10 始まりはいつも突然で
本作の半透明の猫はどこかの地球外生命体とは違うので、決して黒幕とか、そういうことはありません。
それから、そいつは家とは反対方向の駅まで来ていた。
どうして、駅なんかに……
なんてことを思っていると、そいつが駅の東口に向かって歩いていることに気が付いた。
駅の東口。その先は小さなスーパーや飲食店がいくつかあり、またその先には田んぼや畑が広がっている。
まさか、そんなところまでは行くまいな。なんて、俺がそんなことを思っていることにも気付かずに、半透明の猫は先へ先へと進んでいく。
20分は歩いただろうか。気が付けば本当にそいつは田んぼの方まで来ていた。街灯がなければ駅の光も届かない。当然、俺の家からは遠く離れた場所。
こんなところに来てどうするんだ……?
と、身構えていると、急に正面からとてつもなく強い風が俺を襲った。
「うわっぷ!?」
あまりの風力に、俺は目を瞑る。
「なんなんだよ……」
そう呟いてから、もう一度前を見る。……が、半透明の猫はいつの間にか消えていた。
「あ、あれ!?」
急いで周りを見渡してみるが、全く見つからない。
これは……助かった、っていう解釈でいいのか……?
と、疑問を浮かべていた時だった。
「……ん?」
ここよりもっと先の方。少し遠い場所で、なにか影が動いたような気がした。
気になったので、そこを凝視してみる。……やはり、何かが動いてるのがわかる。ただ、暗いせいで何が動いているのかはさっぱりだった。
そのまま、好奇心につられて見つめていると、その影が空高く打ち上げられ、急に大きくなり始めた。
徐々に大きく、大きくなっていく。そして、それに伴ってヒュー、という風切り音が次第に大きくなっていった。
「……って、まさか!」
気付いた頃にはもう、遅かった。
──ゴオオォォン!!
その黒い何かは俺の真横の5、6メートル先の左方向に落下し、それとともに轟くような音が辺り一帯に鳴り響いた。
「……」
どうする……、確かめるのか……俺。
と、帰ってくるはずのない質問をする。
俺は心の中で自分で自分の質問に頷きを返して、一歩、また一歩とゆっくり近づく。
近づくごとに、それは形を表していく。そして、理解した。
「……!?」
それは、人だった。
俺は一瞬、なぜか躊躇ってしまった。けど、そんな暇はない。俺は救急車を呼ぶためにスマホの入ったポケットに手を突っ込みながらその人に駆け寄った。
その人は白髪の男だった。顔はよく見えない。身長はおそらく180センチはあるだろうか。体型は細身。黒のTシャツに黒のジーンズという全身真っ黒コーデだった。
男は田んぼのブロック塀に身を預け、座り込んでいた。ブロック塀には盛大に穴が開き、田んぼの水が穴から流れ出ている。
「大丈夫ですか!」
俺はその人に触れようと、手を伸ばす。……が、それを俺は途中でやめた。何故なら、その人からは──
「血が……出てない?」
……おかしい。あれだけの高さから落ちたのだから、大量の血が出ているはずだ。水に流された? ……いや、そもそもとして、だ。あの高さで、しかもあの轟音。普通なら身体そのものが粉々になり、肉片が飛び散っていてもおかしくない。
なら、ならどうしてこの人は血が出るどころか目立った外傷の一つもないんだ……?
