カガミ領にて②
夜が明けて次の日。
うん。
今日も気持ちの良い朝だな。
目を開けると、そこは胸だった。
……アンとウェンディのハグから抜け出すことからオレの朝は始まる。
所が変わってもこれは変わらないようだ。
「おや、目が覚めたか。おはよう、タケル。よく眠れたか?」
とても立派な胸部装甲から抜け出す動きでオレが目覚めたことに気づいたアンが声をかけてきた。
「はい!母様。今日も良い朝ですね。」
「……ぅうーん。……おはようございましゅ、兄さま。母さま。」
すると、ウェンディも目が覚めたようだ。
ウェンディはちょっと朝が弱いが、起きたくないとごねることはない。
もちろん、おねしょもとっくに卒業している。
そんな二人と軽く頬にキスを交わして、着替える。
オレたちが気配を察したのかふいにドアがノックされる。
「失礼いたします。入室してもよろしいでしょうか。」
「エリーゼか。入ってきてくれ。」
「はい。失礼いたします。」
きっちりとメイド服を着こなした、エリーゼがいつもの温和な表情で挨拶とともに入室してくる。
「皆様、おはようございます。」
「うむ。おはよう。」
「「「おはようございます!」
エリーゼは、三人分の着替えを用意している。
アンとウェンディが着替えさせてもらっている横でオレはさっさと着替えてしまう。
毎度残念そうな顔をされるけど、さすがにここを譲る気はない。
「……。」
……手が止まってますよ。エリーゼさん。
「…………。」
アンもウェンディもこっちを凝視している。
毎回見つめられてるけど、心配なのかね。
着替えくらい一人でできるもん!!
……失礼。取り乱しました。
無事に (?)着替え終わったオレ達は朝食を頂くために食堂へと向かう。
食堂につくとキアヴェリ様とカレンがもう席についていた。
「おはよう。よく眠れたかしら?」
キアヴェリ様がやさしく問いかけてきてくれる。
「おはようございます。とてもよく眠れました。ありがとうございました。」
オレがそう返すと、アンとウェンディもそれぞれに挨拶を返していた。
「ふふ。それはよかったわ。さあ、ごはんにしましょう。こんなものしかないけれど、遠慮せずに沢山食べて頂戴ね。」
謙遜しているが、テーブルの上には朝とは思えないほどの豪華な料理が並んでいる。
「うわぁぁ。」
ウェンディの目がキラキラしている。
「申し訳ありません。ありがたくいただきます。」
「ありがとうございます。」
そうして、オレたちは朝食を和やかな雰囲気の中食べていく。
……ただ、カレンは相変わらず仏頂面のままだったけど。
朝食が終わって、
「さて、私たちはこれからお仕事のお話をするから、あなたたちは自由にしていてね。でも、危ないことはしちゃダメよ。」
「タケル、ウェンディ。いい子にしておるのだぞ。」
「「はい!」」
「……はい。」
で、オレたち三人はリビングのような部屋で三人で過ごすこととなった。
……空気が重い。
「……あ、あの。カレン様。」
「なに?」
この空気に耐えかねたのか、ウェンディがカレンに話しかける。
「わ、わたしたち、なにか失礼なことでもしちゃいました?」
「いいえ。そんなことないわよ。ごめんね。怖がらせちゃって。」
おお?なんだその反応。
カレンが優しいぞ。
「だ、だいじょうぶです。わたし、カレンさまとなかよくしたいです。」
「ふふ。かわいい子ね。『さま』なんて付けなくてもいいわよ。よろしくね、ウェンディ。」
「は、はい!」
なんかいい空気じゃないか?
よし!ここはオレも。
「あの、カレンさん……。」
「あなたは黙ってなさい。」ピシャリ
……ええー。
どないせえちゅうねん。
せっかく温まってた空気が一瞬で冷え切ってしまう。
あの……オレなんかやっちゃいました?
……コンコン。
そんな気まずい空気の中ふいに部屋のドアがノックされる。
「はい?」
カレンが答えると同時にドアが開く。
「おっはよーございまーす!カレンさまー!」
ドアから勢いよく入ってきたのは、カレンと似た髪色をショートカットにしたツリ目がちで活発そうな女の子だった。
年のころはオレよりも少し上で可憐と同じくらいか。
「およ?あなたたちは?」
金髪元気っこは、オレたちに気付くと話しかけてきた。
「僕はタケル・シングウ。シングウ家の長男です。よろしくお願いします。」
「わたしは、ウェンディ・シングウです。タケル兄さまの双子の妹です。よろしくお願いします。」
「おー!シングウ様のところの子たちかー!あたしはクレア。カレン様の従姉妹で10歳だ。ろしくねー。」
「「よろしくお願いします。」」
「あー。でもタケルくんって男の子だよね。男の子って初めて見るなあ。なるほどぅ。それでカレン様機嫌悪いのかー。」
「え?」
「あー、ちょっと色々あったらしくてね。カレン様って男の人が嫌いなんだよね。」
「ちょっと。クレア?余計な事を言わないで頂戴。」
「えへへ。ごめんごめん。」
そうかあ。
男が嫌いだったのか。
「でも、この空気はいかんね!よーし、みんなでお外に行って遊ぼうか!」
クレアは見た目通り活発な子のようだ。
そういうとオレたち三人を外へ連れ出す。
「まったくもう。あなたはいつも強引なのだから。それで今日は何をするの?」
若干あきれたようにカレンがクレアに問いかける。
「今日は4人もいるんだもん!探検しよう!探検!」
「それで、探検ってどこに行くんですか?」
「それは、もっちろんすぐそこの森に行こう!」
「え?森ってあぶなくないですか?あぶないことしちゃダメだって母さまたちが……。」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。あの森には何回も行ってるし、魔物や危ない植物とかもほとんどないし。それに万が一のときでもカレン様は魔法だってつかえるんだよ。」
この世界で魔法を使える人間は少ないらしい。
身近で使える人間はアンだけだし、子どものうちから使いこなせる人間はもっと少ない。
オレも必死でトレーニングしているおかげでそれなりには使えるけど。
「兄さまも魔法がじょうずなんですよ。」
「へえ。それはすごいね!じゃなおさら安心だ。いざ、レッツゴー。」
変なフラグを立たせると思わせる発言は控えてほしい。
そう言うと、クレアは先頭で森に向かって歩き出した。
カレンはオレが魔法を使えると聞いて少し驚いたようだがやっぱりオレを見る目は冷たい。
……こうしてオレは四分の恐怖と六分の好奇心を持って森へ入っていくのだった。
これハイファンタジーかな。ジャンル
変えよう(無計画)
久しぶりにご感想いただいて予想以上に舞い上がっております。
本当にありがとうございました。




