血を流すS級ヒーラー
血まみれになりながら、俺は魔物にナイフを突き立てている。
三時間……。戦いは三時間続いている。
息は切れ、膝が震えている。
俺はなぜ一人黙々と魔物を討伐し続けているのか?
S級ヒーラーだった俺が……。
……
「ケラ!回復を頼む」
プラティは右腕を押さえる。
「女神ハマーの加護の元に……、ヒール!」
プラティの右腕の傷が癒えた。
数十分後
「さっきは助かった」
プラティは水筒を差し出す。
俺は受け取り、一口飲む。
「ケラが来てくれて、魔物討伐が効率的になった。本当に感謝している」
「ハマー様のお陰。気にしなくても良い」
「今の傷の治療で、神殿にいくら払うんだ」
「あれだと0.5Gくらいだろう」
「地獄の沙汰も金次第と言うが、回復にも金がかかるんだな」
「当たり前だ。さっきの傷でも治すのに、自然治癒だと一週間以上かかる」
「まぁ、こんだけ魔物がいれば、回復なしには無理だよね」
ランプアイは笑う。
「しかし前から気になっていたが、俺らは戦っていれば、勝っても負けてもレベルは上がる。ヒーラーはどうなんだ?」
プラティは魔物の落とした金を拾う。
「俺らは、ヒールを使った回数だな」
「という事は、神殿にいくら払ったか?という事でもあるのですね」
ランプアイは目を細める。
「あぁ、そうだな」
俺は財布の重みを確かめる。
俺の記憶は、そこで途切れた。
……そして、気が付けば見知らぬ男たちに囲まれていた。
「だいじょうぶか?」
「ここは?」
「ここはダンジョン。あんたは倒れていた。仲間は?」
「戦士とシーフが一人ずつ。俺はヒーラーだ」
「ヒーラー? おいヒーラーって職業を聞いたことがあるか?」
「いや。初めて聞いた」
「俺もだ」
「あんた。ヒーラーって言ったよな。それは何だ?」
「何って、普通に傷を回復させる治癒魔法だが」
「傷を回復させる治癒魔法?あんた頭でも打ったか?」
俺は装備を確認する。
錫杖、ローブ。金。
「治癒魔法を知らない?ここの国の名前は?」
「アクアリム王国だ。異国の者か?それにしては言葉が通じるしな」
「いや俺もアクアリム王国の者だ。そうだ!ハマー神殿はあるだろう」
「ハマー神殿?知ってるか?」
「いや。この国にあるのは、ゲッコー神殿だけだ」
「ゲッコー神殿?ではそこが回復魔法で治療しているのでは」
「神殿は願い事を叶えるとか、それくらいだ」
「なぁあんた。傷が治せるなら、この傷も治してみてくれよ」
男は腕の切り傷を見せる。
「あぁやってみよう」
「女神ハマーの加護の元に……、ヒール!」
皆口を閉ざす。
「何か起きたか?」
「いや起きてねぇ」
「もう一度」
「女神ハマーの加護の元に……、ヒール!」
男は俺の肩に手を置いた。
「まぁ事情はよくわかんねぇけど、とりあえずダンジョンを出よう」
俺は男達についていった。
「ここが冒険者ギルドだ」
男は言った。
「冒険者ギルドなら知ってる。俺が登録していたギルドだ」
「あぁそうか。じゃあまた。どうしても無理だったら、声をかけな」
男達は名前も告げずに去っていった。
受付に向かう。
「ケラです。仲間のプラティとランプアイを探してまして」
「ギルド証はありますか?」
「はい。こちらです」
「ずいぶん古いものですね」
「古い?」
俺はギルド証を見る。
昨日まで使っていたものだ。
「ギルマス!」
受付は後ろを見る。
「どうした?」
屈強な男が近づいてくる。
見覚えのない顔だ。
「このギルド証。ずいぶん古いですよね」
「なんだこれ?
百年、いやもっと昔のか?
兄ちゃん。これは拾ったのか?」
「いや……、それは私の」
「兄ちゃんの?あんた名前は?」
「ケラ」
「職業は?」
「ヒーラー」
「ヒーラー?ちょっと待てよ」
男は奥に下がる。
しばらくして男は戻ってきた。
「お前、そのヒーラーについて、ちょっと説明してみろ」
「回復の女神ハマー様の加護を借りて、怪我の治療を行う職業です。あと神殿に使用回数等に応じて、対価を支払う仕組みになっています」
「そうか……、いや不思議だな」
「どうかされましたか?」
「二百年か三百年ほど前に、その職業があったんだよ」
「何を言って……」
男は俺の目をじっと見る。
「嘘をついてそうな顔じゃないな。お前今までどこにいた」
「ダンジョン内で気を失っている所を、冒険者の方に見つけていただきまして、ここまで」
「二百年とか気を失っていたのか?」
「まさか。さっきまで仲間と魔物討伐を行っていました」
「そっか。それでその回復魔法とやらは、使えるのか?」
「いえ。使えません」
「そっか。あんた身寄りは……ねぇーよな」
「何がなんだかさっぱりで」
「身体は動くんだろ」
「はい」
「ステータス見せてくれ」
「はい。ステータスウィンドウ!」
開かない。
「ステータスオープンって言ってみろ」
「ステータスオープン」
ウィンドウが開く。
「えっと体力はそこそこ、素早さもそこそこ、知力も高い、力が弱い。職業名は書かれてないな」
「……」
「治癒士とかしてみるか」
「どんな職業ですか?」
「傷を治療したり、病気を癒す職業だよ。薬草とか薬を使うがな」
「報酬は?」
「腕がよくなれば、それなりに入るし、食うに困ることはないだろう。魔物討伐で怪我をするからな」
「わかりました。それでお願いします」
「あぁ、それでお前金持ってるのか?」
俺は金を取り出す。
「これはまだ使えますか?」
「ずいぶん古い金だな。こういう金を専門に扱っている商人がいるから、そこで換金して今の金に換えろ」
俺はギルマスについていった。
金は状態がよかったらしく、高値で引き取ってもらえ、
3か月くらいは食うに困らない金額にはなった。
「とりあえず金もできたから、しばらく休め。
それと治癒士は勉強がいるから、休んでいる間勉強しておけ」
そう言われた。
俺は一週間休み、その間図書館に通い詰めた。
治癒士の事。
そしてハマー神が邪教として追放された事を学んだ。
もし「続きを読んでみたい」と思っていただけたら、
ブックマークしていただけるととても励みになります。
本作はすべて完結済みで、安心して最後まで読めます。




