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リリ






 またしても真っ暗な空間。

 しかし今回そこにいる少年。ソラは起きている。

 そして目線の先にあるのは小さな光。 ポツンとこのなにもない真っ暗な空間にある一つの光。無意識にソラはゆっくりとその光に触れていた。


「この光……温かい…」


 光に触れる。するとその光はまるで吸い寄せられるようにソラの胸の中に消えていく。







「あれ?なんだ夢か…さっきの夢は…体がポカポカする。あの光が俺の中に入ってきた時と同じ感覚だ」


 夢というのは起きた時には意外と覚えていないものだ。しかしソラにははっきりとさっきの真っ暗な空間。小さな光。すべてを覚えていた。

 そしてベットから起き上がり自分の体がいつもと違う事に気がつく。だが、ちょっと体がぽかぽかするだけであって他はなにも変らない。

 変ったと言えば自分の寝ていたベット。今まで自分が寝ていたベットとは違う。そう、ここは学院の保健室のベット。さらに言うと異世界の魔法学院の保健室にあるベットの上。

 不意に太陽の光が窓から自分を照らしている事に気がつき、その窓から外を見る。

 そこには真っ白で大きな校舎があった。

 昨日見たときは暗くてなにも見えていなかった、その大きさに内心はかなり驚いている。


「大きい…ここが魔法学院か、俺魔法のある世界に来たんだよな」


 昨日あった事を頭の中で整理する。

 ここはイース大陸。そしてレイズと言う国の魔法学院。

 そう。“魔法”学院。

 ソラは「はぁ」と軽くため息をついて、やっぱり夢じゃないのか…と落ち込む。


「母さん心配してるかな、俺これからどうなるんだろ……」


 もし、自分に子供がいるとしよう。その子供が突然姿を消したとなれば自分はどんな気持ちになるのだろう? やはり泣いてしまうのだろうか?

 そんな事を考え、自分の母親が泣いている姿を想像する。

 そして、理由は無いが自分の右手の平を見つめながら呟く。


「母さん……俺は母さんのもとに帰れるのかな?」

 

 もの思いにふけてると、すごく小さな声で「お~い」と聞こえたような気がした。

 誰かに呼ばれたのかと思い、辺りを見回す。しかし部屋には誰もいない… 気のせいかと思った瞬間にまた聞こえた。


「お~い」


 やはり聞こえた。今度はハッキリと聞こえた。

 再び部屋をさっと見渡すが姿がない。だけど呼ばれたのは確か。


「誰?」


 無意識にその声の主に聞くように小さく呟いていた。

 その瞬間に、ソラの目の前にわずか15cm程のローラより少し薄めの緑色の髪に紅い瞳の女の子が突然と姿を現した。背中にはうすい羽があり宙に浮いている。


「うわ!!」


 いきなりの事で手をベットにつき、後ろに倒れそうな自分の体を支える。 


「やっと見つけてくれた」

「よ…妖精?」


 小さな女の子をじっくり見て、ソラは目を丸くする。

無理もない。あきらかに人のサイズじゃない。さらに宙を飛んでいるのだから。

 軽く伸びをした小さな女の子は、今だに驚いているソラ頭の上にヒラヒラ飛んできて頭に着地する。


「あなた、アキナの息子でしょ?」


 顔を除く用に下を向いて質問してきた。


「え!?」


 さらに驚く。アキナとは自分の母親の名前だからだ。最初は聞き違いかと思い、もう一度聞くが、同じ言葉が返ってくる。

 ソラは、この異世界に着てからはもう驚きの連続。

 まずは自分と違う世界と言う事。

 次に魔法の存在。

 今、目の前にいる小さな女の子。もとい妖精?

