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World of Fantasia(ワールド・オブ・ファンタジア)  作者: 緋色牡丹
第三章「星詠みの巫女」

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第八十二話「H.N.Y.01《ハニー・ワン》」

 岩と土の巨体──土人形が踏み込んだ。

「来るぞッ!」

 振り上げられた太い腕が、頭上から一気に落ちてくる。

 俺たちは一斉に飛び退いた。


 ドォン──ッ!


 土塊の拳が地面を抉り、舞う砂塵(さじん)

「アンネ!」

 いうより早く、アンネは紺色の本を開いていた。

「流れ流れて満つ大河、重ね重ねて成る千波(せんぱ)──」

 彼女の左右に現れたのは、激流を閉じ込めた水球。

「呑み込め──≪千流鎖(せんりゅうさ)≫!」

 二つの水球は弾け、水の柱となって放たれた。

 荒れる水勢、津波の如し──ッ!

 うねる水流は土人形へ絡みつき、腕から胴へ、喰らうように覆っていく。

 土人形の肌が緩み、ぼろぼろと剥がれ落ちた。

 土は水に弱い。〈水術師(アクアメイジ)〉──アンネなら難しい相手じゃない。

「委員長だ! 後ろを狙え!」

 坊主の戦士が叫び、大剣を手に走り出した。

 ──詰められれば不利か。

「前に出る。アンネを守れ、アフロ」

「へいへい~。早く倒してもろて」

 ジョイの気抜けた返事を背に、俺は前へと駆けた。

 正面──戦士が、猛りを叫んだ。

「ウォオオオ!!!!」

 振り上げる大剣の、斬り落とし──ッ!

 身をひねり躱した。瞬間、横から重盾使い(ヘヴィガード)の突進──ッ!

 叩き込まれる重盾。衝撃に合わせ、後ろへ跳んだ。

 さらに黒髪の細目──槍使いが踏み込み、鋭い穂先を突き出した。

 炎竜剣(マグニス)で長槍を弾いた直後、

「ッ……!」

 首を傾けると、頬を矢じりが掠めていった。

 支援術士(エンチャンター)は、すでに次の詠唱を始めている。

『負傷率八%』

 幻身環の無機質な声に、俺の口元は緩んだ。

 ──面白い。


 猛攻をいなすレオルドに、激流を操る委員長。

 ふたりを見ながら、オレはほくそ笑んだ。

 くく──圧倒的ではないか、我が軍は。

 みなに任せておけば、このジョイさまが苦労することはない。

 そのとき、奥の岩場で黒衣が揺れた。

 赤い長髪の女術士(メイジ)が手を掲げている。

「ゆらり煌めく火影(ほかげ)の明かり、駆けて堕ちゆく赤明星(あかみょうじょう)──」

 女の手の上で、炎が渦を巻くように膨らんでいく。

 あいつは、隣のクラスのミランダ・ルーヴェル!

 クソデカおっぱいサイズ測定不能ワガママお・姉・さ・んッ!

 めっちゃ揺れとる──ッ!

 挿絵(By みてみん)

 直径一メートルほどの炎の球を手に、ミランダは勢いよく腕を振り抜いた。

「焼け落ちろ──≪星炎球(フレイムスター)≫ッ!」

「ヤベェッ!」

 燃え盛る炎球が一直線に飛んでくる。狙いはアンネだ。

 オレは背中のバッグを下ろした。

 

 ダンッ!

 

「起きる時間だよぉ、マイ・ハニー!」


 ガシャンッ──!


 甲高い音と同時に、バッグから漏れたのは無機質な女の声。

Humanoid(ヒューマノイド) Neural(ニューラル) Yoke(ヨーク)展開』

 背負っていた機装が左右へ展開し、内部の歯車が高速で噛み合った。

 折り畳まれていた白銀の四肢が伸び、腰、胸部、頭部が次々と組み上がっていく。

 目元から頬にかけて継ぎ目が走り、淡いピンクの短髪が揺れた。

 膝をついたのは──豊満な肢体(特に胸)を持つ、美少女型の機械人形。

魔装具(マギアームズ)H.N.Y.01(ハニー・ワン)──起動』

 挿絵(By みてみん)

 低姿勢から即座に加速──飛来する炎球の前へ。

 足を踏みしめ、ハニーは両腕を突き出した。

『≪光子障壁(フォトン・イージス)≫展開』

 前腕部の装甲が扇状に開いた──レーザーめいた光が走り、六角形の光片が連結していく。

 ハニーの前方を覆うように、巨大な光の壁が展開した。

 炎球が迫る──ッ!

 

 轟ッ!

 

 爆ぜる炎が障壁いっぱいに広がり、灼熱が岩場を駆け抜けた。

 火の粉散る、花ちる(べに)は、雨あられ。

 黒煙が噴き上がる奥──ネオンピンクの瞳が煌めいた。

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― 新着の感想 ―
 土に水に炎とド派手な攻防が行われますね。炎球に狙われた仲間を守るために障壁用意できる者を起用する展開も良かったです。
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