165=〈部屋の完成と話し合い〉
長文です。
この小説は、2015年5月1日から投稿していたリメイク版です。
たくさんの言葉を加筆訂正し、文字数が増え94万文字ほどになりました。
2018年8月1日から週三回、、約一年ほどの期間が今日で終わります。
リメイク版とは言え、誤字脱字がまだあるだろうな、でも、感無量!
誰か、何でもいいので、感想のコメントを書いてください m(__)m
「……それでは今夜の祝いの本題に入るかな」
彼がそう言ったので、えっ? 今までの話しは何だったのよ。
「ついに完成しましたか」
シンシア様がそう言ったので、えっ? 何が完成したの? と思ってしまう。
「リリアの新しい部屋がやっと完成した。マーリストンを助けてくれたお礼だ」
王様がそう言ったから、えっ? 私の部屋? と頭の中で??がずらりと並んでしまう。
「王様がリリアに新しい部屋を作ってくださったのよ。さっきは部屋のことを言われて焦ったけどね。明日の午後から一緒に見に行きましょうね。私も楽しみよ」
「えっ、私の部屋? 私の部屋?」
二度も言ってしまい、私の頭の中の思考が部屋、部屋、部屋とくるくる回っている。
「……シンシアの部屋よりは狭いが今まで不辺をかけたな。明日から移動できるとバルソンから連絡をもらったからな」
彼そう言いながらお酒を飲んでいるが、彼の視線はシンシア様に向けられている。
「よかったですね。今まで心苦しくてさっきも返事にも困りました」
「あそこの部屋は狭すぎたようだな」
「いえ、そういうことはではないです。部屋では寝るだけですから十分です」
私がすかさずそう言うと、
「バルソンがゴードン様にも協力してもらったと話していたが……」
彼は今回も言葉を濁しているのだけど、王様はどういう訳だか呼び捨てではなくゴードン様とたまにいうのよね。
「……ほんとうにありがとうございます。私は何も知りませんでした」
「……私はシンシアから頼まれただけだからな。セミルも賛成してくれたからよかった。フォーネスにも話すと部屋のことは当然だと言われたけどな。あいつは口が悪いから気にしなくてもいいぞ」
このようなことまで彼は話してくれ、言い終わった後で、左手で持っていたお酒の残りなのかおちょこの中身を最後までぐいっと飲んでいる。
私の知らない間にそのようなことになっていたのだ。
ソーシャルもマーリストン様も知っていたのだ。
バミス様やラデン様も気付いていたのだ。
ルーシーもマーシーも内緒にしていたのだ。
知らないのは私だけなのだ、とそのような言葉が頭の中を駆け巡り、彼らの家臣としての秘密主義ような連帯感は素晴らしく、ほかにも応用されているのだろうな、と思ってしまう。
「リリア、私たちはあなたに感謝しているのよ。マーリストン様だけではなくてリストン様のこともね。ありがとうございました」
彼女からまた直行で二人の名前を使われて感謝され、マーランド様もコクコクと頭を軽く前後に振り、彼なりの意思表示をしているようだ。
感謝の言葉は二人から何度も聞いていたが、彼女の言葉を聞いた王様は私の瞳を見つめ言葉には出さずに大きく頷いたので、私は彼のすっきりと見開かれた目を見つめて、右手におちょこを持って少し上にかざし、残ったお酒を見つめてから一気に飲みきると、私の胃の中に流れ込んだお酒は、先ほど口にした物と攪拌されたみたいで、彼女の言葉と彼の頷きに負けてしまい、私の味覚を麻痺させているようだ。
「……ほんとうにありがとうございます。何だか実感がわきません。このような席でいうのはたいへん失礼ですが……その……金貨は大丈夫でしたか」
私はお酒を飲んだ勢いでそう言ってしまう。
元々あった部屋を改造したとか、その部屋の家臣を別の部屋へ異動させたとか、誰かに反感をもたらせたとか、どこをどうしたのか場所すら考えられず、まさかこの部屋の近くにあるとは思わないけど、と私の思考は回転しながら、体の中が少し熱くなりほんわりとしてきて、これはまずいよ。
