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メイクルちゃん

 久しぶりです。

 何とか外に出ることができた俺は、手を腰に当てながらアイリスと話す。


「さて、アイリス。俺は今からちょっとお前のお兄さんに会いに行こうと思う」


「え?なんでです・・・はっ!」


 アイリスは途中で言葉を止め体中をぴんと張った。


(友達になったから、アレですか・・・、家族への挨拶と言う奴を!?それなら今からでも実家に帰って両親を呼んでこないと!!あ、あと、黒田君のご両親への挨拶の準備も・・・、てことは、黒田君が自分の世界へ帰る方法も今から探さなければ!!やることが満載です!)


 驚いた顔をしたり考えるようなポーズをしたり何かを決心したような顔をしたり・・・、何がしたいんだこいつは。


「団長に悪いことしただろう?だから謝らないといけない」


 そうだ、助けてくれた団長をまるで化け物を見るようなことをしてしまった・・・。

 だが、アイリスは嫌そうに顔をしかめ、


「えー、あの人そんなこと気にしないですよ・・・。」


「ダメだ。こういうことはきちんと言わないといけないだろ。なんか買って謝ってくる。団長って何が好きなんだ?」


 すると、さらに顔をしかめる。どんだけ嫌いなんだよ団長のこと・・・。


「兄ちゃんの好きなもの・・・アレですよね・・・でもなぁ・・・」


 アイリスは顔を背けながらぼそぼそと何か言っている。アイリスは一番じゃなくてもいいかと言ってこっちを向く。

 

「まあ、食べ物でも渡しときゃいいですよ。お金はあるんですか?」


「もちろん。ここにある」


 そういって笑いながら俺は緑の騎士が渡してくれた(・・・)財布を取りだした。




―――――――――――――――――――――



 城下に行って団長へのお詫びの品をいくつか買ってきた俺は、練兵場へやってきた。

 アイリスによると、団長は仕事をしているとき大体は練兵場にいるということだ。


 ここでは、何十人もの兵士たちが修練を積んでいる。大きな鉄の剣を振っていたり弓の練習をしていたり、さらには、太極拳のようなことをしているものまでいる。


(団長は、どこだろう・・・)


 キョロキョロと周囲を見渡していると人だかりができている場所を見つけた。

 ぐっと目に力を入れてそこを見るとどうやら誰かが模擬戦をしているようだ。


「行ってみるか」


 歩きだそうとすると、人だかりで大きな砂煙と爆発音がした。舞い上がった煙の中から悲鳴や金属音と一緒に二つの物体が飛び出してきた。


「なんだ・・・ってこっちに近づいてる!?」

 

 火花を散らしながらこちらに近づく影にぶつからない様に横へ思いっきり走る。

 影が近くにやってきてその正体がやっとわかった。

 

 片方は俺のよく知る人だった。幼馴染のキリだった。キリは汗と泥で汚れながら必死に鉄の棒でもう片方の影を攻撃している。

 もう片方の影は知らない女の子だった。女の子は小柄でとても可愛らしくピンク色の髪が特徴的だ。キリがドロドロに汚れているのに対し女の子は多少汗をかいているがほとんど汚れていない。余裕を持った表情でキリの攻撃を鉄の棒で受け流している。


 バトル漫画のような戦いを真剣にしているので邪魔しないように遠くから見守っていると女の子がこちらに気づいたようだ。キリの攻撃を手で止める。

 どうやら、それが終了の合図のようでキリは一度、女の子に礼をしてじめんに座り込む。


「おーい、あなたぁ。こっちに来てくれるぅ?」


 手を振りながら女の子は俺をよんだ。

 俺はそれに応え、走りながら女の子達のもとへ行く。


「やぁやぁ、こんにちわぁ」


 やたら語尾をのばした間延びした話し方をする子だな・・・と思いながら挨拶する。


「どうも、こんにちわ。黒田正平です。そこで倒れてるキリの幼馴染です」


「ああ、やっぱりぃ・・・。私はぁ、副騎士団長のゴルメイクル・ヴェアジットっていうのぉ!」


(厳つい!そして、なんか、豪華だ!・・・って副騎士団長てこの前キリが話していたな)


「メイクルちゃんって呼んでねぇ!」


 ピースをしながら笑うメイクルちゃんの目には有無を言わせぬ迫力があった。ああ、やっぱりこの子も自分の名前がいかついと思ってるんだ・・・。


「えーと・・・メイクルちゃんさん。実は「うんうん!言わなくてもぉ、わかるよぉ!わかるよぉ!私からきりっちを取り返しに来たんでしょぉ!それと、さんはなくていいよぉ!」


 ものすごい勢いで何か勘違いをしているメイクルちゃんは目をキラキラさせながら「三角関係♪三角関係♪」と歌う。


「えーっと・・・、キリというかそのきりっちには別に要はないんですけど・・・」


「違うのぉ?きりっちぃ・・・、残念ながらぁ彼女さんはぁ新しい男ができたみたい・・・。きりっちにはぁ、興味なくなっちゃったってぇ・・・」


 息を切らすキリにツンツンとメイクルちゃんは鉄の棒でつつく。


「か、彼女じゃないですよ!それに!なんでしたっけ!?男!?男なんてお父さんは許さないよ!」


 疲れきっているキリは謎のツッコミをして倒れる。どうやら頭に酸素が足りないみたいだ。


「それでぇ、なにしにきたのぉ?」


 メイクルちゃんは首をかしげてたずねる。


「団長に用があるんですけど・・・」


 そう言った瞬間にメイクルちゃんの顔が歪む。苦虫でも噛み潰したような表情だ。だが、さっともとのニコニコ顔になる。


「え、えーっとぉ・・・。顔だけで人を判断するのはぁ・・・やめたほうがいいよぉ。あれは確かに顔はいいけどぉ。」


 またまた勘違いをしたメイクルちゃん。とりあえず間違えを正させる。


「メイクルちゃんが考えてるようなことじゃないんですけど・・・。ただお礼が言いたいだけなんですよ。どこにいるか分かりますか?」


「そうなのぉ?多分、兵舎のぉ団長室だと思うけどぉ・・・。行くなら約束してねぇ!絶対!絶対二人きりにならないことぉ!」


 よくわからない忠告をされた俺は兵舎へと向かった。

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