103=〈死後の近い未来〉
やや長文です。
四月一日、朝七時、新しい小説を投稿予約しました。
十八回分の、第一章だけです。
タイトルは『ヨーチュリカ大陸』です。
あらすじ……。
主人公の名前は夏川燈花、二十八歳。隕石と遭遇する。
花火のような緑色の灯り、時空の狭間は、夕焼け空のような薄明かりだ。
燈花の名前の一文字を絡め、その隕石の名前を燈と呼ぶ。
魔法が飛び出す異世界で、燈花と燈の運命は……。
ご興味のある方は、読んでみてください。
よろしくお願いいたします。
☆ ★ ☆ (26)
私はバルソン様と一通りの話しを終え、一緒にこの部屋を後にした。
シンシア様もバルソン様もソードのことは知っているが、ソーシャルとトントンの存在は知らないので、これをうまく使い王様が外出するときには、マーリストン様もバミス様もシューマンも一緒だと考えられるし、私たちが共として参加できれば、バルソン様も入れて六人でチームが作れるだろう。
何を言っても王様のお供ができる状態にならなくては、それはバルソン様から王様に話してもらえればいいことであり、ラデン様が赤の編紐が取得できれば、この城では必要不可欠な存在になると思う。
少しだけ子供たちの存在も話したので、ルーシーもラデン様に子供のことが話しやすいと思い、ドーラン様がいてラデン様がいて、マーシーもルーシーにも幸せになってもらいたい。
いずれ、私がバミス様を大好きだということも理解できると思うし……と色んなことを考えながら、ソードでゴードン様の屋敷へ向い、ホーリーだけに声をかけて自分の部屋に入ることができた。明日の朝は子供たちが驚くだろうな。
☆ ★ ☆
『ソーシャル、ゴードン様のことを考えると、ここでは色別の編み紐が昔からあったのね。それをバルソン様が今のように作りかえたのね。バルソン様も赤の編紐を持っているということよね。そのことは聞いたことがなかったけど、色別に王様から許可された城でのフリーパスみたいな部分があり、その位置づけもしっかり決まっているのね』
私は部屋に戻りいつものように、寝る前にソーシャルに話しかける。
『そのようですね』
『毎回色んな処遇が許可を取らずに色別で認められているのでしょうね。それを女の立場で考え直さなくてはいけないのね』
『そのようですね。それはリリアとシンシア様が二人で考えればいいことです』
『私はここの文字が読めるの? 何かの『印』は見たことがあるけど、考えると今まで文字は見たことがないよね。手紙のやり取りとかしたことがないものね。子供たちにも文字を教えなくてはいけないのかしら? 十進法の計算とかするのかしらね』
『そのようですね。計算は何か買うときに必要ではありませんか』
『そうよね。マーリストン様は読み書きができるのかしら? 私と会ってからは教えてないけど、その必要性を考えてなかったのよ』
『そのようですね。マーリストン様は十歳まではここで習っていたと思います』
『今まで『ミーバ』から取りだした物は日本語で書いてあるし、それに私の時代の物だからね。バミス様が学校みたいに読み書きも計算も教えてくれるのかしら?』
『そのようですね。バミス様に聞いてみたらどうですか』
『ここは日本ではないようだけど、世界地図から見たらどこに位置するの? 前に歴史上ではどの時代なのかと考えたことがあるけど、ここの人たちの顔つきや雰囲気から考えると、ヨーロッパのどこか遠い昔のような気がするけどさ』
『そのようですね。私はリリアの時代から過去を検索してここを調べましたが、残念ながら私にも分かりませんでした。リリアはこの時代に子供たちを残したので、その……ここのことは深く考えない方がいいと思います。私と違い人間の時間は前にしか進みません。過去には戻れませんよ』
ソーシャルがそう言ったけど、調べたけど分からなかったの、調べたから分かった、と言ってほしかったけど、どちらの言葉が正しいのだろうか。こんなに現実の世界なのに、たくさんの人間がいるし私の子供だっているんだよ。バミス様の子供も欲しいのよ、と言いたかったけど、ソーシャルには話す気がないようだと思う。
