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アニミ物語  作者: カボバ
入学編
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40/419

39




今日も同乗は断られ1人で家に帰ると、彼女が2階の扉から手招きしていた。



玄関から入らず、外階段を上がる。


そこから真っ直ぐ中に入ると、先週植えたばかりの植木鉢には小さな木が植っていた。



「もうこんなに大きくなったの?」


そう彼女に問いかけるとニッコリうなずいた。



いろんな工程をすっ飛ばして植木鉢に植っているその木の高さは手のひら2枚分ほどしかないが、大きな木をそのまま小さくしたように枝を伸ばしており葉は青々と茂っている。



「もうすぐ花が咲くの?」


よく見れば歯の生い茂る間に花の蕾が見える。


花の蕾だけは木の大きさからすれば随分と大きいようだ。



彼女が指を指す。


その先にあるのは時計、目線が時計に行ったことを確認してその指を少し動かす。


下から上になぞるような動き、何を伝えたいのかと考える。



(今6時だからそこから下から上に…。)


「今夜咲くの?」


そう聞くと彼女はまたニッコリと笑った。



「よければ今日、ちょっと夜更かしして咲くところを見てもいい?」


些細なきっかけから手に入れたものだが、せっかくなら見てみたいという好奇心が出てきた。



その言葉を待っていましたと言わんばかりに彼女は部屋の反対側の奥を指差した。


そこにはどこから出してきたのか大きなクッションをいくつも置きその上にシーツそして猫足の小さなテーブルとまだ火の入っていないランプが置いてあった。



「準備はバッチリだね。」


でもまだ日も暮れてない時間なので、一度部屋を後にし普段通りの生活に戻る。





お風呂を済ませ夕飯をとり、課題をしならがのんびりとした時間を過ごす。


とっくに寝る時間を過ぎた頃、彼女が袖を引っ張る。



部屋中の灯りを消し、彼女の持つランプの灯りについていく。


彼女の誘導で部屋に入ると星明かりでは到底部屋の中は見回せないほど暗かったが、あの植木鉢のあるあたりはぼんやり小さな光が見えるような気がした。


誘導されるがままクッションの上に座らせられ、暖かい飲み物を手渡される。


一口口をつけてみれば濃く淹れたストレートの紅茶は眠気覚ましを兼ねているのだろう。



飲み物が入ったカップを両手でしっかり持ったことを確認して彼女はランプの日を吹き消した。




真っ暗になる。


今夜は月が出ていないのか、遙上空の星の光を目で捉えられるようになるまでに随分と時間がかかった。



それだけでは部屋の中は全て見渡せるほどではない。


飲み物を啜りながら静寂を楽しむ時間が過ぎていく。


窓の外は何も見えない。


時より吹く風の走り抜ける音が聞こえてくるだけだった。



手に持ったカップの中身がすっかり冷めてしまうくらい時間が過ぎた頃、部屋の中に変化が起こった。



(花が光ってる…。)


なんとなくそこにあることがわかる程度に小さな光を内包していた花の蕾がゆっくりとその結びを開いていくようだ。


蕾の中から溢れ出た光が植木鉢を離れて宙を舞う。


その光は一つ二つと増えあっという間に数えられないほどに増えていた。



天井までゆらりゆらりと漂いながら上がって行った光は、そのまま天井に付いたかと思うとその場で花が咲いた。


天井いっぱいの花が咲いた頃、花びらが細かく砕け塵になり花のあった場所には種子のようなものが付いていた。



彼女が肩を叩いてくる。


花や種子の明るさで手元まではっきり見えるほど明るくなっていた。


彼女が差し出す底の浅い籠を持たされる。



カラカラカラカラと彼女が懐から取り出した大きなベルを鳴らす。


その音は朝起こしに来てくれる時に鳴らしているものと同じものだった。




その音が合図になったかのように実が落ち始める。


ゆっくりと落下する実は滑るように籠の中に入ってくる。


それは植えたものと見た目は同じだが、実の中心には赤や青など様々な色がゆらゆらとその輝きを瞬かせながら宿っているように見える。


最後の1つがカゴの中に収まると、その光が段々と落ち着き部屋の中が暗くなる。



ランプに再び火を灯した彼女がお茶の入っていたポットなどを片付け始める。



「これはまた植える?」


そう聞くと彼女は首を横に振った。




持てる荷物を持ち彼女がついてくるように促す。


1階に降りて暖炉に火をつけ部屋の中がほんのり明るくなる。


しかし何かするには灯りが足りなかったため彼女は部屋のメインの照明ではなく、間接照明をいくつか点けてまわる。


ソファーに座らせられて淹れなおしたお茶をわたすと、バタバタと何やら準備を始めた。



持ってきたのは小さな袋に細いリボン。


袋の中に3つ入れてリボンで結ぶ。


1つ見本を作ってくれたのでそのあとは2人で黙々と作業していく。





コンコン。



扉ではなくガラスを叩く音が聞こえた。


玄関の方を見ると、どうやらその音は玄関スペース横の窓から聞こえてきていた。


小走りで向かい窓に近寄ってみると小さな灯りが窓の外にいくつか見える。



窓の鍵を外し開ける。


外には初日の昼や姉さんの寮で見た小さな姿のブラウニーズが3人、小さなランタンを腰に下げこちらを見ていた。



「えっと、こんばんは。」


目をまんまるとさせてこちらを見ていたが、そのうちの1人がおもむろに外側に出っ張っていたカウンターに何かを置いた。




植木鉢に植えた白い石のようなもの。


残りの2人も続いて置く。



すると後ろから彼女が先ほどまで包んでいたものを差し出してくる。



「これを受け取って、こっちをわたせばいいの?」


そう聞くとにっこり頷いた。


別の籠も用意してくれたので、差し出された白い石をそのカゴの中に回収しリボンのついた袋を一つずつわたす。


すると外にいたブラウニーズはそれを大切そうにしまってから帰っていった。





3人の灯りが遠くなっていくのを見ていると別の方向から2つの灯りが近づいてくる。



どうやら今夜はお客様が続くようだ。





 

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