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Battle Order Xaxis《バトルオーダーザクシズ》  作者: Ru-ne
フロア3_神名大和part1
10/13

【BOX_09】消耗_01

フロア3。

クラッシャー要塞から一番離れたところに位置する帝都ダルムンスト。

そこでは新生ガデオン帝国が政権を握っていた。


7年前に保守派が大半を占めていたガデオン王国内部でクーデターが勃発。

急進派が主導となり、一時帝都は血の海と化した。


クーデターを主謀したセフィドルードは自らを皇帝と名乗り、新生ガデオン帝国設立を宣言。

追いやられたガデオン王国の者は帝都からの退却を余儀なくされた。


皇帝をトップに据えたガデオン帝国は、それを補佐する三幹部、その下に十傑機、ガデオン軍と構成されている。


帝国の政治は圧制そのもので、

帝都に住む民は、まるで物のように働かされる毎日を送っていた。





帝都ダルムンスト。

中央で分断された橋の向こう側にダルムンスト城を構え、外側は巨大な城壁で敵の侵入を防いでいる。


その東に位置する新生ガデオン軍上級館。

一部の階級の者のみが使用することのできる施設である。


赤レンガ造りの趣のある6階建ての建物であり、3階と6階に東館と西館の連絡通路がある。


十傑機の第10位パラダインと第9位マクシミリアンは、東館の5階にある作戦室で山のような資料を前に兵隊から報告書を受け取っていた。


パラダインは角刈りに灰色の髪、深い彫りに四角い輪郭と如何にも激しいスポーツが得意そうな体格の男である。身長185cmに体重95kmとガッシリした体型も相まって力強さを感じる。


一方のマクシミリアンは身長170cmに55kmと細身な外見に茶髪の長髪、頭にはカチューシャのような物を付けている中性的な男性だった。目が細く表情を読みづらい人物である。

どちらも特権服に似た軍服を着ており、他の兵とは違う風格を漂わせていた。


「で、地球人アーサー達の調子はどうだね、パラダイン」

「うむ、お前の言う通り、リーダー選出にルールを変更した。早速効果はあったらしい」

「そりゃあ良かった。おとなしい人種だって聞いてたもんだから最初に焚きつけてみたけど、あのまま殺し合いが始まったら、こちらの戦力として数えられるものはほんの指先程度になっていただろうからね」

「うむ、流石マクシミリアンだ。こういう頭を使う作業は俺には全く向かん。即時変わってほしいくらいだ」


手に持っていた資料をデスクに放り投げるパラダイン。


「まぁまぁ、幹部からの命令でもあるわけだしさ、やらないわけにもいかないじゃない」

「まぁ、その通りだが」

「快適とは言い難い環境だけど、食糧と水は決まった日時に配ってるわけだし、まぁなんとかなるでしょ」

「うむ、そういう点に関しては心配していない。マクシミリアンが全て上手く手配してくれた。こちらとしては、この後はどうしたらいい?」


名簿リストに目を向けながらマクシミリアンは語り出す。


「そうだねぇ、ひとまずは静観かな。50人を押し込んだ鉄壁20組を第1境界線隊~第20境界線隊として死の境界線に配置。そこでクラッシャーに対してどれだけの戦闘適性、指揮適性を見せるかが今回の試験内容だからね。まずはリーダーを2つに分けた、これからどういう風になっていくかは彼らの頑張り次第ってところじゃない?まぁ、どの鉄壁にも11~99位の上位1人と下位1人は入れたわけだから、その2人で競い合ってくれると思うけどね」

