オルメニアに向けて⑪〜神木の森林〜
それは正に炎。そう炎そのものだった。一応、形は成して居るがそれはこの世の物とは到底思えない。神木には届かないにしても森林の木々は一つ一つが大木である。それを頭一つ二つと飛び抜け周辺に災禍を振りまいていく。
オォォォォォン!!オォォォォォン!!!
不思議と炎は燃え広がらない。ヴニトラによればそれもこの森林の特性の一つらしい。健人は厄災を、ヴニトラはエルフ達の救助を二手に分かれ行動する事にした。
「ヴニトラ!また後で迎えに来てくれ!」
「もちろんだ!そっちは...まぁ貴様なら問題あるまい」
ヴニトラの背中から飛び降りゲイボルグを使い炎の化身へと向かう。視界には美しい木々が生い茂っているが風が運んでくる熱風が目を覚ましてくれる。
「パドレス城跡より更に...そりゃそうか、森が燃えてるんだもんな」
その熱を肌で感じならが近づいて行く。ジリジリと皮膚が焼け今にも煙を上げて燃えてしまいそうだ。健人の肉体を持ってしても生身で火に飛び込む事に等しい、それ程の熱量が厄災からは立ち上っている。
「ォォォォォォ。」
「!!!!!」
今までとは違うそれは、声か、会話を求められた気がした。しかし、それは見当違いだったとすぐに気付かされる。
ズドォォォン!!!!
「はぁぁぁぁ?!!!!!」
厄災は突然飛び上がる。正にジャンプといっていいだろう。天にまで登る大木に向かってその大きな幹に抱きつくようにして、その厄災は跳躍したのだ。
ガギィィィィィィイイン!!!!
「なっ!あれは...魔法...陣?」
神木に触れる一歩手前、光り輝く巨大な魔法陣がその炎を拒む。森林からその全貌を表した炎の姿は人型にも獣型にも見える不思議なものだった。空中に留まる不可思議な光景、だが、その空白が健人の槍を届かせる、
「ゲイボルグッ!!!!」
上空に飛翔、そのまま地面を穿つが如く直下を貫く。炎に風穴が空き全ての火炎が魔槍へと収束していく。凄まじい勢いで地面へと向かっていくが衝突する瞬間にその勢いは異様なまでの落ち着きを見せる。
「うぉっと....。勢いが....」
「風の精霊に力を借り勢いを殺しました。」
空気を割き、吹き抜ける風のように透き通ったその声は耳にスーッと入り込んでくる。
「貴方があの厄災を?倒したんでしょうね....。その槍で...。何とも禍々しい...。ですが、お礼を申し上げます。龍人様が仰っていたお連れ様は貴方ですね、私たちの里まで案内致します。どうぞこちらへ」
健人の方を見ること無くその視線はゲイボルグに向けられている。手で案内を促すが健人の顔を見ることは無い。長い耳に透き通るような髪の毛、自然に溶け込む様な衣服は正にエルフを象徴していた。
「あ、えーっと、ちょ、....え〜」
全く気にする事は無い。そう語る背中は人間に対してなのか健人に対してなのか、憎悪とは言わない迄も悪意や敵意の様な物を感じる。健人は迷いながらもそのエルフの後を追うのだった。
・
・
・
〜神木の里〜
「お〜い!!ケント〜!!」
大きな声で里の中から手を振る姿は正にヴニトラという感じだった。他のエルフからも似た様な視線を痛い程受けながら里の中へと招き入れられる。
「流石だな!ケント!貴様ならば容易だと思っていたがこんなにも速いとわな!」
「まぁ、ゲイボルグのお陰だけどな...それよりエルフって」
「あぁ、人を嫌っているな...。それに多分その槍に対しても畏怖を感じている筈だ。この里まで案内した事が奇跡みたいだな...。どうか許してやってくれ...」
「あー...。そいうことなら」
ヴニトラの話によると健人達が見た炎も収束を始めているらしい。燃え広がった炎は段々と収まっていき焼けていた木々達も元に戻り自然な形へと還っている。
「取り敢えずは里長に会いに行って...話をつけたら馬車に戻ろう」
「あ、ああ。俺いっても大丈夫なの?」
「寧ろ功労者だぞ?恩人に対して礼を尽くさない種族ではない。私も居るし大丈夫だ!」
「そ、そいうことなら。」
里に入ってからエルフ達は全く寄り付かない。それどころか大木の上から監視する様な目線で健人の背中を見ている。そんな状態で果たして本当にここに居ていいのだろうかと健人は思っていた。
「さぁ、行くぞっ!....貴様も...こんな空気の中、長居はしたくないだろう」
手を引かれるがままヴニトラに連れて行かれる。里長が居ると言うその住居に向かって。強く引っ張られるその腕の力は健人にとっては何処か安心を運んできてくれた。