どんな立場であろうとも、まして自分たちの子供や孫の命の尊大さに、マーリストン様は私の夫と呼べるかどうか判断は難しいが、リストン様は私の子供であり二人の直系の孫にあたるわけで、今までそのことを実感していたが、言葉は違うが今夜ほど、その気持ちが先ほど一気に飲んだ濁酒と同じように、より体全身に染みてしまう。
「リリアの部屋は私の部屋に近くてね、家臣の部屋を二つ壊して新しく作ってくれたのよ。小さいけど庭もお願いしたからね。庭はまだ出来上がってないのよね。私の屋敷の庭師のガービルにお願いしたけど、彼は体調を壊したから少し遅くなってしまったのよ。悪かったわね」
王様は何も言わずにお酒を飲んでいて、王様ではなくシンシア様が手配をしてくれたのだろうか……そうだ、あそこだ……あの通行止めになっていたあそこの奥だ、と私はシンシア様声の響きを聞くと、ややボーッとした頭で閃いたのである。
「私は許可しただけだしな、後はシンシアとバルソンがやってくれた。ゴードン様とシガール様も協力してくれたみたいだな」
王様が私の部屋に関係した人たちの名前を教えてくれたようだ。自分は許可しただけで何も手伝っていない、とそう言っているのだろうか。彼はそのことで少しいじけているのだろうか。そうだすると、何だか可哀想な気がする。
「王様、ありがとうございました。王様が許可を出していただかなくては完成しなかったと思います。私はとても嬉しいです。自分の部屋の中を早く見たいです」
私はいじけているような王様の瞳の中をぐっと見つめてそう言ってしまう。
「そうですよ。マーランド様が許可を出していただかなくては、私たちはあの部屋は作れなかったのですよ。私は提案しただけですからね」
彼女は王様ではなくマーランド様と言ったので、この名前の方が親しみやすいと思い、今度からこの部屋に入るとこの名前で呼ぼうと思う。
「私も王の立場でもう少し金貨を増やすかな? 城の金貨は勝手に使えない……もうそろそろ前の制度に戻すかな」
彼は呟くようにそう言ったので、要するに現金の持ち合わせがなく、今回の話しに参加できなかったのだろうか。前の制度に戻すとはどういう意味なのだろうか、と私の思考は向こうの知識で判断をしているようで、今までそのような必要性を感じていなかったのかしら?
ゴードン様の前にある、あの屋敷を手に入れるために個人的にお金を使ったのかしら? ふと私の頭の中でそのような言葉が閃く。
「マーランド様、例の屋敷の話しですが、必要がなくなれば私が買い取ってもよろしいでしょうか」
今夜はこの話しを自分からはしたくはなかったけど、私の意識の中でその言葉の感覚描写が負けてしまい、彼のことを思いそう言ってしまう。
「……あそこか」
彼はお酒を一口飲み終わってボソッと言ったので、やはりあそこが原因なのだ、と思ってしまう。
「リリア、どこの屋敷なの?」
王様ではなく私にそう尋ねる彼女の顔は、視線が合うとすっとぼけて真面目な表情をしている。さすがだ。
「ゴードン様の屋敷の前だ」
私が話そうと思った矢先に彼が発した言葉が一瞬早い。
「ゴードン様の屋敷の前をどうしたのですか」
「シンシアには話してないがバルソンに頼んで買い取った」
「えっ……うそっ、リストン様を守るためにですか」
彼女のそう言った言葉の響きは並はずれて素晴らしく、女優さんになれそうだな、とか思ってしまう。
「……そうだ。自分の金貨を使ったからな」
マーランド様またお酒を一口飲み終わりそう言ったので、視線は彼女を見ているが彼女の言葉を疑ってないような話しぶりなので、よかった。
「……私は考えたのですが、リストン様が城に入れるとあそこは不要になると思いますます。女の編み紐と女の立場であそこを利用したいと思いました。私が買い取ってもよろしいでしょうか」
「……確かに不要にはなるが……」
彼は左手の杯を持って肘をつき、彼の視線は私を見ていたので、もう少しで口説き落とせそうな気がするので頑張ろうと思う。
「私が半分出しましよう。金貨が何十枚だったのですか。バルソンに聞いてもよろしいですか」
彼女が先にそう言ったから私は驚いてしまい、私の視線は彼女に向かい、私が買い取りたい話しは知っているのに、私が話したときから考えていたのだろうか。
