98=『リリアとラデン様とルーシー』 (2)
少し長文です。
83話目のシンシア様の部屋の中の様子を、少し書き換えました。
読み直すほどではありませんが、興味があれば、読んでください m(__)m
☆ ★ ☆ (21)
午後からラデン様と話した後で、ルーシーとマーヤにシンシア様と二人で王様に話した内容を伝え、三人でアートクの市場に行くことを話すと、二人とも城の外に出る機会が少ないので、三日間も外に出られることを喜んでいた。
マーヤはルーシーの心の言葉は知らないと思うので、彼女にルーシーに話しがあると席を外してもらい、シンシア様の庭で話すことにした。
『ルーシー、シンシア様は気遣ってくれたのね。三人で話してどうだったの?』
『私は二人だけにさせようと思って外に出ようとすると、ドーラン様とマーシーが三人で話そうと言ったので一緒に話しました。 ルーシーがいつもの話し方でいいと言ったけど、だんだん緊張してきて焦りました。それと、私の話した言葉に対して、マーシーが私の気持ちを理解して話していることがよく分かったと言われ、とても嬉しかったです。マーシーに対しても理解したいと話されたので、私はこの言葉にも感動しました。私たちの仲がとてもいいことも理解できたとも言われました。ほんとうに一緒に話せてよかったです。このような機会を作っていただき、シンシア様にほんとうに感謝しています。私もドーラン様のことが少し理解できました』
彼女が一気にそう説明してくれる。ドーラン様は王様の直属の家臣なので憧れを持っている人も多いと思うけど、その内大々的に宣伝をしたいが、ほかの人が邪魔して二人に手出しをするかもしれない。個人的にも立場的にもバックアップも強いし大丈夫かな、とは思いながらも、お馬鹿な家臣たちは意外なとこを突いてくるのよね……それって私の方が危ないのかもね。
『よかったね。お互いに話すことがいちばん大事よね』
『私は一緒に話せてほんとうによかったです』
『よかった以外の言葉はないよね』
『彼から話していただきましたが、あの時は王様には次に話しを聞く方がいて、お断りすることになったのですよ。そうしたら、その方が足を怪我して来られなくなり、彼がそのお屋敷の方と話すときに部屋から出て行くと、マーシーが私たちと彼の配下の者と話す声の響きが違うと言って、優しそうな人だと言ったので、私もそう思うと言いました。今以上にドーラン様が好きになったと思います。だからとても嬉しいです。とても喜んでいいことをリリア様から彼女に伝えてください。よろしくお願いします』
彼女はまたそう説明してくれたのだ。
『いいわよ。私も嬉しいからそのことと一緒に話すわね。私が話しても彼は素敵だと思うから、バルソン様が赤の編紐にした方です。心身共にりっぱな方だと思います。二人はお似合いだと思うよ。もちろんあなたたちもよ。ほんとうによかったね』
私はそう言ったけど、ドーラン様の性格はよく知らないけど、ラデン様の方が何度か個人的にも話したので、バミス様みたいに律義な性格のような気がするけど、バルソン様にも好き嫌いというのか、性格上に合うか合わないかの好みがあったりして、それが編み紐の取得に影響を及ぼすことも考えられるよね。
『ありがとうございます。笑えますが三人ともとても緊張していることが分かりました。マーシーは二人だけであれば大変だったと言っていました』
『そんなに緊張していたの?』
『はい。私もラデン様と最初に話すときは、どのような方か分かりませんでしたのでとても緊張しました。後からお聞きしたら彼も同じだと言ったので、そのことを二人に話しました。そうすると、マーリストン様が王様にお会いするときに、ラデン様と二人で話しがしたいと話されたので、私がそのことを彼に伝えますと言いました』
