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友達 Ⅱ

食事を終えた俺たちは今、城を出るために出入り口へと向けて歩いていた。

食事に行った時に、一応リオンさんに出かけると言うことを伝えたのだが。


「お出かけ? いいよいいよ! 気を付けて行ってきてね~」


なんて、軽い感じで言われた。

それは俺たちを信用しているからなのか、それとも別の何かがあるのか……。

相変わらず、何考えてるかわからない人だよな、あの人は。

普通、護衛を頼んだ方なんだから、それは危険だから、とか気にしないのだろうか?

妹のことが心配で俺たちに頼んだんじゃなかったのかよ。


「まずは服を買いに行くんでしたね」

「そうですね。俺の服、これだけしかありませんし。メイやスイムも服が欲しいだろうし」

「私は別に服なんて、これだけで」

「ダメだ。お前の服、少しボロボロだろ。それ、俺と会う前から着ていたんだろ?」

「うん」


俺の問いにメイは頷いて答える。


「なら、新しく服を買い替えよう。俺も服を買おうと思ってたしな」

「わかった。ユージがそういうなら」


いい子だな、メイは。

初めて会った時と比べると、大分印象が変わった。

しっかりと言葉が喋れる様になったおかげなのか、精神が安定してきたのかもしれないな。

俺も服がボロボロになってるし、メイと一緒に服を替えてしまおうと思う。


「それでは、良いところを知っていますので、そこに行きませんか? 『刻印強化エンチャント』もつけてもらえますよ?」

「『刻印強化エンチャント』?」


それって、ゲームでよく見る防具や武器を強化するやつのことだよな?


「ハイ、『刻印強化エンチャント』です。簡単に言いますと、『刻印魔法』というもので、服や武器などに魔法文字を刻み込むことによって、強化することです。ですから、ユージさんが今着ている服やそのヘッドホンというものも『刻印強化エンチャント』をすれば、鎧の様に強固な服にできますし、ヘッドホンを特殊な装備とすることも可能です。ただ、服や装備によって、エンチャントできる数も決まってますが」

「なるほど……。なら、この服を修復することも?」

「可能ですね。どうしますか? その服装、こちらにはないものですし、それがいいのでしたら、その様な刻印を頼むこともできますが……」

「なるほど……。とりあえず、ついてから考えてみますよ」

「それでは行きましょうか」


俺たちは城を出て、前を歩くルフェさんについていく。

それにしても、ルフェさんのおすすめの店、か。

街によく出ているのだろうか。

それなら、友達の一人や二人くらい居てもおかしくはないと思うが……やっぱり、姫様だから、皆遠慮しちまうのかな?

まぁ、俺も大体そんなもんなんだが……気付けば、友達になってたし。

別に嫌っていうわけではないが……うん、姫様の友達って、初めてだから、新鮮だ……?

なんか、違う気がするが、まぁ、いいか。

メイとルフェさんは楽しそうに話をしているし、メイがそれで近くにいてくれるなら、ルフェさんは安全だろう。


「アルフ、一応お前は少し高く飛んで警戒しておいてくれないか? ノワールは怪しいニオイを感じたら、教えてくれ」

「キキッ!」

「ガウッ!」


二匹とも、了解! という様な感じで声を出すと、アルフは少し高く飛んで辺りを警戒し始め、ノワールは鼻を動かして、ニオイを嗅ぎ分けている。

二匹とも、優秀で嬉しいよ、俺は。


「うみゅ! うみゅみゅ!」


私は、私は! という感じで、俺の前で手をあげて、小さく跳ねて見せるスイム。

その行為が可愛くて、思わず頬が緩んでしまう。

とはいえ、本人は何か頼んでほしそうにして、俺を見てきている。

そういわれても、困ったなぁ……。

ルフェさんの傍にはウチで一番強いメイが横にいるし、警戒はアルフとノワールにしてもらってるし……いや、メイだけで確実とは限らないな。


「スイムはメイと一緒にルフェさんの傍にいてやってくれ。もし、何かあった時はメイと一緒に頼むぞ?」

「うみゅ!」


了解! という感じで敬礼すると、小走りで、ルフェさんとメイの元へと向かった。

というよりも、スイム、敬礼知ってたんだな。

近づいてきたスイムを交えて、楽しそうに話をしているルフェさんとメイ。

まぁ、暗殺ならともかく、誘拐が目的なら、こんな街中で、それも日中に行うハズがないと思いたいが。

警戒することに越したことはないよな、メフィストフェレスの様な闇を操る力を持つ者がいないとは限らない。

闇じゃなくても、この世界はスキルが存在する世界だ。

誘拐を得意とするスキルを持つ奴がいても、おかしくないしな。

すると、こちらへと目を向けたルフェさんと目が合う。

ルフェさんはそのまま振り返り、俺へと近づいてくる。


「ユージさん、仕事が大切なのはわかりますが、警戒ばかりしていても疲れますよ? 大丈夫です。私、こう見えても強いので、少しくらい自衛できますから、お話をしましょう」


