止めるなパウロ、男の意地だ
そんなこんなで、俺は砂漠のど真ん中で、直立する扉の前にたたずんでいた。
どうやってここに来たのかが、思い出せない。たぶん、いろんな妨害があったはずなのだが、夢というヤツはご都合主義に出来てるからな。時間経過も苦労話も、あったもんじゃない。
ラハブとデリラとパウロが同行していた。この三人は、アスリア王女に心底から惚れているらしい。アスリアがどんなに平和主義で、性格がよくて、素直でという褒め言葉ばかり聞かされてしまった。そんなことはもう、わかってるよ。
でも、聞かされるたびにドキドキする気持ちは抑えられない。この作戦が成功すれば、健司―――俺は、アスリアと結婚できる。健司の自殺も、食い止めることができるかもしれない。歴史を変えることが出来るかもしれない!
「これが、禁じられた扉か」
俺は、砂漠の真ん中に扉だけが立っているのを、しげしげとのぞきこんだ。
「特に変わった様子は、なさそうだが」
「モンスターがここから出てきて、ネルビア国に襲いかかるっていう話なんですが、モンスターも見えませんね」
デリラは、扉の後ろに回った。
「なーんにもない。扉しか、見あたりませんよ?」
その通りだった。ギラギラ照りつける太陽のもと、砂漠の上にくっきりと影をおとし、木製の扉がでーんとあるだけ。
「試してみるか」
「やめといたほうがいい。この手の魔法用具は、のろいがかかってる場合がある」
俺は、ラハブの制止を押しとどめた。
「しかし、なにかあるからサウル国王は、この扉を封じろって言ったんだろ? 調査ぐらいはしねーとな」
「勇者健司どの。苦言を申し上げるようですが、いくらお兄さまに競争意識があるからって、ムリをする必要はないんですよ? さっさと切り上げて、なにもなかったと報告しましょう」
ラハブの声は、意外と優しい。キショイ。
それだけに、俺は少しむかっ腹が立った。俺にはツンケンしてるくせに、健司にはこんなに言葉に気をつけてやがる。俺はその他大勢なのか?
「兄貴は兄貴、俺は俺」
健司になりきったつもりで、俺は突っ張ってみせる。
「納得できるまで、きちっとやらねーとな。子どもの使いじゃねーんだからよ」
「それはそうですが。そこまで意識させる義也さまって、よほど優れた人なんですね……」
ラハブは、絶望的なまなざしを向けてきやがった。憐れみが混じっている。くそ。
ここにはいない自分へ、怒りがこみ上げてきた。健司の気持ちが初めて理解できたからだ。なにかというと比べられ、憐れまれる弟。
見返してやりたいと思うのは、当たり前のことだ。
俺は、勢いよく扉に手をかけた。すっかり、怒りで意地悪な気持ちになっていたからだった。どうにでもなれ、と思った。パウロが、「待……」と言いかけるが、すでに俺の手は、冷たいドアノブにかかっていた。
ガチャリと扉を開けた。