「私はマーランド様にお願いがあります。シンシア様には話しましたが、ドーラン様とマーシー、ラデン様とルーシー、私のそばにいるマーヤもそうですが、ラデン様の配下であるフィード様と親しくさせていただくようにお願いしました。その方たちにもし子供が産まれるようになれば、私はあの屋敷を利用させていただきたいです。ゴードン様の屋敷の前であり城にも近いです。使用人を雇って子育てを任せれば、彼らもすぐに会いに行けます。そのために私が買い取りたいです。いかがでしょうか」
私は彼の顔、彼の目の中を真剣にぐいっと見つめて、長々とそう説明すると、
「マーランド様、女の立場として考えられます。ほかの家臣たちもうまくいけば、女の編み紐の制度で利用することは可能だと思います。私もリリアの考えに賛成ですがいかがですか。私が半分出しましょうか」
「……そのことは二人で話し合ったのか」
彼は私たちをぎゅっと睨んだような目付きで、言葉がやや強めに聞こえてしまう。
「いえ、フィードとマーヤの話しは聞きましたが、私は屋敷の話しは聞いていません」
彼女は断言するかのような声の響きで、きっぱりとそう話してくれる。
「マーランド様、私はもう一つ考えたことがあります。彼らみたいに家臣の中には身近にいる人たちで、気になっている男女が必ずいると思います。そういう人たちを探し出し話しをさせてあげたいです。そういう場所というのか……その機会を作ってあげたいと思いました。セミル様とシンシア様にお願いして、二人で協力していただきたいと思いました。許可を出していただけますか」
私はここまで話したのだから、この一連の話しは男女の出会いが大事であるとそう考えていたので、その説明も追加する。
「……それにはあの屋敷が必要だということか」
「はい。私に譲ってください。お願いします」
「……分かった。考えておこう」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
少し顔が赤くなった彼の顔を見てそう言うと、
「マーリストンもリリアも頑固そうだからな。別に悪い話しではない。あそこは城とは関係がない。話し合いの必要もないので私の一存で決められる。セミルにも話してみよう」
そう言った彼の声の響きでは先ほどとは違って聞こえ、気落ちしていたことから抜け出せたのだろうか。
何ごとにもセミル様抜きでは考えられないのだろうか、と思ってしまうほどで、セミル様の存在は彼の心の中では正室として、シンシア様と三人の連帯感というのか、この城で波風を立てずに守り抜く彼の優しさというのか、ことあるごとに彼女の名前が出てきていたことを思い出す。
「ありがとうございます。私からもよろしくお願いします」
シンシア様もそう言ってくれたので、屋敷の話しは彼には悟られていないような気がするので、シンシア様の演技力には感謝以外の言葉はない。
でも、屋敷の買いとりの話しが完了すれば、シンシア様のことだから一生隠すことはしないで、いつかはマーランド様に話すだろうな、と言うことは考えられるが、私の今までの言動は話さないで欲しいし、もし話すとすれば、きっちりとセミル様とフォーネス様までと、シンシア様に釘をさしたいな。
「今夜はリリアの部屋の話しから飛んでもない話しになったな。まったくリリアの話しは驚くことばかりだ」
彼は先ほどとは違い優しそうなそうな視線で、私の瞳の中を覗き込みながらそう言ってくれるので、彼の瞳と少々赤くなった顔のパーツがにこやかに緩んで、先ほどよりは少し元気になったみたいな気がする。
「……あの屋敷は……セミルとシンシアとリリアの三人で買い取る方がいいのだろうか」
彼の意外な言葉に私はビックリして、彼はいったい何を考えてそう言うのだろうか。私の部屋作りのことはショックだったのだろうか。女の立場に参加したいのだろうか。のけ者にされると思っているのだろうか。自分を含めて金貨を四等分にするという意味なのだろうか。
そうすれば一人分の金貨が少なくなるのは事実ではあるが、私の自由が効かなくなるかもしれない。でも……彼も参加ができるということであり、後からシンシア様によく事情を聞いてみよう思う。
