第16話1
楽しい楽しい球技大会になってしまいました。
真綾「この学校、文化祭無いみたいだよ?」
それは9月も終わりの中間考査前の対策会をしている時だった。
一太「それは助かる」
藤宮「助かるね・・・」
葉月「えっ、無いの?」
真綾「うん、無いんだって」
葉月「何で⁉︎」
真綾「いや、まあうちの学校何気に有名人の卵やプロ予備軍多いじゃない?」
立夏「そうだね」
真綾「でね、何年か前にその子達を狙って外部からやんちゃな人達が入って来たり、強引に写真撮ろうとかした連中が居たんだって」
沙也「あー、対策で無くしたのね?」
真綾「それで外部NGにしたんだけど、今度は生徒家族が別の生徒を当日に外へ連れ出してあわや警察沙汰に・・・」
萌「それは決定的だね・・・」
真綾「だから球技大会でわちゃわちゃ遊んで終わりみたい」
藤宮「陰キャに優しい学校です」
立夏「今の藤宮君の何処が陰キャなんさ?」
藤宮「全部?」
沙也「いや、藤宮君イメチェンし過ぎて誰だか分かってない人多いよ?」
真綾「そうそう、連れてった私ですらビフォーアフターが変わり過ぎて分からなかったからね」
萌「はなちゃん並みの変わり方だった」
花「私、そんなに変わりました?」
真綾「うん、めっさ変わったよ?」
葉月「母さんが「あの子は絶対変な場所に連れてけない」って言ってたよ?」
花「変な場所ってどんな所なんでしょう・・・」
沙也「銀狼君は変わらないよね」
真綾「そうだね、変わらないね」
一太「そろそろこの頭辞めたいんだけど、辞めてくれないんだよ・・・」
葉月「前に一度全然知らないはずの理髪店に入ったら断られたんだっけ?」
一太「なんか俺の顔写真が叔母から手配されてて、この辺りの理髪店や美容室全部NGだった」
藤宮「何、その指名手配」
一太「何でも叔母さんに協力するとアレキサンドラから向こう持ちで人を貸してくれるそうで、足りない時に来てくれるから俺を断っても貸してくれるのを取るでしょ?」
立夏「そりゃねぇ・・・、徹底してるね」
葉月「可愛い甥っ子のヘアスタイルは自分でやりたいんだよ」
一太「そう言う事にしておくよ・・・」
萌「で、球技大会は何があるの?」
真綾「バレーにキックベースにドッジボール、ボッチャ?」
藤宮「ほぼ小学生の競技だね・・・」
真綾「ちなみにボッチャ以外使用球はソフトボールで怪我しない対策だって」
立夏「みんなで遊びながら楽しむのが目的だから熱くなるなって事か・・・」
沙也「楽しみじゃん、ボッチャ」
藤宮「ボッチャ楽しむの?、真剣になりそう」
他愛も無い会話をしながらの対策会を経て中間考査、球技大会へと時間が進んでいく
◇
藤宮「た、たすけて・・・」
ソフトバレーを選択した男子三人組が楽しんでいた所に突然複数の女子がやって来る。
「あの〜、藤宮君・・・」前触れも無く話しかけられる藤宮がビクッとし何事かと振り向くとキラキラした目をした女子達が藤宮を取り囲み始めるとあっという間に集団になってしまう。
藤宮「えっ、ちょっと、何?」
葉月「あはは、囲まれてる」
藤宮「いや、ちょっと無理・・・、やめて・・・」
そこへ女子五人組がやって来る。
立夏「何あれ?」
一太「藤宮を囲う会?」
真綾「何それ?」
葉月「多分、ふーちゃんのイメチェンし過ぎてと笑顔で撃ち抜かれた女子に発見されたんだと思う」
立夏「なるほど・・・」
沙也「私も参加しようかな」
萌「私も参加しようっと」
真綾「あー、増えていく・・・」
花「上級生の方も居ますね」
真綾「これは良いよ対策せねばならないか」
藤宮「お願い・・・、たすけて・・・、無理・・・」
立夏「あー、あれ多分本格的にダメそう助けてあげて」
七人が集団に入り藤宮を助ける。
人酔いで青い顔をした藤宮を連れ出すと集まった女子達から苦情が出てくる。
