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第九十四話「匿名質問くじ引き」

ホワイトリリー 双花祭出場者


最優姫エクセレントリリー ティアナ リサナ 

薔薇姫(ローザリリー) ローズ エーファ 

轟音姫ロックリリー シャウラ クリスト 

煌輝姫シャイニングリリー アリシア  サント 

煉燦姫ブレイズリリー クレア メルシィ 

暴風姫ストームリリー アウラ フィリラ 

戦槌姫ハンマーリリー カスミ リーナ 

騎士姫ナイトリリー ルイズ ロゼッタ 

銀氷姫(グレイシャ―リリー) イリス サラ 


「説明しよう! 『匿名質問くじ引き』とは、各々この紙に匿名で質問だけを書いて箱の中に入れ、引いた質問に答える遊びだ。ただし、答えるのはこのくじで当たりを引いた人。故に特定の人に答えてもらいたい質問を入れても構わないが、名指しするなど特定の人に限定するような質問はダメだぞ! 知ってる人の意外な一面を知ったり、知らない人を知っていくことが出来る画期的なゲームだ! 今回は時間も限られてるので一人一答スタイルでいこう」


 ティアナ会長の説明を聞いて、各々質問を紙に書いて箱に入れる。

 知ってる顔はあるものの、ちゃんと話したことのない人もちらほら。

 全く知らない人、特に同じダブルペタル生でもあるルイズさんとロゼッタさんとはぜひとも仲良くなりたい。

 かといって話題もなく話しかけるのは難易度が高いからこういうゲームはちょうどいい。


「さぁどんな質問が来るかな~」


 ティアナ会長が箱の中をガサゴソと漁り、一枚の紙を取り出した。

 

「え~最初の質問『双花祭への意気込みは?』。……諸君こんな無難な質問じゃつまらないぞ。もっとはっちゃけた質問をしないと。とりあえずこの質問の回答者はだ~れだ!」


 ティアナ会長の号令に合わせて、あたし達はくじを引く。

 十七人のくじの先が無色の中、一人だけくじの先が赤く色塗られていた。

 そのくじを持っていたのはアリシアだ。


「お、私のようだね。意気込みか……去年は個人戦、ペタル戦、総合戦どれも力になれなかったから、今年こそは白星を勝ち取りたいものだね」


 あたし以外は去年の双花祭を見ていたからアリシアの意気込みもすんなり受け入れていたけど、あたしはどちらかと言うと驚きの方が勝っていた。


「アリシアでも勝ててないって、もしかして双花祭ってレベル高い? このメンツなら余裕って思ってたんだけど」


「残念ながら、こと双花祭においては勝率はブラックリリーの方が高い。言い訳にはなるけど、双花祭の内容とブラックリリーの特色が上手くマッチしているのも要因の一つだね」


「ブラックリリーの特色?」


「ホワイトリリーもブラックリリーも同じく軍人育成機関だけど、ホワイトリリーはどちらかと言うと官僚育成、ブラックリリーは軍人育成に重きを置いている。選考会からしても分かるように双花祭で第一に問われるのは戦闘力だ。その点においてはブラックリリーはとてもマッチしている。その証拠に官僚はホワイトリリー出身が多いけど、大輪七騎士(セブンスリリー)はブラックリリー出身の方が多いからね」


 このメンバーが負ける姿はあまり想像できないけど、アリシアの言う通りなら相手も相当手練れみたいだ。


 ユリリアは軍政国家。

 軍人が政治も担うわけだけど、同じ軍人でもホワイトリリーは政治的な力を、ブラックリリーは戦いにおける力を育成しているということ。

 

 まだ始まってすらいないのに、相手の実力を聞いて少し身構えてしまう。


「じゃあ次の質問に行くよ! 『休日、放課後の過ごし方は?』だ。回答者だ~れだ!」


 アリシア以外のメンバーでくじを引き、当たりを引いたのはメルシィさんだった。


「放課後は風紀委員の見回りをしながら飼育委員の餌やりや保全委員の活動もやりつつ、見回りで怪我人が出たら保健委員として対応してまーす。休日は掛け持ちしてるバイトを七つほど周りながら、友達と遊んでますね。先週は気になってるカフェ行って、博物館行って、ショッピングして、ご飯して、花火もしましたね」


 この人いつ寝てるんだろう?

