いざ!潜入調査☆で幸先怪しい……
「あぁ〜もう歩き疲れた」
校舎を繋ぐ長い渡り廊下で、私とオリバーは……絶賛迷子☆
地図もなく敷地内を探索してるから、どこに居て、どこに向かって歩いているのかさえ分からない。
『ここはどこ?私はエラシラ?』状態。
「っもう!学園長はどこにいるの?30分歩き回っても見当たらないなんて!」
無駄に広い敷地内を探索してるから、落とした米粒探してる気分。
コソコソ
「あの先生新任?ちょっとタイプかも」
「バカね〜教師なんておっさんばっか……え、本当だ!若い男だ!イケメンだ!」
「白衣着てるから保険の先生よ!」
「昼休みに保健室寄らないと!」
「「「きゃーーー!」」」
向こう側から歩いてくる女子生徒3人が、すれ違いざまにオリバーを見て盛り上がっている。とても楽しそうだ。でもごめん、保健室の先生じゃなくて化学の先生なんだわ。
オリバーを地味に見せようと試行錯誤した結果、メガネに茶髪のかつら、更には無難な服にしたのに……むしろ目立ってんじゃん!
恐ろしいわ、地味な服装なのに地味にならないこの顔とスタイル。
「やけに騒がしいね。何かあった?」
当の本人は、自分が騒がれていることに全く気づいてない。
歩きながら学園長の肖像画を『この顔見覚えのある……』とか言って熱心に見てたから、そっちに気を取られて気付いてないんだわ!
「別に大したことない。で、学園長はどうやって見つけるつもり?」
「歩いてたらなんかしらの手がかり掴めると思ってたけど…‥それは難しそうだね。」
「もういっそのこと、職員室に殴り込むのは――っわ!」
話し込んでいたその時、スカートが靡くほどの風が渡り廊下に吹き抜けた。
「あっ!大事な肖像画なのに!」
そのせいでオリバーが手にしていた肖像画がペラペラと風で飛ばされた。幸いそこまで強風じゃなかったから数メートル先で落っこちた。
「ん?これ学園長先生の絵?」
「こんなの持って歩くなんて趣味悪い〜」
サッと肖像画を訝しげに覗き込む2人の女子生徒。
(まずい!肖像画が!)
どうやって返してもらおうか私が考えるのより先に、 オリバーが女子生徒に向かって歩き出した。
「その絵、僕のなんだ。拾ってくれてありがとう。」
「え……いえ。…‥そんな」
にっこりと爽やかな微笑みを向ける姿に惚れ惚れしている……中等部の制服だからあの子達まだウブなのね。
可愛いんだからぁ〜。
「先生!新任ですか?先生に勉強教わりたい!」
「う〜ん……」
小首を傾げて微笑む艶やかな顔……あ、いや別にときめいてないからね!
「いいけど……君たちに教えるのは、まだ早いかな」
「「きゃぁーーーーー!!教えてもらいたい」」
鼻血出して気絶した二人の生徒は、どこからともなく駆けつけた保健委員みたいなのによって担架で運ばれていく。
何の茶番?というか……
「あんたね。未成年に何教えようとしてんのよ!」
「逆になんだと思ってるのかな?」
オリバーに詰め寄ったけど、全く悪いと思ってなさそう。
「免許持ってないのに学校で勉強を教えたら犯罪者なのよ!」
「ップ…君って本当に……裏切らないよね」
「もう!何笑って――
「ハッハッハッ」←ツボにイン
いつもみたいな皮肉めいた笑いじゃなくて本当の笑った顔が………あぁ、なんてこった。
艶やかな笑い顔よりも、目を細めて笑うこのお上品な顔が好き。悔しすぎるけどこの顔に弱いのよね。
「そもそも、学校に変装して入ってるだけでも犯罪なんだけど」
「あっ、そうだった」
青ざめる私とは対照的に楽しそうなオリバー。なんか意外と楽しんで無い?あれか、スパイの血が騒ぐってやつ?!
◇ ◇ ◇
整えられた生垣の後ろに隠れた僕とじぃや。鮮明に見えるようにと用意したオペラグラスからは、仲良さそうな二人の姿が………この日のために入念に下準備してきたのに仲良くさせてどうする!
「おい!あの2人仲睦まじいじゃないか!プランAはどうなっている!?」
「まだです。今向かわせている所なのでしばしお待ちを」
「早く実行に移すんだ!じぃやはいつも遅いんだから」
「かしこまりました。それと一言余計です。」
プランA……その名も【チンピラにボロ負け大作戦】だ!
「作戦名の通り、オリバー……君には、チンピラに負けるダサい夫になってもらうぞ。つまりは負け犬!」
チンピラ役は軍部隊の屈強な男たち…。
ッフッフッフ……フハハハ!あんな弱そうな男、負けるに決まっている!絶対にな|!
『僕ケンカ弱いんだよね〜。ごめんエラ!怖いから逃げる。バイバイ』
――そう言って見捨てて逃げるあの男にとって変わり、軽やかに登場!
『っとう!』
そして可憐に撃退!(※事前に打ち合わせ済み)
『エラ……君をいじめる者はこの僕が許さないよ』
『まぁ、ベルタ様かっこいい♡王子様みたい』
『ッフ、本物の王子じゃないか。さぁ、この手を取ってご覧。白馬で城に帰ろう』
照れくさそうに笑うエラを、僕自ら白馬に乗せる。ここでキメ顔。
――そんなこんなで兄殿に保証人になってもらい結婚まで漕ぎ着ける!
「フハハハハ〜!我ながらなんて素晴らしい計画」
「ベルタ様、すべて声に出ています」
「あ…僕としたことが」
◇ ◇ ◇
「――それでもオリバー、あんな親しそうに生徒と話してたらいつかボロが出ちゃうでしょ。あんまり生徒と話さない方がいいんじゃない?」
完璧な変装とはいえ下手にここでバレたら悪の学園長に辿り着けないもん!
「このままだとだだの校内探索だから、早いこと学園長の居場所を聞き出そうと思って。結局何も聞けなかったけど」
「確かにこのままだと学園長に近づけ――
「おいおい、どけよ」
「邪魔だぁー」
そんな時向こう側から柄の悪いヤンキー達が歩いてくるのが見えた。周りの生徒が正しく制服着こなしてるから、あの着崩し方がすごい目立つ。両腕をポッケに入れて柄の悪い男を演出してるし怖がった生徒達は距離をとって逃げていく。
きっと反抗期なお年頃なのね!
でもあれ反抗期ヤンキーってより街のごろつき……。
夏でもないのに柄付き半袖シャツ。更には、ボタンも閉めずに中に着たタンクトップを見せてる。
もしかして鍛え上げた体見せたいだけの筋肉自慢?!中々のナルシストね。流石の私も負けたわ。
「制服着てる割に生徒に見えない……っは!学園長の手先?!生徒のふりして紛れ込んでるんだ!」
「いやぁ まぁ、そう言うことにしておこう」
「おいおいおい。そこのお前ら今俺のこと睨んだよな?」
(え? なんか私たちに話しかけてない?)
恐る恐るヤンキーの顔を見上げるとサングラスを頬辺りに下げながら、ガラの悪そうな顔で『あぁ?文句あんのか?』って言われた。
その顔がとてもじゃないけど10代の貫禄では無い。
(ヒィッ……怖っ。オリバーと顔見合わせて話してたから絶対に言いがかり!)
悪の学園長どころか手下に殺される!
おじ王子の妄想内では、おめめキラキラ、足が普段の倍ある長さで白馬に乗せてくれます。
夢で逢えそうですね!




