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魔力測定→ジョブ判明

今回は長いです。

 さて、皆外に出る用意が整ったようだ。


「では行きましょう、皆様」


 ドアをガチャガチャやってたのが神官とも限らない。

 私が最前列、拘束魔法の使い手マナ、アザラが二列目、他は後衛で隊列を組んで、万を辞してルシアの号令でレッドベリーがドアを開けた。


 案の定ならず者だった。

 が、1人だ。

 普段なら先手必勝一撃必殺!のところだが、今回は情報が欲しいので、まずは片膝を外して腕をねじりあげた。


 と、いうところで。

「きゃっ・・・!」

 ロージィとマナが男の顔を見て青ざめた。


 ーーーこいつ!この子達にひどいことしたな!


 今回は余裕あるから穏便にいこうと思っていた気持ちが消え去る。怒りのあまり、

(もげろっ!!!)

 感情を込め股間を蹴りあげる。

 するとポーン!と股間から”それ”が飛んでいった。


 ・・・あれ?


「なに、今の?何か飛んでったよね?」

 転がる男を見ても服は破れてはいない。

 男は股間を両手で押さえて泣きわめいた。


「ないー!俺のものがないぃ!」


 おいここ、階段だぞ。転がり回られると邪魔だ。


 魔法のある世界だし、何が起ってもおかしくない。思わず念じながらキックしてしまったから呪いの魔法キックになっていたのかも。

 なんにしても性犯罪者にはちょうどいい私刑じゃない?偶然とはいえ我々にとっては運のいいクリティカルだ。


「女の子に悪さをした罰だよっ!反省しろ!!」

 言い捨てて、とりあえず数人に後を任せて階段を上り外に出る。

 ロージィとマナがちょっといい気味って顔をしてくれたのが救いだ。



 警戒しながら外に出ると、ラスタ・グリーンが呟いた。

「・・・雨魔法のニオイ・・・」

「確かに。ネズミ様、雨魔法をお使いになられたのですか?」

「え?いや、そんなことないと思うけど」


 確かに制服の子が連れ込まれるのを見た後、どしゃ降りが降ったけど、あれは自然現象だろうと思う。今もどんより曇ってるし。


 それよりも、さっき白い髪の人を見たんだった。

 思い出して急いで周りを見回したが、やはりもういなかった。

 女性の顔自体、昔の事だからちゃんと覚えてるわけじゃないけど、あまりに雰囲気が似ていた。気にかかる。

 後でまた探してみよう。


 見回していると、明るい方の角に神官が居るのを見つけた。

 こん棒、ハンマー、包丁で武装した男達を連れてきていた。が、こちらをうかがうだけで寄っては来ない。

「中のならず者4人はやっつけましたよ!」

 と叫ぶと、ようやく安心したようで、寄ってくる。


「見張りもお願いしたはずですが」

「最初は見張ってましたよ〜!

