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レッドベリーのつぶやき

 私、目、見えちゃうんだよねー。

 それどころか、色もくっきり見えちゃうんだよねー。


 でも、みそっかすだったから生き残れた。



 今はなき私の故郷・赤の国では、見えない者じゃないと神子の素質はないとされた。


 見えない子は生まれつき心眼を持っているんだよー。いいなあ。

 目なんかに頼らない、霊的な世界をみることができて、すっごく歌や楽器が巧くて、精霊達を喜ばせる神の歌を歌うことができた姉さまたち。

 彼女たちは属性にとらわれず全ての魔法が使え、呪文の詠唱の代わりに音楽で魔法が使えた。鮮やかな長い赤髪をなびかせ赤く長い睫毛の目を閉じて歌う姿は幻想的でとても美しく、家族は私の誇りだった。

 皆で歌えば、いい精霊が集まり、そこに悪いものは入ってこない。歌うだけで国は年中結界に守られていた。

 国の最盛期、神子たちが奏でる合奏曲は自然界の摂理を凌駕した癒しの術さえ産み出した。


 だから、赤の国は長いこと平和で栄えていたんだろうね。

 十数年前まで誰にも侵されず平和に暮らしていた。


 詠唱なしの魔法だなんて、歌魔法の赤の神子じゃないとできないこと。

 ネズミ様に会うまでそれが私の常識だった。


 心眼を持つ者はもちろん王家に多かったんだけど、末っ子の私はみそっかすだった。だって色さえ肉眼で見えるんだよ。

 金の国とのハーフの異母姉様だってさすがに色は見えなかったのに、家族でたった1人、完全に見えた私。

 母様たちは優しかったけど、私は内心かなしくて、隠すために明るく振る舞う癖がついていた。でも見えない皆には口調でなにもかも分かってたかもしんない。まさに道化者の末っ子レッドベリーって感じだね。


 暗い部屋でひがな歌や楽器の練習ばかりしている家族と一日中一緒にいるのは居心地が悪かったから、私は昼はたいてい外で遊ぶか、本を読んでいた。

 王家にも巨大な図書室があったけど、それは主に宰相以下の「見える」臣下のためのものだったから、私は蔵書に自分で目を通せた珍しい王族でもあったのかな。


 例えどんな生まれでも見えなければ神学校に迎え入れられ貴職につき、尊敬された。反面、見える者は炎属性しか得意ではないため単なる乱暴者とされ、例え王家に生まれても他の道に進むことを余儀なくされた。


 王宮内の仕事や軍隊より、癒しの術に憧れがあった私。進路の分かれる6歳の時、魔力の詰まった髪を男の子みたいに束ねて、薬師の師匠に弟子入りした。

 歌はそんなにうまくなかったけど、普通の結界魔法ならそこらの結界師よりうまかったから、野外に出るのは怖くなかったしね。


 赤い実、緑の草、青い薬効のある石。見分けづらい薬草の葉の形。

 家族には見分けられないそれが、私には見分けられる。

 子供心なりにせっかく目が見えるんだから、見えなきゃできない癒しの術を極めたいって思ったんだよね。


 師匠さまは目の見える中では一番偉い地位にいる薬師だった。

 胸を躍らせ初めて同行した薬草採取の旅。

 その間に、私の祖国は落とされた。


 見える私たちだって他の国の人より耳はいい。助けを呼ぶためののろし歌だってある。

 だけどその日、戦争の音はしなかった。

 だから気づけなかった。

 国境沿いの森での採取を終えて家路に着いたとき、もうそこには見渡す限りの荒野に蠢くグールの巨群しかなかった。

 遺体も何も残ってはなかった。


 見える身分で商売に出ていた者達だけが生き残った。

 私たちは国を捨て、緑の国との国境線付近に隠れ里を作って隠れ住むしかなかった。そして十年ほどが経った。


 中立を保つ緑の民は交易もしてくれないので、服や道具を手に入れるためには敵(かたき)とはいえ金の国に忍び込むしかなかった。

 細々と薬草を卸して日銭を稼いでいた。

 見えるため外に出されたとはいえ一応王族出身で、未熟な私を商いに出すのは最初は反対されていた。だけど平民出身で見える者は炎以外は基本使えない。ステルス魔法が多少なりとも使えるのは私だけだったから。

 私はこれ以上仲間を失いたくなかったし、仕方なかった。


 いつもどおり魔法で髪の色と顔を隠して小さい村の裏通りの薬草店に薬草を卸に行ったときだった。

 数年来のなじみの店だったから気が緩んでいたのかもしれない。精算待ちの間に出されたハーブティーに毒が入っていたのだ!

