60話 出発の日
流歌が目を覚ますと、この獣族で生活している小屋の見慣れた天井だった。
あの白い部屋にはもういない。
(色々と聞きたかったが・・・まったく勝手な奴だな。)
結局シロが一人で話して、流歌が聞きたかった事を聞けないまま終わってしまったのだ。
(この"白器"や黒の種族についてもう少し詳しい話を聞きたかったんだけどな・・・それにしてもあのチビ、少し焦っていた様子だったな。)
あの部屋のシロの様子は、前の時と少し変わっていた。
何か焦っている感じがしたのだ。
(もしかしたら、魔族と人族の戦争とか関係してたりな・・。)
流歌はある憶測を立てた。
"黒の種族"はこの世界を支配、滅ぼすかの二択でありまずは人族と魔族の戦争を起こし、それをどんどん広げていくつもりではないか?と。
(まぁ実際どうなのかは分からない、か。さてと・・・俺はそろそろ出るか。)
一先ずこの考えは置いておいて、今日は流歌がこの大陸を出る日。
居間の方を見ると、すでにリルンは起きていて朝食の準備をしていた。
「あ、おはようござます!ルカ様。」
「ああ、おはよう。」
「もうすぐ朝食の準備が整いますので、もう少し待っていてくださいね!」
リルンはそう言って、出来上がった料理を次々と持ってきた。
「あんまり見たことがない料理ばかりだな。」
「もちろんですよ!!今日はルカ様がこの街を出る日、つまり特別な日なので・・・いつもより頑張りました。」
「そうか、悪いな。」
「いいえ、ルカ様はこの街をみんなと一緒に守ってくださった方・・そして私の・・・い、いえ!!な、なんでもありませんからね!?」
最後の方は良く聞こえなかったが、流歌はあまり考えずに料理が置かれている机に向かった。
「まぁ、なんであれ今日出る。今まで世話になったな。」
「・・・寂しく、なりますね。」
「別に今日が最後なんて言ってないだろ、いつかまた帰ってくる。」
(せめて世話になった奴らには、帰る前に顔は出しておきたいしな・・・エルフの里の奴らにも約束したことだし。)
するとその言葉を聞いたリルンは、顔をぱぁっっと明るくさせてにっこりと笑った。
「はい、待っています!!」
「それじゃ食べるぞ、腹が減った。」
「ふふ、分かりました。ではいただきましょう!」
最初はリルンとは別々に食事をとっていた。
"メイドは主人の後に食事をとるものです!"と断られていたからだ。
遠慮していた様子だったが今ではすっかり二人、たまにギルもやってきて三人で料理を囲むようになっていた。