そうして、俺が飛んできた男に不信感を覚えていた時だった。
ガラッと、音が鳴った。それは、砕けたブロック塀の瓦礫が動いた音だった。……いや、もっと正確に言うなら、それは、男が動いた音だった。
「うわ!?」
俺は驚きのあまり数歩後ずさり、塀の瓦礫に足を引っ掛けて尻餅をついた。
「いってて……」
そして、俺が立ち上がろうと上を向いた時だった。
「……」
そこには、さっきまで座り込んでいたはずの男がいた。
「……」
男はただ、俺を見ていた。
俺は驚きと恐怖のあまり、何も話せなくなっていた。喉元に何かが詰まっているみたいに声が出ない。
「フッ……」
「……っ!?」
男が、笑った。ニタァー、という擬音が聴こえてきそうなほどの満面の笑みだった。
俺は、動けなかった。恐怖が俺を縛り付けた。恐怖の度合いで言えば、さっきの半透明の猫の比にならない。凍りついた、なんてものじゃない。俺という人間そのものの時間が止まったような感覚だ。今夜、眠れば絶対に悪夢を見ると断言できるくらいには、その笑みは恐ろしかった。
突然、男が右腕を前に出した。そして、何かを鍵払うように、その腕を右に払った。腕が1メートルはありそうな程に長い、白銀の刃となった。
「………は……?」
わからなかった。本当に、本当に訳がわからなかった。頭が真っ白になって、何も考えられなかった。
だって俺は今までの人生で、人の腕が刃に変わるところなんて初めて見たのだから。変わるということ自体、知らなかった。……いや、本来は変わるものではないはずだ。なのに、俺の前に立つその男は、腕を刃に変えた。
そして、腕を凶器に変えたその男は変わらず満面の笑みのまま、その刃を振り上げて──
男は、俺に向かって振り下ろした刃を止め、右から迫り来る赤い玉を斬りつけた。
「ぐごっ……!?」
斬った瞬間、強烈な爆風が巻き起こった。俺は吹き飛ばされ、二回ほど後転をさせられた。
現在の状況を掴むため、急いで前を見た。そして、その先に見たものに俺は驚愕させられた。
「な……んで……」
左にはブロック塀の上に立つ男。そして右には、見覚えのある顔がいた。
「……なんで……なんであんたが……」
「それは、こっちのセリフかな」
右には、双葉先生の姿があった。
「まあ、とにかく。じっとしてなよ」
そう言うと、双葉先生は指鉄砲をつくり、その指先に手の平サイズの赤い玉を生成する。
「君に死なれたら、困るんだから」
どこか悲しそうな顔をしながら、そう言って。双葉先生はその赤い玉を発射した。
あれから、どれだけの時間が過ぎただろうか。1分か、それとも1時間か。今の俺には、最早時間を確認する余裕なんてものはなかった。
そんな俺の眼前では、人智を遥かに超えた戦闘が繰り広げられていた。
双葉先生が指鉄砲から赤い玉を発射し、それを男が腕の刃で迎撃する。男が赤い玉を切る度に爆発音が鳴り響き、爆風がこちらにまで届いてくる。
俺はそれを、少し離れた所で見守っていた。位置的には俺から右斜前に双葉先生。左斜前に男といった感じだ。距離は大体15メートルくらい。
双葉先生に隙を見た男が地を蹴り、10メートルはある間合いを一気に詰める。時間にして1秒足らず。左から右へと刃を薙ぎ払う。
双葉先生はそれを後方に跳んで回避する。が、それを追いかける形で男が大きく踏み込む。空中という体の自由が効かない場にいる双葉先生にむかって容赦無く突きを繰り出す。
だが、双葉先生は動じない。
左手を前に出す。すると、双葉先生を中心として、半径1、2メートルほどのオレンジ色に光る球体が現れ、男の突きを受け止めた。おそらく、ゲームで言うところのバリアのようなものなのだろう。
突きと一緒に動きを止められた男に双葉先生は、こちらも問答無用で至近距離から顔面めがけて赤い玉を発射する。
男はそれに弾き飛ばされる。顔に直撃したかと思われたそれは男の左手によって防がれていた。