 でも知らない人は召還できないからしょうがないでしょ〜。

 歩きで近所の自警団を呼びにいってたんですよ〜」

 全くぼんやりした神官だなあ。


「私が地下に入る前すれ違った、白い髪のほっそりした人がどちら側に行ったか見ましたか?」

 ともかく最初に聞く。

「え?そんな人見てませんが~」

「ええ?側にいましたよね?ほら、急に雨が降ったとき」

「分かりません~」


「ところで異世界のおじょうちゃん・・・何がどうなってるんだ?」

 私たちを遠巻きに見ていた自警団の人たちだが、男の”もの”が黒扉の前に落ちているのを見つけてしまい、ますます訝しげな顔をして話に割り込んできた。


「ええと・・・女性を助けようと、暴漢を蹴っ飛ばしたら取れちゃいました」

「やりすぎじゃないのか。

 そちらの世界では犯罪者は去勢するのが常識なのか?」

「あいつらを無駄に刺激して怒らせるのはやめてくれ」

「後で近所の俺たちが突き上げられて迷惑するんだ」

 自警団の男達は苦い顔をして口々に言う。


 黒扉のマフィアを敵にまわすのは無理だ。異世界の勇者候補が相手してくれるなら助かるがとばっちりはごめんだ、と言う言い分だった。

 なんとも微妙な言われ方だ。


 うーむ。これくらいであーだこーだ言われるなら中を見たらなんて言われるかしら。

 ここはとっとと逃げるに限るな。

 神殿でのスキル・適性の検査待ちの時間に抜け出してきている訳だし。


「ええと〜わざとじゃないんですよ。

 あの、神官様、私・・・」

 とぼけて神官の袖をひいて、神殿へ帰ろうよ、と目配せする。

「ああ、そうでしたね〜。

 そこの者、トイレを貸してください」


 ・・・このタイミングで被害者にこれを聞くの?


 ある意味神官の神経を疑ったが、とりあえず助かる。

 こいつ意外とわざとだったら・・・くわせものかも。


 場の空気を読んだルシアが案内してくれようとする。

「お手洗いですか?・・・わかりました、こちらですわ」

「では急いでいってきてください〜」


 まさかの黒い扉に逆戻りだ。

 そこで、レッドベリー、アザラ、ロッカ、ノンの4人が、去勢された男を縛り引き立てるようにして、下から出てきた。


 すると。

「おめぇ、ロッカ・・・!ロッカじゃねぇか!!!」

「と、父ちゃん!?」

 さっきまで渋い顔をしていた自警団の中でも、特別ごねていたごつい髭面男が、ハンマーを取り落としてロッカに駆け寄り抱きしめた。


「お前、生きてたんだな!ああ、よかった!ああ、ロッカ・・・!!