まだ日時は決まっていないと話したけど、ゴードン様の屋敷に行く説明を具体的にすると、彼はとても喜んでいるみたいでよけいにお酒が進んでいるようだ。マーリストン様とシューマンの編み紐のお祝いの参加者のことも説明をして、全員で十三人になると名前も列挙すると、マーランド様は『分かった』と許可をしてくれたので、この二つの追加話しをする間に、私はだんだんと酔いも覚めてしっかりと残りの料理を食べ、マーランド様はより元気になってくれたみたいに感じてしまい、ほんとうに話してよかった。
☆ ★ ☆
『ソーシャル、私の部屋のことは知っていたのね。ビックリしたのよ』
私は部屋に戻りいつものごとく寝る体勢でベッドの中に潜り込んでから、それからソーシャルに話しかける。
『彼らが部屋のことは隠しているみたいなので、私も彼らの仲間入りができたと思い話しませんでした。タイミングよく完成しましたね。部屋の間取りを先に聞きたいですね。ルーシーにも聞いてもいいですか』
ソーシャルがそう言ったので私は少し驚き、ルーシーを自分の視覚として利用するというのか、お互いの親密感をかもし出す口実というのか、二人で話す機会が多くなれば彼女も喜んでくれると思い、私が許可するとかしないの問題ではなくて、大いに容認したいと思う。
『……ルーシーに聞くのは構わないけど、セミル様やシンシア様の部屋のように奧と手前と二部屋になっているのかしらね。シンシア様の部屋は奥深いけどセミル様の部屋は細長いのよ。私の部屋はシンシア様と同じような造りになっているのかしらね』
『正室と側室の部屋では違いがあるのかもしれませんね』
彼女からそう言った言葉を聞くと、彼女の情報網は完璧であると思っているので、やんわりと私に教えてくれたのだと思う。
『……なるほどね。それは考えられるわね。私がマーリストン様の側室になることを前提として造ってくれたのかと思うけど、それは言われなかったけどさ。建前は彼を助けたお礼だということね。長い目でみればずっとそこに住むことになるのよね』
『そのようですね』
『知らなかったのは私だけなのね。あの時はそんな気がしたけどさ、話し合いが終わると、明日の午後からほんとうに部屋が見られるのかしら?』
『シンシア様が案内してくれるのでしょう?』
『そうだと思うけど、どんな造りなっているのかは見てからのお楽しみなのね。彼女たちの部屋みたいに広くはないとは思うけど、奥の部屋は男子禁制になるのね。庭があればドアもあるし窓もあると思う。ルーシーとすぐ外にも出られて練習もできるからよかった。彼らが七月に出かける前にアートクの市場に行かせなきゃね』
『……確かに、ルーシーを向こうに連れていかなくてはいけませんね。私が知っていてもリリアには話せないことがたくさんあると思います。城の外とは違います。リリアの周りの人たちに危険が迫ればすぐ教えます。その……聞かれなければ何も話しません』
『……そうだよね。いちいち話すのも大変よね。今回の場合はいいことだからさ、後からシンシア様が王様に説明してくれるよね。彼女には何でも話しているので私の話しにも合わせてくれたしね』
『そのようでしたね。二人ともリリアに感謝していますよ』
『……ソーシャル、今夜は今までの中でいちばん緊張しちゃったのよ。やはり三人で話すのは難しい。それに、あの濁酒みたいなお酒は飲めない。向こうにいてもビールとかお酒は好きじゃなかったしね』
そう言った後に、私の二十歳の誕生日に父の晩酌に付き合い、父が買ってきてくれた小さな缶ビールを飲んだことを思い出し、私の意識が向こうに飛んでしまい、ソーシャルとの会話が少し止まってしまう。
『……明日はまた忙しくなるので、今夜はもう眠ってください』
『……分かった。明日は頑張るからね。おやすみなさい』
『おやすみなさい』
