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ゴーストタウン

ノワールが走り出して、体感的に数分くらい経っただろうか。

周りの雰囲気が段々不気味な感じになってきているのが感じ取れる。


「何か、段々雰囲気が変わってきたな」

「ゴーストなどの類が住み着いている廃墟の町に近づいていますからね。そのため、周りの空気もジメジメして、暗い様な雰囲気になるんです」


リックの説明に俺はなるほど、と頷く。

確かに元の世界でも、そういう雰囲気がある場所は確かにあった。

この世界でも、それは同じなのだろう。


そして、この二人、今こそ平然としているが、最初はノワールの走るスピードに驚き、しがみ付くことに必死だった。

そんな二人は途中から慣れ始めたのか、体を起こして、目を輝かせながら、高速で流れていく風景を楽しんでいた。

このスピードにすぐに慣れるって、この世界の人達は適応力が高いと言うか、なんというか。


そんなことを思っていると、ノワールの走るスピードが減速し始め、そして止まる。

着いたのだろうか、と思い、視線を前に向けると、そこにはいかにも、という感じの廃墟となった町が目に入る。

俺がノワールから降りると、メアとリアス、リックも降りてくる。


「ここが」

「そうですね。ここが廃墟となった町です。まぁ、ゴーストタウンというのがいいんでしょうが」

「ゴーストタウン、ね。俺の世界にも、そういうところはあるけど、こっちは本当に出るんだよな」

「そちらの世界ではゴーストとかはいないんですか?」

「どうなんだろうな。そういうのに遭遇したっていう人もいれば、見えないんだからいないっていう人もいるからなぁ。まぁ、あんまり信じられてない、かな」

「そうなんですか。こちらとは違って、そちらのゴーストはシャイなんでしょうか」

「いや、そういうのじゃないと思う」


説明が難しいのは確かなので、そういう認識で構わないかもしれないけど。

でも、こっちではゴーストとかは当たり前なのだろう。

流石ファンタジー世界、と思っておこう。

アルフは俺の肩から飛び立つと、さっきまで眠たそうにしていたのが嘘かの様に元気に飛び回っている。

どうしてだろうか?


「この雰囲気や空気がアルフにはちょうどいい環境なんじゃないかな?」

「そうなのか? 思えば、ノワールも少しソワソワしてる様な」


ノワールの方へと視線を向けると、尻尾が今のノワールを表すかの様に尻尾がせわしなく揺れているのが目に入る。

逆に説明してくれたフィリアだが、少ししんどそうだ。


「あ、わかる? アルフについてはわからないけど、ノワールについてはわかるよ。元々は地獄の番人と名高い『獄炎魔狼ガルム』だからね。死霊の気配を感じ取って、興奮してるのかも」

「で、フィリアがしんどそうなのは?」

「いや、ついてきたのはいいけど、この環境……少しボクには辛いものなんだ。ボクは風の精霊人だからね。風から全てを感じ取ることができるんだ。だから、この……こういう場所の風っていうのは穢れ? 怨念? なんていうべきかわからないけど、そういった気持ち悪いものが感じ取れて、気分が悪くなるんだよね」

「じゃあ、本調子じゃないってことか?」

「まぁ、そうなるかな。ドラゴンクラスが出てこない限りは害はない程度だけどね」


それは頼りになることだ。

にしても、ノワールの事情はわかったが、アルフが何故あそこまで元気なのか。

蝙蝠系の魔物だからか、と考えていたが、そういうわけではなさそうだ。

もしかして、アルフの体に異変が起きている?

何かに進化しようとしている兆候なのではないだろうか?

それもこういう環境が好きなタイプに。

よくよく思えば、日が出ている時はほぼ寝ているアルフだ。

夜も寝ているが、それは俺たちに合わせてなのかもしれない。

本当だったら、蝙蝠の魔物らしく夜を元気に飛び回りたいハズだ。

アルフ本人が寝ることが好きっていう可能性もあるけど。


あれこれ考えてみたが、答えはわからないので、とりあえず保留としておこう。

だけど、何かしらの変化がみられるのなら、今の内に『魔物へのお菓子モンスタースイーツ』を使っておくのは手だろうな。


【それなら、メアにそれを見せてはいかがでしょうか? テイムする瞬間を見せることはできませんが、スキルそのものを学習させることは可能です】

「それは一理あるかもって思うけど、今更だけど見せただけで学習できるものなのか?」

【ハイ、大丈夫だと思われます。今までテイマーの師弟というのは聞いたことがありませんから、どういった修行をし、スキルを『伝授』させるのかはわからない以上、見て、どういったものなのか。わからないところは随所質問していただいて、覚えてもらうしかありません】

「そう、だな」


ヘルプさんの言うことには一理ある。

リックも言っていたが、今までテイマーの師弟というものは存在していなかったこと。

そもそも、ユニークに属する希少な職業だから、そういったことが起こることはないのだろう。

アレ? それなら『錬金術師アルケミスト』はどうなるんだ?

