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そしてティーパーティーのクラブハウスの前で降ろされる。
「手紙に書いていたことは覚えているね。最初の感動は1人で。もし作り変えたいところがあったり、花の加工をしたくなったら私かスミレさんに連絡を。」
「ありがとうございます。」
そう伝えるとアダンは行ってしまった。
中に入り自分の部屋を目指す。
5階まで上がってくると今日は天気がいいためだろうか廊下の窓はロールカーテンが降ろされていて、いつもより少し薄暗く感じた。
扉の前に立って一呼吸。
扉を開ける。
目に飛び込んできたのは赤、絵の具でも花でもない木の赤い色。
腰壁と家具と新しく追加されたテーブルの天板が同じ色の木材で作られている。
奥の壁一面に造られた棚には端の方にティーセットが入っている場所だけ戸がありその他の場所は棚が見えるように造られている。
最初からあったソファーとテーブルも部屋の中に馴染んでおり、床には鮮やかな模様の大きなラグが広がっている。
ティーセットは白に花の模様が入った磁器と招待状として受け取った夜空のような色合いの物と2セット。
それから色々な道具も一緒に置かれているがお茶の淹れ方などはわからないことの方が多く、もちろんここに置かれている大半の物が使い方もわからない。
小さなキッチンにはリボンのかかった紅茶缶とドレスを着た女性の形をした小さなベルが置かれていた。
紅茶缶は一緒に置かれていたカードから姉さんからのプレゼントだという事がわかった。
(あとでお礼を言いにいかないとね。)
そう考えながらベルを一度鳴らしてみる。
するとすぐにコンコンと扉がノックされた。
扉を開けるとそこには同じ身長くらいのブラウニーズが立っていた。
ペコっと音がしそうな動作で頭を下げるその姿はパンツスーツにエプロンをしているどこかチグハグな見た目だった。
「お茶を淹れてくれますか?」
そうお願いするとパタパタとキッチンの方に向かって行った。
棚の中からあれやこれやと準備していたが、振り返りこちらを見ながら両手に持ったティーカップを掲げた。
「白い方でお願いします。」
その動作はどっちがいいかと問う物だというのは家にいる彼女と同じだった。
ソファーに座りなんとなくキッチンの方を見る。
手際よく行動するその姿は家にいる彼女より幼くミチカたちの寮でみた子たちより成長している。
(ブラウニーズにも色々種類がいるんだなぁ。)
そういえばこのクラブハウスの外にいる男性の姿をしたブラウニーズ以外にはまだ男性のブラウニーズを見たことが無いなぁなどと考える。
小さな電気コンロに真鍮製のケトルで湯を沸かし始めたところでキッチンから目を離しベランダの方を見る。
数日前まで何の飾り気も無かったベランダも足元にはウッドデッキになっていてすでに花を咲かせた植木鉢が3つと折り畳める机と椅子が隅に置かれている。
(壁に家具にウッドデッキまでを数日で…。)
それだけの作業量をアダンとティーだけでやったのだろうか、それともそういう作業をする専門の作業員が入ったのだろうかなどと考える。
(確か材料費と工料は勝手に引き落とされることになってたと思うけど…。)
そういう書類にサインした記憶はあるが、果たしてこれほどの仕上がりにいくらかかるのか。
怖いけど忘れないうちに確認しようと心に決める。
そうこう考えているうちにほのかに甘い匂いが漂う。
目の前のトレイテーブルに置かれたカップには綺麗な橙色の澄んだ紅茶が入っている。
「ありがとう。またよろしくね。」
紅茶を淹れてくれたお礼を言うと、またペコっと頭を下げて部屋から出ていった。
しばらくその色を楽しんだあと一口口にすれば紅茶の味とオレンジの香りが広がる。
(姉さんらいしいなぁ。)
普通の紅茶ではなく乾燥したオレンジの入った茶葉を贈ってくれた姉さんらしい人柄の現れるものだった。
カタカタと窓枠が揺れる。
外で強い風でも吹いているのだろうか。
そんな事を考えているとまた扉がノックされる。
また扉を開けると先ほどと同じエプロンをしたブラウニーズが手に持ったものをこちらに差し出しながら立っていた。
「ありがとう。お客様は私が迎えに行くから今出してるカップを片付けて2つ、やっぱり3つ新しくお茶淹れてもらえますか?」
差し出された封筒を受け取りそうお願いするとすぐに部屋の中に入り飲みかけのカップを手に取りキッチンに向かう。
それを見てから部屋の中からベランダへと出る扉を開ける部屋の中に残っていた紅茶の香りが外から吹き込む風と混ざる。
扉が閉まらないようにストッパーをしてから部屋の中に戻り、そして廊下に出る。
そのまま一階まで行くとエントランスにコウヤが居た。
「来てくれてありがとう。」
「こちらこそ招待、ありがとう。」
そう言いながら差し出された紙袋は手土産に寮のブラウニーズが作ってくれた焼き菓子だと言う事だった。
「ありがとう。これを取りに一度寮に帰ってから来たの?」
12号館で別れてからしばらくの時間が経っている。寮によってからでもまっすぐ来たにしては随分と時間が経っている気もする。
「それもあるけど、この街の停留所で降りると目と鼻の先が飛行士のクラブハウスだからひとつ手前で降りてそこから歩いてきた。」
停留所1つ分歩いてきたと言うことは20分以上歩いてきたことになる。それを長いとするかその時間で心の整理を改めてするためにちょうどよかったのか。
「かなり歩いた後に申し訳ないけど、私のティールーム5階なんだ。」
「大丈夫だ。それにしてもほとんど一本道だけど迷路だな。」
「慣れれば楽しいもんだよ。」
そんな話をしながら5階まで上がる。
相変わらず廊下の窓はブラインドが降ろされていて、時よりどこからか流れてきた風でほんの少し揺れている。
「ここが私のティールームだよ。まだほとんど何も無いけどどうぞ。」
そう言いながら部屋の中に招き入れた。