『そういう話しまでになったの?』
『はい。ドーラン様からそう言っていただき、私はとても嬉しかったです』
彼女は最大級の笑みを浮かべてそう言ったような気がしたけど、三人で話したことは抜群の効果があったのだ。
恋愛には上下関係はないような気がするけど、男同士の位置づけの連係が大事だよね……この世界においては……ドーラン様から先にそう言ってくれれば御の字だと思うけどな……やっぱり彼はできた人なのだな……とか考えてしまった。私の場合はシンシア様に許可というのか話しを持ち込むと、ほかの人の意見も聞けるのかな。そこの所がよく分からないな。
『今度は四人で話す機会を作るからね。四人で一緒に食事をすると楽しいと思うよ。マーリストン様と相談しとくからね』
『ありがとうございます。楽しみにしています』
『あさって部屋を頼んでおくからラデン様と一緒に話しなさい。ドーラン様のことも伝えてね。ラデン様が私たちの会話は誰にも分からないので、特別な仕事ができると話したのよ。それは驚異的な閃きだと思った。私は隠すことばかりしか考えなくて、今度は実際に何をしたらいいのかルーシーと相談してと言ったのよ』
私はそう言ったけど、緊急事態が発生したときは絶対に役に立つ、私は隠すことばかりに気を取られていた、と自分で反省してしまったのだ。
今回のことはよい方の裏目に出てしまい、ソーシャルではないけど大いに利用しようと思い、何だか隠し癖が付いてしまい、私の性格が変わりそうだよな。
『二人でよく考えてみます。ありがとうございます』
『私も考えるとは言ったけど、バルソン様にも彼が特別な仕事の提案をしたと伝えるつもりだと話したからね。このことが認められれば、彼が赤の編紐を取るときにも役立つと思う。この城のことを考えることになるからね』
『ありがとうございます。そのことも伝えます』
『ドーラン様がいちばん忙しそうだから、私が王様にもお願いしたしシンシア様にもお願いしたし、彼が外で会ってもいいですかと直接話してくれたからね。しっかり王様の許可はいただいたから、一緒に外で会える日を作るから大丈夫よ。心配しないでね』
『よろしくお願いします。リリア様もどなたか好きな方はいらっしゃるのですか』
『えっ、えっ、私のことなの?』
一瞬焦ってしまい、こういう時に言わないでよ、何も考えてなかったじゃないのよ。
『申し訳ありません……今までお聞きしたことがなかったです』
彼女もそう言って何だか困っているようで下を向いてしまい、私はよほど驚いた顔をしていたかもしれない。
『……ラデン様に聞かれたの?』
『……はい。私は知らないと言いましたがとても気になっていました』
ルーシーにそう言われてしまった。子供たちの父親ことはルーシーとマーシーは理解しているけど、私はそれ以外のことは話してないので、どこまで知っているのか分からない。どうしたらいいのか頭が回らない。何を言えばいいのかな、参ったな。
『……子供たちのことはラデン様にも絶対に秘密だよ。二人のことは心配してないからね』
私はしばらく考えてそう言ってしまう。
『はい。そのことは二人でしっかり話しましたから大丈夫です』
『……あなたたちは、私がマーリストン様を好きだと思っているいかもしれないけど、違う人がいるから安心してね。彼もそのことは知っているのよね。シンシア様もバルソン様もご存じなのよ。こういうことは今まで話したことがなかったわね』
私はまた考えてそう言ったけど、信じてもらえたかな?
