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【朗報】今日は離婚記念日!!

初手から修羅場ですみません

エラちゃんがブチギレますんで許してください


「ようやく……ようやくなのね!!!」


ただ今、早朝の6時半。 

小鳥のさえずりと共に起床した私は、今日という日を噛み締めた。



「絶対に今日中に離婚してやるんだから!不倫野郎オリバー!!」



どうやら神は私の味方らしい。

雲ひとつない晴々とした天気が私の新しい門出を祝福しているかのよう――。 


まだ寝巻きなのに急いでオリバーの元へ向かうなんて、まるで『クリスマスプレゼントを確認しに行く子供』ね。

だけど今そんな事どうでもいいの!



「あっ!忘れてた。離婚届!こんなに大事なものを忘れるなんて」



今度こそ、机に置いた離婚届の用紙をしっかり手にし、部屋を出ようと軽快にドアを開けると侍女のエザラの姿が。


「あれ?奥様!こんな時間からどちへ?!」 


早朝から入れ違いで部屋から出て行こうとする私に呆気に取られたエザラは、持っていた洗顔用の桶を落とした。……とっても驚いたんだろうな。


「ごめん。後で詳しく説明する!本当にごめんね!」

背後から『奥様ってば……一体どうされたのかしら?』と困惑の声が。


侍女のエザラをそのままに、宿敵()の寝室へ殴り込むため廊下を駆け出した。一方、嬉しい気持ちが先走り過ぎている私は自室から一番遠いオリバーの寝室に向かって勢い良く歩いている。



気持ちはバージンロードを歩く新婦ってところかしら?



「にしても、遠いな!」

私が『一番遠い部屋用意して!』って頼んだせいなんだけどさ。ちょっとばかし後悔。

なぜそんなお願いをしたのかと言うと…



嫌いだから。ただそれだけ!

 


「でね、その時に持ってたのが――」

「えっ?なになに?気になる!!」 


向こうから談笑しながら歩いているのはメイドのジュリーと…………えっと、誰だっけ?もう1人の名前忘れちゃった。ごめん。

二人は話す事に夢中で私のこと気づいてないのかしら?


挨拶しようかしまいか悩んだけど、伯爵家に居るのは今日が最後だし、挨拶しないとね!

 


「おはよう。いい朝ね。オホホホ〜」


「おっ、奥様??」

「どうなさったの??」

 


何その、『珍獣に出くわした!』みたいな反応は!ただ笑ってるだけなのにすれ違いさまに不気味がられるなんて……ショック!!別に怖がらなくていいのに。



ただ夫と離婚するだけだなんだから



そうこうしているうちに寝室に着いたみたい。

あっ、待って、入る前に一旦深呼吸させて、スキップして来たからちょっとだけ息切れが………ふぅ〜、整った。



寝室まで長い道のりだったけど、この2年間の結婚に比べたら短いもんよ。


行くわよっ!

 


「離婚してちょうだいっ!!」


 

ようやく辿り着いた寝室にノックもせず勢いよく開けた。出だしは絶好調!



「っ!!!」


 

のはずだったけど、入ってから後悔した。 

時すでに遅しってやつ。



部屋に入ると、衝撃の余り右手に持った離婚用紙をラハリと落としてしまった――。

あれ程大事に抱えて持ってきたっていうのにね。



私が動揺した理由………それは、



「あぁ、エラシラ。ドアをノックしてくれたらよかったのに」「きゃっ///……」



寝室に愛人がにいることを想定してノックをしたほうが良かったからぁーーー。大後悔!



何が、『キャッ///』だよ!



それでも落とした離婚届の紙を拾おうと、なんとか重い腰を落とした。ん?何見てんのよ、愛人!

 


「一緒にいるところ見られちゃったわね。オ・リ・バー♡フフフ」 



この状況ならノックしても気まずいのは変わりないだろうな、最悪!

 


本妻の登場なのに、女は構う事なくベッタリでうぇ……あっ、本音が出ちゃった☆

 


見たところ服装は乱れて入るけど、オリバーは『鎖骨が見えるほどはだけたワイシャツ』女は『紅色のシルクのネグリジェ』を着ていて、()()()服を着ている。



服着てるからギリギリセーフとしてあげよう。



厳しくいうと、この場に女がいる事自体アウトでしかないけどね。

 


「……仕切り直して。オリバー・カシアーノ・ダ・ヴィセント!私と離婚してちょうだい!」



この日のために噛みそうな長い名前をわざわざ覚えてきた甲斐がある。普段からフルネームは長くて使わないからさ。スラスラ名前をいう練習を積み重ねてきたのよ!

 


「そういえば、母との契約で2年間結婚生活をそつなく送れば離婚しても一生面倒見ると言われていたんだっけ?」


「そうよ」



本当は、うちの母と義母から『息子と一緒にいれば恋愛感情が生まれるはず。ダメだったら離婚していい』って事での2年間の猶予付きの契約結婚。



それでも、彼に対して恋愛感情を抱いたことは一切なかったけど。



「それで、僕はどうすれば?」

 


離婚と聞いても何も全く動じない夫に『流石は女ったらし!』てな具合にもはや感心してしまったわ。



別れ話し切り出しといてなんだけど、慣れているのがちょっと癪。



けど、冷静に考えて愛人横に侍らせておいて『離婚したくないよぉ〜』なんてベソベソ泣かれてもこっちが困るわ。……というか、想像したらダサ過ぎ!



