三十六話 「そうなれば、洞窟周辺の守りだって硬くなる! 夢が広がるなぁ!」
山盛りの肉団。
リーダーであるクワトンが冗談で申告したパーティ名を、そのまま使い続けている三人組である。
名前こそふざけているが、実力は折り紙付きで、三人全員がA級という破格のパーティだ。
バランスのいいパーティで、リーダーであるクワトンは人族の剣士。
同じく人族であるイーライはマジックアーチャー。
最後の一人は獣人族の女性で、盾使い。
バランスも良く、任務達成率も高い、名うてのパーティだ。
リ・ラ。
魔法道具製作者としてかなりの実力を持っていたが、如何せん商才がまるでなかった。
作る魔法道具はかなり優秀で、高い性能を発揮するの、だが。
あまりにもピーキーすぎる性能で、使いこなせるものがほぼいなかった。
その日食べるパンにも困ったリ・ラは、知人の勧めもあって冒険者になる。
商才も、バランスのいい道具を作ることにも才能がなかったリ・ラだが、皮肉なことに冒険者としての才覚はあったようだ。
現在では単独行動をとるB級冒険者として名を知られている。
ただ、多くの人間が「魔法道具製作者」ではなく、「魔法道具使い」として覚えているのは、彼女としては甚だ不本意なことであった。
シリルリア。
元は奴隷剣闘士であり、チャンピオンとして名を馳せていた。
ある時一人の冒険者が、元の持ち主からギャンブルで所有権を奪い取ってしまう。
だが、その冒険者は「宵越しの金は持たねぇ」とのたまい、シリルリアを解放した。
突然自由の身となったシリルリアは、とある地方冒険者ギルド支部に身を寄せることとなる。
今ではその冒険者ギルド支部付きの専属B級冒険者として、その剛腕を振るっていた。
ちなみに、現在の彼女の武器は大斧である。
それは、彼女の所有権を豪快に投げ捨てた冒険者が、得意としている武器なのだという。
アンデリック。
“竜騎士”アンデリック・バラフマス。
家名があることでわかるように、貴族出身のA級冒険者である。
貧乏男爵家の三男坊で、実家に仕送りをするために冒険者になったのが、事のはじまり。
騎乗戦闘は得意だったものの、地に足を付けて戦うのがからっきしだった当初のアンデリック少年は、先輩冒険者に徹底的に扱き抜かれた。
おかげで多少戦えるようになったころ、転機が訪れる。
大量に人員が動員されたドラゴン討伐依頼の時に、たまさかドラゴンの雛に懐かれたのだ。
国やギルドに取り上げられそうになるものの、紆余曲折あった末、アンデリックは無事に所有権を獲得。
歳月の経った今では、そのドラゴンに跨り様々な冒険をこなすようになっている。
近く、S級冒険者に昇格するのではないかという話も出ている、有望株だ。
そんな名の知られた冒険者達が、オード大森林近くにあるネザ村の酒場にあつまっていた。
「誰だ俺のピザ食ったの! 肉が乗ってるところ残しといたのに! 誰だ!」
「なんか生野菜食ったの久しぶりだわ」
「あー、氷、おい、氷魔法誰か使えるでしょ! 氷くれ氷!」
「そういやこんだけ冒険者いて魔法使い一人もいねぇぞ。どうなってんだ。あははは!!」
ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ高階級冒険者達の間に挟まれ、パラパタは顔を引きつらせながらジュースを飲んでいた。
パラパタ自身、それなりの実力者である。
それが故に、ここにいる連中がいかに腕がいい連中なのか、肌でわかってしまう。
何だってこんな連中に、自分が絡まれているのか。
大体、あのハイ・エルフのお貴族様のせいだ。
戻ったら絶対文句言ってやろう。
もっとも、実際に目の前に行ったら何も言えなくなるのだろうが。
さっさと宿屋に引っ込んでしまいたいが、そういうわけにもいかない。
何しろ、ここにいる全員が、暴食アリ討伐に参加することになったのだ。
既に、ギルドへの登録も済ませてある。
そうなると、依頼した側であるパラパタ的には、色々な責任が発生するのだ。
ギルド規約や契約に基づくものではない。
冒険者の仁義としてのものである。
仕事を手伝ってもらうなら、酒の席位付き合うもの。
いつ死ぬかわからない、生き死にの軽い家業である。
こういった場をただの景気づけとバカにするような相手に、本気で手を貸してくれるような冒険者は少ない。