『私がこの時代のことを考えないように、話さないということね』
『それもあります。私はこのことは話したくなかったのですが、確かに私はこの時代の過去に戻りました。リリアが考えた通りです……でも……近い未来には行っていません。私もリリアと同じでこの時代の人間に深く関わりを持ちすぎました。だから……未来を見るのが怖いです。私はリリアと子供たちと一緒に同じ時間を進みたいです』
ソーシャルは彼女なりの理由を話してくれたような気がする。
私たちが出会ってから八年という時間は長くて、マーリストン様を王子としてこの城に帰城させるためにも、私が城に入り子供たちの将来のためにも、自分の確たる位置づけを作ろうとしている間にも、ソーシャルにも同じ時間が流れていたのだ、とは思うけど、彼女とは人間としての時間の流れが違うかもしれない。
子供たちのソードの存在も心強いけど、マーリストン様のトントンの存在もあれば、大まかな城の内部が把握できると思うし、私のそばにソーシャルがいなくても、私から離れて自由に動くことができそうな気がした。
今までそういうことは考えもせずに、意外なソードの横のつながりで、最初のころとは彼女の考え方が変わってしまったのだろうか。
『言い伝えのことを教えてくれてありがとうございました。そのことで私の位置づけが決まりつつあるからね。私はいいとか悪いとかは言えない。自分だけであれば利用しないような気がするけど、子供たちのために活用しようと思います。近い未来に行っても私には教えないでね。怖くて生きていけないような気がするからね』
知りたい気持ちもあるけど自分の未来が分かると怖いよ。何をしてもそうなってしまう。何もしなくてもそうなってしまう。逃げ出すことができないような気がする。
『分かりました。私も危惧しそうで行くつもりはありません』
彼女はそう言ったけど、過去に遡ることは事実を直視することであり、今後の未来はどうなるのか分からない。彼女は私以外にそれほど深くここの人たちに介入してしまったのだろうか。
『ありがとうございます。嫌な未来を知ってしまうと誰しも回避したくなるけど、私が剣道の試合の前に戻っても……あの崖からは飛び降りるのよね』
『前にも話しましたがそういうことです』
『結局の所、ここでは生きているけど向こうでは死亡者だものね』
『そう思うのであれば、この時代のことは深く考えない方がいいと思います』
『……分かりました。ほんとうに子供のために生きるしかないのね』
『……そのようですね。この時代に来てから会話ができていますから、文字も読めると思いますよ』
『文字が読めても意味が分からなかったらどうしようもない。読めないかもしれないし、シンシア様に解説してもらう方法を考えなくてはね。何かいい方法はないかしら?』
『この城においての仕事の役割を聞いてみたらどうですか。ここを一つの企業だと考えたらどうですか。色んな部署があり仕事の分担が決まっていると思います』
彼女がそう言ったけど、そういう向こうの考えをここで当てはめてもいいのだろうか。ソーシャルは考え方の一つを提示しただけで、この城を会社と見立てるのか。『ミーバ』から私の知識を増幅させるような本を取り出さなくてはいけないのかな。
『ほんとうにそうね。ここを企業だと思えばいいのね。会長や社長がいて専務がいて、部長や次長や課長や係長がいるのね。その人たちを守っているのが編み紐を持っている人たちだと思えばいいのね。それを聞いて色別に結びつければいいのよね』
『そのようですね。その場でリリアが閃いた会話をすればいいのですよ。因みに、シンシア様が社長でマーシーが直属の専務で、リリアは専務であり企画部長の位置づけですかね。それを守っているのがルーシーとマーヤですね。王様の存在は首相や大統領みたいな存在ですね』
彼女はそう説明してくれたけど、王様が本店の社長であるならば、バルソン様はすべての補佐役となり、シンシア様とセミル様は東西の屋敷の支店長さんなのかな、とか別の意味でその言葉が頭に閃き、私はシンシア様の地位向上の企画部長の設定が好ましいかな、とか思ってしまう。