 目が見えさえしなければ、するどい嗅覚で気づけたはずだった。悔しい。


 密告した薬草屋の裏口から押し入ってきた黒扉に捕らわれ、まず魔力の詰まった髪を切り取られ、弱ったところで指を切られた。

 痺れ薬が切れてきた頃にはもう隷属にされていた。

 赤髪はレアモノ扱いなのですぐに売れた。防具にするという。動物の毛皮扱いだね。ひどいな。


 私が金の民じゃないのは薬の質でばれたようだった。最初は緑の民かと思ったのに赤か、と言われた。

 いい品質の物をおろしてあげて損したよね。

 髪色隠しは完璧だったのに。悔しい。


 私はどっちかというと女というより珍獣扱いみたいだった。魔力が高い品を値段も高く売ろうというコンセプトの、城下町の黒扉の檻に入れられた。

 そこには他にも何人か魔力が高い人がいたが、隷属同士では靄がかかったようにお互いの顔や髪色はよく分からなかった。


 初めて売られた日は死にたくなった。


 戦争で皆と死ねば良かったと思った。


 膝を抱え込んで舌を噛もうとした。けれど隷属条件で縛られていて自死はできなかった。


「死のうとしてはダメですわ!生きててよかったって絶対思えますから!」


 自死ができないことを悟って呆然としていると、隣の檻の人に強く諭された。

 リーダー的存在であったその人に教えてもらったのは、ここはまだましだということ。


「絶対にいつか逃げられますわ」

「隷属だと逃げきれないんじゃないかな」

「主の黒扉が何らかの争いで死ねばチャンスはありますわ。他の黒扉に従わされるまでの隙に逃げるのです。それに、勇者候補召還がまたあるはずですの。隷属上書きできるほどの方が召還される可能性もありますわ」

「でも異世界の人がわざわざこんな地下室に来てくれるかな・・・」

「黒扉を恐れない異世界の方の方が、知らずに訪れてくださる可能性はありますわ」


 魔力ポーション代わりということは人間扱いされていないようで嫌だったが、逆に魔力がなくなればその日は店じまいだ。

 高値設定の店には単なる買春目的の客は来なかった。まだましなのは確かだった。

 とはいえ心が壊れそうになる。

 心が黒く塗りつぶされてしまうのはもうすぐではないかと思っていた頃。


 ある晩突然それは訪れたんだ。


 また新しく生け贄が連れられてきたけど私たちにはどうしてやることもできなかった。男たちが出ていってから優しい言葉をかけてあげることくらいしかできないな、と諦めた気持ちで俯き凶行を見ないようにしていると、派手な音をたてて黒い髪の女性が入ってきたのだ。


 バターン!!!

「○▽新聞で〜す!インタビューさせてくださ〜い!!」


 身体にフィットした黒い服と黒髪。

 慎重だけど黒扉を恐れてはいないまなざし。

 一目で異世界人だと分かった。


 シンブン?なんだろうそれ。

 最初はふにゃふにゃしていたその人。何で弱いふりしてるんだろう、とんでもない魔力の持ち主なのに。

 捉えられていた女の子が頬を張られたのをきっかけに、魔力を測る脳のない肉体強化系の黒扉達は順番に倒されていった。


 すごい。

 あんな戦い方、あるんだ。


 私たちの世界では、戦うときには殺すか隷属化かの2択しかない。

 赤の国にも女性の戦士はいたけれど、赤の軍は【進む後ろには消し炭しか残らない】と言われるような戦い方しかしなかった。

 昔見た、金の国との大戦前の小競り合いから帰ってきた戦士達の目は人を焼き殺した煤で暗く沈んでいた。


 なのにその人の目には全く殺気がなく、正気を保っていた。常識はずれにも急所は狙わず、手足を封じ戦力外にするためだけに戦っていたのだ。

 優しい、戦い方。


 この人、すごい・・・!