絶対強いだろうね。

だって、危険度がSって出るほどなんだからさ。

少しというよりも、並大抵の相手じゃ、相手にならんだろうに……。

本当に必要なのだろうか、護衛が……と思えてくるほどには。


【ないかと】


ヘルプさんが意見してくるとは久々だな。

でも、まぁ、ヘルプさんもそう感じるほど、強いんだろうな、ルフェさん。


「話、と言われても、ネタになる様なものなんて、そんなに持ってませんよ?」

「そうでしょうか? 私からすれば、ユージさんの元いた世界の話は興味深いのですが」

「地球の話ですか? まぁ、物珍しい話なんてないと思いますけど、そんなのでよかったら」

「ハイ、ぜひお願いします」


ルフェさんが微笑む姿を見て、ドキッとしてしまう。

だって、仕方ないじゃないですか。

ルフェさん、美少女だから、微笑んだら可愛らしくて、ドキッとしてしまうのは、男として仕方ないと思う。


「と言っても、色々語ってるほどないですよね、時間。聞きたいことがあるのなら、言ってください」

「それなら、ユージさんの世界には私達の様な魔族やエルフなどいるのでしょうか?」

「いいえ、いませんよ。俺の世界にはエルフとか、魔族や魔物なんていません」

「そうなんですか? だから、私達を珍しそうに見ていたんですね、ユージさんは」

「アハハ、俺の世界には堕天使とか、キメラとか、物語上の存在でしかありませんから」


なるほど、と呟きながら、ルフェさんは何度か頷く。

こんなので楽しんでもらえているのだろうか?

思えば、この世界にも宇宙はあったりするのだろうか?

もしあるとするならば、ロケットとかの話をしてみたりしたら、驚くかもな。


「それじゃ、次は……と言いたいですけど、もうすぐ到着なので、お話はまた後でにしましょう」

「もうすぐ?」

「ハイ、ここの通りにあるので」

「ここの通りって……」


ルフェさんが言った道とは……裏路地じゃん。

マジかよ、なんかやばそうな人の溜まり場とかになってそうなところを通るの?

一国のお姫様が、ここを?

いや、っていうか、ここを通ることこそ、どうぞ攫ってくださいと言っている様なもんだぞ……。


「それでは行きましょうか」

「うみゅー!」

「この先にルフェのお気に入りの店があるんだね」

「ハイ、そうなんです」


そういって、裏路地へと入っていくルフェさんとメイ、スイム。

なんで行っちゃうかな……もう。

それにしても、ルフェさんが進める店が、こんな裏路地にあるのだろうか?

もしかして、知る人ぞ知る名店、みたいな感じなのだろうか?

とりあえず、三人が行ってしまったので、行くしかなさそうだ。


「ノワール、アルフ、行くぞ」

「ガウッ!」

「キキッ!」


了解、という感じで二匹は声をあげて、俺についてくる。

少し奥へと歩いていくと、一つの扉の前で止まっている三人が目に入る。

扉の方へと目をやると、確かに小さな看板がかかっている。

ふむ……。


【何でも屋と書いてあります】


え? それだけ?


【それだけです】


なんという……つうか、何でも屋って。

服とかを買いに来たハズなんだが、どうして何でも屋?


「着きました。ここが私がおすすめする『何でも屋』です」


本当にそれだけだったよ、店の名前。

でも、『何でも屋』と豪語できるほど色々できるっていうことなのだろうか?