防がれた、と言っても完璧ではなく、男の掌は抉れ、肉と骨が焼け焦げていた。血が出ていないのは熱で蒸発したからだろう。
アスファルトを容易に破壊する程の威力をもつあの玉を素手で防御できるくらいには人間をやめてるらしい。
あれ、痛くねぇのかな……
なんて、俺の疑問に答えてくれる人はいない。
二人は戦闘を再開する。
男は怪我した左腕を刃に変え、もう一度双葉先生に攻撃せんと突っ込んでいく。
対して双葉先生は、ダンッと右足を地面に叩きつけた。その瞬間、双葉先生の右足から氷が絶え間なく生成され、地を這い群を成して男に襲い掛かる。
男はその氷結波を回避するべく空高く跳躍するが、それが失策であったことを一瞬にして思い知らされることになる。
さっきまで地を這っていたそれは、ぐんと角度を変え、空にいる男に襲い掛かった。男は咄嗟に刃をクロスさせ、防御の態勢を取るが最早それに意味はない。そして、男は氷に囚われた。
「勝った……?」
俺のそんな曖昧な期待はすぐに消えた。
氷に亀裂が走った。氷漬けにされたはずの男が己が筋力のみでその巨大な氷を砕こうとしていた。
そうすることを既に知っていたかのように、双葉先生はもう一度右足を氷で覆われた地面に叩きつける。
ギイィィィー、という音が聞こえた、その次の瞬間。氷が大爆発した。
「うっそだろ!?」
俺はのことを忘れてるのか、と思ったが、そんなことはなかった。
先ほど男の攻撃を防いだオレンジ色のバリアが俺を中心として展開されていた。先生の方を見てみると、こちらに左手を出していた。どうやら、俺のことは忘れていなかったらしい。
安心した俺は男の方を見る。するとそこには、シューという音を立てながら身体から煙を上げている男がいた。
いや、男だけじゃない。辺り一帯が所々で煙を出している。
どういうことだ……? そもそも、どうしてあれは爆発したんだ……?
そんな疑問を抱えていると、双葉先生が左手を下げ、バリアが解かれた。
「……あっつ!!」
その直後、とんでもない蒸し暑さが俺を襲った。
「…………あ、もしかして水蒸気爆発か……?」
水蒸気爆発。
水が高温の物質と接触することで起こる爆発現象。
おそらく、さっきの氷がなんらかの方法で瞬間的に温められ、その氷が爆発的に気化したことで起こったのだろう。この場合、水蒸気になった瞬間にその体積は本来の約1700倍にもなる。
あんな大爆発が起こる訳だ。原理としては火山の噴火と同じなのだから、当たり前と言えば当たり前だ。
そんな考察をしていると、刃を腕に戻した男が、今度は両手両足を地面についた。まるでこれから四足歩行しますとでも言いそうな格好だった。
……いや、まさか本当に、そんなわけ……
なんて思ってると、男が苦しそうに唸りだした。
「ウ、ウウゥゥ」
ゴリッ、バキッ と、音を立てながら、男の身体が形を変える。それはまるで獣のように。腕と脚の関節が移動し、手と足の形が変わる。細かった胴体が太くなり、腰からは尻尾のような太い何かが生え、顔が変形し、最後に全身に黒い毛が生えた。
「…………」
驚きのあまり、言葉なんてものは一つも出てこなかった。だって、さっきまで男がいたはずの場所には、全長が2メートルはありそうな大きな真っ黒の狼がいるのだから。
……分かっている。あれは男が変身したものだというのは分かってはいるが……。正直、本当に訳がわからない。さっきまで、ファンタジーが当然の異世界に迷い込んだのでは? と錯覚する程の戦闘を見ていたのは確かだ。だか、まさか腕どころか姿まで変えられるなんて思いもしていなかった。もう、頭がどうにかなりそうだ。
「グルルルァァ!!」
そいつは吠えると同時に、そこから消えた。
上空を見上げると、そいつはさっきよりもずっと高く跳躍していた。何度も空中で体を捻り、回転させ、尻尾を垂直に振り下ろした。空中での回転による遠心力と自由落下を乗せた全力の尻尾攻撃。
