13
「本当に街なんですね。」
改めて口に出すとなんと当たり前のことを言っているのだろうという気持ちになった。
「毎年100人から140人くらいの子供がこの学園にやってきてカレッジまで入れると1000人くらいの学生が居てそれをお世話するブラウニーズとか先生とかいろんな人が暮らしているわ。それだけいればいろんな集まりができて、街もいくつもできるわね。」
そんな話をしているうちにあっという間に街の上を通過してまた殺風景な風景が広がる。
「だいたい一つ時間が進むために移動するのにこの乗り物で10分、歩いてもこの下の道なら30分くらいかな。乗りっぱなしで一周するのにだいたい2時間かかるわね。」
それからはプロフェッションの校舎がある2時の街、大河の流れる3時の街。大きい建物の壁のように見えるカレッジがある4時の街。
カレッジ生や一部の成績優秀者、教職員と特殊能力者が住む5時から7時の間にある複数の街。
「特殊能力者?」
説明を聞きながら外の景色を見ていたが、聞きなれない言葉に思わず聞き返した。
「ティーって基本的には神様の能力だったり、神使の力を借りてるって言うのは大丈夫よね。」
うなずいた。
「やっぱり言い方はアレだけど、神様って知名度の差がどうしてもあるのよね。有名な神様ならどんな方でどんな力を操り輝かしいエピソードがあったりとかね。」
それはそうかと納得する。
たくさんの神様がいるのは当たり前の認識だが、祭りでお供物をしている神様となんとなく視界の隅にある祠に祀られている神様とでは知っている情報の量が違う。
「やっぱりたくさん居るティーだと先輩や卒業生の数も多いから、どうやって能力を使えばいいかとか得意なこと苦手なことの情報も多いのよね。」
つまり教材が多いということだ。
「でも中にはどの神様の力を借りているのかがわからない。先輩もいない、先人の情報も少ないとかでこれからどう勉強していけばいいかわからない場合もあるの。」
つまり手探り状態ということだ。
「情報が全くない人を特殊能力者、情報が少ないもしくは似たような能力はあるけど何か違う人を準特殊能力者って呼んでるの。」
そう言いながら再び学生証を出した。
「ちなみに私は準特殊能力者になってるわ。」
姉さんの能力はそれなりに珍しい能力という事である。
「バクってそもそも見たことないって人の方が多いだろうし、それが夢を食べる方なら尚更よね。それで今現在学生にバクのティーを連れている人が居ないのとバクのティーを連れた人が直接話を聞ける状態じゃないけど学生時代の記録があるからそれを参考にしてねって事で準特殊能力者扱いになってるわ。」
なんか色々大変だなぁと思いながら外に広がる街というにはどこか殺風景にポツポツと広がる景色を見ながらどこか他人事で聞いていた。
「類似能力は在校生のにはカレッジ生しかおらず、その生徒も一昨年から外洋調査のための遠征隊メンバーです。帰還予定は早くても1年半後になると思われます。」
「正直なところ類似能力もかろうじて性質が似ているかもしれないという程度なので果たして参考にしていいものか。」
「それ以前にティーを預かって2ヶ月であれほど多様に発現することがあるのか…。」
「指導にはかなり難航する可能性ももちろんありますね。」
その場にいた全員が黙り重く深い闇夜のような沈黙が広がる。
「通知を明日まで引き延ばしてもこれでは埒があきません。多数決を取りましょう。」
沈黙を晴らしたのは部屋の一番奥にいる女性だった。
「本日入学した生徒を特殊能力者とすることに賛成の先生は挙手をお願いします。」
すぐに手を挙げたのは片手の指ほどの人数。少し間をおいておずおずと手を挙げたのがさらに数名。
「私も含め過半数を超えたので賛成多数でこの決議を終了します。彼女を特殊能力者として6時の街の住人とします。住居は可能な限り泉の近くを確保し通学に可能な限り支障がないよう手配をお願いします。」
がやがやというにはあまりに小さい、その場にいた全ての者が思い思いにはいた息の音がその場の空気を充した。
「それでは本日はこれで解散、ノオギ先生。」
解散の言葉と同時にほぼ全員が立ち上がり部屋から出ていく中、ノオギだけが女性の近くに足を向けた。
「大変な学年になるかと思いますが。よろしくお願いします。」
「…意のままに。」
ノオギの言葉は明らかに納得していなかった。
それもそのはずで先ほどの多数決でノオギは手を挙げていない。しかし決まってしまったことと、明日のことを考えながら絞り出すように出た言葉だった。
「今年2人目か…。」




