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☆★ リリアと『ソードの伝承』 ★☆  作者: Jupi・mama
第四章 『城の中は……』
101/165

101=〈特別な仕事〉

     ☆ ★ ☆ (24)


 私の意識はさっきから向こうに飛んでいるけど懐かしいな。昔話がこういう場所で話せるなんて、今があるからこそ話せることであり、色んなことがあったよな、と考えてしまう。


「あの時は編み紐の存在を知らなかったのですか」

 彼からそう言われ現実の世界に戻る。


「そうです。私たちは隠れていましたからね。城の中の話しも知りませんでした。もうどうなるかと思い、ケルトンには何も話さないでと言ったのよ」

「やはり、前からリリア様はお話しが上手だったのですね」


 ラデン様は納得して言ったように聞こえたけど、私は結構考えながら話しているつもりなんだよね、と思いつつも、私っておしゃべりだから、これからは言葉で勝ち誇って味方を手に入れてやろう、とか思ってしまう。


「私にとっては必死の会話でしたよ。あの時はもうどっと疲れしまい、これで部屋がなければ倒れていたかもしれません。ありがとうございました」

 今さらながらだけどまたお礼を言ってしまう。


「次にお会いしたときには金貨を二枚もいただきましたね。ほんとうにありがとうございました。私は配下の者たちに酒を飲ませて楽しく過ごさせていただきました」

 彼は当時のことを思い出しているかのごとくそう話してくれる。


『ラデン様、ほんとうですか』


「はい」


『リリア様、ありがとうございました』


「ルーシーにお礼を言われたけど、二人が会う前の話だからね。今後のことも含めてお願いをしたまでです」


『リリア様、私もリリア様を見習いたいと思います。昔から先々のことを考えて行動していたのですね。よく分かりました』


「ラデン様、ルーシーから私を見習いたいと言われましたよ」

 私が彼を見てからそう言うと、

「マーリストン様もリリア様を見習っているのですね。私はそう思います」


 ラデン様が彼のことをそう言ってくれたから、剣の勝ち抜き戦の前夜に、背が高くてたくましくなった彼の胸の中に私の顔をうずめて、両手でしっかりと私の背中に手を回して抱きしめてくれ、離れぎわに挨拶程度の軽いキスをしてくれけど、あのまろやかなほわほわとした温もりを思い出し、顔がにんまりとしていたかもしれないな、この笑いの正体は私だけのものだよ。


「思う」

「ルーシーもそう思うと言っています。こうやって三人で話せることはいいですね」


「……ルーシーは会話が上手になったのね」

「はい」

 彼女の顔はにこやかに笑みを浮かべている。


 今夜は三人で穏やかに話しが進んでいるので、私が当時のことを思い出しながらも余裕をもって笑みを含めて話していても、マーリストン様とバミス様に対する私の思いは、二人は何も気付かないと思うので、二人のことを考えていると心が癒されるけど、深く考えるのは辛くなるので寝る前だけにして、今夜はいい雰囲気を壊さないように、表面的に軽く考えようと思う。


「城と違いここでは遠慮なく話せますね。シンシア様の奥の部屋と庭で話す分にいいけど、他の者がそばにいるから言葉を選んで話さなくてはいけない。そばの者は聞いてないようでしっかり聞いていると思います。そういうことが城の噂話として広まるのでしょうね」

「私はこの城に入って日が浅いですけど、周りの者には気をつけなくてはいけないと実感しました。どこで誰が聞いているかも分からないので、そう思うと外の方が気楽でいいですね」


 私はゴードン様が城の中が窮屈だと話した言葉を思い出す。確かに言葉だけでは堅苦しい雰囲気がするけど、シンシア様のそばにいることは恵まれていると思い、編み紐が何だとか立場が何だとか、そういうことを考えると心が手狭になってくるんだよな、気を付けなきゃね。


「私もアートクの市場が長かったですから、城での雰囲気を忘れていました。マーリストン様のそばにいても必要以外は話さないことにしています。お二人は誰にも聞こえないから便利ですね」


「……そう考えると、ルーシーとこうやって話せることはいいことなのね。ルーシーもそう思うでしょう?」

「思う」

「マーリストン様はお話しが上手だと思いますよ。シューマンとよく話しています。私はどちらかというとバミス様と話しますね」

「それは歳の違いもありますね。立場が違っても若者は若者同士で話しが合うのですよ」

「そうですね。私もバミス様も長らく城から離れていましたから、お互いに話しが合うと思います」

「ほんとうですね。考え方が似てきたのでしょうね」


 私たちは最初の出会いをルーシーに説明したり、色んなことを話していたが、バルソン様が来るまでのこの時間は会話も途切れることもなく、三人で色んなことを話せて、とても有意義な時間を過ごせて楽しかった。


     ☆ ★ ☆


「お連れ様がいらっしゃいました」

 突然また声がすると、今度はバルソン様が現れた。


「リリア様、大変遅くなりました」

 彼がそう言いながら部屋の中に入ってきたので、私は慌てて椅子から立ちあがると同時に二人も立つ。


「クーリスから話しは聞きました。お忙しいのにありがとうございます。こちらへお座りください」

 私がそう言って自分の右隣の椅子に座るように促す。


「ありがとうございます」

 彼はそう言って私の隣に座ったけど、私の対面にはルーシーが座っている。


「シンシア様には部屋で話しましたが、どのように話したらいいのか言葉に困りますけど、ラデン様とルーシーが二人で話しができるようになりました。私と一緒で心の言葉で話すことです」 