人形遣いパペッター』もだよ。

これらも希少と言っても、師弟関係はあってもおかしくはなさそうだ。


【テイマーとは違い、やり方や方法を教えることができますからね。テイマーとして、役立つスキルを持っているのは、この世界を探しても貴方だけですよ。だからこそ、テイマーが師弟関係を結んでも、特に意味はないんです。やり方は変わらないので】

「な、なるほど」


それなら確かにテイマーの修行が珍しいのは当たり前だ。

ということはたくさんテイムしているからという理由でメアは……。


【多分、最初見かけた時は秘訣があるとでも思ったんじゃないでしょうか。後は本人もあの時言ってましたが、若いのにたくさんテイムしているから、ということでしょう】


まぁ、そういう結論に至るわな。

メアは正直者だと豪語してるし、あの時言ったことは嘘ではないだろう。

とりあえず、メアに俺のスキルを見せないと。


そう思い、振り返る。

そこにいるのは体がガチガチに固まって、小刻みに震えており、顔もどこか怖がってる様な……まさか。


「メア、もしかして……死霊系苦手?」

「え? あ、そ、その……。そんなことはな、な、な……」


ない、と言いたいのだろうが、メアは何度もな、を繰り返し、それが数秒続いた後、頭を下げる。


「ないとは言えないっス! 凄く苦手っス! だって、怖くないっスか!? この雰囲気に、あのどこからでも現れるゴーストたち! あぁ、それと相まって恐ろしい姿! 考えるだけでも怖いっス!」

「僕はゴーストよりも怖い姿をした魔物はたくさんいると思うんですが」

「リック、それはそれ、これはこれっスよ」

「あ、そうですか……」


自信満々に言うメアに対して、リックは頷くことしかできなかった様だ。

とは言っても、俺でも「あ、そう……」と言ってしまうだろう。

まぁ、人にはそれぞれ苦手とかあるだろうし、そこは仕方ないことだろう。

実際、俺だって、幽霊とかが怖くないと言うわけではない。

だけど、俺の周りには頼もしい仲間がいるのだと考えると、自然と安心できる。


「さてと、話はそれくらいにして。おいで、アルフ」

「キキ?」


呼ばれたアルフは飛び回るのをやめて、俺の元まで飛んでくると、先ほどいた俺の肩へと降りる。

それを確認してから、リックと話をしているメアへと視線を向ける。


「メア、これから俺がスキルを見せるよ」

「ホントっスか!? まさか、何かテイムする魔物が!?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど、俺のスキルはテイムしやすくする、以外にも、もう一つ効果があってさ。テイムしている魔物に上げると、成長速度を速める効果があるんだ」

「そうなんっスか!? 凄いスキルってところじゃないっスよ!? それ、テイマーにとっては夢のようなスキルっスよ!?」

「まぁ、そうだよな」

「あ! もしかして、そのスキルのおかげでガルムとか、珍しい魔人とか連れていたんっスか!?」

「そう。そのスキルのおかげでノワールは『黒妖犬ブラックドック』から、『炎獄魔狼ガルム』にまで進化を果たしたし、アルフだって、希少種と呼ばれる『紅眼蝙蝠レッドアイバッド』に進化した。フィリアだって、少し特殊な方法だったけど、このスキルで『精霊人』になったわけだし」


