しごできだった……!?
今回も短め。
「おかえりなさい、お母さん」
「ただいま~、紫紀~!」
夜8時半。お母さんは帰ってくるなり、迎えに来た僕を抱き締める。
「Huber EATS、頼んでおいたよ。20分前に頼んでおいたから、そろそろ届くんじゃないかな」
「あ、それでさっきLEINEで何食べたいか聞いたの? ありがと~! 助かる~!」
更に強く僕を抱き締めると、お母さんは僕を一旦離して靴を脱ぐ。
「保育園でお友達いっぱいできた?」
「うーん、初日だからまだ……かな」
前世でも僕には友達という友達が居なかったし、イマイチ友達という呼び方は、どの範囲でどの程度の距離感の相手にそう呼べるのかが分からない。他人が怖くて、同世代と交流するのにも怯えてしまっていた。もしかしたらクラスメイトの誰かが犯人かもしれない、って思っていた時があったから。それらが全てあのストーカーのせいだと思うと、僕はやっぱり人生の大半をあいつに無駄にされていたんだなと強く実感する。そして、虫唾が走った。
「そっか~、紫紀は優しいからすぐにお友達できるよ」
「そうかな?」
靴箱にしまいながらお母さんは「そうだよ~!」と答えて、僕と視線を合わせる為にしゃがむ。
「でもね? 人に優しくし過ぎるのも実はあまりよくなかったりする事もあるから、気をつけて」
そう言うお母さんの目は、真剣そのものだった。前世が無かったら僕はきっと、この言葉の意味を全く理解できなかったと思う。そしてどういう意味なのかを聞いていたかもしれないけれど、前世があったからこそ僕はその言葉を理解できていた。理解できていたし、誰かに優しくした事でとても怖い思いをした事もある。本当に、気を付けないと。
「……うん。ココア入れるよ、その間にお母さんは着替えてリビングに来て、お仕事で疲れてるでしょ?」
「いいの? じゃあお母さん着替えてくるね」
そう言うとお母さんは僕を離して自分の部屋に行った。僕はキッチンに向かって冷蔵庫から牛乳を出すと、棚の引き出しからココアミルク用のパウダー、マグカップ、ティースプーンを出して牛乳とココアパウダーをカップに入れる。スプーンで混ぜてから電子レンジの中に入れると、急に熱くならないように低めのワット数にしてから温めた。待つこと数分、お母さんが着替えてリビングにやってきたタイミングで温めが終わった。
熱でマグカップを落とさないようミトンを着けたいところだけれど、あいにく僕の手にとってはブカブカで見るからに持ちにくい事が分かる。僕は近くにあったタオルを使って、それ越しにマグカップを持つとテーブルに運んだ。
「はい、どうぞ」
「ありがと~! じゃあ、いただきます」
お母さんは湯気を立たせたココアに少し息を吹きかけると、口をつける。ゆっくりとココアを飲み、それからほっと一息ついた。
「はぁ……美味しいよぉ~……」
「良かった」
これで少しはお仕事の疲れが取れればいいな。するとバイクの音が少し外から聞こえ、物を置くような音が聞こえてきた。
「あ、届いたのかな、取りに行かないと──」
「お母さんはここで待ってて。お仕事で疲れてるでしょ?」
僕はそう言うと席を立つお母さんを座らせて、玄関のドアを開けて届いた物を取りに行った。
「……紫紀って、もしかして──」
本当にそういうとこだぞ。
ちなみに前世紫紀はこういう所が裏でめちゃくちゃ異性にモテました。ストーカーからもモテました。かわいそう。




