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やり直しの神子は長生きしたい  作者: kozzy


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変化の日々

数日後、第二妃と同じく陽の気をまとったループレヒト第三王子だが、彼は足取り軽く北の辺境へと旅立っていった。


この国アードラスヘルムではそれなりの齢、つまり高齢になれば王の健康を優先し退位が認められる。

オズヴァルトとループレヒト王子は十三歳差。オスビーが六十になっても第三王子はまだ四十代。むしろもっとも脂ののった頃だろう。

北のグリムバッハ辺境伯が手塩にかけた王子は立派な王となるに違いない。そうして今度は彼の系譜が王家を守っていくのだ。


方や第四王子。

彼は第二王位継承者となるが、今や平和となったこの国で彼の出番はないと思われる。

ほらぁ…、僕が居る限り王や王子の健康は保証付きだからね。


第三妃に似たどこか大人しいロタール王子に丁々発止の政はどう見ても不向きだ。

なので僕は彼ロタ王子を、いずれ教会の長、大司教になるよう導いてあげたいと思う。


古の世では親族だったはずの王家と教会。これがほんとの〝手を取り合う”ってやつだよね。




今や平和…それの意味するところだが、きっと忘れられているだろうが、アードラスヘルムは南の小国からも小競り合いをけしかけられていた。覚えておいでだろうか?フォルスト候が守っていた南の国境ね。


アードラスヘルムはもともとあまり相手にしていなかったのだが、ここに来て南の小国は思いがけない波及効果で一切の手出しを取りやめ撤退していった。


それは大国アードラスヘルムと、同じく大国である皇国レスプブリカの和平による結果である。

和平といっても決して同盟を組んだとかいうんではないのだが、小国からみればこれだけで十分脅威だ。


その和平条件である巨神の像は巨神の住みかに景色のよく似た岩山の麓に設置された。


隣に設えられたのは祈りを捧げるための質素な教会。

ここにはアードラスヘルムの教会により審査された、危険な思想を持たぬと認められた、比較的小柄な皇国の司祭が一人、身の回りの世話をする二人の侍祭と共に駐在しているそうだ。


報告を持って来たのは神子に一目会いたくて使いをかって出た、中央バルデルス教会の助祭さま。


「皇国の司祭かぁ…どんな方?」

「そうでございますね。教えは違えど信仰に身を捧げる者。我々と変わりはございませぬよ。ああ、ですがやはり皇国の民。比較的小柄といっても私よりこぶし二つほど大柄でございましたが」


…この助祭さまはそれほど大きくないから…こぶし二つ。騎士クリフトフより少し大きい位か。


当面、北の辺境以外の地で活動を認められる皇国の民はこの司祭たちに限られている。

なにしろ何千(皇国になる以前ね)何百年(皇国ね)争い続けた因縁の国だ。いきなり友好…とまではいかないのが道理だろう。


「あとは長い年月をかけ、ゆっくり相互理解を進めるしかないのだろうな」

「そうだよねぇ…」


けれど皇国の猪突猛進、単純筋肉はなにも悪いことばかりではないのだ。現にあんなフォルスト候にだって多くの友人がいたしね。

皇国の性質は見方を変えれば愚直でひたむき、おおらかで勇ましいとも言えるのだから、よく見知ればきっと分かり合えると信じてる。


「司祭たちの様子はどう?」

「まだまだ布教とまではいきませぬが巨神の教えに興味を示す者も皆無ではございませんね」


巨神の教えでは〝身体への苦痛や困難に耐えることで精神的な力を得る”と信じられており身体修養が基本となる。


「だからこそ皇国の民はあれほど勇猛なのだな」

「うーん、間違っちゃいないが解釈が浅いというか…けど確かに鉱山で採掘しているタイプの人は興味持つかもね」


なんにせよ彼らが住むのは争いなど遠い何処かのおとぎ話…ぐらいの認識しかない田舎の山麓。

彼らは司祭の聖職者らしからぬガタイにビビってはいるが、司祭たちの安全は王と大司教の名のもと命じられている。それなりに折り合いをつけうまくやっているようだ。


また巨神の像が受け入れられている一因にはエマニエルの作戦も功を奏している。

なにしろエマニエルときたら、北と東の山岳路をあの捕虜たちの手で、和解の証と銘打ち大っぴらに整地させたのだ。


北辺境を長年孤立させてきた西と東に続く険しい山岳地帯。そこに何か月もかけ馬車道を切り開いたのが皇国の兵、という事実は両国の大きな変化を印象付けた。


「くっ!僕の案より正統派…」

「ははは、ウーリは神子の奇跡に頼りすぎる」

「…」ズーン


返す言葉もない。エマニエル、悔しいが負けたよ…



少しづつ始まった交易により、皇国からは〝ピスタチオ”と呼ばれる美味しい豆が運ばれるようになっている。

栄養価の高いピスタチオは皇国の兵糧として使われていたそうだ。

ほのかに甘くほのかに香ばしい、ナッツに似ているけど食感の違う緑の豆。貴族の間では酒のつまみに大好評だという。


もう一つは〝カフィ”。これは今まで見たこともない真っ黒な飲み物だ。なんでも『皇国の秘薬』と呼ばれる飲み物とかで、貴族や聖職者しか飲むことを許されていなかったものだとか。(飲むと目がさえるんだって)


「飲んでみるかいウーリ」

「どれどれ…うげ…」ダバダバ…

「ああすまない。砂糖を忘れていたよ。ほらこちらをもう一度」

ゴクゴク「甘苦い…」

「どうだい?」

「うーん…オイシイデスヨ」


果実水でいいかな。







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