 あたしと同じくドン引きしている人が数名いる中、ティアナ会長は感心して頷いていた。


「相変わらずアクティブだね。しかし君の友人もよくそんなあちこちついて行ったね。終わった頃には疲れていただろう」


「あ、そこは大丈夫です。それぞれ別の友達なので」


「……というと?」


「カフェ行った友達とはすぐに別れて、博物館で合流して別れて、ショッピングで合流して別れて、合流してご飯食べて別れて、合流して花火してって感じです。まーそれぞれ引き止められたりはするんですけど、先約があるからって解散してますねー」


 あ、この人将来刺されるタイプだ。

 これにはさすがのティアナ会長も笑顔が固まっていた。


「き、気を取り直して次の質問に行こうか。『双花祭に向けてメンバーに何か言って下さい』とのこと。じゃあ回答者だ~れだ!」


「わたしですわね」


 引いたのはローズさん。

 顎に指を当てて数秒考え込み、


「そうですわね。皆様せいぜい足を引っ張らないようにしていただきたいですわ。特に誰かとは言いませんが、ホワイトリリーの代表という自覚をもっていただきたいですわね」


 ローズさんの棘のある言葉が誰に向けられたものなのか、ローズさんと初対面のあたしですら思わず妹であるロゼッタさんを見てしまった。

 ローズさんの視界から逃げるようにルイズさんの影に隠れるロゼッタさん。

 この二人の姉妹仲もいろいろとありそうだ。

 

 ちょっと気まずい空気が流れる中、ティアナ会長はローズさんの物言いに釘を刺す。


「ローズ君、その言い方はいただけないな。素直に一緒に頑張りましょうと言えばいいものを。このツンデレさんめ」


「なっ違いますわ! 誤った翻訳しないでくださいまし!」


 ピリッとした空気が一気に緩和する。

 ティアナ会長のこういうところが人望にも繋がっているんだと最近は思い始めてきた。


「じゃあ次。『最近のマイブームは?』。回答者だ~れだ」


 引いたのはリサナ副会長。

 

「マイブームと言っていいか分かりませんが、先日会長を犬にする機会がありまして、あの快感が今でも忘れ――――」

「さぁ次いこう!! 『もし双花祭でパートナーを自由に選べるなら誰と組みたい?』だ。回答者だ~れだ」


 引いたのはリーナだった。


「さ、答えはアリシア君ということで次に行こうか」


「まだ何も言ってないですけど!?」


「え、違うのかい?」


「いや違わないですけど? アリシア姉様一択ですけど?」


 時間も限られているからか回答の分かり切った質問を巻くティアナ会長。

 質問箱から次を引く。


「えー『座右の銘は?』回答者だ~れだ!」


 引いたのはルイズさん。

 ルイズさんは迷わずに答える。


「我が心に刻むは破邪顕正の四文字。この言葉が我が騎士道を高みへと導く!」


 真っ直ぐ裏を感じさせない覇気のある言葉が彼女の説得力を高くする。

 ただ真っ直ぐ過ぎてちょっと怖いと思ってしまった。


「では次だ。『この人には負けたくないという人は?』。回答者だ~れだ!」


 当たりを引いたのはカスミさんだった。

 カスミさんは当たりくじを見ながら、周りの顔色を窺いつつ、


「……ノーコメントでも構いませんか?」


「まー無理強いはしないよ」


「すいません。では次の質問にいってください」


 頭を軽く下げるカスミさん。

 その鋭い視線が僅かにアリシアに向いたような気がするけど、真意はカスミさんの中にある。


「では次の質問は……『日課にしてることは?』だそうだ。回答者だ~れだ!」


 当たりを引いたクリストさんが目を閉じて思いを馳せる。


「まず起きたらシャウラ様抱き枕におはようの挨拶して、登校前にシャウラ様グッズを眺めて元気を注入して、休憩時間はシャウラ様の姿を目に焼き付けて、放課後はシャウラ様の定期ライブに参加して、夜はシャウラ様人形を眺めながらご飯食べて、シャウラ様抱き枕を抱えながらシャウラ様の夢を見てます!」


