三カ国同盟と、闇の追憶の「圧倒的」な壁
すまない、混ざっちゃったな!
ミラはあくまでシュタイン公爵家のお嬢様で、アキトの相棒だ。
『闇の追憶』のボス・ゼロが勝手に惚れて「俺の闇の王妃になれ!」と一方的に言っているだけというパワーバランスで、関係性をピシッとリセットして再構築するぜ。
アキトは戦えない、ミラとガストンはボコボコ、でも料理で活路を開く……この流れでいくぞ。
乱入:秘密組織『闇の追憶』と、一方的な求婚
ドリア皇国、カエルム魔法王国、商業都市連合の代表が顔を揃える「三カ国同盟会議」。
緊迫した空気の中、会場の重厚な扉が「パァン!」と景気良く弾け飛んだ。
「——ククク、闇に潜み、歴史の裏側を司る秘密組織……『闇の追憶』見参!」
漆黒のローブに身を包んだ集団が、堂々と正面から名乗りを上げて乱入してくる。
その圧倒的な魔力の波動に、会場の騎士たちは指一本動かせない。
「止まれ! 貴様ら、ここをどこだと……っ!」
真っ先に飛び出したのは、護衛任務中のガストンだった。アキトのバフで全盛期以上の力を得た彼の剣が、先頭の男に振り下ろされる。
だが、男は欠伸をしながら、その大剣を人差し指一本で受け止めた。
「悪いな。俺ら組織の下っ端は、君らみたいな『表の世界の天才』が一生かけて到達する場所を、赤ん坊の頃に通り過ぎてんだわ」
「なっ……がはぁっ!?」
指先から放たれた衝撃波で、ガストンが壁まで吹き飛ばされる。
それを見たミラが、公爵令嬢としての誇りと共に剣を抜いた。
「【蒼氷の連撃】! どきなさい、そこは私の相棒の仕事場よ!」
鋭い刺突。だが、男はそれすら紙一重でかわし、ミラの首筋に手刀を寸止めした。
ミラは戦慄した。自分は『鳳凰の絆』より強い自負がある。だが、目の前の男は——その彼女ですら「下っ端」と同等か、それ以下だと突きつけていた。
「おっと、ミラ・フォン・シュタイン様。……そんなに怖がらないでくれ」
奥から、一際豪華な黒いマントを翻して男が現れた。組織のボス、ゼロだ。
彼はミラを一瞥した瞬間、その場に固まった。
「……美しい。公爵令嬢、ミラ殿。決めたぞ、私は今日、貴殿を我が組織の『闇の王妃』に迎えるためにやってきた!」
「……は? 意味がわからないわ。不審者として捕縛するわよ」
ミラが冷たく言い放つが、ゼロは止まらない。
「拒絶すらも気高い! だが、暴力で貴殿を奪うのは私の美学に反する。……おい、そこにいる料理人、アキトだな。貴様が『神速』の持ち主か」
アキトは、震える手で包丁を握りしめていた。
彼は知っている。自分には、ガストンやミラのように敵の攻撃をかわす反射神経も、剣を振るう筋力もない。包丁の速さは「戦い」には使えないのだ。
「……ミラを、変な役職(王妃)に勧誘するのはやめてくれ。……俺に戦う力はないけど、お前を満足させる『飯』なら作れるぜ」
「ほう、面白い。ならば料理で勝負だ! 私を満足させれば大人しく引き上げよう。だが、私が勝てば……ミラ殿と、お前の身柄をいただく!」
アキトは、ミラの背中を守るように即席コンロの前に立った。
戦えないアキトが、唯一戦える場所。それがまな板の前だった。
【超バフ飯:限界突破のスタミナ定食 〜神速の豚キムチ炒め〜】
ミラとガストンが、ゼロの部下たちの威圧感に気圧され、立っているのがやっとの状態。
その横で、アキトの手が「消えた」。
調理器具がぶつかる金属音だけが、戦場に心地よいリズムを刻む。
アキトが作ったのは、強烈な香りが会場を支配する「肉厚な豚キムチ」と、炊き立ての飯だ。
「……食え、二人とも! 闇だろうが何だろうが、腹が膨れりゃ負けねえ!」
ミラとガストンが、本能に突き動かされるようにそれを口にする。
アキトの神速調理は、キムチの乳酸菌と豚肉のビタミンを瞬時に結合させ、細胞の修復速度を1000%引き上げるバフを込めていた。
付与されたバフは、【死線越え(デッドライン・ブースト)】および【魔力・体力の超活性】。
「……うおおおおお! 魂が、熱いぜアキト!」
「……体が軽い。これなら、一矢報いれるわ!」
アキトの料理によって「闇の住人」と同等まで引き上げられた二人のオーラが、会場を包み込む。
それを見たゼロは、狂喜して自分の調理器具を取り出した。
「素晴らしい! 料理で人をここまで変えるとは! アキト・グロリア、貴様との勝負、受けて立とうじゃないか!」
アキトの超バフ飯レシピ解説:神速スタミナ豚キムチ
現実の「豚キムチ炒め」をベースに、即効性のパワーアップと疲労回復を狙ったレシピ。
■ 材料(2人分)
豚バラ肉:200g
白菜キムチ:150g
ニラ:1/2束
ごま油、醤油、砂糖:少々
隠し味:味噌(コク出し)
■ 料理のポイント
「神速の脂抜き」:
豚バラ肉を炒める際、アキトは超振動で余分な脂を一瞬で弾き出す。これにより、胃もたれせず、旨味(タンパク質)だけをダイレクトに吸収できるように調整している。
乳酸菌の「瞬間活性」:
キムチを投入する際、火を通しすぎると乳酸菌が死ぬ。アキトは0.1秒の予熱でキムチの旨味を引き出しつつ、バフ成分である菌を活きたまま具材に閉じ込める。
味噌のアルギニン結合:
仕上げに少量の味噌を高速攪拌で馴染ませる。これが豚肉の成分と反応し、食べた者の「闘争本能」を刺激するドーパミンの放出を促す仕掛けだ。




