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アニミ物語  作者: カボバ
冬祭り編
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86/419

14





「さて、本題の買い出しね。」


姉さんとギルドを出て賑わうマーケットの集まる通りへと移動した。




「ミリアどうしたの?」


前を歩く姉さんが振り返る。



「なんか人に見られてる気がした…。」


ジッと見られていると言うよりは今にも襲われるのではないかと言うような危機感を感じる。




そう考えが至ると足元の影が波打つ。



周りを見回してみるがよく賑わうマーケットだ。


自分だけを見られていると思ってもその正体が見えない。



その瞬間背後で影が覆うように立ち上がり、その影の壁に何かがぶつかった。




そして少し離れたところで悲鳴があがる。



「ミリア、どうしたの?」


状況を理解できない姉さんも影が動いたのは見ていたらしく問いかけてくる。


少し離れたところで人が倒れていてその周りには人だがり。


さらに怒号のような声も聞こえる。




「行ってみましょう。」


姉さんの手を引いてそちらに向かうと、知らない男子学生が複数の店の人たちに地面に押し付けるように抑えられている。



その男子学生の足には影が巻き付いている。




「俺は何も知らない!何もしてない!!」


「何言ってるんだ!店の商品を手に取って投げただろうが!」


店の方を見てみるとどうやら野菜を扱う店のようだがこの騒ぎでかなりの品物が地面に落ちている。



(それにしてもなんでこんなに焦げ臭いんだろう…。)


近寄ってみて最初に感じたのはその場の雰囲気の異様さでも投げてきた相手への怒りでもなく、その場に漂う異様な臭いだった。




その周辺にはその場で焼いた食べ物を売っている店は無く、なおかつ強く感じた臭いはほんの数秒でかなり薄れている。




「お嬢ちゃんたち怪我はないかい?」


そう声をかけてきたのは野菜を扱う店の別の従業員だろう。


影から手のひらに飛んできた物を出せば手に余るほどの立派なトマトだった。




「大丈夫です。」


そう言いながら声をかけてくれた従業員にトマトをかえし、取り押さえられて身動きのできない男子学生の足元の影を離すように念じる。



「この人に見覚えは?」


後ろから姉さんが聞いてくる。


取り押さえられた男子学生は取り押さえられたまままだ抗議の声を上げている。




「知らないですね。そもそも交友関係が狭いので。」


「そうよね。私が知らないミリアの知り合いはいないわよね。」


姉さんのことは信頼している。


これまでに起こったことも一部を除きできる限り報告しているし、お昼に迎えにきてくれた時にクラスメイトとも顔を合わせた。



(ユイトさんのことは言ってないけど、今は関係なさそうだし…。)


そのことについては機会を考えて姉さんの機嫌がいい時にでも話そうと決めた。




何はともあれ怪我はなかったし、店の人の機転でその場はこちらでなんとかするから離れたほうがいいと言われた。


その言葉に甘えることにして足早に2人で足早にその場を離れる。






マーケットから少し離れた場所までやってきた。


建物に囲まれたここは、この街にはいくつもある隠れた憩いの場と言うところだろう。


中央に大きな木、それを囲むように背もたれのないベンチが置かれている。



「なんだったんですかね?」


「さぁね。私にもわからないわ。」



騒ぎからは十分離れたが、そもそも物を投げられるようなことをした覚えはなく心の中はざわついたままだ。



この場所は狭い隙間から風が吹き抜けとても心地よい。


ここ数日の騒がしさと今の騒動が追い討ちになって余計にそう感じるのかもしれない。


姉さんの方を見れば、目を閉じているが顔は空の方を向いている。




(同じくらいかそれ以上に疲れてるんだろうな…。)


申し訳ない気持ちになった。




しばらく静寂の空間を堪能していると、足音はしないがカラカラと甲高い金属の触れ合う音が近づいてきた。


音のする方に視線を向けると1人の女子生徒がこちらに向かって歩いてきていた。



「ワマさん、いえヒグルマ様。何かご用ですか?」


姉さんが向かってくる女子生徒にそう声をかける。




女子生徒は腰に下げていたカンテラを持ちこちらに向けてきた。


そのカンテラの中には火が灯っているが、その火がとても不思議だった。



火はあるのに根本にろうそくもなければ、油を供給する芯もない。


火だけが浮かんでいる。




カンテラを思いっきり振ると中の火が轟々と燃え上がりカンテラから溢れ出す。




その火が3人を包む。


目の前が眩しく瞼を開けていられないほどの明かりに包まれたかと思うと、すぐに瞼越しにもわかる明るさは収束した。





「…トラブルは早めにどうにかした方がいいと思うよ。」



 

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