表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失敗  作者: 苦竹 佐戸
7/7

村と騎士様で冒険

 盗賊のアジトを出て6日目。

 僕たちは相変わらず特訓の日々を送っている。

 初日の実戦訓練で一撃を入れてからナキの訓練に激しさが増した。


「まさか少年に食べられながらも攻撃する根性があるなんて思ってなかったよ。今までのお詫びもかねてビシバシ特訓していくからね!」


 あの一撃で何故かナキが俄然やる気を出して、前にも増して攻撃してくるようになってしまった。

 お陰で僕の服はボロボロ。ナキがどうせダメになると言って着替えさせなかった理由が良くわかった。

 

「ほら、ボーッとしない」


 ナキが小石を投げつける。それを躱してナキの懐に飛び込んで脚を掬い上げるように蹴る。

 しかしナキは一歩下がって蹴りを避けて、逆に僕の膝の裏を掬って上へ放り投げる。

 くるくると上下が入れ替わる世界で僕は夢にまでみたそれ(・・)を見つける。

 僕は木に引っ掛かりながら思わず大声を挙げた。


「ナキ、町だ! 町が見えた!」

「そりゃあ、それくらい高く飛べば見えてくるだろうさ。今日はその手前の村で一泊していくからね」


早く降りてこいと手招きするナキに従って木の天辺から飛び降りる。

左腕から着地して衝撃を左腕一本で受ける。受けきれなかった衝撃は転がることで肩、腰、脚と逃がして立ち上がる。

 これがナキとの実戦訓練で投げられ続けたことで編み出した着地方法。四肢のどれかを犠牲にして他の箇所の損傷を減らすことで戦力の低下を防ぐことが出来る。

 壊れた箇所も戦っているうちに直るから問題ない。


不死(からだ)の使い方も慣れてきたみたいだね」

「もう少し上手くなれば腕も壊れない、っですみそうなんだけどね」


 折れた骨を戻す。脂汗が吹き出るけど、こうした方が直りが早いのは経験で分かってきた。

 痛みで浅くなった呼吸を整えるために大きく深呼吸する。


「……よし。村に急ごう、ナキ」

「出会った頃とは別人だな、少年。頼もしくみえるぞ」


 ナキが嬉しそうに肩を叩く。その衝撃が左腕まで響いて激痛に変わる。

 それを歯を食いしばって堪える。不死の力で傷が直るとはいえ痛みが減るわけじゃない。

 この七日間で色んな目にあったけどまだまだ痛み(これ)には慣れそうにない。

 

「っていうか叩きすぎ! 早く行くよ!」

「そう慌てるな、少年。……そっちは面倒だからこっちから行くぞ」


 ナキの手を払って進もうとするとナキが左腕(うで)を引っ張って止める。っそっち(・ ・ ・)はダメだってっ~~。

 踞る僕を置いてナキが機嫌良さげに鼻歌をして歩き始める。もしかしてわざとやってないか、この人。


 村の近くまで来てボロボロの服を着替えて土に埋める。血塗れの服(こ ん な の)なんて持ってたら怪しまれちゃうもんね。

 ナキはローブのフードを浅く被って髪に埋もれている角を隠す。

 村は木の柵に囲まれていて広さも僕のいた村の倍はありそうだ。

 村の入り口には見張りらしき人たちが槍を持って立っている。ただ見たところ持っている槍は古いし、服もただの布で出来ているようだし、多分村の男たちが交代でやってるんだろう。

 こっちに気付いた見張りのおじさんが声をかけてくる。


「おーい。君たち、見ない顔だな。服装からして冒険者かなんかか?」

「ああ。アタシたちは冒険者になるために森を越えて来たんだ。一晩、宿を借りたいんだが入れてもらえるか?」


 ナキが面に立っておじさんと話し始める。ナキの森を越えてきたという言葉に顔色が変わる。


「森をってシラカミの森を越えて来たのか!? あんな魔物だらけの所をよく通れたな」

「まぁね。お陰でクタクタさ」


 ナキが肩を竦めてため息をはく。出てくる魔物(やつら)の相手したの僕だけどね。

 話を聞いていたおじさんは僕たちの格好をみて何かを考えたあと頷く。

 

「よし、分かった。村長の所へ案内しよう」


 おじさんは入り口横の待機所なんだろう、小屋に声をかけて見張りを変わってもらうと僕たちを村に招き入れる。

 案内されるまま付いていくと村で一番大きな家についた。

 おじさんが開けるより先に扉が開く。


「では、セイン神の加護のあらんことを」


 中から出てきたのは不思議な光沢をもった全身鎧を身に纏った青年だった。

 真っ先に目にはいった鎧の他に片手剣を腰に提げ、腕にも小さいながらも円盾がついている。

 歳は僕よりちょっと上くらいかな。身長も僕よりちょっと高い。サラサラの金髪が揺れてきらめいているし、顔は整っていて女性受けしそうだ。

 そんな風に観察していると松明みたいに赤い眼がこっちを向く

 僕たちに気付いた青年は笑みを浮かべて話し掛けてくる。


「おや、旅人ですか。一つお伺いしたいことがあるんですが、黒髪が茶髪で斑になっている男と大男の二人組を見ませんでしたか? 名前をタナンと言うのですが」


 タナン。僕がその名前に反応する前にナキが前に立って口を開く。

 

