8話 覚醒
「ほぅ、よく避けたな。」
黒い仮面の男は平然とした様子でそう言った。
身長や声からしてこいつは間違い無く男だろう。
(・・・今、俺を殺そうとした!?)
「ルカ!どいて!」
リンがそう言い放ったと同時に俺は横に飛んだ。
俺がいた場所にすでにリンは腰に下げていた小さめの剣を振ったが、仮面の男はなんなく鎌で防ぐ。
「っく!」
「遅いな。」
仮面の男は素手で腹を殴り、リンはそのまま崩れ落ちていった。
「ふむ・・・弱い。」
(これってやばい状況なんじゃ・・・。)
「お前がルカという少年で合っているか?」
「・・・そうだとしたらどうする?」
「無論、殺すつもりだが。」
「それはなぜだ?」
「力を受け継いだ者だからな、我ら黒の種族の邪魔になるのだよ。」
「・・・残念だけど俺は力なんて持っていない。」
「それはまだ覚醒してないだけだ。だから今のうちに殺しておかねばならない。」
「ああ・・そーか、よ!」
俺は仮面の男に近くにあった石を思い切り投げつけ、全速力で走り出した。
(まずはあいつを撒いてからリンを助けないとな・・・。)
「追いかけっこをしている場合ではないぞ?」
「は?」
気付けばさっきまで後ろにいた仮面の男は俺の前にいた。
そして
「がっ・・・!」
リンと同じように腹を殴られていた。
あまりにも強い衝撃に意識を失いそうになったが、なんとか堪えられた。
「・・・ほう、今ので気絶しないとはさすがは受け継いだ者だな。」
「・・・っく・・はぁはぁ・・・。」
「だがもう終わりにしておこうか、死ね。」
その声は俺の前から聞こえた。
大きな鎌を振り上げて。
(死にたくない死にたくない・・・俺はまだ、元の世界に戻るまでは死にたくない!!)
その時、流歌と仮面の男の間に白い球体が現れた。
そして頭の中に白い部屋にいたあの少女の声が響いた。
「" " と言って」
(チビ・・・・!!)
「これは・・・!!」
「・・・"圧縮"!!!」
その言葉と共に、その球体が大きくなり周りのありとあらゆる物体を吸い込んでいった。
土・木・草・・・そして、仮面の男を。
「っく!!まさかこんな早くに覚醒するとは・・・!!」
「全てを吸い込んじまえ!!」
「う、うぉぉぉぉぉぉ!!」
凄まじい風が白い球体に向かって吸い込まれていく。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
(・・・これがあいつからもらった力ってことか。それにしても・・・この疲労感はやばいな・・・意識・・・が・・)
そのまま流歌は倒れ、意識を失っていった。