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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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神の意思

せっかくここまで来たってのに…フォルスト候をなんとかしなくちゃ東の宮廷は変わらないじゃないか!


オズヴァルトの国を作るためには今!ここで!僕がなんとかしないと!


だって、きっと一番自由に動けるのは僕だから。



『ウーリ、一度聞きたかった。君は何故それ程までに犠牲的なのだ』


結局神殿まで付き添いながらオズヴァルトが口にした言葉。


犠牲的?見当違いにもほどがある。僕ほど自己主張の激しい人間はいないってのに。


ただ僕は神に与えられし力を有効に使っているだけだ。

そうしたらこうなった。犠牲的…の意味がわからない。


僕はウル様に助けられて今ここにいる。

もしエミルのままだったらこんなことは始めなかったし考えもしなかった。


「…そうしたらオジーのことも助けられなかったんだよね…」


それを考えると多少の犠牲を払ったって概ね満足してる。



『神は何故やり直しの生で君に再生の力を与えた…、神子ウルリッヒでなく、ただの世話係であるエミルに…』


神殿内の、今もそのまま残されていた私室で身体を横たえると、意識はうつらうつらと夢に誘われる。


オズヴァルトの言うことなら僕だって繰り返し何度も自問した。


どうして神様は僕に再生の力を与えたのか…

どうして神様はウル様と僕を入れ替えたのか…

どうして神様はあの時点からやり直しを命じたのか…


どうして神様は僕の私物だけ前世軸から持ち越しさせてくれたのか…


やり直しはウル様とアルトゥールの婚約式直後。


だから僕は、神様はアルトゥール、いや、王家との繋がりを断ちたがっているんだと、そう考えていた。


同日同時刻に同じ屋敷で生まれた運命の半身。

そのウル様と僕の違いはなんだ。

大前提として僕はウル様ほど善慈悲深くない。敵と味方は常に明確だ。


まず赤の他人である僕はリンデン家への思慕がない。

そして庶民の僕はナンナー家に奉じる気持ちが無い。

なにより…あのウル様を知ってる僕には王家に対する敬意が無い。



ウル様が救いの王子様を待つお姫さまなら、僕は危険を顧みず自ら飛び出す不敵な挑戦者。

ウル様がおとぎの国に住むウサギなら、僕は用意周到に次の手を考える野生の獣(は、言い過ぎかな?)。


だからその結論に達した。

神は現王家を破壊するために僕に神子の力と地位を与えたんだって。


全ては神のお導き、それを信じここまでやってきたのだが…



だけど何か忘れてる気がする…何を?


そう、ぼんやりとした果てしない暗闇で僕は誰かの声を聞いた気がする…

誰の声…何の声…あれは何て言ってた?


『さ…』


『せ…』


『さ…せ…』


『再生せよ』


ガバッ!


「なんで忘れてたんだ僕は!」


そうだ!

確かにあの時そう聞こえた。ウル様に癒しを与えられ、僕たちが入れ替わるあの奇跡の狭間で!


今まで忘れてたのか、それとも忘れさせられてたのか。


なんにせよ僕はいつの間にかあの言葉の刷り込みにより、神の国の再生こそが僕の役割なのだと無意識に思い込まされていたようだ。


自分の行動を深く考えたことはなかったけど…

オズヴァルトにはそれが犠牲的に映っていたんだろう。


「危ないところだった…」


僕は小賢しさには定評のある男。

誰かを操ることはあっても操られるなんて…僕のプライドが許さない.


たまたまここまでは謎の声と利害が一致していたからいいものの…、ここからは注意していこう。


相手が神様であれ利用されるのは真っ平ごめんだ。

悪童エミルの名にかけて!


「それにしてもあの声は誰の声だろう?」


奇跡の狭間で聞こえた抑揚のない声。まるで人じゃないみたいな…


古の君主か、それとも……神バルデルス?

…まさかね?


あれが神バルデルスなら、神はナンナーに奇跡の力を与えて君主一族を救っておきながら、今度はその力で王家、すなわち君主の子孫を消せと言っていることになる。

矛盾してないか?


ウズウズウズ…「ダメだ!今すぐ話したい!」


僕は謎を謎のまま放っておけない男だ。

それに僕の無茶が犠牲的行動じゃなく神の命令だって解ればオズヴァルトも少しは納得してくれるだろうか。


外はまだ明けきらない早朝。少し薄暗いけど僕は真夜中の墓所だって全然平気だ。

こっそり抜け出す神殿の裏口。森を突っ切って目指すのは王妹宮。


「こんなことなら言われた通り泊ってけば良かった…」


それにしても古の君主ってどんな人だったんだろう。

どこでどうねじ曲がったらこんな王家になっちゃうんだろう。


もしかして神様も目論見が外れたのかな?

大体ナンナーへの罰にしちゃ怒りが甚大すぎだろ。

何千年も神子を犠牲にし続けるなんて…執念深いな神バルデルス。


ピタ


待てよ…、エドは言ったじゃないか。奇跡は双方向だって。


エドが発見した僕の延命方法…


…本来なら過去の神子にも救済の道があったのだとしたら…

神子の短命は神にとっても不本意なものだとしたら…


何故、いつからそれは歪んだのか。


そうだよ!神は万人に救いを与えるもの。

待っていたんだ。王家は、始祖の子孫は必ず道を正すと。


でもそうはならなかった。


「だからついにやり直しを決めた…」


王家やナンナーに染まらない傍系。

〝道を外れた神子”は背中にエミルを、同じ日同じ時間に生まれた魂の片割れをくっつけていた。


神子とは神の使い。神の意思を汲み神の声を聞く者。


「今までの神子じゃダメだったんだ…」


彼女らは総じて自我が無かったから。




だけど僕の思考はそこまでだった。何故なら気がついた時には麻袋の中に放り込まれていたのだから。









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