『好きな人はいらっしゃるけど、名前は教えていただけなかったと彼に伝えます』
『……私のことは気にしなくていいから、自分たちのことを考えてよ』
私がそう言うと、『リリア、会話のテンポが遅くなっていますよ』とソーシャルから突っ込みがある。
『リリア様は周りの人たちのことばかりを考えて、自分のことを考えていますか』
ルーシーからもソーシャルと同じことを言われてしまう。
『リリア、同感、同感』とソーシャルが言ったので、『黙って』と言ってしまった。
『他の人にも言われたことがあるけど、私だって考えているから大丈夫よ。そのうちに私の話した意味が理解できるからね。ずっと前から大好きな人がいると付け加えておいてね』
『その言葉を聞いて安心しました。教えていただきありがとうございました』
彼女はそう言ってにこやかに笑顔を作ってくれたけど、これもまた隠し事だと思うと、はっきりと言えない自分が情けないような気がする。
『マーリストン様のことも落ち着いたし、後は自分で考えていただくことにしたから心配しないで、私も自分のことは考えているからね。私はその人が大好きだから彼の子供がほしいのよ』
私はこのことは言ってもいいのかな、と考えつつもそう言ってしまう。
『えっ、ほんとうですか。私もラデン様の子供がほしいです。マーシーにそれとなく話しましたが、言葉が足りなくてしっかり話せませんでした。私の考えていることをリリア様に話しますのでマーシーに伝えてください』
そう言った彼女のからの言葉を聞いて、私はおったまげてしまう。
『すごいわね。そんなに好きになったの?』
『はい。シンシア様が女である以上はひとりでも子供がいた方がいいとマーシーに話したそうです。私もそう思いました。でも、私たちには戻る家がありません。シンシア様の屋敷で産みたいと言うと、お屋敷に迷惑がかかるし子供を置いてはここには戻れなくなると言って、シンシア様も守れなくなると言ったので、私はリリア様にお願いしてゴードン様のお屋敷で産みたいと言いました。マーシーは二人で話せたことはいいことだけど、これからどうなるかも分からないからと言ったので、私はラデン様の子供がほしいと話しました。マーシーはとても驚いて、今回は先に話してくれてありがとうと言われました。私たちに子供がでるとゴードン様にお願いしていただけないでしょうか』
彼女がそう説明してくれたけど、この言葉にも私は驚いたが、ラデン様が子供たちのことを話したらどうなるのよ、と空恐ろしくて、頭の後ろから背中にかけてぞぞっと電撃が走ったみたいだ。
『……すごいね。そういうことを考えたのね。私がゴードン様に話すからそうした方がいい。そう思うと気持ちが楽になるからね』
『ありがとうございます。そうすればここにも戻って来られるし、シンシア様とリリア様のそばにもいられます。シンシア様の屋敷は遠いですから、ゴードン様の屋敷は近いです。ほんとうによろしくお願いします』
『ゴードン様にもマーシーにも必ず私が話すから任せておいて、ラデン様にもそう話しなさい。ゴードン様に人を雇ってもらうから、その方があなたたちも気を遣わなくていいわよ。ラデン様もきっと喜ぶと思います』
私はそう言ったけど、ゴードン様の屋敷は保育園なりそうだな。 ドーラン様とラデン様は城の近くで屋敷を借りたり買ったりするかもしれないけど、トントン屋敷はシンシア様が買ってくれバミス様が準備をしてくれて、私がお金を出したわけではないので家の相場が分からないのよね。
それよりも私の給料はどうなっているのかしら、シンシア様からも何も言われてないけど、私って王様の家臣になっているのよね?
『ありがとうございます。マーシーが言ったようにどうなるのか分かりませんけど……頑張ります』
彼女の頑張りますという言葉を聞いて、私の顔が引きつったかも、次の言葉が出なかった。
『……前もって考えることはいいことですね。私はいつもそうしているからね。その場になって慌てなくていいからね。色んな状況を前もって考えていると対応が早くなるでしょう』
そう言うのが精一杯だ。
『はい、もう一つお聞きしたいことがあるのですが、ラデン様のことです』
『えっ、ラデン様のこと?』
私はそう言ったけど、また虫酸が走る。
『……ラデン様はアートクの市場に五年ほどいたと話していただきましたが、その……五年と言えば長いですから……その……その間に好きな人はいらっしゃらなかったのでしょうか。そういうことを聞いては失礼かと思い聞けませんでした』
彼女からそう言われたけど、私は聞かれないと思っていたけど、これって直球じゃないのよ。また肩すかしを食らってしまう。
