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カガミ領にて①

 カガミ家の屋敷に到着したオレ達はそのまま応接室に通された。

 そして金髪美女に勧められるままオレたちは席へ着いた。


「タケル、ウェンディ、あの方は私の母上とも親交のあったキアヴェリ殿だ.まずは自己紹

介をしなさい。」


「「は、はい!」」


「はじめまして。僕はタケル・シングウともうします。今年で8歳になります。よろしくお願いします。」

「は、はじめまして。わたしはウェンディ・シングウです。兄さまと同じ8歳です。よろしくお願いします。」


 オレは子どもらしくも、礼儀正しい元気さを意識してしっかりと挨拶した。

 ウェンディも少し緊張していたが、立派に挨拶をしていた。


 「………………。」

 

 なんだ?この沈黙。

 キアヴェリ様 (?)は視線をこちらに向けたまま固まっている。

 隣の女の子は変わらず無言でこっちを見ているだけだ。


 「……ゴホン。キアヴェリ殿?」

 見かねたアンが促してくれる。


「あ、ええ。ごめんなさいね。偉いわね、二人とも。私はキアヴェリ・カガミ。カガミ家の当主でアンネリーゼちゃんが小さいころからのお友達よ。よろしくね。」

「「はい!よろしくお願いします!」」

 そう返事を返すと彼女は、にっこりとほほ笑んでくれる。


 キアヴェリ様はアンの幼馴染か。

 見たところ仲は悪くなさそうだし、良かった。


「ほら、カレン。あなたも挨拶しなさい。」

 そう言って、キアヴェリ様は隣に座っている金髪ツインテールの女の子を促した。


「……はあ。カレン・カガミよ。10歳になるわ。よろしく。」


 どうやらアンとは面識があるらしく、オレとウェンディに向けて挨拶するが、とてもそっけない。

 というか、オレのほうには一瞥をくれただけでほぼウェンディに向かって言っている。


 初めてだな。

 この世界にきて好意的な反応を示してくれない人は。

 やっぱり、領主の息子って立場で今まで恵まれていたんだろうな。


 うん。この人とも仲良くなれるようにもっとしっかりしよう。

 まずは返事からだな。


「よろしくおねがいします!」

「よ、よろしくおねがいします。」

うーん。ウェンディは少し気圧されちゃっているな。


「……ふん。」


「こら。ごめんなさいね。気難しい子で。さて、まずは汗を流してからご飯にしましょうか。」

 なんていうか、隣の領主の家なのに親戚の家に遊びに来たような感じだな。


 そうして、オレたちは勧められるままにお風呂を頂いて、食堂へと集まった。

 我が家の風呂と同じくらい広い風呂で親子三人仲良く入浴できました。


 「ふう。お風呂ありがとうございました。」

 「いえいえ。大したおもてなしもできずごめんなさいね。」


 そういうテーブルの上にはなかなかの御馳走が並んでいる。

 どちらかというと魚よりも肉寄りか。

 「うわぁー。すごいごちそうだね。兄さま。」

 「そうだね、ウェンディ。美味しそうだね。」

 「ふふふ。遠慮せずに沢山食べてね。」

 「何から何まで申し訳ない。」

 そして皆で、祈りの動作をして (前の世界で言う『いただきます』のようなもの)食べ始める。


 ……しかし、カレンはずっと仏頂面だな。

 まずはコミュニケーションだ!

 コミュニケーションは大事。会話は大事。


「えっと、カレンさん。」

「……なによ。」

 お、リアクションがある。


「えっと、僕たちここら辺に来るの初めてなんです。よかったら色々教えてくれませんか?」

「いやよ。」


 一・刀・両・断!


 つまらぬもののように会話は切り裂かれてしまった。

 取り付く島もない。


「こら!この子はまったく。ごめんなさいね、タケル君。カレン、なんですか?その態度は。」

「……だってアイツなれなれしいんだもん。」


 うむぅ。なかなかに難しいぞ、この子は。

 すねた顔は可愛いんだけど。

 ……オレ何もしてないよな。

 清潔感にも態度にも気を付けているつもりだけど。


 ……空気が重い。


「お、おほん。しかしカガミ領も順調なようで何よりですな。母上が倒れた折から何かに付けてご援助していただき本当に感謝しています。忙しく無沙汰になってしまって申し訳ございません。」

「い、いえいえ。アンネリーゼちゃんと私の仲じゃない。水臭いわよ。そんな固い話は明日にして今日はゆっくりしてちょうだい。」

「ありがとうございます。」

 アンがちょっと強引に話題転換を図る。

 これでまた、ちょっと話しやすい空気になったかな。

 さすがです。


 「しかし、タケル君って男の子なのにとてもいい子よね。」

 キアヴェリ様に、うっとりと目を細めながらそう言われると恥ずかしいものがあるな。


 「ははは。自慢の息子ですゆえ。」

 おっと、母様?食べているときに抱きしめられると危ないですぞ?

 おや、ウェンディさん?腕にしがみつかれると食べられないんですが?


「あら、ごめんなさいね。タケル君は取らないわよ。でも……タケル君?これ美味しいわよ?我が家の自慢なの。」

 そういって美味しそうなステーキ肉を差し出してくるキアヴェリ様。


 う、両隣からの視線が痛い。


 くっ。

 しかし、これは食べるしかないぞ。


 ……パクッ。


 「「!?」」


 「もう一口いかが?」


 ……パクッ。


 「「!?!?!?」」


 「タ、タケル?これもなかなか美味だぞ?」

  アンまで参加しなくても……。


 「兄さま。ウェンディもそれが食べたいです。」

 そして妹よ。

 腕から離れたと思ったらこちらに控えめに口を開けて待ってるとは。

 なんというプレッシャー。

 

 ええい。この程度どうということはない。

 

 ……そっ。

 「ぱくっ。」


 ……なんだこの破壊力は!

 うちの妹はばけものか!?


 気が付いたらオレは食べ物をそっと差し出すマシーンと化していた。

 

 ……アン?

 ……キアヴェリ様?

 何故二人ともウェンディの真似をするのですか?


 「ふんっ。ばかばかしい。ごちそうさま!」

 そんなことをしていたら、呆れたようにカレンはそう言い放ち、乱暴に席を立ってしまった。


 「ごめんなさいね。あの子もきっと照れてるだけだと思うから。」

 「いえ、気にしていませんから大丈夫です。でも、仲良くなれたらうれしいですね。」

 オレは笑顔でそう言った。

 隣ではウェンディも頷いている。


 「「…………天使 (ボソッ)」」


 「え?」


 「いいええ、なんでもないのよ。でも、そうね。そう言ってくれるなら、明日 は大人同士はお話があるから、子ども同士遊んでくれると嬉しいわ。」


 「「はいっ。」」

 「ふふ。頑張れよ、二人とも。」


 少し、しこりは残ったものの賑やかな夕食会はそうして過ぎて行った。


 そして、寝室へと案内され、柔らかいベッドの中で親子三人眠りにつくのだった。



 ……明日はカレンと仲良くなれたらいいなあ。

 そんなことを思いながら。


 



イーシェは警護中。エリーゼは使用人のため、今回は空気でした。

あんまり深く考えてはいけません。


カレンは幼馴染枠その2


でもオリーブよりすでにキャラが立ってますwww

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― 新着の感想 ―
[一言] 密かに続きを待ってた まさか続いてくれるとは ありがとうございます
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