「そう仕向けたのはお前だろう?」

「まぁ、そうなんだけどね」


マクシミリアンは軽く笑う。


「そうか、ではまずは様子見だな。先ほど、2日が経過したところで各鉄壁の残存数の報告を受けたのだが……」


なにか思い出したように暗い表情を見せるパラダイン。


「何かあったのかい?」

「あぁ、1つ気になる部隊があってな」

「気になる?」

「あぁ、第3境界線隊なんだが1人を残して全滅だ…」


マクシミリアンはパラダインの言葉に耳を疑う。


「なんだって!?たった2日でクラッシャーにやられたって言うのか?」

「いや、そうではない…。どうやらクラッシャー襲撃時ではない時に殺されているらしい」

「ってことは……」

「あぁ、全員を殺した奴がいる……」


パラダインはリストに残った、唯一赤線の引かれていない13位と記載された人物を指し示した。



フロア3 死の境界線。

第20境界線隊と名付けられた大和達のグループ。


1週間を過ぎたところで人数は38人のまま、ジョナサン達のグループもなんとかやっているようだ。



1週間が過ぎて3つわかったことがある。


ひとつはクラッシャー襲撃のタイミング。

ゲーム同様、出現は2日おきの朝方に200体。

境界線に向けて決まった隊列を組み進行してくる。

構成は歩兵が150、騎兵50。

戦い方がわかっている箱乗りなら囲まれさえしなければ対処できる相手だ。


もうひとつはどこかから補給が鉄壁に配られるということ。

人の大きさほどある箱が4つ、毎日決まった時間に鉄壁に配られているようだ。

おそらく水となにかしらの食べ物のようなのだが、鉄壁を追い出された大和達には一切手に入らない代物だった。


最後は自分達以外にも鉄壁に詰め込まれて戦いを強いられている人達がいる、ということ。

境界線の向こう側でも同じくクラッシャーと戦うアームを数機目撃している。

もしかしたら、境界線の端で誰かと会えることもあるかと期待していたが、いまだ向こうからは会いに来ていない。


大和達のグループはこの1週間で、壊れたアームの回収、そして起動実験を行っていた。

ほとんどがクラッシャーに壊され使い物にならなかったが、その中でひとつようやく使えるものを見つけることが出来た。


桂子のイマジネーションドライブ【無線エネルギー補給】により他者の機体を動かすことに成功。

操縦者の生命反応がなくなると機体のロックは外れるシステムになっているらしい。

隙を見て機体を奪取し、拠点に戻って生活に必要な道具をつくれないか思考錯誤していた。


結果、ヒョロのサバイバル知識(その手の類の本はくさるほど読みあさっていたらしい)

を生かした成分を調べる装置をつくり出し、採ってきた草花や実を判別することで食料を確保することに成功した。イマジネーションドライブから食料自体をつくり出す、ということは残念ながらイマジネーション不足、エネルギー不足の両方により達成出来なかった。


大和達は境界線ギリギリの草木のある場所を拠点としていた。

中央はクラッシャーとアームによって踏み潰され、草木はあまりなかったが、端に位置するほど生き残っている確率が高く、そこを拠点とすることで生活を可能にしていた。また、ジョナサン側から身を隠すのにも一役買っていたのであった。


