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俺のすべらない話  作者: 弓 ゆみ太
9/75

噴き出すスポーツドリンク

小噺を一つ


俺が老人ホームで働いていた時の話



その日俺はスタッフカウンターと呼ばれるところで書類仕事をしていたんだ


椅子に座って俯いて書類と戦ってた


そしたら見えていない前方の方から先輩の張り詰めた声が聞こえてきたんだよ


「おーい!ゆみ太君ー!!助けてくれー!!」ってね


一気に俺に緊張が走ったね


だって書類と格闘してたとはいえ、ここは老人ホームだ


そこには徘徊する老人、足元のおぼつかない老人がゴロゴロいる


俺は誰かが転倒して怪我をしてしまった嫌な予感を抱えながらそっちに向かったね


先輩のいる現場に駆け寄るとそこには……


誰も…いない?


あるのは泣きそうな顔をした先輩とその隣に静かに佇む給茶機だけだったんだよ


「どっ、どうしたんですか?」


俺は焦って呂律の回らない口調で先輩に尋ねたね


したら、先輩本当に泣くんじゃないかって顔と声でこう答えたんだ


「スポーツドリンクが…噴き出してきた…」ってね


はぁ?


2秒、いや5秒ぐらい俺は固まっていたと思う


全く意味が分からなかった


正直何を言ってんだこの人はって思ったね


で、よくよく見ると先輩、手に空のコップ持ってんだよね


とりあえず緊急の怪我とかではない事を確認できた安心感からほっとしながら


俺は先輩に詳しく事情を聞いたんだ


詳しくって言っても先輩の話は単純明快で、スポーツドリンクを飲もうと


ボタンを押したらスポーツドリンクが噴き出してきた、とのこと


しょうもな


と思いつつも、俺は先輩の言うスポーツドリンクのボタンを押して


確かめてみることにしたんだよ


だって助けてっていうくらい困ってたからさ


ピッ


ボタンを押してみた


そしたらスポーツドリンクが噴き出して…


こなかったんだよね


ちらっ、て先輩の方を見たらあれーってすごく切なそうな顔してた


「おかしーなー、さっきは噴き出してきたのに」


なぜか悔しそうに言う先輩


給茶機に駆け寄ってもう一回スポーツドリンクを入れようとし出した


俺は呆れてその場を後にしようとしたんだ


そしたら、後ろから先輩の鋭い声が響く


「見てみて!!!スポーツドリンクが噴き出してる!!!!」


見ると確かにスポーツドリンクは噴き出してた…


でも、それ以上に「ほらみたことか」って感じで


勝ち誇ってる声と顔の先輩がおかしくてさ



俺はその場に膝から崩れ落ちて笑ったね


そしたら先輩は最後に一言


「スポーツドリンク噴き出してきたら誰だってビビるやろが!」


だってさ






まぁ、実を言うとこの話の先輩っていうのが「俺」なんだけどね


で、この一人称になってるのが、俺の本当の後輩なんだ


今回は趣向を変えて、視点を変えて語ってみました


マジであの時はビビったね

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