「あなたはこの離婚届に早急にサインしてちょうだい!今日中に離婚よ!」



妻から離婚を言い渡されたのに愛人がベッタリ腕に絡みつくのは、まさに女ったらしの見本!



喜劇でもこんなベタ過ぎる展開はやらないっていうのに。もうこの光景を見るのも嫌になって来たから早い事終わらせましょう!



じゃないと気まず過ぎて死にそう。


「それじゃあ、この離婚届に――

「えぇ〜、オリバァーってばそんなに長い苗字だったの?知らなかったぁ〜」



私が大事な話をしてるのに愛人が遮ってきた。

それも絶対にわざと!さっきからこの人なんなの?!



本妻にマウント取らないと死んじゃう病?

 


「……この話の通じない()()()()どうにかしてちょうだい」



多分、私の見かけが……

『可愛くてキュートでゆるふわ髪の毛の似合う美少女』で優しそうに見えるんでしょうね。



私の性格上言い返さないと気が済まないタイプだから、舐められないように、仁王立ちで強そうにしてたのに!



普段は気に入ってる童顔プリティーな顔も修羅場では役に立たないわ。



「んまぁ!おばさんですって?!酷いじゃない!」


ハァ?『酷い』ってどの口が言ってんの?!  



「酷いのは夫を寝とる女と、おばさん呼ばわりの女、どっちなのかよく考えてから発言してちょうだい。お話にならないから!」



やったわ!決まった!

勿論、心の中でガッツポーズも忘れずに。


 

……それはそうと、助けを求めてオリバーを上目遣いで見つめる愛人の顔が、不愉快極まりない。三十代ぐらいなのにぶりっ子を演じる様はとても痛々しい。

 


「こっちは覚悟決めて来たって言うのにアンタは愛人とリラックス?!こんな状況で離婚話とかやってられないじゃ無いのよ、えぇ?!」



黒い漆黒の髪に豊満な胸に真っ赤な薄紅色の口紅が似合う(悔しいけど)美女は、悲劇のヒロイン気取りで彼の腕にしがみついて片眼で私ををチラ見。



ッフ、安っぽい芝居ね。



「彼には好意が無いからそんなの見ても妬いたりしないわよ。お生憎様ぁ〜」

 


「もぉ〜、奥さんってば厳しいんだからぁ。」

「その喋り方、辞めてちょうだい!虫唾が走る!」

 


顔と合ってない言葉遣いどうにかできないわけ?アンタ30手前ってところでしょ?私より歳上でしょ?



「ハァ……オリバー、あんたの女の趣味最悪。」

「ハハ、毒舌だね、エラシラは」

 


流石は天才の人たらし!流すのが上手いわね!

こっちは諦めて、あの女を責めるとしよう!

……というか、この女がいなくなれば話がスムーズになるのに!



「アンタはお淑やかな私のお姉様を見習ったら?まぁ、姉は高嶺の花だから不倫相手になるような女、頑張ったところで、だろうけど〜」

 


「なんなの?この女早く追い出してよ!!」

 


私を指差し不満を露わにする愛人。当の本人はピッタリとくっつかれて不機嫌な様子。



あぁ、彼女の事そんなに好きじゃない感じ?



「すまないね。君の方こそ出て行ってくれない?ずっと思っていたけど、君の香水僕の趣味じゃ無なくてね……。これでおしまいにしよう」

 


「っまぁ!まさか私に私に恥をかかせる気?!そんなの…こっちから願い下げよ!」

 


顔を真っ赤にして言葉を吐き捨てるなり部屋を飛び出して行った。愛人振る時でさえチャラい、うちの旦那は!!



えっ?何?何?



不倫相手が戻って来た。怖っ!



「アンタらなんてお似合いよっ!ッフン」


何かと思えば、不満が収まらず捨て台詞を吐きに戻ってきただけだった。あれは相当プライドが傷つけられたみたいね。復讐されないように気を付けないと!

 


「僕たちはお似合いらしいよ。エラシラ。」



「お似合い」なんて結婚して2年も経つのに今日初めて言われた。それも離婚する日に言われるなんてね。皮肉な話……。



それでも、離婚はする。そう考えを巡らせて離婚届に目を向けた――――

 


「あぁっ!これ()()()じゃなくて、()()()だ……。寝室から離婚届持ってくるからアンタはさっさと着替えて書斎で待ってて!」



はだけたシャツをジッと恨めしか思って睨んだ私は寝室を後にした。


          * * *


一方の、部屋に取り残された僕は、一息して

「ッフ、奥様の仰せの通りに。」



あの場面を思い出すだけで口元が緩みそう。

……フフッ


「やっぱり、彼女は見てて飽きない。」



余裕ある男メロい。だけど不倫はダメだエドガー

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