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どこも安心できねぇ


お久しぶりです。絶賛夏風邪中ですが、書く気起きたので書きました。



「またあしたあそぼうなシキ~!」


「また明日ね」



「シキくーん! またね~!」


「うん、またね」



 紫紀はそう言ってバスから降りるガキ共と分かれる。紫紀はたった一日でガキ共のハートを鷲掴みにし、あっという間にツバキ組のカーストトップになった。


 そんなカーストトップの紫紀が遊んだ内容は、サッカーと折り紙だった。午前中は男児共とサッカーをし、12時に昼飯。


 その時には決められた席で飯を食っていたが、紫紀の奴はそれはまぁ丁寧に食っていた。正しい箸の持ち方を既にマスターし、行儀よく黙々と目の前の飯をひとつ残らず、しっかりと茶碗を持って食っていた。あいつ……育ちがいいな、俺があのくらいの時は肘ついてダラダラ食ってたぞ。


 まぁ? 今の俺はパーフェクト美少女オブ美少女なんで?? そこらの女児共には真似できねぇくらいにお行儀よく、品のある食い方を徹底してるぜ。


 そして午後、紫紀は明らかに保育園児が折るもんじゃねぇ大人向け折り紙の図案本をリュックから出しては「お母さんに買ってもらったんだ」と言いながら、立体的でリアル過ぎる薔薇を折っては欲しがる女児共にプレゼントしていた。


 隣で見ていた男児共はサッカーをやりたがっていたが、紫紀が男児共にハイクオリティなドラゴンの折り紙をたったの10分ちょいで作ってやった事により、男児共も珍しく折り紙をやり始めた。どうやら自分達もドラゴンを作りたくなったらしいが、まぁ俺の想像していた通りにぐしゃぐしゃの色のついたペーパーボールが出来上がった。


 それにしても紫紀お前……男心を分かってんじゃねぇか。やっぱな、ドラゴンはカッケェんだわ。俺も習字セットと裁縫箱とナップサックとエプロン、全部ドラゴンだった……。ドラゴンには不思議な魅力と魔力がある。


 机の上がドラゴンと花まみれになった頃、夕方近くの時間になり、先程ガキ共が続々とバスから降りて親と帰っていったという訳だ。


 そろそろ俺と紫紀の家に着く頃だな、さっさと帰って愛しのベッドでダラダラしたいぜ。


 俺はフカフカのベッドに思いを馳せていると、バスが角を曲がる。その曲がった先が俺と紫紀の家がある場所、なのだが……俺はとある人物の姿を見て思わず「ゲッ」という、美少女にあるまじき声を出していた。



「明ちゅわ~~ん♡」


「(おっ、親父ぃぃぃぃぃ!!!!)」



 そのとある人物……まぁ今世の血の繋がった、某黒足みてぇな感じで()を呼ぶ父親なんだが。


 そんでお前何で居んだよ!! あと俺の出迎えはぜってぇやめろって言っただろうが!! 恥ずかしいだろ!! 俺が!!!!



「……パパ? どうしてここに来たの??」


「もちろん、明ちゅわんをお出迎えに来たんだよぉ~♡あー、今日も可愛いねぇ~♡♡ママにそっくりでまるで天使みたいだ♡♡♡…………はぁ、絶対にお嫁にはいかせないからね」



 親父は随分先の話だってのに俺が結婚する事を想像して、ハイライトを無くした目でそんな事を口走っていた。おいやめろ、実娘に激重感情乗せんじゃねぇよマジで。そんなクソ重感情はママンだけに向けてくれ、そんで末永く爆発&定期監禁してろ。



「やめてって言ったよね????」


「だって……今日は早く仕事が終わったから……早く明ちゃんに会いたくて…………」


「言い訳するパパ嫌い」


「嫌わないでぇ!!!! パパが悪かった!! もう二度と見送りに来ないから!!!!」


「パパ大好き」


「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!! パパも明ちゅわんの事大好きぃ!!!!」



 うるっせぇ……だから見送りに来んなって言ってんのに。はぁ……オフトゥンに入る前に最悪な気分になっちまったぜ。まぁとりあえず俺はパーフェクト美少女である為、紫紀に別れの挨拶をする事にした。



「……じゃあね、紫紀くん」


「うん、また明日」



 そう言うと紫紀は全国の女児共を惚れさせるだろう笑みを浮かべて、控えめに手を振った。そして紫紀ママンから渡されていたであろう家の鍵を出すと、それを差し込んで開け、家の中へ入った。……おい、パーフェクト美少女をもう今日は見れなくなるんだぞ、もっと惜しむべきだろ。何さっさと帰ってやがる。


 俺はそう思いながらしっかりと鍵を再びかけられた彩条家の玄関のドアを見ていると、隣から地獄から這い出てきた悪魔かのような声が聞こえてきた。



「明ちゃん……? あの男の子はだぁれ?? もしかして、あの子が例の引っ越してきた紫紀君?? まさかだけど、明ちゃんあの子の事を好きになったりしてないよね????」



 クソッ、親父まで今日のマセガキみたいな事を言ってやがる。一度疑心暗鬼の状態になった親父は中々その疑いを晴らすことがねぇ、疑い深い愛が重いヤツは本当に面倒だ。という訳で、俺はとても純粋で何も分かって無さそうに笑顔で言っておいた。



「私、紫紀くんとお友だちになったんだー! だから好き!」



 そう、あくまで俺はダチとして好きであって、男として好きという訳ではないというアピール!! これでどうだ!!


 俺はそう思いながら親父に無垢アピールでこの場をやり切ろうとしていると、失っていた目のハイライトを段々と取り戻していき、機嫌を良くした親父に抱き上げられる。



「そっかぁ~♡明ちゅわん良かったねぇ~♡♡……でも、もしあのガキに手を出されそうになったら、パバが()ッてしておくから安心してね」



 そう言われ、俺はパパンに抱えられながら家の中へ入る。


 ……俺は思った。



ヤンデレはね、良い文化です。


作者より。

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