第六十七話:晴れ渡る空と、最高の大演奏会(最終話・大団円)
ドォォォォン……!
鬼の影が完全に消滅し、王宮を覆っていたドス黒い雲が嘘のように晴れ渡っていく。
崩れた天井からは、北の大陸では滅多に見られない、温かく澄み切った太陽の光が差し込んでいた。
「はぁ……はぁ……終わった……んだよね?」
トウマが刀を消し、その場に膝をつく。
すると、倒れていたカズマがゆっくりと体を起こした。その瞳からは邪気が完全に消え去り、かつての誠実で穏やかな輝きを取り戻していた。
「……う……うむ……」
カズマはまぶしそうに空を見上げ、そして自分を介抱しようと駆け寄ってきたトウマの顔をまじまじと見つめた。
「……あ、兄上……? 申し訳ありません、兄上……私めは鬼の妖気に呑まれ、失態を……」
トウマの顔を見て、実の兄である『天神フウマ』と見間違えたカズマが、深々と頭を下げた。
トウマは照れくさそうに頭を掻きながら、笑った。
「あ、ハハハ! 俺はフウマさんじゃなくて、その子孫のトウマだよ! カズマさん、無事でよかった!」
『そうじゃぞ、カズマ。お主が眠っておる間に、なんと千年の月日が流れてしまったのじゃ』
天狐がポンとカズマの膝に乗ると、カズマは目を見開いて絶句した。
「せ、千年の時……!? そんなに長く……!? ……そうか、では兄上ももう……。……トウマよ、我が愚行を止め、救ってくれたこと……心より感謝する」
カズマは涙を浮かべながら、トウマの手を力強く握りしめたのだった。
◇
数日後——首都ザイールの広場。
闇の軍団の脅威が去り、街には活気と人々の笑顔が戻っていた。
レジスタンスの勝利と北の大陸の解放を祝い、街全体を巻き込んだ『超巨大な大宴会』が開催されていた!
「さあさあ! 食べ物も飲み物も山ほどあるぞー! 浴びるほど飲んでくれ!」
アーサーが巨大な肉を豪快に頬張り、レジスタンスの兵士たちと歓杯を交わす。
ソフィアも上機嫌にグラスを傾け、シオリは街のこどもたちに囲まれて楽しそうに笑っていた。
そして、宴が最高潮に達したその時——!
「みんなー! 約束通り、大演奏会を始めるよーっ!!」
トウマの威勢の良い掛け声とともに、中央の特設ステージに旅の一座と仲間たちが勢揃いした!
トウマの三味線! シオリの横笛! アーサーの二胡! クリスのヴァイオリン!
そして全体を統率するのは、タクトを掲げた指揮者・ソフィア!
それだけではない。
空には真の姿となった鳳凰と麒麟、青龍が美しく舞い、ステージの周囲では九本の尾を誇らしげに振る天狐が、音色に合わせて光の演武を繰り広げる!
ベンベンッ! ピーヒャララ〜♪ ギィィン……!
かつてない豪華で、温かく、聴く者の心を揺さぶる最高の「希望の合奏」が街中に響き渡る!
「すごい! 素晴らしい演奏だぁぁぁっ!」
「万歳! 旅の一座万歳! 四聖獣様万歳!!」
集まった大勢の民衆やレジスタンスから、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。
「ヨッシャー! 最高の演奏会になったね、師匠!」
トウマが三味線を弾きながら笑顔を向けると、肩に乗った天狐がフンスと誇らしげに鼻を鳴らした。
『ふん、当たり前じゃ! これも全て、お主が諦めずにワシの尻尾を集めてくれたおかげじゃな。感謝しておるぞ、トウマ』
「へへっ、どういたしまして! ……よし、この大陸が平和になったら、次はまた見たことない新しい町へ演奏旅行に行こうよ!わんちゃん!」
『犬ではないわ! まったく… どこまでも付き合うぞ、我が相棒よ!』
青い空の下、響き渡る最高の音楽と人々の歓声。
失われた九つの尾を取り戻し、世界を救った少年と神獣の旅は、最高の笑顔とともにフィナーレを迎えるのだった。
(『ただ三味線を弾いて暮らしたい俺、うっかり九尾の狐の封印を解いて冒険に出される』完)
これにて最終回です。読んでいただきありがとうございました!