「それらしき男ならこの先の森を何日か歩いた所にある盗賊のアジトに入っていくのを見た。その人がどうかしたのか?」

「いえ、実は私の所属している隊の先輩なんですがね。隊長から連れ戻すように言われていまして。貴重な情報、ありがとうございました」


 そう言うと青年はナキに何枚か金貨を渡して部下らしき男たちを連れて去っていく。

 殺気は感じられなかったけど、なんとも言えない嫌な臭いというか気配をもった人だった。


「どうぞ入られよ、お客人」


 僕が青年の後ろ姿を見続けていると家の中から声をかけられた。

 おじさんに促されて入ると簡素な食卓机に座るお爺さんとその隣に青年が三ツ又の農具を持って立っていた。

 恐らくこのお爺さんが村長なんだろう。

 その顔は疲れきっていて今にも倒れかねない雰囲気を醸し出している。


「物々しくてすまんな。どうぞ、座ってくれ」


 村長に言われるがまま席につく。

 連れてきてくれたおじさんが村長の側にいき、何かを耳打ちする。


「なるほど。宿を借りたいということだが、みての通り少し立て込んでいてね、旅人をもてなしている余裕がないんだ」

「あの、入り口の見張りといい、さっきの騎士様といい、なにかあったんですか?」


 僕が思わず聞いてしまうと村長は少し期待するような顔をしながら話し始める。


「実はの」

「近くの鎧熊の縄張りに誰か入ったんだろう? あれは執念深いからな」


 と思ったらナキが先に言ってしまった。

 村長は出鼻を挫かれて少し慌てているようだけとなんとか気を取り直したのか話を続ける。


「あ、ああ。その通りじゃ。あのシラカミの森を抜けてきた二人を実力者と見込んで鎧熊の退治をお願いしたい」

「それならさっきの騎士様ならに頼んだらどうですか? 村の治安を守るのも騎士の仕事でしょう」


 僕がそう言うと村長は苦虫を噛み潰したような顔になる。どうやらあの騎士となにかあったらしい。


「騎士様はこんな村より任務のほうが大事らしい。どんなにお願いしても任務が優先だと無下にされたよ。その頃にはこの村はなくなっていることだろうに」


 村長は堪えきれない怒りを食卓机にぶつける。怒りに震えるその拳はヨボヨボで細く、握り過ぎて折れるんじゃないかと不安になってしまうほどだった。


「……ナキ」

「はぁ。やっぱり数日じゃ甘い性格は変わらないか。……村長、縄張りに入ったのは昨日か、今日か」


 僕の視線に負けたようにナキが項垂れる。

 村長は喜びのあまり立ち上がり椅子を倒してしまう。もともと、脚が良くないのか隣の男が直ぐに支えられるように近寄っている。


「ありがとう。この礼は必ず、必ずさせてもらおう」

「それなら1日泊めさせてくれ。それで十分だ。それよりさっきの質問に答えてくれないか」


 村長から聞いた話を纏めると、昨日とある村人が木の実を取りに森へ行き夢中になっている内に縄張りに入ってしまっていたらしい。

 それに気付いた村人は直ぐに逃げ出したものの、執念深い鎧熊ならそのうち村まで追いかけてくるだろうということだった。


「入ったのは昨日か。それなら今晩にでも来るかな。村長、その村人の服を1着貸してくれ」


 ナキは村長から服を借りると荷物を村長に預けて森のある出入口に向かった。


「おや、さっきの旅人じゃないですか。また会いましたね」


 そこには旅支度を整えた青年騎士とその仲間たちがいた。

 全員、馬に跨がっていて青年騎士以外は荷物をくくり付けている。


「ここで会うということは村長のお願いを聞いたということでしょうか。全く。任務を終えたら討伐してあげると言ったのに。気の短いご老人だ」

「その間に村が滅ぼされるとは考えないのか。騎士様」


 ナキが聞くと青年騎士はしたり顔で答えた。


「精霊を司る偉大なるセイン神に祈りを捧げれば心優しきかの神は必ず助けて下さるでしょう」

「もしも助けてもらえなかったら?」


 続けて僕が質問すると肩を竦めて答えた。


「不信心な輩が死ぬだけです。なんの問題もありません」

「恐ろしい考えだな。アタシには理解できそうにないよ」


青年騎士はナキを見ると薄く笑ったが、目が笑っていなかった。心なしか淀んでいるようにも見える。


「それは残念です。貴方のように美しい人ならきっと神々の寵愛を受けられたでしょうに。私の名はランクルト・シュワルツ。貴方たちにセイン神の加護のあらんことを」

「ナキと……少年だ。祈りは有りがたく受け取っておこう」


 ランクルトは背を向けると森へ入っていった。

 

「あれが狂信者というやつか。この前のあいつといい、もしかして王国騎士十剣ってヤバイやつしかいないんじゃないか」

「ずっとニコニコしてたけど嫌な感じがする人だったね。あ、ていうかナキ! 僕の名前、忘れてたでしょ!」


 僕が問い詰めると途端にナキは目を逸らして答える。


「アタシが少年の名前を忘れるなんてそんな事があるわけないじゃないか。ヤダナァ、ハッハッハ」

「嘘だね! 覚えてるっていうなら僕の目をみて言ってみてよ。ほら、ほら!」


 そっぽ向いた顔を無理やりこっちを向かせようとナキの肩に足をかけて引っ張っるけどびくともしない。

 

「…………。ほら! 村長に頼まれた魔物(鎧熊)退治をしなくちゃ、な! さ、離れて離れて!」

「はっなっしっまで反らす気だ、なぁ!? もしかして本当に忘れたの!? この、人でなしぃ!」


 

 ここまで読んで頂いてありがとうございます。

 皆さんは少年の名前、覚えてますか? 私はうろ覚えです。スインツくんでしたっけ?

 ナキは少年の名前を聞いたのは自己紹介の時だけですし、それからはずっと少年と呼んでいるので名前を覚えられなくても仕方がないかもしれませんね。

 それでは次回も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