 そして、自分の母親の名。

 ここが異世界だと言うなら母親の名が出てくるなんて事は思ってもみなかった。

 小さな女の子にアキナ、母親の事を聞こうとして話し掛ける。

 が、この小さな女の子をどう呼べばいいのかわからない。 


「えと……」

「リリって呼んで」

 

 小さな女の子はリリと言う名前らしい。性格は無邪気というか、人懐っこいというか、とにかく元気な子。

 

「じゃあリリ」


 頭の上にいることで、姿は見えないが目線を少し上に向け、小さな女の子の名前を呼ぶ。


「な~に?」

「君は何者なの?」

「私?見て分からない?」


 頭の上から降りて、目の前に羽をヒラヒラさせながら飛ぶ。

 やはりその姿は、ソラの知る限りでは映画や御伽噺なんかで出てくる妖精。

 ソラは迷わず聞いた。 


「よう…せい?」

「そ、私は妖精で~す、驚いた?」


 やはり妖精。

 誰が見ても第一印象は妖精としかいいようがないだろう。

 そのいたずらに成功した時の子供のような無邪気な笑みを浮かべて、クルクル回りながら笑顔で答えるリリ。

 実に絵になっている。 


「そりゃ、妖精なんて御伽話の中の存在だからね…… この世界には魔法以外に妖精までいるなんて、なんでもありだな、アハハ…」


 顔を少し引きつらせて力なく笑う。

 確かにもう笑うしかない。


 「この世界じゃ妖精は、私しかいないんだよ?」


 リリの言葉に「へ?」と間抜け顔をして驚く。

 ソラの知っている妖精というのは、ある程度仲間が何人もいるものだ。しかしリリは一人と言った、それは孤独という事だろうか?

 しかしそんな事は気にしない。といった感じで話を続けるリリ。

 

「それより、あなたアキナの息子でしょ?名前は?」

「え?俺? ソラ…名前しか思い出せないんだ。 今度はこっちが質問する。なぜ、俺の事を母さんの息子って分かったの?なんで母さんの事知ってるの?君は母さんとどうやって知り合ったの?なぜ――」

「ちょ!近いって。 それに一気に質問しないで」


 リリに顔が当たるんじゃないかというぐらいまでグイグイと近づけて聞くソラ。

 そんなソラをリリは鼻を押して顔を引き離す。


「ご、ごめん。 じゃあ、なんで母さんの事知ってるの?」


 今度はリリの目を見て、真剣な顔で質問する。


「だって、アキナは初めて私の存在に気づいてくれた大切な友達だもん♪」


 というと、やはり一人だったという事なのだろうか? そして初めての友達が自分の母親。

 しかし、おかしい事がある。元いた世界に妖精なんてのはいない…アキナはこの世界の住人じゃない。

 だとするとどうやってリリと知り合ったのか。

 その答えはアキナがこの世界に来た事があると言うこと。 

 確定ではないが、可能性は十分にある。 


「母さんはこの世界に来た事があるのか?」

「そだよーアキナはねぇ、ちょうどあなたと同じ歳の頃にここに来たのよ」

「やっぱりそうなんだ…あれ?じゃあ元の世界に帰る手段があるって事か?」


 やはり。

 そう思いあごに手をあてて考え込む。

 アキナがこの世界に来たという事は、帰る手段もあるという事。

 今は元の世界にいるアキナ。この世界に着たと言う事はなんとかして元の世界に戻れた。もしくは戻った。


「リリ、元の世界に戻る手段はあるんだな?」

「うーんあるんじゃない?アキナはここに来て3年ぐらいかな?そしたらアキナが突然消えちゃったのよ」

「え? 突然?」


リリにもう一度確かめるようにして聞く。

  

「そ、突然」


 が、やはり返ってくる言葉は変らない。

 元の世界に帰る手がかりを見つけたと思ったら、3年たっていきなり消えた。意味不明だ。

顔をふせて、小さくため息をついて落ち込む。

 そんな中、ふとある事を思う。


「あれ?そういえばリリはなんで俺が母さんの息子って分かったんだ?」


 ソラは一言もアキナの息子とは、誰にも喋ってはいない。それなのに、息子と分かるのだから、おかしいのは当然だ。


「だって、あなたアキナにそっくりだし、魔力もアキナとほぼ一緒じゃない」

 