それとも、それぞれを得意とする人たちがいるのだろうか。

とりあえず、中に入ってみないとわからない。


「早く入ろうよ、ユージ、ルフェ」

「あぁ、そうだな」

「それではついてきてください」


ルフェさんが店の扉を開いて中へと入っていき、俺たちはその後に続いて入っていく。

中に入ると、目に入ったのは色々な道具や武器、防具などが置かれた陳列棚。

それぞれ薬などで分けていたりするが、なるほど。

確かに色々置いているから『何でも屋』と言われても、納得は行くが……これなら万屋でもいい様な気がする。

もしくはこっちにそんな言葉がないために、何でも屋にしているか、だが。

いや、エンチャントもできるっていう話だしな……。


「いらっしゃい。一体誰が……って、ルフェ姫じゃないかい」

「おはようございます、カーラさん」


店の奥から出てきたのは褐色肌の女性。

身長が恐らく百三十くらいしかなくて、腕に少し筋肉がついているのが見える。

恐らくだが、人じゃないだろう。


「今日は一体どういった御用で?」

「ハイ、今日は私の友達たちのお願いを聞いてほしくて来ました」

「ルフェ姫の? へぇ、もしかして、そっちの子たちが?」


カーラと呼ばれた女性はこちらを見てくる。

視線の順番からスイム、メイ、アルフ、ノワール、そして最後に俺ときた。

というより、俺を見た途端、ジ~ッと見てきてるんだけど。


【何かを調べられてる様です】


え? まさか、スキルか何かで?


【いえ、スキルは使用されていません。どちらかというと、値踏みされてます】


「ふぁ!?」


ヘルプさんの言うことに思わず声をあげると、皆がビクッと反応する。

値踏みされてるって……なぜに?


「急に声をあげるなんて、驚いちゃったよ」

「いや、俺のスキルが……じゃなくて、なんで俺だけ値踏みするかの様に見てたんですか?」


こういうのは聞いてしまった方が早い。

何か俺に問題があったりしたら……。


「いやぁ、ルフェ姫が友達を連れてくるなんて初めてだしね。それに、そこに一人だけ男が混じってると来たもんだからさ。もしかしたら、ルフェ姫のアレなんじゃないかと思って、どういう男なのか、眺めていただけさ」

「アレ……とは?」


ルフェさんはカーラさんの言葉に首を傾げているが、俺には大体想像がつく。

うん、そうだよな。

魔人とはいえ、女の子が二人、魔物が二体。

そこに男の俺が混じっていたら、そりゃ、俺とどういう関係か疑うよな。

そして、そんなルフェさんの反応を見てか、カーラさんは笑う。


「まぁ、ルフェ姫がこんな感じじゃ、そういうのじゃなさそうだね!」

「それはどういうことですか? アレとは何ですか?」

「いいや、知らないなら知らないでいいよ。いつかわかるだろうからねぇ。それで頼み事があるんだろう?」

「むぅ、明らかに話を逸らされた気がしますが……」


少し頬を膨らませながら、不機嫌ですと言う感じをアピールするルフェさん。

う~ん、可愛らしいね。

そんなことを思っていると、メイと連れて、俺の元まで来る。


「この二人の服を頼もうと思いまして。それと『刻印強化エンチャント』もしてもらいたいんです」

「服にエンチャントと来たかい。まぁ、そうだね。特にそこの女の子なんて、ボロボロだねぇ。よく今まで、その状態でいたもんだよ。魔人とはいえね」

「アハハ……金がなかったもので。面目ないです」


実際、そうだったし。

だから、金が手に入ったから、買うことにしたんだし。


「後、このスイムちゃんっていう子の服もエンチャントしてもらえませんか? アムドゥシアスが作ったのですが」

「アムドゥシアス様が? なら、もうエンチャントがついていてもおかしくないけどねぇ」

「いえ、それがつけてないんです。この子、実はスライムが魔人化した子で」

「えぇ!?」


スイムの元の種族を聞いて、驚きの声をあげるカーラさん。

まぁ、そういう反応は予想できてたけどね。


「スライムの魔人だなんて、初めて聞いたし、見たよ。まさか、リオン様が?」

「いいえ、ここにいる、ユージさんがテイムしたモンスターです。彼、こう見えても、お兄様が異世界から呼んだテイマーなんですよ?」

「リオン様が異世界からかい!?」

「ハイ、何かしらの力を感じたらしくて」

「それがテイマーとしての力だってのかい? いや、それなら別に、この世界にも少ないけど、いるしねぇ……」


次は興味深そうに俺をジロジロと見てくる。

もうなんだか、見つめられるのには慣れてきたぞ。


「それにこのメイっていう子はキメラなんですよ?」

「キメラ!?」


更に驚きの声をいただきました。

うん、普通魔人化することのない二体を引き連れていれば、そうなりますよね。

余計に見られ始めてるんだよな~。


「魔人化することがないはずの魔物を二体も……。面白いね、アンタ。ユージだっけ? 変わったものを見せてくれた礼だよ。エンチャントはタダでやってあげるよ!」

「えっ!? マジで!?」

「マジだよ。スライムの魔人とキメラの魔人なんて、お目にかかれるものじゃないからね。魔人化するはずのない二体だからね。そんな奴らの服を作って、エンチャントしてやれると来たら、腕が鳴るってもんさ!」


カーラさんは白い歯が見える笑顔を浮かべる。

やったよ……エンチャント代が浮いたよ!