どうせ碌な死に方をしないと思っているものが多いのだろう。
せめて浮世を楽しく過ごそうと考えているのだ。
パラパタ自身、その気持ちはわからなくもない。
「なんだパラパタ! お前、酒飲んでねぇーのかよ!」
「バカ! パラパタは未成年だぞ!」
「マジか!! じゃあ、酒はダメだな! よし、肉を食え肉を! ちょっと、店員さん! 肉持ってきて肉!」
「そうだ! 若いうちは肉だ! 肉を食えば幸せなのだ! 私の若かったころなどわなぁ!」
「お前、今も若いだろ! あとお前昔、剣闘士だったじゃねぇか! 参考になるか! でもまぁ、肉だな! 肉を食え、肉を!」
どうしてみんな自分に肉を食わせようとするのだろう。
それが美味しく食べられてしまう自分自身も恨めしい。
もっとも、理由はなんとなくわかる。
彼らが奢ってくれる肉が、高級品だからだ。
とりあえずむこうに戻ったら、絶対にハイ・エルフのお貴族様に文句を言ってやろう。
それとは別に、美味い肉を食えるだけ食っておこう。
次にいつこういう肉が食えるか、分からないのだ。
もしかしたら、二度と食えないかもしれない。
そう考えてしまうと、じっくり味わわなければ、という気になってくる。
恐らく酒を飲んでいる連中も、同じような心境なのだろう。
これが最後かもしれないと思えば、少しでも楽しく飲みたいという気になるのも、理解できる。
バカ騒ぎする連中の気持ちが、少しだけ分かった、パラパタであった。
翌日、パラパタはオード大森林に設営した拠点へ向かって出発した。
到着し、報告をした後、クードが悲鳴を上げたのだが。
まぁ、パラパタのせいではないだろう。
ウルフ・プラント達は、りあむの予想以上に優秀だった。
これは、実にうれしい誤算である。
最初の狩りの後、休憩を挟みつつ何度か狩りに同行したのだが、どの時も実に見事な連携を見せてくれた。
ゴブリンと連携を組むために進化した生き物だから、というのもあるのだろう。
だが、その動きはまさに阿吽の呼吸。
いざ狩りとなると、ウルフ・プラント達はほとんどゴブリン達と会話をしない。
それが必要でないぐらい、的確に動いてくれるのだ。
ゴブリン以上の嗅覚で素早く獲物を発見。
攻撃を加える場所を決めたら、そこまで的確に獲物を誘導。
ゴブリン達が獲物を仕留めている間、他の獲物が逃げないように牽制。
これを、ほぼ声かけなしでやってくれる。
状況を見つつ、自分達の判断で動いてくれるのだ。
これにより、狩りの効率が大幅に上がった。
成功率も収穫量も段違いに増えている。
なにしろ、平均して三倍は獲物の量が違うのだ。
これが安定して続くようであれば、ゴブリンの数も質も全く変わってくる。
「ふはははは! 笑いが止まらない! でもさ。こんなに獲ったら、周りに獲物いなくなっちゃわない?」
「そうなったら、少しは安全が確保できるんだろうけどな」
ケンタ曰く、この辺りの魔獣はそんなに軟弱ではないらしい。
どこかで縄張りが開けば、すぐさま別の魔獣や魔物が入ってくるそうだ。
恐らく、りあむが初期に想定していた物より、何十倍も生物相が分厚いのだろう。
考えてみれば、あんな巨大なドラゴンが生息しているのである。
あるいは、イノシシぐらいのサイズの動物でも、生態的地位としては、地球のネズミ位の扱いなのかもしれない。
「ってことは、安心して狩って狩って狩りまくれるってことだね。うぇっへっへっへ!」
今後生まれてくるゴブリン全てを、特別なゴブリンにするのも夢ではない。
そうなったら、どれだけ戦力が上がることか。
普通のゴブリンでは弓が使えなかったが、特別なゴブリンなら別だ。
弓も使うことが出来れば、投石や投げ槍も扱えるようになる。
「遠距離攻撃って素敵だよね。威力が高いうえに、一方的に攻撃できる。ゴブリンが安全。最高だよ」
今のところ、特別なゴブリンは二匹しかいない。
そのために専用の武器を作るというのは、労力の無駄だとりあむは考えていた。
ゴブリン全体の底上げの方が先だと判断しているからだ。
だが、全てとは言わなくても、半分以上のゴブリンが特別なゴブリンになってくれば、話は別である。
弓や投擲用の槍を用意する意味も、十二分に出てくるだろう。
「そうなれば、洞窟周辺の守りだって硬くなる! 夢が広がるなぁ!」
