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夢の国を行く帆船    作者: 鈴宮とも子
夢解き能力の不調
20/43

島に到着、そこで待ち構えるものへ覚悟を決めて……

 たしかに島が見えた。こんもり、森が覆っている。

 ラハブが、指をさして、「小さな島だな。モンスターがいるだろうな」

 と言い、剣を抜いて、「こいつの露にしてやる」と嘯いている。

「モンスターといえども、話せるのですから、交渉して水と食料をわけてもらいましょう」

 アスリア王女は、とんでもないことを言い出している。


「アスリアさま! 襲ってくる相手に対して、交渉なんて考えられません!」

 ラハブはきっぱり、言い切った。俺もそのとおりだとうなずいてやる。アスリアは、一度死んでいるのだから、モンスターのこわさはよく知っているはずなのだが。

「敵意に対して敵意を返していたら、いつまでも争いは終わりませんよ」

 アスリアの言葉は、たしかに理想論だ。真顔で言うところがこわい。


「ああ、救世主ジェスさま! この戦いを終わらせ、勝利をもたらしてください。義也さま、ひとつお願いがあります」

「なんでしょうか、王女さま」

「あなたにさしあげた首飾りに、祝福をあたえたいのです。少しお借りしても、構いませんか?」

「―――別にいいけど」

 エメラルドのネックレスを外してアスリアは熱心に祈りはじめた。

「天にまします我らの父よ……」

 信仰熱心だね。


「ついでに宝珠にも、祝福をしてくれないかな」

 俺は、宝珠を差し出した。アスリアは、俺の手を取って少し頬を染める。

「ごつごつしてますね」

「え、ま、まあな」

「さすが勇者ですわ。あなたさまがおられたら、きっとブラークルも退散します」

 キラキラひかる瞳で見つめてきた。うう。いろんな意味で、良心にとがめる。


 アスリアは、宝珠に念を込めた。気のせいか、光ったような気がした。

 『魔力増幅』の力が宝珠に反映されたのだろうか。だといいけど。

 アスリアのおなかが、ぐうと鳴った。アスリアは、真っ赤になった。

「いま、ダイエットしてるんです」

「それ以上やせたら、死んじゃわない?」

 俺は思わず口走った。


「そ、そ、そうですか? 勇者さまがそうおっしゃるなら……」

「いや、俺が言うからじゃなくて!」

 焦ってアスリアを止めると、アスリアはうるうると目をうるませる。

 か、かわいい。

「ともあれ、様子を見に降りていこう。モンスターがいれば、宝珠で瞬殺だ」

 使い方がイマイチわからないことは、ナイショにしている。ちょっと良心がとがめるけれど、ラハブの前で打ち明けたくない。恥ずかしすぎる。


 

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