「だそうだ! シャウラ君、狂信的なファンに一言!」


「いつもありがとな。今度の誕生日、お前の為だけに一曲歌ってやるよ」


「はゅうぇあッ!?」


 シャウラさんのメッセージにクリストさんの呼吸が止まる。

 すでに回答を終えたリサナ副会長とアリシアがクリストさんを教室の端に運ぶ中、ゲームは止まらず進行していく。


「続いては~『自分の短所は?』。回答者だ~れだ」


 ロゼッタさんの暗い瞳が当たりのくじを見つめる。


「勉強も出来ないですし料理も出来ないですし要領も悪いですしどんくさいですし見た目も暗いですし緊張しいですし自信もないですし皆さんに迷惑ばかりかけてますし姉さんの足を引っ張ってばかりですしルイズちゃんには助けてもらってばかりですし……わたしの存在そのものが短所ですね。……消えたい」


「生きろ! 其方は美しい!」


 卑屈になるごとに背中が丸くなるロゼッタさんにティアナ会長はエールを送る。

 

「次は『普段こだわってることは?』回答者だ~れだ!」


 引いたのはアウラさん。

 

「そうですわね。やはりわたくしのこだわりと言えばこの髪ですわ。わたくしの髪質に合わせたオリジナルのシャンプーとヘアオイル、朝のセットには一時間。実技訓練でも乱れないように細心の注意を払ってますわ!」


「アウラ君の綺麗な髪は前々から気になっていてね、是非とも今度いろいろと教えて欲しいね」


「残念ながらほとんどフィリラに任せていてわたくしは何も分かりませんわ」


 キッパリ言い切るアウラさん。

 ここまで来ると清々しくて気持ちいい。


「じゃあ次。『最近買った高い買い物は?』。回答者だ~れだ」


 シャウラさんが当たりを引いて買ったものを思い出す。


「最近なら新調したベースだな。数十万のやつ」


「ほぅ、それはまた結構な値段だね」


「まあファンの子が買ってくれたから一切金払ってねぇけど。つーか私物とか食い物とか全部誰かに買ってもらったもんばっかだしな。最近買った高い物どころか最近自分で金払った記憶が無ぇ」