洞窟の周りを囲う石垣は、かなり高くなってきていた。
ゴブリン全員が集まることができる広さを確保しながらも、既にゴブリンの背丈ほどには積み上がっている。
目標の高さまではまだまだだが、そもそも石垣というのは年単位で作るものだ。
焦れるが、ここは我慢するしかないだろう。
あまり急いで崩れやすい石垣になったら、元も子もない。
さて、その優秀さがよくわかってきたウルフ・プラントだったが。
いくつか問題点も見えてきていた。
まず一つ。
持久力がない。
基本的にはゴブリン達と同じく疲れ知らずなウルフ・プラントなのだが、一時的に機動力が低下することがあった。
短い時間なのだが、全力疾走した後など、再び走ることができるようになるまでに、ある程度時間を置かねばならないのだ。
ゴブリンは、常に一定の出力を出し続けることができる。
対してウルフ・プラントは、瞬発的に高い出力を出すことができるが、変わりにそのあと一定期間出力が下がってしまう。
といった具合である。
基本的に、足の速さではゴブリンより、ウルフ・プラントの方が上だ。
だが、総合して長い距離を走り続けることができるという意味では、ゴブリンの方が優れていた。
そして、もう一つ。
体高がゴブリンの頭ほどもあるウルフ・プラントだったが、思ったほど力が無かった。
毛に覆われているのでわかりにくいのだが、意外に細身なのである。
もちろん、それでも体が大きいため、体重自体はゴブリン二匹分以上があった。
だが、運搬能力はさほどではなく、運ぶことができる重さはせいぜいゴブリン一匹と半分程度。
重いものを運ぶ時などは走ることもできず、歩く程度の速さでしか進むことができない。
もちろん、それでもかなりのものなのだが。
りあむとしては馬のような運搬能力も期待していただけに、いささか残念なことではあった。
さらに、もう一つ。
上記のことが関係あるのだが、ウルフ・プラント用武器の開発が、かなり難しそうなことが分かった。
前足や後ろ足に刃物を取り付ける形では、自前の爪の方が強力であるため意味をなさない。
背中などに槍などを装備させる形は、走るときの体の上下が激しく、狙いを定めにくい。
また、体重が予想外に軽いのと、走力が持続しないため、突撃自体の威力がさほどでもなく。
攻撃後、獲物に刺さった槍を引き抜いて逃げるには、やはり力が足りない。
そうなってくると、残念ながらりあむにはお手上げだった。
少なくとも、すぐには有用そうな武器は思いつかない。
ただ、これらのことを調べる過程で、有用な狩りの方法も見出すことができた。
ウルフ・プラントの背にゴブリンを乗せての、騎乗突撃だ。
重量ギリギリではあったが、ウルフ・プラント達はゴブリンを背中に乗せて走ることができたのである。
全力疾走できる距離も時間も短いし、通常よりも早く限界が来てしまう。
しかし、本来のゴブリンでは得られない瞬発的な加速、それを余すことなく乗せた槍での刺突。
この破壊力は、実に得難いものだった。
まず、ウルフ・プラント達が獲物を追い込むところまでは、通常通り。
足止めをしたところで、ウルフ・プラントに騎乗したゴブリンが、突撃を駆ける。
通常より太く丈夫な槍を使い、この勢いを余さず攻撃力に転化。
この方法を使っての攻撃は、それまでとは段違いに強力なものになった。
今までは仕留めるのに時間のかかっていた大型の獲物も、一撃で仕留めることができるようになったのだ。
一匹をすばやく仕留めれば、他の獲物を仕留めるのに割く時間ができる。
これは、予想以上に大きいことであった。
なにしろ大型の獲物を、一度に複数狩ることができるのだ。
狩りの効率を上げるとともに、大幅な収穫の増量を意味する。
一度の狩りで一匹しか狩れなかった大きさの獲物を、四匹同時に仕留めたこともあった。
単純に、収穫量が四倍になったということだ。
もちろん、美味い獲物を見つけられれば、という条件付きではあるが、それにしてもこれは大きい。
「ただ、鞍がなぁ」
今ある材料で鞍を作ろうとすると、どうしても重たくなってしまう。
そうなると、ウルフ・プラントが疲れてしまうのだ。
普通に歩く程度なら問題ないが、走るとなると難しい。
将来的に、布や革などの軽い素材が手にはいってから作るのがいいだろう。
それまでは、裸ウルフに乗る形で我慢してもらうしかない。
