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6/6

6 つまり何が大きな違いかというと

 新井素子氏は東京生まれ東京育ちの「SF要素を持つ大きなフィールドに通用する小説」を書いて。

 大和真也氏は名古屋という場所で「SF畑の小説」を書いていたの一番でかいと思う。



 ところで。

 ミステリは多少の文章の優劣やキャラの魅力より「謎とトリック」が何より優先する――らしい。

 これは米粒写経のガラパゴスイッチにミステリ研究家の小山正氏がやってきた時の動画で例として西村京太郎の例を出してるんだけど。

 デビュー作の時の文章を居島(一平)さんは引き合いに出すんだよな。


 「彼は、じいんとした」。


 さすがにこれじゃ直木賞は取れないでしょ! という文章表現の例を挙げる訳だ。 

 で、文章表現がどうでもトリックとか謎とか話がまず一番、という話をするんだけど。


 SFってのは、それを世界設定に持ってきて、その説明にもの凄くエネルギーを使ってしまっている訳だな。

 無論SF風味のものはなろうのジャンルにもある仮想現実的なものとかは共通認識としてあるから、今でも使われてるけど、それこそ一から世界を作ってく様なものはうけない。

 つか説明を読みたくない、というのは……やっぱり暇潰しに読むエンタメ読者の大多数だと思う。

 

 とは言え、要素はもう広がってしまっているんだよな。

 超能力でなくてスキルとか、そういう名に変わってしまったとか。

 ガンダムもエヴァも何だかんだ言ってもSFだし。

 その設定集とか皆好きでしょー。

 ただ小説でそれをやると、ものっっっっ凄く面倒になっているというだけのことなんだよな。


 ところで。

 小林弘利氏というひとが居る。

 この方、もう今は脚本家中心だけど、この80年代時期にやっぱりコバルト文庫でSFを書いてた。

 「星空の向こうの国」とか「タイム・トラブル・プリンセス」とか「童話を胸にだきしめて」とか。

 この方は元々が映画の流れで書いていたから、ともかく情景として切ない系の物語にSF風味を合わせたものが上手かった。

 もっとも、SF的にどうかというのは、「童話を胸に抱きしめて」においての太陽の扱いの時点でどうよ、と思ったりしたけどね……

 ただそのほらがでかすぎる+それでいてあとのつじつまがちゃんと合っているから後味の良い話になる訳だ。

 どう上手くほらをふくのか、がSFだと思うんだけど、何故か緻密な設定に凝って説明することに流れて客を逃してしまっているのが多すぎる気がする。

ともかくこの方は「きっちりつじつま合わせをした物語」を書くのが上手かった。

 だからこそ今も映像畑で活躍しているのだと思う。


 もっともそういうことを考えるのは今であり、一生懸命読んでいた若い頃には判らないもんなんだよな。

 何せ当時は自分は書けない訳だから、書いて印刷されて売ってる本は皆正しいはずな訳だ。

 今の様に、若い頃から出版事情を調べればわかる、なんて時代じゃない。


 だから大和真也氏は、もう少し「小説として」上手くまとめる技術があったら! と。

 ただそれが難しかったのは、環境のせいもあったのだろうか? と邪推もするのだけど。


 残念ながら、地名として「星ヶ丘」とぱっと書いて判るのは名古屋文化圏だけなんだよ……


 小林氏の「童話~」は舞台が金沢とかの北陸だったんだけど、説明入れつつそれを生かしていた。

 無論新井素子氏だって、「いつ猫」の時点では「かみしゃく(上石神井)」とかの地名をぽろぽろ出してはいたけど、そのうちしなくなった。

 ジュゼ・シリーズで作者にとっては当たり前の、名古屋中心ワールドはやっぱり異界で、皆が皆馴染める訳ではないのだな。

 

 若い時に書くものはどうしても半径10㎞以内になりがちなんだわ。

 それが当たり前と思っていると、やっぱり読んでも判らないものになりやすいってこった。

 東京在住のひとが書くものがその辺り得なのは、スタンダードが半径10㎞に存在することなんだよな。

 そこは我々地方民としては、気をつけなくてはならないとこだと思う。


 ようするに繰り返すが。


「対象読者のことを考えた小説になっていたか」


 が一番の差だと思うのだわ。

 胸に刻むべしなのだ。


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