 それだけ?と聞きたくなるが、ソラはなるほどと頷いてしまった。

 自分とアキナは確かに似ている… ぶっちゃけて言えばソラを女にすればアキナだ。普通に一緒に歩いてたらどこからどう見ても親子だな、と思われるだろう。

 その事を十分に理解しているから頷いた。


「双子って考えもあったんじゃないのか?」

「それは無いんじゃないかな? だってアキナが来たのは18~19年前よ? ソラほど若いはずないわ」


 それもそうだ。とまた頷く。 

 アキナは20歳でソラを生んで、今は36歳だ。今も変わらず綺麗だがどうしたって18~19年前と同じってのは無い。

 逆に同じだと色んな意味で少し怖い。


「そっか、そうだよな……」

「そゆ事♪それに私の存在に気づいてくれたのはアキナとソラだけなんだよ?」


 この話だと、リリは異世界の人にしか存在を気づいてもらえないらしい。

 だから初めての友達がアキナだったのだ。

 リリとそんな会話をしてたら「ウィーン」とドアが開き、ローラが入って来た。


「あらソラ君と…もしかしてリリ?」

「な!?」


 ローラにはリリが見えていた。リリは異世界から来た人にしか存在が気づかないはずが、なぜかローラにも見えていている…


「そんなに驚く事ないわよソラ。 一回誰かに存在に気づいてさえもらえれば、誰にでも私の姿を見れるのよ♪」


 そんな後からつけくわえた設定にソラは「なんだよそれ」と呆れる。

 だがローラに見えるのはいいが、リリを知っている、ソラは少し聞いてみる。


「あの…ローラさんリリの事知ってるんですか?」

「え?リリ?知っているもなにも、昨日話した異世界から着た女の子にリリはその子にいつもくっついてたのよ、それでその女の子と友達だった私も友達になったのよ。ね、リリ」


 頭の上にいるリリを見て微笑みながら話さす。

 ローラの言う友達とは、まさかと思いソラはもう一度ローラに聞いてみる。


「ローラさん、その女の子ってアキナって人ですか?」


 その言葉にローラは口を押さえて驚く。

 この驚きようからして、どうやらあたりのようだ。


「ソラ君、アキナの事知ってるの?」

「はい、アキナって人は俺の母親です」


 その瞬間ローラは床に手をつきなぜか落ち込む…


「アキナ…私、まだ結婚すらしてないのに。子供まで作っていたなんて……」


 どうやらアキナに先をこされた事に落ち込んでるようだ。

 やはり30代に入ってくるとそう言う事を気にする時期がくるのだろうか?

 まだ女性でもない、若いソラには分からない事。


「まぁこれで確定したわね、最初見たときアキナにそっくりだったから、もしかして異世界の人かと思ってけど間違いじゃなかった」


 以外に早い復活をして立ち上がりソラの顔をよく見る。


「アキナの子供かー。 本当にそっくりね、懐かしいわねーリリ」

「アキナはおもしろい子だったもんね」


 かなりおばさんくさい会話をしながら、リリと学生時代の事を思い出している。


「あの…ローラさんそれで俺はこれからどうすればいいんでしょう?」


 このままだと丸い一日思い出にひたっていそうになる。そんな事ソラは御免だ。

 なのでローラとリリの話に、割って入る。


「ん? ソラ君には7時ぐらいに学院長に会ってもらうわ。学院長は、アキナの事もよく知ったるし結構なじみや

すい人だから、緊張しなくていいわよ?」

「そうなんですか、ところで今何時ですか?」


 ソラはどこかに時計が無いか辺りを見回す。するとローラの目の前にいきなり薄い、半透明の青いモニターのような物が出てくる。


「今は…6時43分ね、そろそろ学院長室にいけば間に合うわ」


 固まった…時間にではない、ローラの出した青いモニターのような物にだ。

 たぶんこれが初めて見た、魔法?だった為驚くのは無理も無い。

 にしても時計がわりの魔法ってそんな物あるんですかね~。


「おーいソラー、早くいこーよー」


リリが固まっているソラ髪の毛を引っ張る。


「え!?あ、ああ…分かった、いこっか」


ベットから降りて、リリはまたソラの頭の上に乗る。そしてローラの後をついて部屋を出た。

読んでいただきありがとうございました

妖精はファンタジーには必要かな?と思いリリを早めに登場させました。

ヒロインは何人にしようか迷ってるんですよ・・・それと魔法を使う場面が全然でてきませんが、もう少しお待ちいただければちゃんと書きますので。

感想、アドバイス、お待ちしております♪

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