まあ、もっとも。
ゴブリン達は特に不満がないそうなのだが。
色々と試行錯誤したおかげで、完成した道具もあった。
ウルフ・プラントの背中に固定する、背負子だ。
目を大きく、荒く作ったカゴを二つ用意する。
それを、ウルフ・プラントの胴体を挟むように配置。
二本の棒を背中に載せて、それに棒を固定する。
棒が直接背中に当たる部分には、草を取っている過程で見つけた綿状の実を挟む。
恐らく、綿の実に近いものなのだろう。
ちなみに、残念ながら捩っても強度が無く、弓の弦にはなりそうもなかった。
ただ、これを集めてよく揉みこむと、フェルトのような素材になる。
それを、棒に巻き付けてクッション材にするのだ。
ウルフ・プラント用の、背負子の完成。
これを使うと、ウルフ・プラントにかかる負担を少なくしつつ、沢山の荷物を運ぶことができる。
大きなものは難しいが、切り分けてしまえば問題なかった。
幸いなことに、相当に切れ味のいいナイフが、手に入っている。
フェザーワイバーンが譲ってくれた、骨で作ったものだ。
あまりにも切れ味が良いので、槍頭ではなく、肉を切り分けるナイフとして使っている。
通常ならそう簡単に手に入るものではないのだろうが、まだまだ在庫がごっそりとあった。
持つべきものは、太い後援者である。
ウルフ・プラント達が順調に成果を上げる中。
もう一つ、大きな成果が上がったものがあった。
弓の弦だ。
ついに、使用に耐える繊維が見つかったのである。
随分苦労させられたが、強度は十分。
ただ、作るのにも随分苦労することになりそうだった。
なにしろ、手順が面倒臭いのだ。
見つけてきた繊維が取れる素材は、ツタ植物の茎であった。
これの表面の皮を剥き、良く煮込む。
ある程度柔らかくなったら、水に漬けて揉みこみ、繊維以外の柔らかい部分を取り除く。
残った繊維を何度も何度も捩ると、恐ろしく強靭な糸が完成する。
その強さたるや相当なもので、ゴブリンが三匹ぶら下がっても切れることがない。
実際はもっとぶら下がれそうなのだが、残念ながらゴブリンの手の方がもたないので、それ以上は試すことが出来なかった。
この糸の完成に、りあむは狂喜乱舞した。
これだけ強靭な糸である。
本当に様々なことができるだろう。
この糸は驚くほど強く、並の石器では切断するのにも苦労する。
例えばこれで布を作れば、それだけでゴブリン達の防具になるだろう。
並の木材よりよほど丈夫だし、その布を盾に張り付ければ防御力が格段に増すかもしれない。
だけでなく、これでボーラを作れば、どうだろう。
今の強度はそのまま、さらに携帯性に優れるものになるはずだ。
トラップとして使ったっていい。
細く目立たないので、色を塗って更に見た目を偽装。
木々の間に張り巡らせ、そこにモンスターを走り込ませる。
足を取られるだけならまだいい方で、上手くすれば切断などのダメージを与えられるかもしれない。
狩りの効率はうなぎのぼり。
ゴブリン達の安全も、格段に増すだろう。
が。
やはりそう簡単にはいかないもので、この糸にも問題点があった。
まず、材料になるツタの伐採が難しい。
あまりにも強靭すぎて、普通の石器では切断することすら困難なのだ。
フェザードラゴンからもらった素材でナイフを作り、ようやく比較的楽に、それでもかなり労力を割いて収穫できるようになったのだが。
実はもう一つ問題があって、そもそもこのツタ植物がなかなか見つからないのだ。
見つかって、一日に一本や二本。
ゴブリン二匹分程度がやっと。
それを加工すると、ゴブリン一匹分程度の長さになってしまう。
三チームが丸一日かけて収穫できる量で、たったゴブリン一匹分程度の長さの材料にしかならないのだ。
それだけではない。
皮をはぐ作業がまた手間で、これが非常に硬く、中々剥がれない。
しかも、煮てもほとんど柔らかくなることが無いため、煮る前に剥いてしまわないとならなかった。
何しろあまりにも丈夫なためか、剥かずに煮ると、中にほとんど火が入らない。
この皮を剥くだけでも、ゴブリン二匹掛かりで作業せねばならず、りあむの体感時間としては、約二時間は必要になる。
一日を二十四時間として、一交代が八時間。
その四分の一の時間である。
これでようやく、煮る作業に移ることができる。
じっくり煮ること、これまた二時間ほど。
