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アニミ物語  作者: カボバ
入学編
13/276

12




「先生!私の寮、男8人暮らしです!」


「知ってる。10人寮だから空き部屋あるだろ?」


「野郎ばっかりの寮にかわいいかわいい私の後輩を一晩放り込むんですか。」


「アズハが居て万が一が起こるわけないだろ?」



姉さんは男尊女卑ならぬ『女尊尊尊尊尊男卑』なところがある。




本人は男女平等と言っているがあまりに女子をあげ男子を下げるため、少し年上の子まで含めた同じ年頃の男の子たちが徒党を組んで喧嘩を売りにきた時に徒党のリーダー格の胸ぐらを掴み「お前らの何を尊敬すればいいのかわかりやすく教えてもらおうか?」と大声でもないのに血に響きその場に居た全ての子供に聞こえたその声は街中で数十人の子供が集まっているのに騒ぎ声一つ聞こえないと心配になった周囲の大人たちが様子を観にくるまでその場を凍り付かせていた。


姉さんが街を出る1年前の出来事で今なお街の中では伝説として語られていて、それゆえに男女平等の平和が大人から子供まで保たれていた。



「案内しているうちにブラウニーズをもう1人派遣して準備をさせる。だから今夜はよろしく頼む。」


「まぁ、何かしらの事情があるようですからいいですけど。」


話が終わったのがわかったように手のひらの上でくつろいでいた青い犬は飛び上がりノオギの肩に戻っていった。




「ノオギ先生はミリアがこれから3年間お世話になる先生だよ。」


そういいながら姉さんが背中を押して一歩前に踏み出させてくれた。



「改めてよろしくお願いします。」


「こちらこそ、言語学関係と生活指導を担当するノオギだ。君のティーに関するレポート読ませてもらった。大変興味深かったが、それもあっていろいろ話合わなければならなくなった。」


僕にもかまってーともうアピールする青い犬を両手で抱えなおし撫でるというよりこねくり回しながらノオギは言った。




「明日10時までに今日と同じ部屋にアズハに連れてきてもらってください。」


「わかりました。」



その言葉を聞いてノオギは建物の中に戻っていった。




「それじゃあ改めて行きましょうか。」


姉さんは仕切り直すように元気に言った。



「とりあえず、ここに戻ってくるから最後にする予定だったけどこの建物の紹介しちゃうわね。」


建物の方に向き直った。



「この建物は12号棟。午前中にテストを受けた部屋の番号は覚えてる?」


「1221」


「そう。この学園の施設はだいたい4桁か5桁の番号が付いてて、1221なら12号棟の2階にある1番の部屋ってことね。」


なるほどわかりやすい。そう思いうんうんとうなずいた。



「こんな感じで番号が振られてる建物は5から24までで、あなたがこれから来年の夏まで通うのはこの12号棟になるわ。」


そう言い終わると建物から真っ直ぐ続く道を歩き始める。


最初に来た時には乗ってきた馬車があったので見えておらず気が付かなかったが、少し建物から離れると小さな建物があった。


といっても柱と屋根があり壁はなく、その下に複数の看板とベンチがあった。



「こっちが学校行事とかお知らせが貼ってある掲示板ね。暇な時に見ておくといいわよ。そしてこっちが呼び出し盤。」


お知らせと書かれた紙や新聞の一面だけが張り出されている中、1箇所だけ丸の書かれた何も貼られていないスペースがあった。



「いつもはここに学生証を使うんだけど今日はこっちね。」


そう言ってポケットから取り出した手のひらに収まるサイズの黄色い札をかざした。



「この時間はそんなに混んでないはずだからすぐにくると思うわ。」


何がという疑問はすぐに解消された。



小さな荷台だけ車が走ってくる。中央部分からスライドするように開いた。



「さぁ、どうぞ。」


姉さんに促され、一段ステップを上がって乗り込むと、正面と前後にコの字型に座席がある。


入って左側の座席に腰掛けると、姉さんはその正面入って右側の座席に腰掛けた。


入り口はすぐに閉まり動き出した。


横に動くものだと思ってたら車体がグンっと斜めに動き一瞬内臓が置いてかれたような感覚が来た。



「あぁ、言うのを忘れてたわね。この乗り物、学園ではトロリーって呼んでるんだけどだいたい大人身長2人分の高さを走行してるの。」


斜めに進んでいた車体はある程度の高さまでくるとまた水平に戻って進み始めた。



「この学園はね。大きな時計に例えられるの。」


そう言いながら車内の床面を姉さんは指差す。大きな円に濃淡で表された地形、それから12ヶ所に街のような地図。そして12・3・6・9と書かれていた。



「今出発したのがこの12時の街。今日はここから時計回りにグルッと観光しながら色々説明していくわね。」



姉さんが手を叩くと再びバクのティーが現れる。



「まずは12時と2時、それから4時8時10時。この線上に学園施設があるわ。」


バクが出した煙が床に描かれていない数字を補完してくれた。



「ここにくるまでにもらった学園案内にも書かれていたことだからもう大丈夫だと思うけどおさらいね。」


クルクルと宙を漂うバクがたまに空中を掻くように漂っている。



「ミリアが来年の夏まで通うのがプレパレートリー、省略してプレって呼ばれてるわ。この学年はまずここに来ることが目的みたいなものね。本当に遅い子だと7月くらいの到着になることもあるわ。」



もうすでに新年度と言われる日ごろからは数週間ほど経っているが、それが問題にならないくらいにはしっかり考えられているのだろう。



上の学年は順番にエレメンタリー・グラムマー・プロフェッション・カレッジ。それぞれエレ・グラ・プロと略して呼ばれ、カレッジだけはそのまま略せず呼んでいる。




「学生証の表示はプレパレートリーは表示なしだけど、上の学年はそれぞれE・G・P・Cってなってるわ。」


ほらと見せてもらった濃い青色のプレートにはGの銀文字が表示されている。



「あなたは明日もらうときに説明があると思うけど、この学生証一つで教室の入退室とか移動とか買い物まで全部できるわ。」


姉さんは外を確認する。



「そろそろ1時の街ね。と言ってもここはほとんと住居地区だけだから住むことにならない限りは来ることもないかな。」


車両は停まる必要がないことをわかっているようにそのままの高さを走行している。



 

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