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(嫌がらせも家と12号館では無い…。)
12号館はそもそも行く回数自体を減らしていたから参考にならず、家はこの辺りに住んでいるか招待がなければ大通り以外に立ち入る事はできない。
(それがあってみんなを家に招待できないんだよなぁ…。)
同じことを何度も巡りながら考えていると、花が1つ2つと光り出した。
3度目ともなると作業にも慣れてきて戸惑うこともなくあっという間に集めて配る準備ができた。
玄関の内側で待っていると足音が聞こえてくる。
しかしその足音は小さなブラウニーズたちにしてはあまりにも大きくそして足を引きずるような音だった。
重たいノック音はいつもブラウニーズたちが訪ねてくるカウンターがある窓の方からでは無く、玄関から聞こえる。
(こんな時間に人?)
何かがおかしいと感じる間もなくそのノックはどんどんと強くなっていく。
彼女もその異常さに気づいたのか扉の方を凝視している。
ノックと呼べる程度だったそれはいつの間にか扉自体を破壊しようとしているのではないかと思えるほど強く重い物に変わっており、恐怖で体が震える。
その様子を察した彼女が近くに置いていたブランケットを頭から被せられた。
そして今更ではあるが家の灯りを全て手の一振りで消した彼女に手を引かれる。
引っ張られるがままについていくと台所横のパントリースペースに押し込まれた。
この部屋は彼女のテリトリーのような場所なのであまり入る事はないが、窓もなく両壁にある棚の他には人1人が行き来できる程度の通路しかない。
その通路の1番奥まで押されるがまま入って行くと肩を下に押されその場に座ような形になった。
ブランケットの上からさらに何か大きな布を被せられて、ただでさえ暗くてあたりがほとんど見えていなかったのに完全に周りが見えなくなる。
被せたものの上から彼女がギュッと抱きしめてくれる。
それは言葉を発さないが彼女なりにここにいれば安全だと安心させるような動作だった。
そして体が離れる感覚がするとすぐに扉が閉まる音。
被っているものを隔てても扉の向こうからまだあの音が聞こえる。
両手で耳を塞ぎ、目をギュッと閉じる。
それでも聞こえる音に小さく体を震わせ手に力が入る。
(お願い行かないで、そばに居て…。)
一瞬足元からティーが広がっていく感覚があったが、今何が起こっているかわからない状況でティー動いて欲しくなくて近くにいて欲しいと願った。
広がった感覚から、耳を塞ぐ手や震える体にまとわりつく感覚に変わったがしばらくすればそれも無くなった。
どれくらい時間が経っただろうか。
一呼吸するのにも長い時間を使っているように感じられ、汗が額から頬を伝うのがどの動きよりも早く感じられる。
今聞こえているのは扉を叩く音なのか自分の心臓の音なのかもわからなくなるほどの緊張。
「ミリア!!」
聞き慣れた声と共に扉の開く音。
被っていたものを剥ぎ取られる。
「…姉さん。」
息が上がり心配と驚きが混ざった顔をした姉さんがいた。
「もう、大丈夫よ。」
そう言って表情の柔らかくなった姉さんは頭を撫でてくれた。
その顔を見てやっと息ができるようになった気がした。
少しの間そのままでいたがやがて立ち上がりパントリーを出る。
これほどまでに時間感覚が狂うのは恐怖からきたものだったのだろうか。
外はすっかり明るくなっており、家の外では複数人の声が聞こえる。
「…何があったんですか?」
今室内には誰もいない。
今のうちにいくらかでも情報入れておきたかった。
「深夜にこの家に無理やり入ろうとした人がいた。危険を察知したブラウニーズが救難信号を上げて助けを求めた。かけつけた警備隊が捕まえたけど、住人の安否を確認しようとしたところブラウニーズが建物内への侵入を拒否。そこで最後に住人以外でここにきたことのある私が呼ばれて今にいたる。以上。」
おおよそ何があったか把握できた。
「ありがとうございます。」
「いいのよ。」
最近、いろいろなことがありすぎてこの後のことを想像できてしまう。
おおよそのことは彼女から伝わっているだろうが、家主という立場から事情を聞かれるだろうと思い玄関の方へ向かう。
「ミリア、ちょっと待って。」
玄関を開けようと手を伸ばしたところで姉さんに肩を掴まれて止められる。
「外は結構悲惨な状態だから覚悟して、準備ができてから出ましょう。」
そう言われて伸ばしていた手を一度おろす。
深呼吸を2度3度と繰り返して昨夜のことを少し思い出す。
その事でまた少し体が震えたが今はすぐ後ろに姉さんがいる。
それだけで安心できて震えが止まった。
もう一度手を伸ばし、扉をゆっくりと開ける。
開けて入ってきた風に乗って生臭さと鉄臭さを感じて顔をしかめる。
次に感じたのは濡れた土の臭い。
目に入ってきたのは荒れた玄関先に所々黒く変色した地面。
扉が開いた際に何かを引きずったのだろう赤い線が無数に残る。
何かを踏んでしまわないように慎重に、しかしそんなことも気にできないほど散乱した場所に足を踏み出す。
いつの日か彼女と一緒に植えた植木鉢の破片を踏む。
幾度も踏まれもうすり潰されたようになってしまった花の苗を踏む。
誰かが出てきたことに気づいて声をかけるが、その声に反応する前に振り返る。
叩き続けて暴れて、手当たり次第にその場にあるものを投げつけて。
散らばったものを踏み足を負傷しても、手が潰れてもなお力の限り扉を壊そうと暴れ続けたのだろう。
血まみれになりボロボロになった玄関扉。
壊れなかったのは奇跡か、それとも家を守るための理解できていない力が働いたのか。
「君、この家の子?」
驚いて止まったままでいたところに後ろから声がかかる。
「はい…。」
「怪我は?」
「ありません。」
「それならよかった。一応あなたからも話を聞きたいのですが…。」




