巨躯に立ち向かうものたち
目の前に迫るはかつて大爆発を起こし街を壊滅させた怪物、ヴァリス。
少しずつ、動き出し始めていた。
「なるべく今のうちに仕留めるぞ」
「うん」
二人は武器を構え立ち向かっていった。
そのころにはヴァリスは動き出しており、じわりじわりと前へ進みだしていた。
大きくもゆっくりとした動作、瓦礫を、動きを止めようとする攻撃を、すべてをはねのけ前進を続けていた。
「待て!ここは立ち入り禁止だぞ!」
駆けだす二人を一人の壮年の男性が呼び止める。
それを聞いた二人は駆け抜けながらこう返す。
「あれ倒すために来たんで!あとは任せてください!!」
待て、という制止も聞かずにヴァリスへ駈け込んでいく二人。
武器を構え動きを止めようと攻撃を始める。
その時にカイはあることに気づく。
「こいつ、修復してやがる!」
いつかのときに切りつけた時に出てきた赤褐色の輝きは少しずつ黒ずんだ皮に埋もれていた。
「じゃあもう一回切ればいいね!」
タリアはそういうとカイの頭を踏みつけ飛び上がりもう一度同じ場所を切りつけた。
「俺を踏み台にするな!」
「ごめんちょうどいいところにいたから!でももう一度見えるようにしたからあとは砕くだけだよ!」
「わかった」
カイは首から下げていたゴーグルのような道具を取り付けた。
それと同時にヴァリスはゆっくりと光り始めていた。
「まずい!あの時と同じだ!」
「今回は予備動作があるんだろ!ならこいつを使うときだ!」
カイはゴーグルを装着しヴァリスがいるところを凝視した。
ヴァリスは動きをぴたりと止め、動かなくなった。
それと同時にカイも動きを止めていた。
「教わったつっても付け焼き刃、あとは任せた!」
そう言って動きを止めた……が、瓦礫が吹き飛ぶ音がし動かずにはいられなかった。
「できる限りこいつの動きは止める!トドメをさせ!」
その声と共に一気に駆け上がりブレードをコア───────赤褐色に輝く石に切りつける。
「っ……!こいつ硬い!」
ガキンガキンと音を鳴らすだけで傷一つ付けられなかった。
「そうか、長らく生きた個体はコアにも装甲を得るのか……」
壮年の男性はそう呟くとタリアの元へ駆け上がり、道具を渡した。
「これをつかえ、どんな装甲でも砕くことができる。これで砕けなければ少年には申し訳ないがあのままでいてもらうことになる」
あのまま、つまり動きを止めるためにゴーグル越しにヴァリスを見つめ続ける状態のままで一生を過ごす可能性がある。それを示唆していた。
「それだけはさせません。これで必ず装甲ごと打ち砕いてみせます」
タリアはそういって渡された道具───剣がついた大きな人が持てる程度の大砲を受け取った。
男性はそれを見届けた後、「あとはうまくやってくれよ」と言い残して去っていった。
「任されたのはいいけどこれめっちゃ重い……」
重量のある武器に振り回されながらもコアに突き刺す。
かなり深いところまで刺さったところで引き金に手をかける。
「これで終わりだ!」
引き金を引き爆風が広がる。
爆風でタリアは吹き飛ばされ近くの瓦礫の山に落ちていった。
ヴァリスは魔石を残し塵となって消えた。
砕けた魔石はからんと乾いた音を出しその場に転がっていった。
カイがそれを拾い上げるとかすかに風が吹いた。
それは終わったことを告げるかのように優しい風だった。
「ありがとう、これで復興に力を入れられる。その魔石は我々の方で預かっておく」
ゴーグルを外し久しい視界を取り戻す。
カイが男性に魔石を渡す。
「こんな瓦礫からでも立ち直れるもんなんですかね」
カイの口から突然に漏れ出る言葉。
それをくみ取るように男性はこう紡ぐ。
「ラウスって国はな、昔からこうやって壊れては立て直すことを繰り返してきたんだ。噂だとこれを”ビルドアンドスクラップ”というらしいな。まああの城みたいに壊されずにずっと残ってるものももちろんあるが」
そういって男性は丘にある崩れた城を指さした。
「あそこだけは誰も、いや何も近づかん。ラウスが建国される前に何もかも抹消されて何もわからない」
「そんなところもあるのか。いろんなところを旅してたがあれは初めて知ったな」
「そりゃそうだろう。あまり知られてないからな、ところでいいのか?あそこで嬢ちゃんが倒れてるが」
男性が指差した先に瓦礫の上に落ちその衝撃で気絶しているタリアがいた。
彼女の顔はどこかすっきりしていた。
「よっぽどだったんだろうな。救護班はいますか?近ければ俺が連れて行きます」
「ああ、かなり近いところにいる。待ってれば来るさ」
ありがとうございます、と一礼した後救護班が来るのを待った。
しばらく待っていると救護班が到着し、事情を話して搬送されていった。
「まだこのレベルのシェイドシフターは各国にいる、だがそのいずれも例外なく休眠状態に入っている。引き続き調査をしてくれ」
通信機でどこかへ連絡する男性。
了承の意を示す声が多数上がった後に通信は切断された。
世界は少しずつ何かが浸蝕を始めている。




