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足音が近づく中、道三と清吉は素早く身を隠した。通路の壁には、一見すると単なる凹みに見える場所が幾つもある。しかし、その一つ一つには特殊な仕掛けが施されていた。


「清吉」道三は微かな声で指示する。「背の竹筒を」


清吉は背中に仕込んでいた竹筒を取り出した。中には「霞の粉」が入っている。特殊な鉱物を微細に砕き、さらに薬品で処理を施したもので、空気中に散布すると光を歪める効果がある。


「まず、足音を確認だ」


道三は壁の凹みに耳を当てる。地下通路の壁は、音の伝達を考慮して設計されている。特定の場所では、離れた場所の音が驚くほど明確に聞こえる。


「三人...いや、四人か」


足音のリズムから、人数と位置を読み取る。表の足音は確かに歩み足の型を模しているが、後ろの二人の足音には僅かな乱れがある。素人目には気付かない程度の差だが、道三の耳には明確に聞き取れた。


「仕掛けるぞ」


道三は通路の壁に仕込まれた別の装置を操作する。細い竹管が幾つも連結された仕組みで、通路の空気の流れを制御できる。


「霞の粉を」


清吉が竹筒の中身を放出すると、道三の操作した気流制御装置によって、粉は通路全体に均一に広がっていく。


足音が更に近づく。光を歪める霞の粉の中で、松明の光が不思議な模様を描き出す。


「おや」声が聞こえる。「霧が出ているようですが...」


「気を付けろ。この辺りは...」


声は途切れた。霞の粉の効果で、彼らの視界は著しく制限されている。しかし、それは道三たちにも同じことのはず。


だが、道三は既に次の手を打っていた。通路の床に仕掛けられた「きき板」と呼ばれる特殊な板。これを踏むと、微かな振動が伝わり、相手の位置が分かる。


「来たな」


道三は清吉に目配せする。二人は無言で、次の行動の準備を整える。道三は懐から小さな陶器の容器を取り出した。中には「返り霧」と呼ばれる特殊な粉が入っている。霞の粉の効果を打ち消す対抗薬だ。


「動くぞ...」


きき板が、追手の位置を正確に伝えてくる。道三は瞬時に計算を行う。相手の位置、霞の粉の濃度、通路の気流...全ての要素を考慮に入れて。


そして...


[続く...]

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