 それに、これって余裕がなきゃできないことだよね・・・! 


 私は目の前で起った3対1の争いに状況を忘れて胸が高鳴った。


 こんなすごい人が、女の人だなんて!!!


 檻から解放され、ルシアさん(そのときやっと呼び名をお互い知った)の提案にはもちろん全員賛成だった。


「私たちを貴女の隷属にしてください!!!」


 *************************


 隷属として憧れのネズミ様のパーティに入れてもらった私たち。

 町外れの勇者候補用宿舎に皆で来た。

 疲れてはいたけれど、数年ぶりに美味しい食事も出来たし、ネズミ様の魔力を頂き、恐れ多くもマインドクリアをかけて頂いてもうきゅんきゅんしちゃうくらい元気になった。


 そして夜明け前。

 私たちは、矢の形態から金の国の魔法戦士と思われるステルス射手集団と、巨大グールの混成大群体に襲われた。


 色とりどりの巨大グール。

 見た瞬間、一気に十数年前の故国の荒れ野原がフラッシュバックして動けなくなった。


 その後グールに立ち向かえたのはネズミ様のお陰だ。

 あそこまで巨大な個体はそうそう居ない。もしかしたら赤の国土を食い散らかした個体も混ざっていたかもしれないと思うと、少しは仇が打てた気がした。

 グールは食べられないから本当の意味での敵討ちではないけれど。


 *************************


 朝が訪れ、戦いが終わった。

 ネズミ様含む数人は安心したのか気絶したりその場で眠り込んでしまった。

 魔力切れを起こしているのだろう。


 私達、多少余力のある者たちは川沿いの空き家を拠点にして怪我人の看病をしながら、王宮や神殿が動きだすのを待った。

 ネズミ様が昨夜助けた神殿侍女のレーニアさんとそのお仲間の侍女の皆様がまもなく救援物資を持ってきてくださった。

 この物資の少ないときにありがたい!ネズミ様の人徳だよねっ!


 それともう一ついいことがあった。軍医だったというミーエのお父さんが、騒ぎを聞いて怪我人がいるかもしれないと駆けつけてくれたのだ。

 おかげでミーエはお父さんと再会できたんだよ!

 大けがの人もいたからほんとに助かったし、ほんとによかった!


 腰の重い神殿の神官達と王宮からの使いは昼過ぎにやっと来て、亡くなった人の調査などを始めた。

 その間に市民有志と勇者候補達で篝火の処置をした。

 ロッカの家は元々軍御用達の結界篝火の製造元だったので、今回の事で篝火が大量発注されたと言っていた。


 たった一晩で色んなことが起きた。


 ネズミ様達が来たから争いに巻き込まれた、とも考えようによって言える。

 でも、私たちの誰もあの地下室に居た方がよかったとは思っていなかったはずだ。


 *************************


 私とラスタ・グリーンは結界/見張り係として、怪我人とミーエ親子を守る為、拠点にした四角い建物の屋上で一緒にいた。

 私が考え事をしていると、半日ずっと黙っていたラスタが不意にこっちをむくと、指先でおでこをくりっとしてきた。


「炎、すごかった」

 あんまり喋らない彼女に褒められ、照れる。

「あ、ありがとデス」

 無表情なまま口をニィっとさせるラスタ。


 お互いステルスを掛けていない今は、その年齢不詳の美貌も美しいライトグリーンの髪も剥き出しだ。

 彼女は緑の民の血を引く者だ。今なら一目で分かる。放浪していると言っていたから、純血ではないかもしれないけど、それでも十分人間離れした美しさだった。

 あらゆる植物の精霊と通じるという長寿の種族。神の風で守られているという緑の国は、一度も戦火に襲われた事なく、詳しい場所さえ知られていない。

 中立で孤高の存在と言われている緑の民にまさかこんなところで出会うとは。


「髪切られてあれか。やるな」

 短い前髪をつんっといじられた。伝説の民になら、コンプレックスだった火魔法でも誉められたら嬉しい。

「えへへ・・・ありがとう。じゃじゃ馬っていわれてたからね。

 ラスタさんは・・・風か植物が得意なの?