 ありがとう神よ!」

 身内に会って気が緩んだのだろう、ロッカは急に涙をこぼした。

「ふえええ、父ちゃぁん・・・!怖かったよ~」

「ごめんな、父ちゃん助けてやれなくてごめんなぁ〜」

 父親も顔をゆがめる。2人とも抱き合って泣き出してしまった。


 繰り広げられる父子の感動の再会。

 さっきまでブチブチ言っていた他の自警団メンバーも一転して涙目になっている。

 もしかしたら被害者家族による自主団体なのかもしれない。


 自警団のうち1人の身内を助けたということで、その場はいい雰囲気でうやむやにする事ができた。

 ロッカはとりあえず実家に帰ってもらって、手伝ってもらう事ができたら宿舎に通いで来てもらう事にする。むしろ鍛冶屋さんに居てもらった方がのちに頼める事もありそうだ。



「皆も・・・家が近い人は、帰っていいよ?」

「いえ。皆さん家の状況が分かりませんので、いったん宿舎にお邪魔させて頂ければと思いますわ。

 今は集団行動の方が安全です」

 なるほど。この国は戦時中みたいなもんなのだから、家族も元気でいるかわからない。

 今帰しても、夜の空き家に女1人になってしまう危険性もある。

 家族が無事だとしても、皆がロッカの親のようだとも限らない。指を切られている者が差別対象だというなら、家族や近所からの迫害もあるかもしれない。

 無事帰れるかどうか確かめてからの方がいい。


「うん・・・わかった。

 というわけなので、神官様、宿舎に泊まらせたいのですが、よろしいでしょうか?」

「え〜と・・・帰って確かめないと部屋数が余っているかわからないけど、とりあえず最低雑魚寝でよければ大丈夫だよ〜」

 うわ、ゆるくて助かる。ありがたい。



 去勢男の言葉によれば、この地下室を根城にしていたグループは今回とらえた四人だけだという。とりあえずはよかった。

 黒扉マフィアは少人数グループに分かれて各地で裏商売をしているようだ。

 ここのグループには全体像は知らされていなかった。神殿のそばのシマだから、捕らえられて情報が漏れても困るだろうし、腕力自慢だけの脳筋メンバーなのかもしれない。


 捕らえた男達を自警団は受け取りたがらなかった。

 結局、神殿預かりにするため後で神官が人をよこすという。

 ルシアに目配せすると、指さえ取っておけば隷属上書きもできるし大丈夫だというので、任せることにする。


 私と隷属契約した今の状態ならば、神官たちも手出しはできないというので、ロッカ以外の皆を連れて神殿に戻ることにした。


 さっきは全力疾走したが、神殿への道は歩くとほどほど遠かった。

 ルシアに話しかける。

「さっき魔力目減りしたみたいだったけど、大丈夫?歩ける?」

「あれくらいなら寝れば戻ります。動的部分なので問題ありませんわ」

 先を歩く神官をチラッとみて、ルシアは私と自分の周りに人差し指で輪を描く。

 円柱状に防音魔法が展開された。


「まだ研究中で、あまり知られていない説なので内緒話ですわよ。

 私どもは、魔力には【静的魔力】と【動的魔力】があると考えていますの」

「せいてき魔力と どうてき 魔力?」

「Static magical forcesとDynamic magical forcesですわ」


「どういうこと?」

「【静的魔力】は基礎値と申しますか、経験で育つ魔力です。

 魔法の精度を上げます。

 攻撃を受けても、攻撃をしても、消耗しにくい部分です。

 無くなるのは死ぬときですわ。

 【動的魔力】は、触れ幅がある値です。

 魔法のパワーを上げます。

 術者の感情や、環境によって増減しますの」

 ちょっと理解が難しい。

「んーと。。。ちょっと具体例をお願いします」


「私の静的魔力が10だとしたら、動的魔力は0〜5です。

 さっき減ったのは平常時の動的魔力、3です。

 基礎の10があるので活動に問題はありません。

 ただ、魔法の精度は落ちていませんが、強い魔法は使えません」

「なるほど」

「私たち【文化系】が文化系である所以は、使えるスキルだけではなく、動的魔力より静的魔力の割合が多く、動的魔力の触れ幅が小さいことだと考えると納得がいきますの。

 私たちでも火や水など攻撃に転用可能なスキルも使えるようになりますが、基本的に喜怒哀楽が【戦闘系】ほど激しくなく動的魔力最大値が小さいため、大火力の攻撃魔法は望めません」