そこまで言った瞬間、俺の両腕を誰かが思いっきり掴んでくる。

驚いて反応し、視線をそちらへと向けると、目を輝かせたリックが……あ、コレ、入れちゃいけないスイッチ入れちゃったパターンだ。


「今、そのスキルで『精霊人』になったと言いましたよね!? つまり、それは特殊な進化をも引き起こすことが可能なスキル、と見ていいのでしょうか!?」

「じょ、条件がかみ合った時だけ、可能だと思うけど」

「条件がかみ合った時ですか!? つまり、フィリアさんにはその条件がかみ合う何かが起こったと言うことですね!? そこらへんを詳しく聞かせてもらっても」

「『消音サイレンス』」


フィリアが魔法陣を展開した瞬間、リックの声が聞こえなくなる。

興奮気味に迫ってきていたリックも、自身の声が聞こえないことに気付いたのか、それによって冷静になったリックは申し訳なさそうに離れる。


「大人しくなったね。それじゃ、解除」


魔法陣が消え、それを確認したリックが頭を下げる。


「すみません。また興奮して、こんな」

「いや、リックはそういう性分だから仕方ないと思うぞ。まぁ、その……毎度暴走されるのは少し困るけど」

「ホントすみません」


土下座になってしまうのではないだろうか、と思うくらい深々と頭を下げるリック。


「未知に興味を持つのは良いことだけど、ボクの誕生した経緯はあまり聞かないでほしいね。あまりよろしくないことだったからさ」

「そうなんっスか?」

「うん、そう」

「そうっスか……。なら、アタシは聞かないことにするっス。アタシも興味はあったけど、フィリアさんや師匠が嫌がるなら、仕方ないっスね」

「僕もそうしておきます。相手の意思は尊重したいので」


確かにあまり掘り返してほしくないことではある。

融合したとはいえ、実質仲間を一人失っているのだから。

生贄に捧げる様な形で……。

俺はそこまで考えて、頭を振って、追い出す。


「よし、話はそこまでにして。メア、やるぞ」

「は、ハイっス! よろしくお願いしますっス!」


普段は『次元倉庫アイテムボックス』で生み出して、取り出しているが……やろうと思えば、『次元倉庫アイテムボックス』の外でも作れるんじゃないだろうか?


【可能だと思われます。『次元倉庫アイテムボックス』を経由しなくても。貴方は成長しています。なら、スキルに変化が起きていてもおかしくはありません】

「なるほどね。なら」


俺は掌の上に魔力を集中させる。

そこに少しずつ魔力が集まり出し、段々形作っていく。

やがて、それは俺印のきび団子へと姿を変えて、手の中へと納まる。

どうやら、うまく行った様だ。


「お、おぉ……。師匠、まさかコレが」

「あぁ。コレが俺のユニークスキル『魔物へのお菓子モンスタースイーツ』だよ。これのおかげで、仲間の成長を促進させたり、テイムしやすくしたりしてたんだよ」

「魔力が集まって、形作るのが見えましたね。なるほど。魔物が捕食するのは相手の血肉から魔力を得て、進化するためでもありますから、魔力そのもので出来ているそれを与えられれば、懐きやすくなるのも納得です。成長を促進させるのも」

「そういうことっスか。ということはアタシもコレの派生スキルを会得できれば……!」

「とはいえ、これはスキルとして、効果が働いているからと考えるのが妥当でしょう。もし、『伝授』してもらっても、そのスキルは成長を促進させるか、テイムしやすくするかのどちらかでしょう」

「そうっスか……」


リックの説明に少し残念そうに反応するメア。

まぁ、ユニークでコレなのに、派生した生まれたスキルがまったく同じでした、だったら、ユニークの意味はないもんな。

俺は生み出したきび団子をアルフへと周り、受け取ったアルフは嬉しそうに飛び上がり、空の上で器用に上げながら食べ始める。

その様子を見ていたフィリアとノワールから、自分には? という視線を感じ取る。

いや、フィリアの場合は視線だけではないけど。


「ねぇねぇ、アルフにあげて、ボクにはないの? ちょっと不公平じゃないかな?」

「不公平って……アルフには何かの兆候がありそうだから、もしかしたらと思って、あげたんだよ。もしかしたら、環境によって、進化先が変わるかもしれないだろ?」

「それでも、ボク達にもくれてもいいんじゃないかな? ねぇ、ノワール?」

「ガウッ……」


フィリアに同意するかの様に物欲しそうな鳴き声を上げるノワール。

今更だけど、このスキルって中毒性があるんだな……なんて思いながら、新しく二つを作り出し、フィリアとノワールに与える。

二体は嬉しそうに開け始め、食べ始める。

思えば、リアスは何ともないのだろうか?

不思議に思い、リアスへと視線を向けると、早速練習を始めているメアへと視線を向ける。

アルフのを見ているのに何も反応しなかった……ということはテイムモンスターには効かない?


【その可能性はありますが、恐らく……メアと個体名:リアスの絆が深いものだからだと思われます。テイマーと魔物の絆が深いと恐らく、『魔物へのお菓子モンスタースイーツ』に対して、反応を示すことはないのでしょう】

「そういうのもあったのか……。アレ? リオンさんの部下の魔将の人達は反応してた様な」

【アレは上司と部下の様な関係ですからね。テイマーの様な力は働いてないから、反応して当たり前です】

「あ、うん。そうだな」


そんなことを思いながら、フィリアたちが食べ終わるのを待つ。


「あの人、欲しい」

「あの人、欲しくない」

「何か惹かれるものがある」

「何か惹かれないものがない」

「欲しいな」

「欲しくないな」

「「捕まえちゃおっか、あの男のテイマーさん」」


こちらを見ている存在に気付くことなく。

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