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エピローグ:世界を包む「聖域」の味

三カ国同盟の締結から十数年。世界はかつてない平和と飽食の時代を迎えていた。

その中心にあるのは、大陸全土に40店舗を展開する超巨大外食チェーン**『レストラン・AKITO』**だ。


「おい、副社長! 第40号店のオープン記念メニューの試作、まだ終わってないのか!?」


帝都の一等地にそびえ立つ本社ビル(ミラが【建築】スキルで設計した最新鋭魔法ビル)のオフィスで、一人の男が書類の山に埋もれていた。

漆黒の高級スーツを完璧に着こなし、だが目の下には深いクマを作った男——副社長ゼロである。


「……アキト社長、無茶を言わないでくれ。私は昨日まで商業連合との物流交渉で一睡もしていないのだ。五桁の年月を生きてきて、今が一番忙しい……。くっ、誰だ、魔王の再来と言われた私に納税という名の闇の儀式を教えたのは……!」


ゼロは相変わらずポンコツな一面を覗かせつつも、その圧倒的なネットワークとカリスマ性で、今や「世界の流通の王」として、アキトの店を支える最強の右腕(副社長)となっていた。


そこへ、凛とした足音と共に一人の女性が入ってくる。

公爵令嬢の気品はそのままに、母としての温かさを纏ったミラだ。


「ゼロ、泣き言を言わないの。ほら、アキトが新作の『バフ飯エナジードリンク』を作ったから、これを飲んでシャキッとしなさい」


「……おぉ、ミラ様! いや、専務! ありがたき幸せ……!」


ミラは現在、グループ全体の査察・管理を司る専務理事として、その鋭い鑑定眼で「AKITO」の品質を守り続けている。


賑やかな食卓:次世代の英雄たち

夕暮れ時。アキトの自宅兼・本店。

厨房ではアキトが、昔と変わらぬ「神速」で家族の夕食を仕上げていた。


「パパ! 今日は『神速から揚げ』がいい!」

「お兄ちゃんずるい、私は『超回復オムライス』がいいって言ったのに!」

「……ふふ、二人とも、喧嘩しちゃダメよ。パパなら一瞬で両方作ってくれるわ」


アキトとミラの間に生まれた三人の子供たち。

長男はガストンに憧れて剣を握り、長女はミラの魔法と鑑定眼を受け継ぎ、そしてまだ幼い末娘はアキトの包丁捌きを目で追いかけている。


「はい、お待たせ。全員分、リクエスト通りだぞ」


アキトが皿を並べる。

その横には、更生して今は「AKITO警備保障」の社長となったガストンが、自慢の髭を蓄えて座っていた。


「がはは! 相変わらずアキトの飯は世界一だな! これを食うと、また明日から新人の指導に気合が入るぜ!」


かつての因縁も、国境も、種族の壁も。

アキトが作る温かい一皿の前では、すべてが「美味しい」という笑顔に変わっていく。


【アキトの最終レシピ:明日へ繋ぐ・伝説のミックスプレート】

40店舗達成を記念し、アキトが家族と仲間のために作った、これまでの旅の集大成。


■ 材料

皇国特産の魔戦牛、カエルムの聖樹ハーブ、シュタイン領の熟成野菜、そしてゼロが持ってきた深淵のスパイス。


■ 料理のポイント

「神速の愛情」:

今の技術なら一瞬で完成するが、アキトはあえて一秒、時間をかける。食べる相手の顔を思い浮かべるその「一秒」が、どんなスキルでも届かない最強の隠し味になる。


バフ効果:【真なる幸福】:

食べた瞬間に、これまでの苦労や悲しみがすべて「このための過程だったんだ」と肯定される、魂の救済バフ。


完食の儀:

皿が空になった時、そこに残るのは満腹感ではなく、「明日もまた、大好きな人たちと一緒に笑おう」という、シンプルで最強の活力だ。


アキトは、エプロンを脱いでミラの隣に座った。

かつて拠点を追い出された一人の料理人は、今、世界で最も「美味しい」と言われる場所に辿り着いたのだ。


「……さて、ミラ。41店舗目はどこに出そうか?」


「そうね……。次はまだアキトの味を知らない、海の向こうの国かしら?」


二人の旅は、美味しい匂いと共に、これからも永遠に続いていく。


(完)

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