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アニミ物語  作者: カボバ
入学編
33/276

32





「このあとはどうする?」


そう話を切り替えたのはコナミだった。



「特に予定なし。」


真っ先に答えるユウガとその答えに頷くコウヤとテルマ。



「私はもし何もなければ1211号室で調べ物したいかな。先週までの授業課題一応もらって一通り目を通してみたんだけど、歴史の課題が教科書だけだとよくわからない部分があったから。」


「ミリア良かったら私がとったノート見せるよ。」


「本当に?」


「歴史の授業は教科書に書いてないことの方が多いから、一回の授業でどれだけその辺を聞き逃さないかが難しいよね。」


「ありがとう。」


そう伝えるとニャーとティーが返事をした。




「俺たちも課題するか。」


「そうだね。誰か数学の課題チェックお願いしたい…。」


「俺は語学チェックしてほしい…。」


こうやって各々の得意不得意を補い合うのは人数の少ないクラスのいいところだと感じた。


何よりこうやって会話するのが久しぶりすぎて感傷に沁みる。




唯一気になることといえばコウヤの口数が少ない。


ずっと飲むわけでもない栓を開けた瓶を揺らしながら時より振られた話に相槌を返している。






「ありがとう、大体理解した。」


ミチカのノートと補足の副教材でなんとか理解できた頃には4時間目も半分以上過ぎていた。



「ミリアすごい。俺は先生に2度質問しにいってやっとって感じだったのに。」


そう言ったのはテルマだった。


シロイヌは日の当たる窓辺でミチカのネコとユウガのキツネと一緒にまとまって寝ている。



「ミチカのノートが丁寧でわかりやすかったからね。ありがとう。」


「どういたしまして。ミリアは綺麗な文章書くわね。詩人でも目指してる?」


「そう言うのじゃないかな?強いていえば母親がそういうティーだったってだけ。」


「なるほどね。」


ユウガが大きなあくびを1つする。




「あー、煮詰まった。ちょっと隣で休憩してくる。」


「俺も行くー。」


「あっ、私もー。」


「ミリアとコウヤはどうする?」


コナミが部屋から出る3人を追いかけながら声をかける。




「片付けしてからいく。」


「俺も。」


本棚から取り出した本を持ちながら答えるとコウヤもそれに続いた。



「わかった。」


そう言い部屋の中は2人になる。



机の上はとりあえずそのままにして本棚から出してきた本を持ち、扉を開けて本棚のある方へ入る。


コウヤも同じように本を戻しているようで足音だけが聞こえる。


先に本棚に本を戻し終わったため机の上の片付けを始める。



(あれ、1本足りない…?)


筆箱にペン類を入れていくと先ほどもまで使っていたペンが一つ足りないことに気がついた。


周りを見回しても見当たらず、机の下も覗いてみたが見当たらない。




「どうかした?」


いつの間にか戻ってきていたコウヤが声をかけてきた。



「ペンが1本足りなくて、落としてないか見てた。」


「あった?」


「ない。もしかしたら間違えてほかの人のが筆箱に入れちゃったかもしれないね。」


「さっきまでみんな色々広げてたからそれはありえる。」


立ち上がりほかの荷物をまとめ出す。





「ミリア、聞きたいことがあるんだけど。」


「なに?」


「ノオギ先生が言ってたミリアが確定Sだって話。」


コウヤが言葉を止める。


静まり返った場に緊張感が走る。





「ミリアってもしかて…。」


「ミリア。」


聞き覚えのある低い声が部屋の入り口から聞こえてきた。


2人で振り返ると入ってきたのはタモンとその後ろにもう1人誰かがいるようだった。



「タモン先輩。」


「クラブの時間だから迎えに来た。」


「僕はついでに付いてきた!」



そう元気に言いながらタモンの後ろの人がこちらにやってくる。



「初めまして、新しい友よ。君が大空を翔ける能力じゃなくてとても残念だよ。」


そう言いながら半ば強引に握手しその手をブンブン振ってくる。



「僕は『ドラゴンライダー』のオベロ。クラブ飛行士の代表をやってます。」


ニコニコと笑顔が眩しい。



「もし君がどうやってか空を飛ぶことができるようになったらすぐに教えてね。」


「…その時はよろしくお願いします。」


半ば流されるように返事をしてしまった。



それに満足したのか、オベロはぐしゃぐしゃと頭を撫でてきた。



「大丈夫か?」


「陽気の暴力って感じの人ですね。」


「先輩はいつもあんな感じだ。」



タモンが先輩と言うということはプロフェッションの2年生と言うことか。と冷静に考えた。




「で、僕の本題はこっち。」


そう言いながらオベロは黙って立ったままだったコウヤの方へ向き直る。



「今日もクラブには来れそうにない?」


オベロは少し落ち着いた声でコウヤに問いかけた。




「…はい。」


コウヤは少しうつむき加減で答える。



「最初の日のことならもう気にしなくてもいいんだよ。アレにも僕からしっかり言ったからさ。」



「・・・・。」



コウヤは何も答えない。


その空気だけで何かあったのだろうと察することはできる。




「了解。もし、クラブに参加したくなったらいつでもおいで。」


「…ありがとうございます。」



その答えを聞いてオベロは小走りに扉の方に向かっていく。



「じゃあタモン、俺先に行く!君のところのもう1人の後輩君にもよろしくね!」


そう言い出ていった。




「ミリア、俺たちも行こうか。」


「はい。」


ほとんどまとめ終わった荷物を持ち影の中に入れる。




「コウヤ、みんなに言っておいてくれる?」


まだその場に立ったままのコウヤに声をかける。



「わかった。」


ハッとしたようにコウヤが言った。



「また明日!」


「うん。」


コウヤのことは色々と気になるし話も途中だったが、たぶん今は話せる状態じゃないだろう。


別れの挨拶だけして小走りでタモンについていく。

 




 

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