NO.12 相容れぬ者
突如として正面に一人の男が現れた。
――武器を持たずに。
どうやってあいつを切りと落としたんだ?
ナイフではないのか?
「お前、どうやってコイツを切ったんだ?」
「魔法、と言えば分かるかな?」
「魔法?」
バカな。ファンタジーじゃないんだぞ。
しかし、筋は通っている。
魔法で自分の姿を隠し、あいつを切り裂き、武器を持たずに正面に現れたのだから。
「その魔法とやらを使われては手も足もでないな」
「安心しろ、お前たちの勇気に敬意を表して使わないでやる」
どうやら自分なりの信念があるらしい。
ん?では警告を無視して入った警察はなんでこうなっているんだ?
「ではなぜ警察はああなっているんだ?」
「あいつらは家を攻めただけではなく、ここを爆破しようとしたからだ」
「そうか、ここはお前の家か」
尚更気になるな。
なぜ警察は特殊部隊を引き連れてまではいったんだ?
見た感じそこまで過激ではないが。警告してる辺り。
「おしゃべりは終わりだ。先手はやろう」
両手を大きく広げてきた。馬鹿な。俺たちは軍の人間だぞ。
魔法とやらを使えるとはいえ使わなくてはただの人間だ。
案の定、勝てると見込んだ兵士が突撃する。
しかし――
「ごふっ!?」
ひらりと躱され、蹴りを食らう。
そして、頭に強烈な1打。
頭をカチ割られたそいつはその場で崩れ落ちた。
「怯むな! 敵は一人だぞ!」
他の連中が襲いかかるも同じように倒れ伏していく。
畜生、あいつ素手でも闘えるのか……!
「うぐっ!」 「ガバッ!」 「ゴギャー!」
気づいた頃には俺一人、広間に立ち尽くしていた。
「あとはお前だけか」
そいつはこっちを憐れむような目で見る。
ああ、ついにこの時が来たか。
よし、行くか。
あいつもこっちを見、歩いてくる……ん?
「ぐっ……!」
突如膝を抱えその場で倒れた。
んんん? 何が起こったんだ?
「さっきの奴……ナイフで膝をぉ!」
めっちゃ痛がっているが知らん。
「食らえ、アイツらの分を」
近接戦闘用ナイフを胸に突き立てる。
「うぐっ! っ!」
自分が死ぬと分かったのか、抵抗をやめた。そして一言、殆ど聞こえない、ささやくような声で、呟いた。
「――セヘル、ごめんな」
何気にナイフって便利ですよね……。