 私、薬師見習いだから、もしよければ・・・落ち着いたら薬草のこととか教えてもらえますか?」

「お前は色、見えるのか?」


 どきっ。

 急な質問に心臓が跳ねる。

 緑の民なら赤の民が盲目至上主義だと知っていてもおかしくない。

「え、と、・・・うん。見えるよ」

「いいな。自分は色、見えない」

「え!いいじゃん!」

「見える方が植物に好かれる。形でしか区別できない。薬草、自分はへたっぴだ」

「え、そうなの?」


 緑の民は見える方がいいらしい。赤と緑だと価値観が違うんだなあ。

「じゃあ・・・私が色についてはフォローするよ。私が教えられる物があったら教えるし何でもするから!

 お願い、緑の国の薬草のこと教えて」

「いいぞ。自分も赤の歌には興味があった。ルシアどのの結界があるときに教授してくれ」

「私歌はへたっぴだよー・・・。でも楽譜は全部暗記してるから。今度教えるね」

「楽しみにしている。旅に出てから何と運が悪いことよと思っていたが、今度は運が向いてきたようだな」

「あはは!そうだね!」


 近寄りがたいと思っていたラスタとちょっと仲良くなれた頃。

 屋上にルシアさんがサリユさんを伴って上がってきた。

 防音結界が広がる。


「談笑中すみませんですわ。少しだけお時間をいただけませんこと?」

「あ、はい。どうしたんですか?」

「金の国民を代表して、皆様に謝罪させて頂きたいんですの。

 この通り・・・申し訳ありませんでしたわ。どれだけ謝罪しても足りませんわ」

 ルシアさんは私たち3人に跪いて謝罪の礼をとった。


「えっ、えっ・・・やめてください、ルシアさん。なんで・・・」

 うろたえる私の横で、サリユさんは無言で複雑な顔をしていた。


「ルシアどの。自分は貴女に謝られるのはおかしい」

 ラスタがきっぱり言った。

「いいえ。ラスタ・グリーンさん。緑の国は永世中立国。それなのに緑の民でいらっしゃる貴女を、捕虜や隷属にしてしまったのは、我が国の誤りですわ。例えそれが黒扉によるものだとしても、本来金の国が賠償すべき問題。しかしこの乱世ではまともな補償もされない・・・本当に申し訳ないですわ」

「ん・・・。」

 ラスタは複雑そうに口をつぐんだ。


「そしてレッドベリーさん、サリユさん。

 若い世代は知らないことでしょうが、偉大なる赤の国と清らかな氷の国を歴史から抹消してしまったのは、間違いなくわが国ですわ。本当に謝っても謝り足りない思いです・・・」


 黙っていたサリユさんが口を開いた。

「その前に聞きたいことがあるの。髪の色がはっきり見えるのはネズミ様みたいなサーチアイ持ちの方でないとおかしいわ。何故すぐ私が氷の民だって分かったのかしら?」

「私のサイレントは魔法封じでもありますから。私の結界内では私に対してのステルスも効きませんわ」


「そうだったんだー・・・」

 防音魔法の事は昨日まで聞いたこともなかったから、私が単純に感心していると、サリユさんが水色の睫毛を伏せて重くため息をついた。

 そして目線をあげて毅然と言った。


「国が滅びた訳が分かったわ。

 そういうことだったのね・・・。

 でも、国と国レベルの戦争についてルシアさん1人にどうこう言うつもりはないわ。ネズミ様に対する感謝の気持ちで繋がっているうちは、私たちは敵ではなく仲間だと思うわ。

 過去の人対人の大戦を知らない世代の子達には遺恨を悟らせない。

 これでいいわね?

