…

今更ながら、エマニエルとアルトゥールの王朝にならなくて本当に良かった…。よくやった自分!




さて、フォルスト候がオジーを狙う前にここを抜け出したいところだが、どこに扉があるかもわからないこんな地下からどうやって逃げ出すか。

実は僕にしか出来ない脱出法がひとつある。


危険極まりないため気乗りはしないが…この際仕方ない。


ろうそくを灯していた時、細い煙が一定の方向に流れていくのを僕は確認している。

多分そこが空気の取り込み口で、そこは外部に繋がっていて、もっと大量の白煙を奴らに届けるはずだ。

この建物の外に居るだろう見張りに!


僕の考え…もうわかったかな?


全部消し炭にしてやる!


僕も含めてだけど…









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。