『ソーシャルはおもしろいのね。私はシンシア様の企画部長の方がいいかな。その権限で向こうの知識をふる活用させて色んな改革をしたいな。バルソン様が書かいた本を見ながらその場で閃きが起こればいいけどね』
『そのようですね』
『何だかそのようですね、と何回も言ってない? ちょっと気になるけど』
『……そうですか。気づきませんでした』
彼女の声の響きは少し低音気味だけど、いつもの声の響きと違うのよね。
『今度からその言葉に代えないでよね』
『分かりました。私を大いに利用してください。この言葉の方が大好きですよ』
彼女は気を取り戻したような声の響きに変わったようだ。
『私も大好きよ。ほんとうに会社に例えられるのね。会社の位置づけを理解してないけど、何か本を『ミーバ』にお願いしなくてはね。最初のころに目覚ましと電池のランタンと、紫外線ライトと懐中時計はお願いしたけど、電子辞書みたいな精密機械も取り出せるの? でっかい広辞苑は隠すのも大変そうね。ここに来るまではバイトもしたことがなかったし、世の中のことがよく分からなくて、私の知識も二十一歳で止まったのよね。八年間でここでの色んな生活感が少しは理解できたみたいよ』
『そのようですね』
『ほらまた使った』
『ほんとうですね。無意識で言っていたみたいですね』
彼女はそう言ったけど、彼女が無意識なはずがない。いつもすべてを考えて私に話してくれる。何か違うことを考えているようだ、と思ってしまう。
『私の話しをほんとうに聞いていたの?』
私の頭の中では、彼女が話した一連の言葉が駆け巡りそう言ってしまう。
『……しっかり聞いていましたよ』
『何か他のことを考えていたのでしょう? その話し方だとしっかり意識が戻ったみたいですね』
私は断定的にそう言ってしまったけど、私もそうだけど、彼女は胸に秘めた何かがあるようで、私たちの会話のテンポは一瞬のずれが生じているようだ。
『……もし私が近い未来に行くとすれば……リリアが亡くなってからにしようと思っていました。それを言うべきか言わざるべきか……と以前から悩み、この機会にリリアみたいにはっきり言うことができましたよ』
『……私の家族のためにありがとうございます』
私は一瞬言葉を考えてそう言ったけど、今の私にはこの言葉しかない。私が死んでから未来に行けば、いずれ産まれる私たちの子孫も守ってくれるのだろうか。でも、私が死ねば新しいご主人様を捜すのよね。前のご主人様が亡くなり、それで私を見つけてくれたのよね。そのことは『裏事情』で変わったのかしら?
☆ ★ ☆ (27)
「食事のご用意ができました」
久々にホーリーの生の声が聞けて、うだうだと頭の中で考えごとをしながら軽めのストレッチをベッドの上でしていた私だが、その声で頭の中が何だかこの屋敷モードに戻れたみたいで嬉しくなる。
「ホーリー、申し訳ないけど食事の前にゴードン様と二人で話せますか。仕事部屋がいいですけどお願いできますか」
私が布団の中からそう言うと、彼はそのことをゴードン様に伝えてくれると言ったので、私は布団の上だけを足元に畳んでから、服を着替えて仕事部屋に向うとにする。
「ゴードン様、おはようございます」
私は引き戸を開けて彼に挨拶すると、
「おはよう。ホーリーからさっき聞いて驚いたぞ。昨夜はあれで来たのか?」
いのいちばんにそう言われてしまう。
「はい。子供たちはいつもありがとうございます。ホーリーにお願いしたときは、ラデン様とルーシーを会わせようと思いましたけど、バルソン様の時間が取れたので昨夜は四人で会いました。ゴードン様には話してなかったですけど、ラデン様はゴードン様と同じで、元々右手にブレスを付けていましたから、ルーシーと心の言葉で話せることが分かりました」
「……そうか、三人で話せるということか?」
「いえ、三人では話せません。一緒にいても二人での会話になります。ラデン様は私たちの心の言葉は聞くことはできますが、会話は口からです」