彼らが私のために作ってくれた部屋だと思うと、広くても狭くても彼らに感謝したいし、まして庭があるなんて夢のようだ。シンシア様の庭のようにカーラが見えるような場所があればテーブルと椅子を置きたいし、彼女たちの部屋よりはシンプルにした方がいい。部屋があるだけで家具の類は自分で調達しなくてはいけないだろうし、ゴードン様にベビーベッドや小さな滑り台を中庭に作ってもらったように、設計図らしき物も作らなくては、部屋を見ると色んなことが閃くかもしれない、と夢見心地で色んなことが頭に思い浮かび、マーリストン様の側室になれたとしても、ずっとその部屋を使わせてもらいたい、と堅く心に誓い眠りについた。
☆ ★ ☆ (14)
今朝は二人が迎えに来たので、食事が済んでシンシア様の部屋へ行くと、私が来るのを待ち構えていたように、彼女が昨夜の続きのような経緯で話しを始め、彼女の話しを聞いていて、だんだんと嬉しさが込み上げてきて、やはり知らなかったのは私だけだった。
そのことに関してルーシーには何も言わずに、彼女はシンシア様の言葉がいちばんなのだ、と改めて納得してしまい、ルーシーはほんとうに口が堅いのだ、と今まで以上に実感した。
バルソン様がシンシア様の部屋へ尋ねてきて、私たちに話し合いの流れを説明してくれ、最初に私の話しを皆に説明し退場するように言われ、その後は通常の会議みたいな話し合いを開く予定だそうだ。
私はルーシーをそばに置き、周りの人たちがどのように私の言葉を受け止めているのか、彼女の率直な意見を聞きたいと説明して、彼女の参加を王様に許可していただくように、バルソン様に伝えてほしいとお願いしてあったことが許可された。
バルソン様がほかの人にも宣伝をしてくれたようで、通常は二十人ほどの参加者だけど、私の話しに興味を示した人たちがいるらしく、三十人ほどの人たちが集まるそうで、彼らは私の話しを聞くとその場で引き上げ、それから本来の姿で話し合いを始めるそうで、やはり厳選された家臣しか参加できないほどの重要な会議である、と納得してしまう。
向こうの考えでは、町議会や県議会、強いて言えば国会のような話し合いになるのだろうか、とか思っていたが、この城は民主主義みないな制度なのだろうか、とも思ってしまう。王様がいるから君主主義になるのだろうか、とも考えていたけど、歴史の話しは大好きだが政治経済学がいちばん苦手な分野で、私は政治の話しは日本にいるときから興味がなく、この城の運営状況がよく分からない。そのことに口出しすればソーシャルに怒られちゃうよな、とか考えながら、今から開催されると思われる部屋へ向う。
☆ ★ ☆
王様が正面に座りその左右に二人ずつという座席配置で、長方形のテーブルの左右には見知った顔もあったがほとんど知らない顔ぶりで、王様の左側の側面にはマーリストン様が、その隣にはシンシア様が、その隣にバルソン様が座ることになり、私はいちばん裾に案内されると椅子が用意されていたが、ルーシーは私の右後ろに控えて立つことになる。
マーリストン様の後ろにはバミス様が、シンシア様の後ろにはマーシーが、バルソン様の後ろにはラデン様が控え立ち、王様の右手にはセミル様が座り、その後ろにシャーニンが控え、セミル様の隣にフォーネス様がグルーミンを控えさせ、前面の入り口にいちばん近い場所にドーラン様がドアを背にして立っている。
後ろの席から左右をよく見ると、この城に入った翌日にシンシア様の部屋へ挨拶に来たと思われる、見覚えのある数人の顔ぶれも確認することができたが、ほとんど知らない人たちで挨拶程度の会話しかしてないような気がするので、彼らからしてみれば、少なからず私の存在を知っているのだと思われる。
最初に王様が軽い挨拶程度の話しを済ませると、私の名前を指定し女の編み紐の制度を作りたい旨を軽く話してくれ、今から本人が説明をすると話されて、私が中心になりセミル様とシンシア様とフォーネス様が協力することも話していただき、このような場所にセミル様が参加するのは初めてだ、と話されたので、私はセミル様とフォーネス様がこの場所に来るとは知らずに、バルソン様もそのことは何も言わず、私はそのことがいちばんの驚きであり、急に参加することになったのだろうか、と考えてしまう。