「とりあえず、当面はこれでなんとか生きていけるっすかね。水も確保してるし、食べられる物もわかってきたっすし」

「装置も使える物を考えられてよかった。ヒョロのおかげだ」

「まっ、それほどでもないっす。こういうとこじゃないと活躍できないっすからね」


ヒョロは満更でもないと言う顔をしている。


「難点は桂子君のエネルギー補給をしないと壊れたアームを起動できないことだな。もう1台くらいエネルギー補給できる機体があるといいんだが…」

「俺は絶対やらないっすからね!!ぜーったい!!」

「わかっているよ。大事なロケットパンチだからね」

「そうっす。俺の命の結晶っすよ」


ヒョロはロケットパンチのポーズをしながら高らかに宣言する。


「まぁ贅沢は言っていられないか。あとは出来るだけエネルギーの消耗を抑えつつ、クラッシャーの撃退に備えるしかない。次の襲撃は予定通りだと明日の朝だ」

「準備、しておかないと、ですね」


それぞれ、摂ってきて集めた木の実を口にする。


「とは言え、肉や魚が食べたいのう。レトルトとかでもいいんじゃ」

「肯定です」

「AIはなんも食べないじゃないっすか…。たしかに、そろそろ草や実だけじゃ飽きちゃうってのはあるっすけどね。レトルトは先日ので底を尽いたっす、残念」


ヒョロはお手上げ、といったポーズをする。


「鉄壁にはどうやらこの世界の軍から配給がされているみたいなのですが。分けてもらえないでしょうか」

「可能性は限りなく低いだろうな。彼らが施しを与えるような人には思えない」

「同感じゃのう」

「でも、もしかしたら私達の分もそこに入っているかもしれないのに……」

「桂子君の言うことも一理ある……ここは僕が見てくるよ」

「あっ、そしたら私も」

「いや、ここを手薄にするのはあまり良くない。桂子君がいなくなったら2人を守る人がいなくなる」


2人を見る桂子。ヒョロと源五郎は申し訳なく肩をすくめる。


「情けない話っすが、俺とタガメのじいちゃんだと襲われて死ぬのがオチっす」

「誰がタガメじゃ!源五郎じゃ!悔しいが、ロボットの扱いではエイデスに任せるしかなくての。エイデスも戦闘はあまり得意ではない。わしらじゃ心細いのは確かじゃ」

「桂子君、頼む」

「……わかりました。では、危険だとわかったらすぐに帰ってきてください」


渋々折れる桂子。


「OK、日が暮れる前には帰るよ。3人は明日の準備をしつつ、食料があれば補充しておいてくれ」

「了解じゃ」

「わかりました」

「了解っす」



3人を残し、鉄壁へ向かう大和。

ある程度の距離まで来たところで、見つからないように機体から降りる。


どうやら鉄壁でまた揉め事が起こっているらしい。入り口前がやけに騒がしい。


「喧嘩か何かなのか?」


1人の男をよってたかって集団でリンチしているようだった。

集団はひとしきり男に暴行を加えると、再び鉄壁の中へと戻っていった。


「仲間割れか…」


大和は鉄壁を警戒しつつ、倒れてうずくまる男に近寄る。

男の顔は蹴られて痣が出来ていた。


「君、大丈夫か?」

「…誰だ。俺に構ってるとあんたも奴らにやられるぞ」

「捕まるのは勘弁だね。でも、君を放っておくこともできない」


大和は自分より大きな坊主頭の男を背中に背負うと、鉄壁の死角になるところまで運んでいく。


「ふーっ、ここまで来れば大丈夫か」

「あんた、最初に追い出された奴か。なんでこんなことをした」

「放っておけなかったからさ、ただそれだけだ」

「甘い考えじゃ、生き残ることはできねぇぞ」

「そうなんだけどね。親から教えてもらった生き方だから、ちょっとやそっとじゃ曲げられないのさ」


大和はそう言って痣だらけの男に笑いかける。


「これ、仲間達が集めてくれた木の実だ。お腹が空いていたら食べるといい」

「これは…そんな物を食べていたのか」

「そんな物って失礼な。ちゃんと食べられるかは調べてるよ。そっちはどうやって生きてるんだ?」

「鉄壁に配給が来る。俺はそれを食べている」

「やっぱり!配給はあるんだ?」

「あぁ、【新生ガデオン軍】と名乗る者から物資の支給が決まった時間にあるんだ。今生き残っている人数分は配給される」


大和は口に手を当てて考え込む。


「新生ガデオン軍…聞いたことのない名前だ。ってことは、俺達の分も…桂子君の言っていることは正しかったな。その余り分はどうなっているんだ?」

「俺が奴らにリンチされたのはそれが理由だ。奴らは浮いた食料と水を自分達で独占しようとしたんだ。あまつさえ、下位で戦果を上げられない奴の分まで奪い始めた。俺はそれを止めただけだ」

「結果、奴らに袋叩きにあったわけだね……なるほど」

「ジョナサンは順位が上な事をいいことにやりたい放題だ。まわりも奴に逆らえる奴がいない。鉄壁は無法地帯になりつつある」

「このままだと、また鉄壁の中で死人が増えそうだね」

「あぁ、間違いないな。俺ももうあそこには戻れない、みすみす殺されに戻るようなものだ」

「じゃあ、僕のところに来るかい?」

「……お前みたいな甘い奴も好かないが……他に選択肢もない、着いて行く」

「なかなか正直だね君は…えっと、僕は大和、神名大和だ。大和って呼んでくれればいい」

「俺は竜崎だ」

「竜崎。下の名前は?」

「…言う必要はない。竜崎と呼べばいい」

「わかった、よろしく竜崎」


右手を差し出すが、無視して歩いて行ってしまう。


「あらら、あくまで友好的ってわけではないのね…」


大和は行き先を失った手を振りながら竜崎の後を追いかけた。

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