「ラデン、ほんとうなのか?」


 彼は私に話しかけるいつも言葉とは違っていたので、ちょっと驚きだな。


「はい。私も意味がよく分かりませんが、リリア様に確認していただきました」

「ラデンが話しができるとは思いもよらず、リリア様のことだけだと思っていましたが……驚きました」


 バルソン様そう言いながらも、私を見た視線が『どうなっているのだ』と問いかけているような気がする。


「驚かせて申し訳ありません。それと、私は女の編み紐の制度を作りたいと王様とシンシア様に話しました。私はバルソン様の考えた編み紐の制度のことを後から詳しくお聞きしたいです。その時に二人の心の言葉のことを説明します」

 私がその問いかけに応えるようにそう言うと、

「分かりました。私はその話しを王様から伺いました。今度の話し合いで説明するそうですね。許可を出そうと思う、と王様はおっしゃいました」

「それで、話し会いの前にバルソン様の意見をお聞きしたいと思いました。それから二人の会話のことですが、お互いに話して気持ちが寄り添えたと報告を受けました。なので、バルソン様に報告をするために、今日は二人を連れてきました」

「ラデン、ほんとうなのか」

「はい。二人で話しルーシーと同じ考えであることを確認しました」


「……よく分かった。リリア様、今夜は驚くことばかりですね」


 バルソン様は私の方に向いてそう言ったので、詳しい話しは後でしますから、とそう思い彼の視線を見返したけど、分かってくれたかな。


「今日はラデン様とルーシーのことを話そうと思いましたが、実はドーラン様とマーシーのこともお話ししたいと思いました」

「あの二人もですか」

「ドーラン様に尋ねるとマーシーのことが気になるようで、私がシンシア様の庭でマーシーと話しをさせると、お互いに気になっていたことが分かりました。だから王様から許可をいただいたので、今度は城の外で話すことになりました」

「参りました。リリア様の話しを後からゆっくりと伺いたいです」


 彼がそう言ったからホッとしたけど、疲れているのに三つも驚きの話しを聞かされて、よけいにぐったりしていないかな。


「それともう一つあります」

「また私が驚くことですか」

「それは分かりませんが、ラデン様が私に話してくれましだが、私たちがお互いに話せることは何か特別な仕事ができるのではないかということです。この考えはいかがですか」

「他の者が聞こえなければ特別な仕事ができますね。これはラデンが考えたのか」

 バルソン様が彼の顔を見ながらそう言ったので、

「はい。ルーシーと話して、そういうことができるのではないかと思いました」

「私は二人で話せることは隠さなくてはいけないと思ってましたが、この考えは素晴らしいことだと思います。さっき三人で話しましたが、自分たちの判断で何かあれば 行動を起こそうということになりました。バルソン様にもこのことを伝えて許可をいただこうと思いました」


 私がそう説明したけど、この話しがいちばん大事なことなのよ、と頭の中では考えていたけど、後からこれも詳しく話さなくてはいけない、と思っていたのだ。


「分かりました。このことは私が許可するとか、しないの問題ではないと思います。とてもいい考えだと思います。王様やシンシア様をお守りするときに役立ちますね。特に城の外に出るときには大いに役立つと思います」


 彼がそう言ったから、やはり、王様はたまに城の外に出るのだ。公式に出るのか個人的に出るのかは知らないけど、シンシア様もたまに市場に出かけるので、それとは意味が違うかもしれないけど、大人数で出かけるのだろうか。


「私とルーシーはいつもそばにいますので、ラデン様が近くにいれば一緒に行動できます。マーリストン様にも内緒で伝えていだけます。そうすれば、数人の人たちで素早く行動ができると思います」

「たまに王様が外出されるときに、リリア様とルーシーがそばにいて、マーリストン様やラデンがその外に控えていれば、前もって危険が避けられそうですね。私が王様にこのことを話してみましょう。リリア様の不思議だということで理解していただけると思います。マーリストン様も王様の外出時にご一緒できると思います」


 彼はそう話したけど、主要人物をSPが取り囲んでいることかな? でもそれだとよけいに目立つよね。不自然はだめだよね。市場の人間に服装からしてなりきらなくちゃね。


「よろしくお願いします」

「ラデン、今度は赤の編紐を目指せ、分かったな」

 彼がそう言ってくれたから、よっしゃーっと心の中で叫んで、膝の上にある右手で握り拳を作る。


「はい。ありがとうございます。頑張ります」

 彼は驚いた様子でそう言ったのだ。


『ルーシー、ラデン様には話せないこともあるので、後でバルソン様に説明するからね』


「リリア様のお話しは驚くことばかりですね」

「お疲れのところ驚かせて申し訳ありません」

「他にはもうありませんか」

 そう言った声の響きは、何だかお疲れのようだと感じてしまう。


「ラデン様とルーシーのことはよろしくお願いします。ドーラン様のことは王様と一緒に話してやっと聞き出しましたので、こちらもよろしくお願いします」

「参りましたね。そのことを王様と一緒に話されたのですか」

「はい。最初は王様に説明して、それから二人で話してやっと教えていただきました。二人で無理くり聞き出したと言ってもいいくらいですね」


 あの会話の流れを少し思い出しながら、マーランド様も意外に頑張ってくれて、ポイントが上がったよね。


「……ほんとうに参りましたね」


 彼の視線は二人を見ているようだったけど、横にいる私の顔を見ながらそう言ったので、今夜は最初から驚かせる話しばかりで申し訳ないと思ったけど、こういうリアクションがあるとは驚きの連続である。


「今日は三人で話せて楽しかったですね。私はバルソン様と話しがありますので、別の部屋で食事をしてから城に戻ってください」

「はい。ありがとうございます。バルソン様、今後とも私たちをよろしくお願いします」

「よく分かった」


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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