それに対して双葉先生は例の如く、左手を出して球状のバリアを展開する。
「……っ!」
バキーーン! 尻尾とバリアが衝突した瞬間、そんな音が聞こえた。
バリアに、大きな亀裂が走った。その亀裂を根として、次々に新たな亀裂が生まれていく。それらは、最初こそ小さけれども、徐々に大きくなっていく。
あの尻尾、どう見ても普通の尻尾じゃない。
火花が散り、尻尾が照らされる。尻尾は火花による光を反射した。
さっきの刃といい、あの尻尾……まさか、金属だっていうのか……? ほんとどうなってるんだ……? あいつの身体。
そんなことを考えいる間にも、双葉先生が追い詰められていく。──と、そう思っていた。
双葉先生は徐に右手に拳をつくり、それを構える。そしてあろうことか、自分のバリアを全力で殴った。
その瞬間、バリアが内側から派手に爆散し、その衝撃で狼は後方に大きく吹き飛ばされた。
「…………」
…………すっご……。え、いや、なにあれ。カウンター? 起死回生の壱発◯転拳的なやつ? ……その例えはちょっと違うか。
「グルルゥ……」
狼の体を活かしてなんとか着地するも、先程の勢いとは打って変わって、非常に弱々しく見える。ハア、ハア と息を荒げ、本物の獣のように口から涎を垂らしている。
俺でもわかるほどにそいつは、明らかにダメージを負っていた。
「ワオオォォーーー!!!」
「ぐお!?」
突然、その狼が吠えた。というより、叫んだ。あまりの声量に俺は耳を塞ぐが、それは殆ど意味を成さない。空気が揺れる。空気どころか地面も──いや、それどころか空間そのものが震えてるんじゃないかと思えるほどの咆哮だった。
「ガアアァァ!!」
狼は走った。双葉先生の赤い玉を食らっても止まらず、減速することすらなく。
おそらく、これは捨て身だ。それは俺にもわかる。そして、捨て身に出るということは追い詰められていることの証明でもある。
狼は口を大きく開ける。噛みつき攻撃だろう。
双葉先生は左手を出してバリアを張り、狼の口の中に指鉄砲を向ける。
……なんかもう、あのバリア一つで全ての方が付きそうな気がしてきた。流石に強すぎじゃないだろうか、あれ。
そうして、俺は終わってもいない戦いがもう既に終わった気でいた。
だが、それはまだ続いていた。
そう、思わされる他なかった。
狼がバリアに噛みつこうとし、双葉先生が狼の口の中に赤い玉を放とうとしていた、その時だった。
狼が前方に思いっきり宙返りをした。それにより、狼はバリアのすぐ後ろに着地する。
そして、大きく口を開けてバリアに力いっぱい噛みついた。
──バリィィーーン!
万能だと思っていたバリアが、破られた。
その代償として、狼の歯は全て欠け、顎下から血が出ていた。だが、そんなことは今の狼にはきっとどうでもいいことなんだろう。
狼は形振り構わず、双葉先生に噛み付かんと攻撃を仕掛ける。
しかし、双葉先生は至って冷静に、狼の頭を赤い玉で撃ち抜いた。
今度こそ本当に終わったかと思った。先生もきっと同じように思っていただろう。
けれど、それは終わってなどいなかった。
「……っ!?」
双葉先生が目の前で起こったことに驚いていた。初めてその顔に動揺が映った。
当たったかと思われたそいつの頭は、無傷だった。それも狼ではなく、人の頭だった。
その男の目は至って冷静で、先程の双葉先生に似た目だった。
俺は生まれてこの方、殺気なんてものは感じ取ったことはないが、そんな俺でもわかった。あれは、相手を殺すことを厭わない目だった。
男は瞬く間に右腕を刃に変え、振り上げる。
「せ………」
先生! そう、叫びそうになった。だが、声が詰まって出てこなかった。声をかけたら、あの男に殺されるんじゃないかと思った。そんな恐怖が、またも俺を縛り付けた。
俺はただ、見ていた。これから恩師が、恩人が殺される様を。