 レッドベリーも・・・そういうことでいいかしら?」


「えと・・・」


 淡々とした口調で一気に話したサリユさん。いきなり向き直られて私は慌てた。

 難しい事情は分からなかったが、サリユさんの出身は氷の国で、金の国に昔滅ぼされたということなのだろう。

 氷の国については昔本で読んだくらいしか知らないが、氷魔法も詠唱が必要なはずだから、魔法を封じられて敗戦したのだろう。

 というか、赤の国も・・・。


「そう、だった、んだー・・・」


 魔法主体で、歌と集団詠唱の炎が主力の赤の軍。

 金の軍は魔法こそ劣るが肉体強化派が多いと聞く。

 音を封じられたら、どうなるか。


 ルシアさんとサリユさんの言葉がやっと実感を伴って入ってきた。


 母様・・・、姉様。

 そうやって、はかなくなられたのですね。


「う、う、う〜・・・ッ」


 今は泣きたくなんかないのに、涙がこぼれる。 

「申し訳ありませんわ、レッドベリーさん」

 ルシアさんが謝罪の礼を深くした。

 別にルシアさんに謝ってほしくて泣いてる訳じゃない、ただ・・・。


 色々な思いが交錯する。


 故国に戦争を仕掛けた金の国は心底恨んでいる。

 だがルシア個人には感謝と親しみがある。

 金の国の民にだって、いい人はいる。金の国も一枚岩ではなく、国の中で酷い目に遭っている金の民もいると今は分かっている。今回一緒に頑張った人たちには親近感が湧いていた。誰でも恨む訳じゃない。

 当時の軍や戦士だけを恨めればいいんだけど・・・。

 思いはまとまらなかった。


「え、う、・・・私、 ・・・」


 どう考えたらいいか分からなくなったとき、そっとラスタが背中を抱いてくれた。


 途端、押し寄せてきたのは目まぐるしい体験の記憶だった。


 皆で同じ苦しみの底を味わったこと。

 皆で解放され、歓喜したこと。

 全員一致でネズミ様の隷属となったときの一体感。

 そして、各々精一杯の力を出して乗り切った昨夜の嵐。


 短い間のとんでもない濃い体験が、十数年前の故国の悲惨な思い出を上書きしていた。


「許す、とか、そういうんじゃないです・・・。

 ・・・、私たち、同じ苦労したから、なんていうか・・・

 今は・・・同じ境遇っていうか・・・だから・・・」

 何とか思いを絞り出すと、ラスタの反対側からサリユさんの腕が添えられた。

「・・・私もそう感じているわ」


 3人で歩み寄り、うずくまるルシアさんの震える肩に触れた。

「私たち、一緒にネズミ様を支えましょう」

「はいっ!そ、それですっ!それが言いたかったんですっ!」

「ん。協力大事」


 4人の視線が合ったとき。


「ぎゃあ!!!やばい朝刊落としたァッ!!!」


 涙目で顔を上げたルシアさんが何か言う前に、階下からネズミ様の大きな叫び声が聞こえた。

 チョウカン?なんのことだろう。


「ネズミ様っ!

 皆!ネズミ様の意識もどったよ〜っ!」

 続いてミーエの声が聞こえた。

 皆が集まるざわめきが聞こえる。


「下!下行きましょうっ!ほらっ!」

「ええ・・・。先に行っていてくださいな。代わりに見張りしておきますから」

「え、えー・・・?」

「いくぞ。涙ふかせてやれ」

「えー?私だって顔めちゃくちゃ」

「お前はいいから」


 ラスタに腕を引かれて1階に降りると、ネズミ様の周りに人だかりが出来ていた。

 両足をぐるぐる巻きにされて横になったネズミ様が四方八方から話しかけられ、あわあわしながらも手帳を取り出した所だ。

 顔を見たら色々吹っ飛んでしまった。


「ネズミ様っ!」

 ぐしゃぐしゃの笑顔で駆け寄ると、ネズミ様もすぐ気づいて声をかけてくれた。

「あ、レッドベリー!助けてくれてありがとう!

 って言うの遅れてごめんね」

「そんな・・・こちらこそです、ネズミ様!」


 また涙がぼろぼろこぼれてしまう。

 あー。年下の子達ばかりなのに恥ずかしい。

「あの、・・・ほんとにご無事で、よかったですっ!!

 あ、あの・・・私、お役に立ててよかっ・・・

 グスっ、私、生きてて、よかったですぅ・・・!!」


 ネズミ様は半身を起こして抱きしめてくれた。


「レッドベリーが生きててくれて、私も嬉しいよ」

 優しい手が短くなった髪を撫でてくれる。

 触れた所から魔力が通って温かくなる。


 あーん、ネズミ様ぁ!

 どこまで私をきゅんきゅんさせれば気が済むんですか!!!


 ほんとにいきてて、よかったよぉ!

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