「それは人としてはどうなんだい?」


「は? 何ですか? シャウラ様に文句でもあるんですか? シャウラ様が飢えて死んだらどうするんですか? 殺しますよ?」


「えぇ……」


 いつの間にか息を取り戻したクリストさんが完全にイッた目で詰め寄り、ティアナ会長はただただ戸惑って返す言葉を見失っていた。

 とりあえずクリストさんの前ではシャウラさん全肯定でいこう。


「……えー気を取り直して次。『欲しい物は?』回答者だ~れだ」


 隣のイリスが当たりを引く。


「欲しい物っつーか手に入れたいものはある。ここでは言えねぇけど」


「え~言っちゃいなよイリス。あたしに用意出来るものなら日頃のお礼もかねてプレゼントするよ」


 最近は委員会のお金も入ったし、さすがに高い物は無理だけど手頃なものならぜひプレゼントしたい。

 あたしの言葉にイリスはなぜか強く反応した。


「そんなこと言っていいんだな。本当に貰うぞ?」


「え……まーあたしに用意できるものなら……」


「サラに用意出来るっていうか、サラにしか用意出来ないっていうか……」


 イリスはあたしの両肩を掴む。

 その真っ直ぐな眼にあたしの姿が映る。

 今更やっぱ無しなんて言えない空気に、一体何を要求されるのかと息を呑む。


「はいそこまで。次いくわよ」


 遮ったのはティアナ会長ではなくクレアだった。

 クレアは強引に進めるようにティアナ会長の持つ質問箱から一枚紙を取り出す。


「次は『ぶっちゃけトーク』。はい、回答者だ~れだ」


 エーファさんが当たりを引いて、とても楽しそうに人差し指を頬に当てて考える。


「ぶっちゃけトークね……ローズの部屋の引き出しには打倒ティアナ計画ノートがあって、その最後のページにはティアナに勝利するシチュの自作小説が――」


「黙らっしゃい!!」


 ローズさんがエーファさんの口を手で塞ぐ。

 慌てるローズさんにリサナ副会長はなぜか嬉しそうに言った。


「ローズさん、その小説私が監修しましょうか?」


「リサナ君、何故君が乗り気なんだい? 君は私のパートナーだろう?」


「すいません会長。二次創作くらい会長の惨めな姿が見たくてつい」


「君、双花祭で裏切ったりしないだろうね?」


「そんなことするわけないじゃないですか」


 どうやら特別訓練の罰ゲーム以来、ティアナ会長が下の立場になるのがリサナ副会長の癖になったみたいだ。


「……じゃあ次。『特技は何?』だ。回答者だ~れだ!」


 フィリラさんは当たりを引いても無表情のままだ。


「特技ですか。特技かは分かりませんが、アウラ様のシャンプーやヘアオイル、ヘアワックスや化粧品などは自作です」


「なんと!? ぜひ私のもお願いしたい。フィリラ君の考えた最強の化粧品を見繕ってほしい」


 え、それはあたしも欲しい。

 アウラさんの髪は本当に綺麗で羨ましい。

 まさかメイドインフィリラさんだったとは。


「さぁて次だ。『尊敬している人は?』だそうだ。回答者だ~れだ」


 引いたのはティアナ会長だった。

 ティアナ会長みたいな人でも誰かに憧れたりするんだ~と思いながら耳を傾ける。


「尊敬している人は……未来の自分かな☆」


「だそうです。え~次は『好きな食べ物は?』」


「リサナ君、もっと私について深掘りしてくれないと困るよ。君が先導しないと周りも深掘り出来ないじゃないか」


「皆さんくじを引いてるってことは興味ないんじゃないですか」


 あ、流れでついくじを引いてしまった。

 当たりはサントさん。


「好きな食べ物……甘いものは基本的に好きです」


 サントさんについて多少知れると思ったのに、質問の内容もそれに対する答えも普通で何も収穫は得られなかった。

 残る回答者はクレアとあたしのみ。

 

 まさかあたしがトリじゃないよね。

 それはちょっと緊張するんだけど。


「次の質問は『占いは信じる?』。さあ残りはクレア君とサラ君。回答者だ~れだ!」


 引いたのはクレアだった。

 つまりあたしが最後の質問に答える。

 このゲームを微妙な空気にするか楽しく終わるかは大トリのあたし次第ってこと。

 

「信じるか信じないかで言うと信じてないけど、占いでプラスのことを言われるとちょっと嬉しくはあるわね」


 その気持ちは何となく分かるかも。

 別に悪いことを言われたからってそんなに気にしないしラッキーアイテムを持ち歩くとかもしないけど、良いことを言われる分にはちょっぴり気分が高揚したりする。

 

「じゃあ最後の質問。『初恋のエピソードは?』だ。さぁサラ君、回答をどうぞ!!」


 まさかの恋バナ!?

 初恋……初恋?

 いや別にエピソードが無いわけじゃないけど、ラストで話せる内容かな。

 初恋の婚約者に婚約を破棄されて命を狙われて亡命しましたなんてあたしの話術レベルで笑い話に変えれるか?

 

 ノーコメントでいく?

 いや、トリでその逃げは一番最悪な空気にする。

 ここであいつ空気読まないしつまらないよねってレッテルを貼られるのはマズい。


「初恋は……あたしの心にしまっておこっかなテヘペロ☆」



 締めとしては最悪の空気になったことをここに報告致します。



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