自分の不甲斐なさが情けなくて。でも、それでもやっぱり死ぬのは怖くて。だがら、俺は罪悪感を抱えたまま、黙っていた。黙って、見ていた。
そうして、双葉先生は斬られた。左肩から右脇腹へ、逆袈裟にされた。──はずだった。
斬られたと思った。いくら双葉先生でも、あれを回避するのは無理だと思ったから。
だが、双葉先生は回避していた。
男も驚いていた。まさか、斬ったはずのものがそこになく、あるのが空気だけだとは思っても見なかったんだろう。
双葉先生は男の背後に立っていた。そこで、今までの3倍の大きさはありそうな赤い玉の付いた指鉄砲を構えていた。
「これで終わり」
そう言って、それを発射した。
爆音と、爆風と、熱。俺がそれを感じ取った頃には、男は派手に吹き飛んでいた。きっと、今頃あの背中は先の左手のように抉れて、悲惨なことになっていることだろう。絶対に見たくない。
そうして、戦闘は終わった。
男は空中で手足をぷらーんとさせ、完全に脱力仕切っていた。たぶん、気を失ってるんだろう。
あれじゃあ、受け身もまともに取れないだろうなぁ。痛そうだなぁ。
そんな危機感のないことを考えていた時だった。
男が地面に着く寸前。急に体に力を入れ、左手と両足で地面に着地した。そして、右腕を刃に変えると、思いきり地を蹴り、アスファルトで舗装された地面が抉れる。
男が刃先を向け、人間では有り得ない速度で突っ込んでいく。その先にいたのは、俺だった。
「なっ!?」
あまりの急なことに俺は、反射的に腕で防御の姿勢をとり、目を瞑った。
だが、それらはやってはいけないことだった。
相手の武器は長い刃。刃物を相手に素手で防御をするということは、「腕を切ってください」とでも言っているようなものだ。目を瞑るなんてのは言うまでもない。
だが、俺は二人のような超能力を持っている訳でもなければ、歴戦の戦士という訳でもない。ただの高校生だ。そんな俺が一瞬でそんなことを判断できるはずもなかった。
そうして、男は俺に刃を突いた。
──ズシャア!
人体が貫かれる音がした。何かの影が、俺を覆った気がした。だがら、目を開けることにした。
ゆっくりと、目を開ける。
そこには、俺を庇い、胸を貫かれた双葉先生がいた。
「──」
何か言おうと思った。けれど、それは言葉にはならなかった。
だけど、凄く嬉しかった。これで俺は助かったと思った。けれど、そう甘くはなかった。
なんだか、やけに胸が熱い気がした。嬉しさのあまりに、だろうか。
自分の胸を見てみる。そこには──
──俺の胸に刺さった刃と、刃の刺さった俺の胸が、そこにあった。
「……あ、あ、……ああ」
それを認識した瞬間。壊れた。何かが弾ける音がした。
「ああ、ああ……あああ、ああ」
俺の心を埋め尽くしたものがあった。
それは、恐怖。
「ああああああああああああああああああああああ!!!」
叫んだ。声が枯れるほど、叫んだ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
俺の、自分の胸が貫かれたという自覚が、それによって浮き上がってきた痛みが、俺を絶望の底まで叩き落とし、俺を狂わせた。
「うるせえよ」
──ブスッ、ビチャッ
「あ……」
胸に刺さっていた刃が、引き抜かれた。
その瞬間、寿命を終えたイヤホンのように。ブツッと、俺の声は意識と共に途切れた。
意識が落ちる前に俺が最後に見たのは、地面に広がっていく血と、胸に穴が開いた双葉先生と、常人離れした身体能力で走り去って行く男の後ろ姿だけだった。
一つ、疑問に思ったことがあった。
──なぜ、あの男の背中には傷がないんだろう、と。
初めて戦闘シーンを書きました。なので、表現の仕方が分かりづらかったり、誰が何をしているのか理解できない。といったことがあると思うので、言って頂けると有り難いです。