しかし真綾と花が藤宮の事情を説明、余り人と接するのが得意でない事、女性への免疫がない事、自分達でもやっと普通に会話が出来るようになった事などを説明してみんなに納得してもらえたら自然と解散していった。
教室の片隅に何とか逃げて来た藤宮と立夏。
藤宮「ありがとう・・・」
立夏「どういたしまして、って本当に慣れないね」
藤宮「無理だよ・・・、今まで生まれて16年、小説みたいな異性の幼馴染が居るわけでも、女兄弟がいるわけでも無く、彼女すら居なかった陰キャが突然女子に囲まれたら、ああなるよ」
立夏「そんなものなのかなぁ・・・」
藤宮「そんなものなんだよ・・・」
沙也「おー、居た居た、ほいスポドリ」
後を追っかけて来た沙也と萌が教室に入って来て、沙也が藤宮にスポドリを渡す。
藤宮「ありがとう」
受け取る藤宮。
キャップを開けて一口飲むとその光景を見た三人が納得する。
沙也「藤宮君、あんた天然だから気をつけてね」
萌「そうそう、今の藤宮君やばいよ?」
立夏「なるほどねぇ・・・、だからあんな事になったのか・・・」
ヘロヘロの藤宮の頭の上にハテナが浮く。
藤宮「何?、何かした?」
納得顔の三人と納得いかない顔の藤宮。
沙也「これ、偽彼女でも良いから隣に女性が居ないと藤宮君の安息は無いな・・・」
萌「じゃあ、りっちゃんかな・・・、りっちゃんしか居ないか」
立夏「何故、私?、てか沙也は?」
沙也「私、居るもん」
立夏「えっ?、聴いてない⁉︎」
沙也「言ってないもん」
萌「私も聴いてない⁉︎」
沙也「誰にも言ってないもん」
立夏「教えなさい!」
沙也「まだ教えなーい」
三人娘のやり取りを見ていた藤宮がとうとうその場で横になってしまう。
立夏「ちょっと藤宮君、大丈夫?」
藤宮「ダメかも・・・」
タイミング良く来た一太と葉月が藤宮を保健室へと運んで事なきを得た。
◇
保健室の窓から入る日差しはすっかり秋の色をしている。
換気の為に少し開けてある窓から入る風はすっかり冷たくなっている。
藤宮「ん・・・、はぁ・・・」
立夏「調子はどう?」
藤宮はカーテン越しに居る人物が声で分かった。
藤宮「峯崎さん・・・」
藤宮が壁の時計を見ると16時06分を差している。
藤宮「峯崎さんバイトは・・・?」
立夏「今日はお店研修でお休みなのよ」
藤宮「そっか・・・、良かった・・・、僕の所為で休ませたかと・・・」
立夏「藤宮君の所為ではないでしょ?、元を正せば私が切っ掛けだし、少しは責任感じてるのよ?」
仕切のカーテンを開けて顔を藤宮に見せる立夏。
その眼は少し赤くなっている。
藤宮「まあ、僕もちょっと峯崎さん達と話が出来る様になって少し調子に乗っていた部分があったからお互い様って事で・・・」
立夏「お互い様にはならないでしょ?、だって藤宮君が嫌がってる反応が面白くてやってた部分あるし・・・、容姿だって半分無理矢理だったでしょ?」
藤宮「まあ、二学期入って峯崎さんに振り回されていたのはあるかな・・・」
立夏「ほら・・・、私が藤宮君のイメチェンしなければ今日倒れる事は無かったよね?」
何時の間にか立夏の頬を伝う涙。
立夏「本当は・・・、そんな・・・、つもりじゃ・・・、なかった・・・、のに・・・」
立夏の涙に慌てる藤宮。
藤宮「あ、あの・・・、泣かないで・・・、大丈夫・・・、だから・・・」
オロオロとどうして良いのかわからない藤宮と気持ちが溢れて泣いてしまう立夏。
藤宮「峯崎さん、本当に大丈夫だから・・・」
立夏「うん、分かったんだけど・・・、止まらない・・・」
二人しか居ない保健室に立夏の涙ぐむ声だけが聞こえている。
立夏が落ち着き、藤宮の体調も戻って蔵カフェで打ち上げをしていた何時ものメンバーが手を繋いで現れた二人を見て一斉に声を上げる。
「りっちゃん、藤宮君おめでとう〜」
そして二人は一斉にツッコむ。
「いや、違うから!」
次回は期間限定彼女?です