「新しい服だったね。どんなのがいいんだい?」

「私は……う~ん」

「うみゅ! うみゅみゅ!」


スイムは服を引っ張って見せる。

どうやら、コレだけでいいと言っているらしい。


「言葉はまだ喋れないんだねぇ。にしても、その服だけでいい、か。まぁ、お気に入りの一張羅なら、そうだよね」

「うみゅ!」

「うみゅ! と言われてもなぁ。せめて、着替えくらいは」

「なら、エンチャントで常に清潔な服にしておこうかい? 冒険者の皆はそれを付けてるけどね」


やっぱり、清潔にする様なものをつけるんだな……。

まぁ、制服みたいなもんだと思えば、行けるか。


「それにアムドゥシアスさんが作った服なんだ。エンチャントできる量もかなりのもんだろうねぇ。元より、その子の服、水棲系の魔物の革とか使われてるみたいだしねぇ」


え? マジで?

元々はスイムに合わせて作ってくれた服みたいだし……スライムの様な液体タイプの体にはちょうどいいのかもしれない。

というより、なんでわかったんだろうか?


「なんでわかったんだろうか? っていう顔だねぇ。そりゃ、アタシのスキル、『鑑定』でわかったんだよ。でないと、『何でも屋』なんてやってられないからね」


なるほど、そんなスキルもあるのか、この世界。

というか、よくよく思えば俺の服やヘッドホンはエンチャントできる代物なのだろうか……?

こっちの世界の物じゃないし、怪しいなぁ……。


「で、他の二人は決まったのかい?」

「えっと……私はこう、動きやすい服装! 皆の前に立って、戦うからね!」

「ほほぉ、なるほどねぇ。なら、アタシなりに考えてみるさ。で、ユージは?」

「俺はこの服装がいいんだけど……」


俺が自分の服を指さして言うと、鑑定を始めているのか、つま先から頭まで見てくる。

そして、カーラさんは首を振る。


「ダメだね、作れないよ。どれも見たことがない材質が書かれているからねぇ。そっちの世界のもんだろ?」

「まぁ、そうですね」


そうだよな、こっちの世界に俺の世界の材質があるとは限らないからな。

ただ、そうなると似た服を作ってもらうか?


「一応エンチャントを試してみるのも手だけど、どれどれ」


あぁ、スイムに言ってた清潔にしておいてくれるやつか。

それを付けられるのなら、願ってもないことなのだが……。

しばらくカーラさんは俺を見ていると、顔は驚きの表情へと変わっていき、次は視線をヘッドホンへと移すと、更に驚いた様な顔をする。

すると、いきなりカウンターを飛び越えて、俺の元へと寄ってくると、両肩を掴まれる。


「ユージ!」

「は、ハイ!? なんでしょうか!?」


いきなりの出来事に思わず裏返った声が出ちゃったよ……。

というより、カーラさんの目が輝いている様な……。


「アンタの服とその道具! 凄いじゃないかい! ぜひ、エンチャントさせてくれよ!」

「え? は、はぁ。いや、お願いするつもりだったんですが……何か凄いことでも?」

「凄いなんてもんじゃないよ! アンタ、自分の装備がどういったものか気付いてないのかい?」

「いや、だって、向こうじゃ、当たり前の物だし」


うん、それ以外何もないよな。

まさかとは思うが、俺の服やヘッドホンも異世界転移の際に何か影響でも受けたのか?


「当たり前の物だって!? なら、向こうの物は余程凄いんだねぇ!」

「あの、凄いって、どういう……」

「だって、アンタの装備や服! エンチャントがし放題なんだよ!」


……What?


「えっと、つまりどういう?」

「つまり、エンチャント枠が無限なんだよ!」

「……え? ええええええええっ!?」


俺は思わず、驚きの声をあげてしまうのだった。

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