「……なるほど。これもリリアの不思議なのだな」
彼が断定的にそう言ってくれたから、深く尋ねられないことに感謝をしている。
「そう思っていただきたいです。ラデン様はアートクの市場に子供が二人いますが、ルーシーはそのことを知ってもラデン様のことが好きだといいました。お互いにそのことを確認して、同じ気持ちだと報告を受けました。それで、昨夜はバルソン様に報告するために四人で会いました」
「なるほど。そういうことになったのか」
「はい。それと、ドーラン様がマーシーのことを気になるということで、二人で話しをさせるとお互いに想いがあることか分かり、今度は城の外でも会ってもいいと王様から許可していただきました」
私はそう告げて、彼女たちの考えを話す切掛けを作り出す。バルソン様にもこの話しをすることでお断りをしたのだから、ゴードン様にもきっちり話しをしないと、一瞬バルソン様は話すのをためらったような気がしたけど、バミス様のことがなくて私が会いたいと思っても、自分から彼に話す勇気はないよね。
「リリアも大変だったな。今度はあいつらの世話をしたということだな」
「はい。彼らの子供たちにも私の子供たち守ってもらいたいと思いました」
「確かに考えられることだな。子供が一緒に育てば早い時期からお互いの存在を理解できるからな」
「私はリストン様のために考えました。マーリストン様の側近はバルソン様が考えてくれています。その次は彼らの子供たちです。シンシア様にもそのことは報告しました」
「……なるほどな。あそこの連中もリストンのことを知っているということか」
「いえ、知っているのはルーシーとマーシーだけです。それから、バルソン様が作り替えた編み紐の制度の話しを聞き、私が女の編み紐の制度を作りシンシア様を代表とし、この城の中を守りたいと王様に話して、今度の話し合いで皆さまの前で説明することになりました」
「今度そういうことまで考えたのか」
彼は私の言葉に対してエスカレートしたごとく驚きを表している。ゴードン様には掻い摘んでしか話しができないけど、セミル様の側近の三姉妹やパージュやローランにも好きな人がいてくれたらいいのにな、とかも考えていた。
「あさってから三日間アートクの市場に出向き、私はサガート様に会ってきます。男とは違った編み紐を考えていただこうと思いました。彼であればこのことを秘密にしてくれると思います。外に漏れて偽物を作られては困ると考えました」
「なるほど。サガートだったら間違いがないと思うが、眉唾物をつかまされることもないだろう。俺のことも話してもいいぞ」
「はい。話しの折にはそうさせいただきます」
「……そうか、城の中はそういうことになったのか。祝賀会が終わりバルソン様とは一度しか会ってないからな。今度はバルソン様に会ったら詳しく話しを聞いてみよう」
彼がそう言ってくれたので、祝賀会の準備で通常のバルソン様の仕事が溜まってしまい忙しかったようだな、とか勝手に思ってしまう。
「よろしくお願いします。それでもう一つ大事な話しがあります。ルーシーやマーシーに子供が産まれることになれば、彼女たちには戻る屋敷がありません。シンシア様の屋敷は遠いです。向こうに行けばこちらに戻って来られません。ここで産ませてあげてもよろしいでしょうか」
「……リリアみたいにここで産むということか」
彼の目尻は元々下がっているけど、目を大きく見開いてまた驚いた声の響きになっている。
「はい。二人でそのように考えたそうです」
「リリアも少しは手伝ったのだろうな」
彼から呟くように言われてしまったけど、
「ほんとうにほんの少しだけです。そうなった場合にはここで人を雇った方がいいと説明して、ゴードン様にお願いすると話しました。ほんとうによろしくお願いします」
「……分かった。ミーネにもそのことは伝えよう」
「ほんとうにありがとうございます」
私はそう言ったけど、大変なのはこの屋敷の人たちであり、煩いくらいの賑やかさが想像できるな……今もそうだと思うけどね……申し訳ありません、と心の中で呟いてしまう。