「その仮説だと【戦闘系】は感情の起伏が激しいってことで理解あってる?」

「おおむねそうですわ」

「んで、【文化系】は細かい作業にはむいていても、精神的に安定しているので火事場の馬鹿力的なものはない。

 【戦闘系】は静的魔力が低いと狙いを外す事もある。でも怒り狂ってたりすれば動的魔力が上がっていつもの実力以上に大火力の攻撃魔法も使えちゃうってこと?」

「そう考えれば色々納得できるのですわ。

 例えば、先ほどのならず者の一人は【戦闘系】で、静的魔力はわずか2ですが、動的魔力が0〜20ですわ。

 彼が精神的にダメージをうけている時であれば、楽勝です。

 お互い平常時であれば、いい勝負となります。

 ですが、彼が精神的に高ぶって動的魔力を高めているときであれば最大で22。私は最大15なので勝てませんわ」

「なるほど。参考になりました」

「ネズミ様の計測結果が楽しみですわね♪」


 などと女子トーク(?)をしているうちに神殿に着いた。


「もどりましたあ〜」

 へらっとしながら、若い神官は私たちを連れて大広間に入った。


「遅かったな、何をしていたのじゃ?その女達はどうした?」

 ムッとした様子の大神官にぺこぺこしつつも、怯えてはいない。

 神経太いな。

「女性のトイレを借りに行く途中で偶然黒扉に囚われた民間人を発見しまして~、救助作業をしておりました」


「黒扉」という言葉に、大神官達は驚いたようだった。

「リーケ、おぬしいつの間にそこまで腕が立つようになったのじゃ?」

 この若い神官、リーケっていうのか。

 名前まで小池(こいけ)に似てるな。

「え〜と〜。僕じゃなくて、トイレに行きたがってたこの勇者候補が戦闘しました〜」

「何っ?!」

「女だぞ?!」

「来たばかりじゃないか?!」

 壇上の神官達も反応してざわめく。


「そうですね〜。

 でも現場にこの人のものと思われる魔法の痕跡が残っていましたし、間違いありません〜」

 途端に大神官が私に強い視線を向けてきた。

「まず審査を受けてもらおう。

 おぬし、名前は?」


「えー・・・ネズミ、です」

 不意に名前を聞かれて一瞬つまるが、何とか偽名を答えられた。

 あぶないあぶない。


「勇者候補ネズミ。魔力測定器に入るが良い」

 別の神官に指図され、行列の先に入れられる。

 う、なんか悪いなあ。

 並んでいた勇者候補たちに会釈して身振りで謝る。


 そのとき。

「お待ちください」

 宝飾品細工職人の娘、キスカに腕をひかれ小声で止められた。

 キスカは何か呪文を呟き目を細めていたが、すぐに腕を放した。

「ネズミ様、大丈夫です。

 魔力測定器に束縛魔法や呪いはかけられていません」

「そっか。ありがと・・・」

 なるほど。神官たちは力の強い者を支配したいって立場なんだもんね。

 できる仲間を持って助かる。


 魔力測定器は、ごつい棺桶みたいな外観だった。

 厚いフタを開けてみると、中はカプセルホテルのカプセルみたいな感じだった。

 入ってフタをされると真っ暗で、狭所恐怖症だったら発狂しそうだなーという状態。

「測定します」

 外から神官の声が聞こえたとたん、全身をスキャンされている感じが始まった。


 なんとなくむずがゆい。隷属契約したときと似たような体の熱さが帯状に走る。

 しばらくむずがゆい感覚に耐えていると、あっけなく測定は終わった。どんなしくみだろう。


 外に出るとさっきの神官が結果を読み上げ始めた。


 私の魔法適性は【水】だという。


 元の世界ですでに身につけているとされた主なスキルは下記の通りだ。


【暗殺者】

 サーチアイ:従来レベルMAX

 ストーキング:従来レベルMAX

 聞き耳:従来レベル3

 急所攻撃:従来レベル3

毒耐性:従来レベル3

 マインドクリア:従来レベル2


【戦士】

 徒手格闘:従来レベルMAX


【魔法使い】

 翻訳魔法:従来レベルMAX

 水魔法:従来レベル1


【マッパー】

 速記:従来レベルMAX

 伝書鳩:従来レベルMAX

 念写:従来レベル1


「魔力は・・・振りきれました!100以上、計測不能です」


 ひきつった顔で神官が読み上げると、まず神官たちに大きなざわめきが広がる。

「「「「おおお!!」」」」

「女で勇者だと!初めてだぞ!」

「しかも初日に!なんということだ!!」

 勇者候補たちも口々に各自の言葉で騒ぎ出した。


「みなのもの!・・・静粛に!」


 大神官が両手を掲げて辺りを制し、拡声魔法で宣言した。


「3つ以上のジョブ、6つ以上のスキルを極めた者、名をネズミ!

 本日をもってこの者に、【女勇者】の資格を与える!!!」


 そしてまた、こういった輩すべてに共通するように、下記の言葉を付け足した。


「今までのどの代も成し遂げられなかった、即日勇者化する優秀な人材召喚という偉業を、他でもないこの私が成功させたということは、永く歴史に刻まれるであろう!!!!」


 あくまで自分を誉めるのね。

さーて、やっとスキルや属性、呼び名も分かった女勇者! 次回も水曜更新です! 「たららったらー。仲間をてにいれた。」

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