『……私はそこまで聞いてないけど、前からここに戻ることが分かっていたとは聞いたけどね。それもいつ聞いたのかも忘れたけど、バルソン様が彼をマーリストン様に付けると言っていたからね。もしかすれば好きな女性がいたかもしれない。今はマーリストン様のそばにいるのでアートクの市場には戻れないと思います。ここに来るときにしっかりお別れしたとか、そうでなければ一緒に連れて来るでしょう。そう思いませんか』
私は自分が知らないと話してから、そう言葉を続けてしまう。
『そうですね。一緒に連れて来ますね。もしそういう方がいれば申し訳ないと思い心配していました。今度はリリア様みたいにはっきり聞いてもよろしいのでしょうか』
『えっ、私みたいにはっきり聞くの?』
私は驚いてそう言ったけど、今日のルーシーはいつもと違いとっても積極的なんですけど、ほかの女性のことが気になるのだろうか。マーリストン様が私の会話の真似をしていると言っていたけど、こんなに短い間なのに彼女も真似するわけ、どうなってしまったのだろうか、何だか怖いよ。
『リリア様は自分の気持ちをはっきり表現していると思います。私も真似をしたいのですが……その勇気が出なくて、言葉もはっきり伝えられないし、リリア様とはこうやって話せるので、私は勇気を出して聞いてみようと思います』
彼女からこういうことまで言われてしまい、私が先にラデン様に伝えた方がいいのかな、どうしようかな、困ったな。
『ラデン様を好きになったのなら、自分が思ったことは自分から聞いた方がいいわね。ラデン様もあなたに悪いと思って話せないかもしれないし、何か話しの切掛けを作り聞いてみたら? 聞くことがいちばん大事だと思う。ルーシーも何か話せないことがあれば、勇気を持って話した方がお互いのためにいいと思う。シンシア様は父親のことを剣の先生から聞いたと話されたのよ。男と女は立場が違うと私は思うので、女は子供が産まれれば一緒に育てたいと思うからね。私もそうなのよ。いつも一緒にいたいけど、ゴードン様の屋敷で産んでよかったと思っているのよ。私と一緒でルーシーもそう思うようにしてください。子供は可愛いよ。子供のためには何でも頑張れるし、子供のために自分の命も惜しまないと思うからね』
私はそう言ったけど、これってここでも通じる一般論だよね、とか思うけど、両親の育った環境や自分の経済的な立場が違えば、人それぞれ考え方が違うというのも理解できるが、親になる基本は同じだと思う。
『お二人を見ているとそのことは分かります。私はラデン様に好きな人がいても子供がいても、私が好きなったことは変わらないと思います』
彼女がそこまで言ったのでまた驚いてしまい、そこまで言われると私の言葉がなくなるよ。次の言葉が出なくなるよ。恋愛に関して私の天真な気持ちが壊れた瞬間でした。参ったな。
『そういうことを彼に話すと嬉しくて泣いちゃうかもよ。最初にその言葉を使ったらどうですか。その言葉を聞いたら彼も喜ぶと思います。私もそう思ったからね。私に好きな人がいるとマーリストン様に伝えたときには辛かったとおっしゃいました。でもたくさん話して理解していただきました。これも内緒の話しだから頼みましたよ。ルーシーはカーラのこともあるし、内緒話をしても安心しているからね。彼とたくさん話して自分の不安を取り除きなさい』
私の例えが悪かったかもしれないけどそう言ってしまい、これってラデン様に好きな人がいるって話しているのよね。盲目的な彼女に伝わったかな。心配だ。
☆ ★ ☆
『ソーシャル、ルーシーとはこういう話しになったけど、二人の間で私のことも話しているのね。マーリストン様とバミス様の共通の話題が私だったことを思い出した。二人の会話をもし聞いても私には話さなくていいからね。なるべくソーシャルも聞かないでよ。私の耳に入らなければいいことだけど』
『かしこまりました』
『……その言葉を使うと……私が命令しているみたいだから止めて』
『……分かりました。今日も朝からたくさん話して疲れましたか』
『……昨日も今日もよく話したし……今日はこんなに疲れるとは思わなかった。きつい言葉を使ってごめんなさい。今日はもう寝ます。今日のことはまた明日考えるからさ、明日になれば元気になると思う。最近は疲れが溜まっているみたいね。おやすみなさい』
『ぐっすり眠ってください。おやすみなさい』
さっきの私はどうしたのだろうか。ソーシャルがほかの人の会話を聞けるということに対して、無意識の中で反発しているのだろうか。
確かに疲れて思考が弱くなっているような気もするけど、上司や立場の上の者が命令するというこの時代の環境に、自分の体の奥深くで拒絶反応を起こしているような、対応できてないような、私の前で『かしこまる』の言葉は使ってはいけない。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。