この間、蒸発した水を足したり、薪をくべ続けたりしなければならない。
薪だって、森から持ってこなければならないのだ。
それをどれだけ浪費すれば気が済むというのか。
ようやく煮上がれば、余分な部分を取り除き、より合わせる作業だ。
コレもゴブリン二匹がかりで行い、恐らく一時間程度。
やっとのことで、糸一本が完成するのである。
素材を準備することも考えれば、一体どれだけの労力と時間がかかっていることか。
ゴブリンの一日は、人間の一日とは価値が違う。
寿命が二年弱しかないゴブリンの貴重な時間を、どれだけ奪うのか。
もし木の精霊になっていなかったら、発狂していたかもしれない。
そんな風に思うりあむだったが、そもそも木の精霊になっていなければ、こんなことで思い悩んだりしなかっただろう。
ともかく、弦は出来た。
あとは弓本体を作るだけである。
本当ならこれも一苦労するのだろうが、ここでは思わぬファンタジーに助けられることになった。
フェザーワイバーンから譲り受けた骨の一つが、弓の素材にぴったりだったのだ。
恐ろしく弾力があり、しなやかに曲がるのに、全く折れない。
生前、りあむはモンスターとかを討伐して武器防具の素材にするゲームをやっていたのだが。
それに登場する素材のような便利さであった。
形を見るに、肋骨あたりの骨なのだろう。
大きさから考えて、大きさはゴブリンの数十倍だろうか。
通常なら絶対に手に入らない素材なのだろうが、幸いなことに手ごろなサイズが三十本近くある。
これを少々加工すれば、すぐに弓として扱うことが可能だ。
ただ、あまりに硬く、石のナイフなどでは削ることが出来ない。
幸いだったのは、一緒に手に入った骨ナイフで削ることができたことだろう。
不思議素材バンザイ。
まったく、持つべきものは羽の生えたドラゴンの後援者である。
「よし、とにかく、ウルフ・ハウンドさん達用の背負子の増産と、弓の試作。それと、その弓を使ってのクロスボウを作らないとね」
とりあえず、背負子は休憩中のゴブリン達に任せて増産体制へ。
弓とクロスボウは、作業班で試作することにする。
どんどん忙しくなっているが、有難いことに明日には増援も望めることになっていた。
ウルフ・ハウンドの「姫」を植えたことで、ゴブリン・ツリーがバージョンアップしたらしい。
そのおかげで、ゴブリンの育成速度が飛躍的に上がったらしいのだ。
今までよりも早く、ゴブリンが成熟するらしい。
ただ、時間をかければかけるほど質が良くなるのだとかで、今のところはそこまで急いで育成はしていなかった。
今は量も大事だが、質にも気をかけたい時期なのである。
またいつ、人間が襲ってくるかも知れないのだ。
ゴブリン達から聞き取った限りでは、普通のゴブリンが何体いても同じだという。
ならば、軍備を固め、特別なゴブリンを揃えて迎撃するしかない。
「人間め、人間共め! 二度と熟してない実に手が付けられると思うなよコノヤロウ!! ぐぇははははは!!」
「りあむ。クロスボウガンの、引き金の試作を作る準備ができたぞ」
「あ、はーい」
りあむは元気よく返事をすると、スキップするような動きでケンタの方へと動き出した。
明日には、特別なゴブリンが二匹、生まれる予定だ。
それから七日か、早くて六日後には、さらに特別なゴブリンが二匹。
生まれてくるゴブリンがすべて特別なゴブリン。
なんと素晴らしい響きだろう。
掛け軸に書いて、ゴブリン・ツリーに打ち付けておきたいほどだと、りあむは思っている。
とりあえず、準備は着々と整いつつあった。
このまま順調に行けば、人間にもそう簡単に手出しできない様な防御施設が完成するだろう。
あとはどんどん技術を発展させ、道具を揃え、施設を揃え、生産物を増やしていく。
当然、ゴブリンの数もジャンジャカ増やすのだ。
いつかはこの洞窟から森に続くまでが、ゴブリンの街になるかもしれない。
まあ、ゴブリンが街を作ってもほとんど意味はないのだが。
「まあ、夢はでっかく持とう! ああ、先が楽しみだなぁ! あっはっはっは!」
ご機嫌な様子で、りあむは笑い声をあげた。
暴食アリがゴブリン・ツリーの巣穴を目指してやってくることになるのは、この十日後のことである。
次回
冒険者連中が、暴食アリと戦うことになります