展示する物はないが私が説明する言葉がすべてであり、今から私のプレゼンテーションの始まりだ、と大きく深呼吸をしてから、私が王様やシンシア様に説明したことを順番に分かりやすく皆の前で話し、バルソン様から説明を受けたことや、参加者に色別の編み紐を与えることを説明する。
今まで城の外で商売をしていたので、それが軌道に乗り私自身が金貨を稼げる状態になったことも説明し、この城の財源を使わずに自分の金貨を使いこれから作りたい、と強調して説明し、彼らに私の手持ちの金貨を見せつける。
この金貨の出所は違うけど、鹿肉ジャーキーの言葉は王様もシンシア様にも説明をしていたので、横やりが入ると困るのでその言葉は使わずに、王様とシンシア様もそのことは報告を受けて知っていた、と協力的な言葉もいただき、影ながら私たちに協力してくれる人を希望していることも伝える。
王様のひと言に反対をする人はいないと思うけど、陰口を言われることも十分に理解しているつもりで、私のバックアップの面々がこの城においてのトップクラスの人たちなので、正面切って反対をする人はいないような気がするけど、彼らが噂としてこの城の内外の人たちにこの制度を知らしめてくれれば、今後の剣の勝ち抜き戦に参加する女性の数が増えるかもしれない。それでこの城を守る女性の剣客が増えるようになるはずだ、と思ったことは言葉として伝えずに、そのような先のことまで考えてもらえれば、私がここで話したことは無駄にはならないような気がする。
私が一通り話し終わると、王様はフォーネス様の手合わせのことを持ち出し、バルソンみたいに剣客だと認めてくれ、城の財源も使わないと言葉を続けられ、女性をまとめ上げることは可能であると思うので、セミルもシンシアもフォーネスもリリアに協力することがすでに決まっている、と皆の前で断言するように説明してくれ、許可を出そうと思う、と皆の前ではっきりとそう言ってくれた。
☆ ★ ☆
『ソーシャル、また騒々しい場所に参加させたわね。煩かったでしょう?』
『もう慣れましたよ。でも……人がたくさんいる場所は苦手ですね』
何だかんだと考えながらも話し合いも無事に終了し、王様から正式に許可をいただいたのでホッとして、今後はセミル様とシンシア様とフォーネス様の四人で、秘密の作戦会議を開きたいと思いながらも、まだまだやることが目白押し迫ってはいるが、この南の城で私の部屋が完成し、私の立場を作る下準備は整ったようだと実感した。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
今回で『第七章』が終了しました。
伏線である言葉もサブタイトルとしてあるのですが、リリアの部屋も完成して住む場所が決まり、話し合いも終了し、彼女の立場が一歩前進した、ということで、この小説はここまでで『完』にすることにしました。
いつか続きを書きたいけど、長い期間、その後の文章が閃きません m(__)m
私の拙い小説読んでいただいた皆様には、とても感謝しています。
ブックマーク付けていただいた方たちにも、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。
小説家になろうで色んな人の小説を読み、場面がうまい具合に変わり、章単位で起承転結がありそうで、それが物語の中で続いていることは、当時書いていて考えてなかったみたいですね、と言うことが、今では少し考えられるようになりました。
隠していますが完了した小説も含め、ブックマークは242件もあるのですが、他の人の小説をたくさん読んで楽しむ時間の方が、今では多いような気がします。
第3作目の『ヨーチュリカ大陸』は魔法の世界のつもりですが、5月の連休辺りからストーリーが停滞していて、続きが書けるのだろうか。3作目の小説を書こうとする気力だけは……自分でも不思議なくらい。
おばさん人生は先が短いので(笑)、他の読書を楽しみながら、ぼちぼちと続けたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします m(__)m




