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姉さんが1221室の扉を姉さんが開ける。
「うわ…。」
思わずというべきか口から漏れる予定外の息に声がのってしまったたような声を姉さんが出す。
昨日座っていた席には複数個の箱や封筒が置かれている。
「姉さん、これは?」
「えっと、私の記憶では新入生をクラブに勧誘するための招待状よ。」
「クラブの招待状…。」
封蝋で蕾のついた花の枝がとめられた赤い封筒・木目の綺麗な細長い箱・革で丁寧に作られた筒状の箱・白い正方形の形で空色のリボンがかけられている箱・そして黒い封筒。
「見覚えのあるものから、全然知らないものまで来てるわね。」
「今すぐ開けたほうがいい?」
「いいえ、とりあえずノオギ先生が来るのを待ちましょう。」
とりあえず姉さんの言うことに従うことにした。
少ししてノオギ先生が入ってきた。
「おはよう、2人とも。」
「おはようございます。」
「おはようございます!」
「悪いがアズハ、今日も一日ミリアに付いてやってくれ。」
挨拶のを済ませると、教壇に持ってきた荷物を置きその上に青い毛の犬を置きながら言った。
「それから向こうにはもう連絡したんだができれば今日中、時間が取れ次第タモンにも早めに会うように。」
「ここにあるこれ以上にヤバい事があるって事ですか?」
姉さんは机の上に置かれた物を指差しながら言った。
「アズハ。今からしばらくの時間、驚く事があっても悲鳴上げるの禁止。質問は後ほど。」
そう言いながら犬のティーを姉さんの頭の上に乗せると、姉さんがウッと色々な言葉を飲み込むような声を出しながら了解の意思を手で示し最前列1番端っこの席に座った。
まだ理解できないがノオギのティーがきっと何かしらかの能力を使ったのだろう。
「さて、改めて。」
そう言いながらノオギがこちらに向き直る。
「まずこの学生証です。」
教壇に置かれた物の中で1番上にあるカードケースから透明なプレートを手渡してきたので、両手で受け取る。
「もう聞いているかもしれませんが、学生証は所属する学年によって色が違います。ですが、あなたの場合少し特殊な事情があって色はありません。」
透明なプレートはよく見れば中央に半透明の状態の物が渡された。
「昨日行った筆記試験とレポート、それから実技試験の結果を踏まえてクラスはS。引き続き私が担任として受け持つことになります。」
クラス分けの意味は視界の隅で目を見開いてこちらの様子を伺っている姉さんにあとから聞こう。
とりあえず担任が誰かわかっただけで一つ落ち着いた。
「それから住居なのですが、278が割り当てられる事になりました。」
淡々と言いながら教壇の上に置いていた四つ折りの紙を広げて見せる。
それは地図でノオギは時計で言うところの6時のあたり、限りなく湖に近いところを指差した。
「このあたりです。昨日アズハから説明があったと思いますが、こちら側一帯は一軒家の居住地区です。12号棟にはトラムで1時間ほどかかりますが、この辺りの居住者は家の前まで専用車を呼べるので遅刻する事はないと思います。」
先ほどの安心はどこへやら。
背中をつたうのは冷や汗ではないだろうかと余計なところへ思考が裂かれる。
「本来、新入生は1つ招待状がくれば優秀。2つ3つくれば超優秀と誰もが認めてくれたことになります。」
あそこで青ざめているアズハのように。とノオギが言ったので2人で姉さんの方を見た。
もう思考が追いつかないのかこちらを見ながら口をパクパクと動かし、頭の上の犬はそんな姉さんの額を前足でペチペチと叩いている。
「多くの先輩たちがあなたの能力に期待をし、私たち教員もあなたを高く評価しています。」
ノオギは私がいまだに両手で持ったままの透明なプレートに人差し指を置いて言った。
「ミリア、あなたを本年の成績優秀者及び特殊能力者として歓迎するとともに、これからその地位に見合った活躍を期待しています。」
脳内の処理が追いつかず放心しているうちに姉さんが動けるようになったようで、あれやこれやと質問している。
それにノオギは丁寧に対応しているので、あらかたの疑問はなんとかなった。
まとめると、能力が特殊すぎるため対応が難しい。
しかし本人が自主的に能力の使い方を開拓しているため、それならば変に手は出さず適切な環境を用意して見守ることになった。
現状学力も問題なく生活習慣や個人での学習も問題ないので、教養科目だけ落とさなければ卒業まで問題ないと判断された。
「結局のところ学園ではどうすればいいかわかりかねるから、自分の力でなんとかして欲しいって事ですよね。」
「期待していると言っただろ?私はミリアが将来、三役かそれに匹敵するくらい力をつけてくれると信じている。」
「私の可愛い妹分があんな化け物になってたまるかー!!」
「アズハも同級生から見ればそっち寄りだからな。」
「それは無理、本当に無理。」
「正直プレパートリーの間は授業よりもあちらの物事となんとか折り合いをつける方に尽力を尽くすことになる。」
そう言いながら机の上を指差す。
「どれから開けるかは任せる。」
豪速球同士の会話のキャッチボールが急にこちらに投げてきた。
「姉さん的におすすめは?」
とりあえず未知の領域にさっさと手を伸ばすのはやめておくことにした。
今更ながら各学年の名称とかその時読んでた本からなんとなく並びだけ間違ってないはずで仮称でつけてたのがあまりにもしっくりきてそのまま使ってる。海外学校ガチ勢とかに寝込み襲われないかとドキドキしたりしなかったりしてる。