「マーリストン様が落ち着いたら今度は女の編み紐か、リリアもやることがたくさんあるな。城の中が窮屈だとは考えられないよな」
「今のところは考えられません。今度はそのことを考えて自分の立場をしっかり作ろうと思います。すべてはリストン様のためです」
私はそう言ったけど、どうなるか分からないけど、私の言動力で作り上げてみせます、とははっきり言えない。ゴードン様との会話はシンシア様と違い、隠す部分がほとんどないので単刀直入に話すことができるけど、何と言ってもソーシャルがいちばん話しやすいよね。
「よく分かった。子供たちもそろそろ起き出すと思うから向こうに行くか? いつも先に食事をする。ミーネとコーミンにはホーリーから伝えてもらうように話しておいた。子供たちはリリアを見たら喜ぶぞ」
「ありがとうございます」
私はミーネ様とコーミンに先に挨拶をして、食事は後からするとからと話し、客間の真ん中の部屋をそっと開けてみると、子供たちは二つのベビーベッドの中でまだ寝ていた。
このベビーベッドはブレスと一緒に、彼らが三ヶ月を過ぎたころに私が提案してゴードン様に竹で作ってもらい、一つは双子用に大きめで布団の上下も特注で二人を一緒に寝かしていたけど、コーリンは一人用の小さなベッドを後から作ってもらい、隣通しに置いていた。
ベッドを支える四本足は上まで一メートルほど高くて丸い竹で作られて、五十センチほどの高さに床板があり、その丸い竹に切れ込みを入れてがっちり固定されていたので、二人が立ちあがって伝え歩きをしていても全体的に安定感はいいと思った。
片方の側面には下に蝶番があり下に垂らすことではなく、左右の隅にある差し込みを外すと側面の取り外しができるので、子供たちを外に出すときも便利であった。
私はしばらく三人の寝顔を頭の方から順番に見ていた。
リストン様の顔を見ながら、あなたはマーリストン様みたいにたくましく育たなければいけないよ、と心の中で話しかけ、自分の立場を理解できるように早く大きくなってね、と頭を撫でてやった。
リンリンはリストン様より元気でしっかりしているので、女でも私みたいに剣客になり、リストン様を一緒に守ってね、と心の中で話しかけて頭を撫でてやった。
コーリンに話しかけようとすると、彼女が目を開けたので驚いて、子供たちは前から寝起きは少しボーッとしていて、すぐには動きだしたりはしないので、コーリンは布団の上で私の顔を真上から逆さまに見ていたようで、私が横にずれても、まだ私のことがはっきり分かっていないようだ。
「おはよう、コーリン。リリアよ」
私はそう言うと、彼女は両手を使ってゆっくりと座ったので、私は彼女を抱き上げて頭を優しくなでると、
「リーリ、リーリ、リーリ」
彼女の意識が目覚めたようでそう言ったので、彼女の小さな手が私の顔を触り、次にはアーとかウーとかしゃべっているけど、目尻が少し垂れていてもくっきりと見開いた目で見つめられると、私の心が暖かくなり嬉しい。
『リーリって、リリアことを言っているのよ』
突然ソーシャルの声が聞こえる。
『えっ、私の名前を呼んでいるの?』
『そうよ。三人でリリアのことをそう言っているみたいよ。彼らのソードが教えてくれたけど、三人には理解できている発音みたいよ』
『……そうなんだ』
私が少し抱いてコーリンを下に置くと、彼女はリンリンの方に這うように柵越しに行き、さっきの言葉を発するとリンリンが目を開けたので、私は彼女の顔をのぞき込む。
「おはよう、リンリン。リリアよ」
「リーリ、リーリ、リーリ」
彼女の目の視点が私を確認したかのごとくそう言って、上体を越して私の方を向いて立ち上がり、私は両手で彼女の頬を触りながら、おでこにキスをしてしまう。
言葉にならない発音ではあるが、二人で話しをしているような気がしていたけど、隅で寝ていたリストン様はこの喧騒の中でまだ起きずに、相変わらずだなー、とか思ってしまう。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
ヨーチュリカ大陸、よろしくお願いいたします。




